夏目漱石のおすすめ作品・本15選【漫画や短編、長編作品まで】

夏目漱石ってどんな本を書いてるの?」
夏目漱石の本を読んでみたいけれど、何を読んでいいのかわからない」

過去千円札の肖像画で使用されていた夏目漱石。彼は文豪として名を馳せながら、教育者としての側面も持っていました。彼の著作にはそういった片鱗も見られ、純粋に面白いだけでなく、考えさせられる内容も多いです。

この記事ではそんな夏目漱石のおすすめの書籍を15冊ご紹介していきます。

長編作品

吾輩は猫である

読んでみて

夏目漱石の処女作であり、最も広く知られている作品です。「吾輩は猫である。名前はまだない。」という有名な一文は誰しも聞いたことがあるのではないでしょうか。その有名な一文から始まる通り、この物語の主人公は「吾輩」と自称する猫です。

「吾輩」と自称する猫からの視点で物語は進み、人間社会を風刺する様が非常にコミカルで痛快です。処女作ということもあり、下手に遠回しな台詞や書き方はされておらず、普段本を読まないという方でも読みすすめやすい作品です。

みんなのレビュー

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坊っちゃん

読んでみて

「坊っちゃん」と呼ばれる少年を取り巻く人情物語です。坊っちゃんは無鉄砲で小さいころから乱暴者である反面、曲がったことが嫌いで素直な一面もあり、とても人間味に溢れた主人公です。

一般大衆向けに作られた作品ということもあり、ストーリーのテンポ、文体共に読みやすい作品となっています。

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三四郎

読んでみて

「それから」や「門」に続く三部作の一つで、女性に免疫のない初心な青年「三四郎」にスポットが当てられています。上京した三四郎はある日若くて美しい女性に一目ぼれしてしまいました。縁があってその美しい女性の家に行くと、そこで女性が近々婚約をするという話を聞き…。

初心な三四郎の恋愛物語は果たしてどうなるのか、ぜひ応援しながら読み進めていってください。

みんなのレビュー

こころ

読んでみて

国語の教科書にも掲載され、夏目漱石の代表作ともいえる作品です。こころは上・中・下の三部構成になっており、それぞれ「私」を中心としたさまざまな人間模様が描かれています。

私と親友と、愛する女性の間での三角関係が、より主人公に人間らしさや葛藤をもたらしており、読み進める私たちにもさまざまな感情をもたらしてくれます。アニメ化や映画化もされた作品ですので、原作と比べながら読み進めていくのも面白いですね。

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それから

読んでみて

1909年6月から10月にかけて「東京日日新聞」などで連載された小説。定職に就かず、父親による援助で悠々自適に暮らす主人公・長井代助が、友人であり銀行勤務の平岡の妻である三千代に出会ったことで、自分の人生が変わりゆく物語。

「三四郎」とともに前期三部作に分類される本作は「友人の妻を奪う」というのが一つの転換期となっております。前作の三四郎では兄が自分の好きな人を奪う所を描いていましたが、奪う側の視点ではどうなっているのか、読み比べてみるのもいいかもしれません。

みんなのレビュー

就職するでもなく、芸術家になるでもない。何事にも鑑賞者の態度を貫く代助のディレッタンティズムは、こと色恋に関しては脆さを露呈する。さまよえる高等遊民の自我は一方で父兄の経済支援を取り付ける苦労に割かれ、一方で親友の妻・三千代への恋情に引っ張られる。日毎に優勢が変わる不断の綱引きがこの小説の面白さである。代助は働かないことを知識人の余裕にかえて論理を編むが、目下の安寧は労働に依存しているのだ。矛盾の人である。にも関わらず、代助の社会批評とそこに生じる煩悶は真を突いたものであるこの皮肉。漱石は奥深い。

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読んでみて

1910年に朝日新聞にて連載され、翌年1月に春陽堂から出版された小説作品。役所勤めの主人公・野中宗助は親友である安井の妻・御米を奪ったのだが、その罪悪感からひっそりと暮らしておりました。すると、そこへ安井の消息が分かり…という物語。

「三四郎」「それから」と並び前期三部作の最終作にあたる作品となっています。本作では「友人から妻を奪った罪悪感」を抱えた主人公が登場し、その罪悪感から解放されたいがために奔走する姿が描かれています。

