「シェイクスピア作品を読んでみたいけど、結局何を読んだらいいのか分からない……」
「ぶっちゃけ、シェイクスピアの作品ってどんなのがあるんだっけ……?」
有名な作家の作品に初めて触れようとする時、大抵の方はおそらくそういったことを思うでしょう。そして結局「よくわからないし…」「読んでる時間も無いし…」「結局難しいんでしょ?」と諦めてしまうことも多々。実際、筆者もそう言う経験は数多くしてきました。
しかしそれらは結局、本当は時間がないわけでも読めるだけの知識がないわけでもなく、結局のところ「有名さへの敬遠」でしかないことがほとんど。「高名な文学者が好んでいるような本を、自分なんかが読んで楽しめるわけない」皆さんは、そう思ってはいませんか?
実際、そういう難しい文学作品があるのは否定できません。けれどこの記事で紹介するシェイクスピアの作品までも、そんな無意味な敬遠で遠ざけるのは、正直なところもったいないとしか言えない行いです。
この記事では、超有名でありながら文学初心者向けの作品を数多く残したシェイクスピアの代表作を8作品、ランキング形式でご紹介していきます。物語のジャンルも合わせて紹介していくため、皆さんもぜひ、自分に合うと思う作品を手に取ってみてください!
この記事を書いた人
Webライター
フリーライター、mizuumi(ミズウミ)。大学にて日本史や世界史を中心に、哲学史や法史など幅広い分野の歴史を4年間学ぶ。卒業後は図書館での勤務経験を経てフリーライターへ。独学期間も含めると歴史を学んだ期間は20年にも及ぶ。現在はシナリオライターとしても活動し、歴史を扱うゲームの監修などにも従事。
8位:オセロー
読んでみて
四大悲劇の一つである作品です。軍人であるオセローが、部下の悪意ある言葉によって疑念と嫉妬に来るっていき、どんどん転落していくという物語です。
ストーリーラインには少し無理があり、冷静に見ると「いや、オセローお前さ……」と少々主人公に呆れてしまうかもしれません。しかしその分、元を正せば自分の愚かさによって破滅していく男の様は、正に悲劇と呼ぶにふさわしいストーリーとなっています。
自身の”欲望”によって破滅する者たちが描かれるシェイクスピアの悲劇ですが、本作は”他者の欲望”に操られて破滅する男の話。他の悲劇とは一味違う、「胸糞悪い」悲劇を味わうことができます。
みんなのレビュー
これまで読んだどのシェイクスピアの作品もそうだったが、結末に向かう勢いに圧倒される。何かが少し違うだけでも、この結末は避けられそうな気がするのだが、こうなるしかなかったのだ、と思わせられる。
引用元:読書メーター
7位:ヴェニスの商人
読んでみて
シェイクスピアの喜劇の中でも、代表作として挙げられる名作です。喜劇でありながら読み方を変えると悲劇であり、しかしやっぱり喜劇でもあるという、浅く楽しむことも、深く掘って考察することもできる作品となっています。
シェイクスピアの時代では当たり前だったのであろう事柄が書かれていますが、今の時代の倫理で考えると……な部分もあるため、歴史的な事柄を頭の中に入れてから読み始めると良いかもしれません。少なくとも今の時代の倫理観で読むと、少々胸糞悪い話のようにも見えてしまいます。
ただ、この作品に発揮されているシェイクスピアの言葉遊びの腕前は必見。作中に挟まれる”揚げ足取り”めいた言葉遊びに、「なるほど、そう言う切り口か」と感心することは間違いありません。
みんなのレビュー
四大悲劇などに比べると,だいぶプロットや人物同士の関係はシンプルで理解しやすい。……のであるが,提示(推奨?)されている価値観や面白みとなると一筋縄ではいかない多面性がある。当時の観客の差別的なユダヤ人観にのっかって溜飲を下げさせているのか,逆にそうした態度を戯画化して揶揄しシャイロックの悲劇をも描いているのか。箱選びが「見た目や通念に惑わされるべからず」のアレゴリーであるなら(変装した女達に指輪の件でかつがれるのも同じモチーフなのかも),後者ととるのが妥当か。ともあれ,解釈しがいのある作品だと思う。
引用元:読書メーター
6位:ロミオとジュリエット
読んでみて
おそらくはシェイクスピアの文章として、最も多くの人に知られているのはこの作品であると思います。現在でも多くの作品の題材に使われる、家に振り回される男女を描いた悲劇です。
