森見登美彦のおすすめ本・小説15選【京都が舞台の作品からファンタジー作品まで】

「森見登美彦の作品を読んでみたい」
「京都を舞台にした作品って、どんなものがあるんだろう」

2003年に「太陽の塔」でデビューし、それ以降、独特な文体と世界観で人気を博している作家・森見登美彦。中でも、特徴的なのが、実在の地名や場所などを舞台にした「京都作品」と呼ばれている作品群です。

森見氏自身、京都大学出身であり、京都に住んでいたという事もあり、そのリアルな描写とファンタジーな世界観がうまく融合された京都作品は、多くの読者を魅了しております。今回は、「有頂天家族」「四畳半神話大系」などから森見作品に魅了された筆者が森見作品を15選、ご紹介いたします。

大きく分けて、「京都が舞台の作品」、「ファンタジー作品」、「その他の作品」の3項目に分かれておりますので、ぜひ興味の持てる作品を見つけていってください。

京都が舞台の作品

四畳半神話体系

読んでみて

2005年に太田出版から初版が刊行された学園青春小説。京都大学3回生の主人公「私」が、1回生の時に選んだサークルによってどんな人生を歩んでいたのだろうかと思案し、最終的には並行世界を横断することになるという物語。

主人公の下宿先である下鴨幽水荘のほか、五山の送り火や鴨川など京都の地名が多数登場し、個性的な登場人物や、サークル、組織などが登場する作品となっています。森見作品初心者の方には、森見作品がどんな雰囲気なのかを掴む作品としておすすめです。

みんなのレビュー

再読。絶妙な語り口で進められる並行世界物。最終話にあるように、ある一点での小さな自己選択が生活に影響するのだろう。 そういった観点では、私もこの本を大学時代に読んでいなければ主人公に感化され、性格もここまでねじ曲がらず、今頃ふはふはとした黒髪の乙女と懇ろの仲になっていたと思われる。

読書メーター

有頂天家族

読んでみて

2007年に幻冬舎から刊行されたコメディ御伽小説。下鴨神社の糺の森に住んでいる狸の名門・下鴨家の三男の主人公・下鴨矢三郎と下鴨家が、狸界の頭領「偽右衛門」を巡る陰謀と困難に立ち向かって行く物語。

矢三郎などの狸や矢三郎の師匠である赤玉先生など、普通の人間界に狸や天狗が溶け込んで生活しております。また、狸側の宿敵として狸を食らうことを生きがいとする「金曜倶楽部」など、個性的な登場人物が織りなすテンポのいいドタバタ劇が特徴的な作品です。

みんなのレビュー

タヌキと天狗の話です、終わり…にしちゃだめかな。まあ相変わらずの京都感と奇抜感でコミカル多めに、かつちょうどよいシリアスさでタヌキの一家の奮闘を描いている。非現実感満載だし、タヌキ間の抗争ってもう人間にとってはなんの関係もないし、むしろこの話で出てくる人間はわりと残酷系なんだけど、読んでてハラハラするし、結局は個々のタヌキに感情移入しちゃうからやっぱりすごい物語よね。

読書メーター

聖なる怠け者の冒険

読んでみて

朝日新聞の夕刊にて連載されていた作品で、2013年に朝日新聞出版から刊行された長編小説。突如として京都の町に現れた、狸の面をかぶった「ぽんぽこ仮面」。その後継ぎとして選ばれた社会人二年目で怠け者の小和田君は困惑し、断ろうとするのだが…という物語。

祇園祭を舞台にした物語で、京都の様々な場所を駆け巡りながら、なんとか怠け者を貫こうとする小和田君が抗うというコメディタッチなストーリーとなっております。また、「有頂天家族」や「宵山万華鏡」とリンクする部分もあるので、合わせて読むと、より面白く感じると思います。