みんなのレビュー

夫婦の静かな日常、お米の優しさ。コロナの今、こんな風に暮らしていれば、何の不足もないと思ってしまった。 どんなに平穏であっても、何かに脅かされる業のようなものを人は持っている。「冬が来る」ってことは、人の抗えないようなものをいつも覚悟して、今を生きるということか。漱石の文章は上品で表現に気品があり気持ちがさわやかになる。

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行人

読んでみて

1912年から1913年にかけて朝日新聞にて連載された小説作品。主人公である学者の長野一郎はその性格故に、妻である直や家族からも敬遠されていました。ある時、一郎は弟の次郎に頼み、直の愛情を確かめるべく、彼女の貞操を試すように指示されますが…という物語。

後期三部作の2作目にあたる作品で、本作の執筆中に漱石は胃潰瘍で5か月ほど休載しておりました。本作では一郎のエゴイズムによって、周囲や一郎自身が振り回されていく様子が描かれています。

みんなのレビュー

ぐだぐだした感じがたまにくどいけど面白い。新聞連載だけあって細切れなのが読みにくい。いくら研究を積んでも幸福は対岸…。お重や二郎の結婚、一郎と直の関係、Hとの旅がどんな風に終わるか、全部分からない。三沢は元気になってそうで良かった。直の気持ちになってみたり、一郎の気持ちになってみたり忙しかった。そして宗教。キリスト教もイスラム教も出てくるし、ニーチェやメーテルリンクも出てくるけど、最後は仏教。神は自分、僕は絶対。香嚴(きょうげん)になりたい。とりあえず一郎、頭良すぎて逆に苦労する典型タイプかと。

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草枕

読んでみて

1906年、文芸雑誌「新小説」にて発表された作品。主人公である30歳の洋画家が山名かの温泉宿に宿泊し、那美という女性と出会ったことで、「非人情」や「芸術論」などを深く考察した作品。漱石の初期の名作として挙げられます。

序文である「山路を登りながら、こう考えた。智に働けば角が立つ。情に棹させば流される。意地を通せば窮屈だ。とかくに人の世は住みにくい。」という書き下しが有名な作品でもあります。

みんなのレビュー

久しぶりに夏目漱石を読みました。発表順的には「吾輩は猫である」「坊ちゃん」の次に当たる初期の小説だそうですが、それらに比べるとグッと難解で「分かりにくい」と「分からない」の中間くらいの理解度だと思います。特に主人公の内面の描写などは訳がわからず、漱石の頭の中が普段からあんなんだとしたら、そりゃ胃弱にもなりますよねと変なところに感心してしまいました。でも床屋さんのくだりなんかストレートに面白かったし、冒頭の有名なフレーズも結びのシーンも好きですし、瞬間的な鋭さが印象深くもある作品でした。

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二百十日

読んでみて

1906年10月に雑誌「中央公論」にて連載された小説作品。阿蘇山登山をする二人の青年、圭さんと碌さんが会話しながら進められていく作品。会話の内容は、宿の女性とのやり取りや華族や金持ちに対する憤りといった内容です。

こちらの作品は、漱石の実体験に基づいた内容になっており、熊本での教師時代に友人である山川信次郎と共に登山したことをモデルに描かれた作品です。

みんなのレビュー

https://twitter.com/himawari3352/status/1312754519827120128

虞美人草

読んでみて

1907年に「朝日新聞」にて連載された小説作品。虚栄心の強い女性・甲野藤尾は無き父親の形見である金時計を使い、小野と宗近という二人の男性を誑かして遊んでおりました。そんな時、小野は恩師の娘である小夜子との縁談を持ち掛けられ…という物語。

本作は、漱石が帝国大の教授を辞職し、朝日新聞に入社し、職業作家として執筆した最初の作品となっています。それまでの作品とは異なり、頼物語性の強い作品となっているのが特徴的です。

みんなのレビュー

野分

読んでみて

1907年に俳句雑誌「ホトトギス」にて掲載された中編小説。結核持ちの高柳、お洒落な中野、教職を追われた道也先生、という3人の作家が主軸となっている物語で、教訓的な作品として描かれているのが特徴的です。

また、本作は同時期に描かれた「二百十日」や「虞美人草」と繋がっている部分があり、年代順に読むことで様々な発見が見つかるかもしれません。

みんなのレビュー

『二百十日』。僕が阿蘇に登ったときもすごい雨と霧だったなあと思い出した。僕の見た阿蘇は市井のルサンチマンなんかとは全然無縁に、気持ちが良いほど雄大で清爽だった。『野分』。高柳君の自己犠牲は、彼に百円を貸した中野君も、彼に原稿を買い取られた道也先生も知らない。それは作者の超越的な視点に引き上げられた読者だけが知っていることなのだ。僕は明治の暑苦しい時代精神にはもはや共感しないけれど、この「先例のない時代」にあって、自己の存在を証し立てること以外に密かな満足を見出した人が確かにいたという事実は記憶しておこう。