ストーリーはもはや解説する必要がないほど有名ですが、特筆すべきはその会話によるストーリーライン。シェイクスピアの作品は、実はほとんどが演劇の脚本のため、情景描写というものがかなり少ないのですが、『ロミオとジュリエット』に関してはその文章のほぼ全てが会話。
それでも読み手に情景を想像させてしまうのだから、シェイクスピアという人物の恐ろしい程の文才を感じられる作品だと言えるでしょう。多くの人にお勧めですが、何より恋愛ドラマ好きな女性におすすめしたい一冊です。
みんなのレビュー
ジュリエット「名前ってなに?バラと呼んでいる花を別の名前にしてみても美しい香りはそのまま。だからロミオというお名前をやめたところであの非のうちどころないお姿は、呼び名はなくてもそのままのはず」。名とは他者からの規定である。ただし、二人にとって問題となっているのは個人を特定するファーストネームではなく、帰属に関わるファミリーネームだ。一見して、ロマンスにおける自律的個人と家父長制の相克を読み取れるが、シェイクスピア作品の多くがミソジニーとホモソーシャルが濃厚なことを鑑みるに、そう簡単には片付けられない。
引用元:読書メーター
5位:リチャード三世
読んでみて
人間的に最低最悪のクソ野郎・リチャード3世が、陰謀渦巻くイギリス王朝の中で成りあがっていく過程を描いた歴史劇です。結局最後は報いを受けることにもなりますが、悲劇とは違ってその描写は割合あっさりした印象でした。
この作品に関しては、とにかくブラックな面白さ。リチャード3世の陰謀や立ち居振る舞いは、現代で言うところの昼ドラを彷彿とさせる面白さに満ちています。
決してそう快感をもって読める作品ではなく、とても好みがわかれるだろう作品ですが、ドラマの『大奥』や『昼顔』など、ドロドロした作品が好きな方にはお勧めできる作品です。
みんなのレビュー
セリフが非常に美しい。同じ単語を何度も使ったり、リチャードとエリザベスの連続したセリフなど。美しいセリフが、愛をつぶやくのではなく、言い争い、しかもものすごくドロドロしたところでというのが、なんともミスマッチ。すごいとしかいいようがない。憎しみの言葉の数々に、うっとりしてしまうなんて。これは、小田島雄志氏の翻訳になせるわざなのか。1983年10月、白水社。
引用元:読書メーター
4位:ハムレット
読んでみて
四大悲劇の一角に当たる作品です。王道の復讐物語ですが、第三者視点で登場人物たちを見られるが故の、避けようのない悲劇を味わえる作品となっています。筆者個人としましては、四大悲劇でもトップの悲劇は『ハムレット』だと感じました。
冷静に見ると展開自体には少々無理があるのですが、セリフや人物から伝わるエネルギーが、その無理な部分を覆い隠しているような印象を受けます。そういう意味では、まずは本で『ハムレット』に触れてから、演劇版『ハムレット』に触れるのも良いのかもしれません。
心を抉るほどの悲劇が読みたい方には、この作品を何よりお勧めいたします。
みんなのレビュー
シェイクスピアの作品初めて読んだ。中学生の時は小説じゃなくて台本ってかんじだから読みにくそう…と思って敬遠したが、読んでみると案外普通だった。毒殺劇を見せて叔父の反応を見たり、剣の試合でみんな死んだり、ストーリーが良い。オフィーリアは何のために劇にいるのかよく分からないが、とにかく可哀想な目にばかり遭う。ハムレットの独白は詩的で聞いてると気持ちよさそうだけど、凄く長いので、全部覚える役者さん大変だろうな、と思った。
引用元:読書メーター
3位:リア王
読んでみて
四大悲劇の一角であり、その中でも最も壮大な物語と評される作品です。筆者個人の表としては、悲劇としては『ハムレット』の次点。しかし物語としての面白さは、四大悲劇の中では頭抜けていると感じました。
「誠実である」という事が正しく評価されない社会や。目先のものにばかり気を取られて。物事の本質を見抜けないリア王。「正義が必ず勝つわけではない」という残酷な現実など、描かれる世界が広い分、現代にも通じる要素が数多く描かれている作品です。
お遊び的な要素すら悲劇を引き立てる材料でしかない、まさに「悲劇の最高峰」。哀しい物語がお好きな方は、この本を読まずして自分のことを悲劇好きとは言えません。
みんなのレビュー