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道草

読んでみて

1915年6月から9月にかけて「朝日新聞」にて連載された長編小説。主人公である健三は大学講師を勤めながら、作品を執筆しております。ですが、妻であるお住はそんな夫を理解できずに偏屈者として見ておりました。そんな時に養父の島田がお金をせびりにきてしまい…という物語。

漱石の自伝的小説であり、主人公である健三は漱石自身の事を描いております。作品自体は、私小説風であることからあまり評価は高くありませんでしたが、自然主義作家などからは高い評価を得た作品となっています。

みんなのレビュー

自伝的小説。主人公の位置づけは、「猫」とほとんど同じで、漱石その人とも思われる学校の先生の周りで起こる事柄や、心象風景が淡々と描かれています。ですが、内容は徹底的にネガティブです。外国留学から戻り、次第に世間での地位も確立しつつある主人公のところへ、養父母などが金を無心にやってくるという粘着質の物語が延々と続きます。しかし、自分の足跡を振り返り、様々な視点からそれを文章に残すなど、常人ではありません。「猫」を対象に比較したときの明暗は、文豪と言われ続ける漱石のダイナミックレンジの広さを実感させてくれます。

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明暗

読んでみて

1916年から朝日新聞にて連載され、連載中に漱石が亡くなったために未完となった長編小説。会社員である主人公・津田由雄は勤め先の社長の娘であるお延と結婚するも、かつて将来を誓い合った清子という女性がいました。由雄は清子の消息を知り、1人温泉場へ…という物語。

様々な人物からの視点から描かれており、各人物によるエゴイズムがぶつかり合っているのが特徴的な作品となっています。また、漱石作品の中では最も長い作品となっており、晩年に理想とした「則天去私」の境地を描こうとしたのではないかと言われています。

みんなのレビュー

再読。初読からずいぶん時間が経ちました。初読時は主人公(津田)の視点で読んでおり、今では妻(お延)にとってもこの生活は相当な苦行なのではと想像します。お延さんにしてみれば、人は与えられた条件で何とか折り合いをつけて生きているというのに、一緒にいる月日を重ねても、夫から見ると何をしても良くない風に取られてしまう。思わぬところで胸が痛んでしまい、年月の経過とともに、私の中で感想も微妙に変わってきておりびっくりです。「長年慕っていた方にもう一度会いたい」というピュアな設定はそれで大好きなのですが。複雑です。

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短編作品

彼岸過迄

読んでみて

漱石自身初めての試みである、いくつかの短編から、一本の長編を組み立てるという形式の作品になっています。「人の心の壁」というものに焦点を当てて書かれた短編たちは、視点人物や文体がそれぞれ異なり、一つ一つの作品を楽しむことができます。

最終的には一つの作品として綺麗にまとまっているのですが、長編の小説は読み飽きてしまうという方は、この作品から漱石に触れてもいいかもしれませんね。

みんなのレビュー

https://twitter.com/Daimler_sv8/status/1246681485421109248?s=20

夢十夜

読んでみて

タイトルの通り十の短編から構成された作品になります。「こんな夢を見た。」から始まる第一夜は特に幻想的で美しい文体で人気の高い短編です。

かと思えば随筆ともいえるような「思い出す事など」という短編は、晩年の漱石が病床で経験したことをほぼリアルタイムで書いたものになります。生死だけでなく人間社会を達観した目で見つめた作品で、第一夜とはまた違った読後感をもたらしてくれます。

みんなのレビュー

https://twitter.com/Yasuharu_/status/1244968612256829441?s=20

まとめ

いかがでしたでしょうか。

長編でしたら、

  • 吾輩は猫である
  • 坊っちゃん
  • 三四郎
  • こころ

短編でしたら、

  • 彼岸過迄
  • 夢十夜

がおすすめです。

夏目漱石は近代文学を確立させ、令和となった今でも人々に愛される作品を生み出しました。漱石の作品には一貫して人の心模様が書かれており、作品のテーマだけでなく、文体の流麗さやバラエティに富んだ構成からも漱石の非凡な才能が発揮されています。この記事を参考に、ぜひ夏目漱石の著作に触れてみてはいかがでしょうか。