途中から悲劇だということを思うことなく読んでいたので、結末に愕然とした。まさに悲劇でした。フランスの活躍に期待していたのに、幕と幕の間でその描写も無くあっという間に負けているなんて。弱いよ、フランス。コーディリア、悲しすぎる。 狂人になったリア王の口からほとばしるセリフは強烈だった。狂ったリア王、狂ったふりをするエドガー、道化、普通でないセリフが絡み合い悲劇をより際立て物語を深く深く重厚にしている。「ああ、意味のあること、ないことが入りまじって!狂気の中にも理性がある!」
引用元:読書メーター
2位:マクベス
読んでみて
シェイクスピアの「四大悲劇」の一角である作品です。実在したスコットランド王の、マクベタット・マク・フィンレックをモデルとした歴史劇でもあります。
内容自体は、マクベスという男の成り上がりと、そこからの没落を描く一代記。間違いなく悲劇ではあるのですが、話の進む展開や言い回しのエネルギーが本当にすさまじく、ページをめくる手が止まらなくなる作品です。特にマクベスを焚きつける妻のセリフ回しは必読。「これはヤバい女だ……」というのが、間違いなく伝わる、秀逸な言い回しになっています。
話自体もかなり短く纏められているため、時間がなくてもするりと読めてしまえるのも嬉しいところ。忙しい現代社会で「とりあえず名作を読んでみたい」という方にもお勧めできる作品となっています。
みんなのレビュー
浅はかな妻にもそそのかされ、手を血に染めたマクベス。人生、登っている時、或いはそう感じている時は、不都合な事柄は見えなくなる。誤った選択、その先に報いがあった。 戯曲は慣れないので抵抗があったが、思いの外読みやすく、情景が湧いた。是非、舞台も観てみたい。
引用元:読書メーター
1位:夏の夜の夢
読んでみて
シェイクスピアが遺した喜劇作品の一つです。妖精などのファンタジックな要素や、結婚を控える男女を描いた恋愛の要素など、現代にも通じる人間の感情を描いたシェイクスピア作品の中でも、とりわけ現代に近い作品であると言えます。
どちらかと言えば”4大悲劇”に代表される悲劇が有名なシェイクスピアですが、喜劇を苦手としていたというわけではなく、むしろこういった読みやすい喜劇も数多く残しています。
妖精界と人間界という、二つの世界が交錯するファンタジーな舞台設定や、望まない結婚を拒否する人間の男女など、現代のライトノベルにも通じる分かりやすく読みやすい作中設定も魅力。老若男女を問わずに楽しめる作品ですので、これからシェイクスピアに触れたい方には、まずはこの作品をお勧めいたします。
みんなのレビュー
舞台は中世時代のアテネ。貴族の男女や職人、妖精達が登場する喜劇です。妖精が仕掛けた魔法により、貴族の男女の関係性がいざこざしてしまった場面は笑ってしまいますね。個人的に、海外文学は人物名を覚えられないので苦手なのですが(シーシュース、ディミトリアス、ライサンダー等と言われても、ピンとこないので笑)、夏の世の夢は話が理解しやすく軽いので、入門者向けにもってこいだと思います。
引用元:読書メーター
まとめ
いかがでしたでしょうか?有名な作品を中心に、読みやすさを加味して作品を選ばせていただきました。基本的に、ランキング上位が読みやすいものになるように紹介したため、シェイクスピア作品に興味を持ってくれた方は、まずは『夏の夜の夢』から読み始めてみてほしいです。
ここでひとつ気を付けていただきたいのは、ここで紹介している作品は、全て「日本語訳である」ということです。言語を別の言語に置きかえている以上、どうしても言い回しに不自然さが残ったり、あり得べからざることですが、誤訳などが残ってしまったりはします。
今回紹介した本の役者である 小田島雄志氏は、割合原文に忠実かつ読みやすく訳を仕上げてくれる名訳者ですが、それでも読みやすさを感じるのは、結局はその本を読む皆さんなのです。
ですので、ここで紹介したものが読みづらければ、別の訳者の同じ作品を読んでみてください。シェイクスピアは有名作家ですので、非常に多くの訳本が出ています。そのなかにはきっと、貴方が満足するような名訳が存在しているはずですよ。
それではこの記事にお付き合いいただき、誠にありがとうございました。
この記事が皆さんの読書ライフに、少しでもプラスに働いてくれると幸いです。