みんなのレビュー

今年の祇園祭はこの本で補完しておきます…。主人公は怠け者の(正確に言うと、内なる怠け者の声に逆らわない)小和田(こわだ)君。そして、多分、1番活躍してた週末探偵玉川さん。あと、ぽんぽこ仮面。 北白川ラジウム温泉、スマート珈琲、京都タワー地下の大浴場!(個人的に)懐かしい京都がいっぱい。 『宵山万華鏡』『有頂天家族』ともリンクしてて楽しい。

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夜行

読んでみて

2016年に小学館から刊行された森見氏デビュー10周年記念作品。学生時代に英会話スクールに通っていた6人は、10年前に鞍馬の火祭りを訪れた時に失踪した長谷川さん。10年後、もう一度5人は鞍馬に集まり、長谷川さんを探すのだが、その時に、それぞれが体験した不思議な経験を話し出し…という物語。

これまでのコメディ作品と比べ、ホラー要素が強い物語となっているのが特徴的な作品です。また、京都が舞台となっていますが、尾道、奥飛騨、天竜峡などの他の場所が登場し、より広い情景を思い浮かべることが出来る作品となっています。

みんなのレビュー

これまで読んだ森見作品は、「コミカルな日常からスタートし、わずかな違和感から、異世界への隙間が現れ、ついにはその世界へ」というものでした。本作は、コミカル要素が一切なしで、ホラー風味。学生時代に姿を消した長谷川さん。久々に集まった当時の仲間で話す、旅先の怪異譚。画家・岸田道生「夜行」という連作絵画をキーにしながら、話は進んでいく。ミステリではないので、謎が明かされるのてはなく、物語はどこまでも続いていく。森見登美彦のイメージと「熱帯」の違いが不思議に思ってましたが、こういう作品が間にあったんですね。納得。

読書メーター

宵山万華鏡

読んでみて

2012年に集英社文庫から刊行されたファンタジー小説短編集。祇園祭が開かれている京都・宵山の夜に、怪しげな世界が開き、様々な人物が誘われそうになる物語。小学生の姉妹が、紅い浴衣の女の子達に誘われる「宵山姉妹」、何度目を覚ましても同じ宵山の朝を迎える「宵山迷宮」などが収録されています。

一見すると華やかに見える宵山の祭りですが、その裏では色々なものが蠢いているかもしれない…というファンタジー色の強い作品となっております。読むことで、より宵山の祭りを見物したくなるかもしれませんね。

みんなのレビュー

不思議な宵山の物語。宵山で見かける赤い浴衣を着た女の子に決してついて行ってはいけないよと孫娘には教えるつもりです。宵山から抜け出せないでいる人々。京都の夜の町はそんな恐ろしいことが潜んでいる気がします。

読書メーター

ファンタジー作品

夜は短し恋せよ乙女

読んでみて

2006年11月に角川書店から出版されたファンタジー作品。本名不明の腐れ大学生である「先輩」とその後輩である「黒髪の乙女」の2人の視点で描かれる物語で、同じサークルである「詭弁論部」などを舞台にした恋物語。

テンポのいい掛け合いと、目まぐるしく変わる展開で、なんとなく読んでると置いてかれてしまうのではないかというスピードで物語が展開していくのが特徴的な作品です。2017年には星野源さん主演でアニメ映画化されている人気の高い作品となっております。

みんなのレビュー

落語のようなテンポと漫画のような出来事の間に現実的な地名が出てくる不思議な話。黒髪の乙女と会うために計画を練る先輩と素瀬に気づかないおんなのこ。学園祭のイベントでは複雑な話がSF的であり、ありえないことがテンポよくすすむ。また個性的な登場人物の構成と高尚な語彙が作品の品を下げず、難解でもなく楽しめた。

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ペンギンハイウェイ

読んでみて

2010年5月に角川書店から刊行されたSF小説。主人公である小学4年生の男の子・アオヤマ君の住んでる街に突然、ペンギンの大群が出現し、その原因がアオヤマが通う歯科医院のお姉さんがペンギンを出現させていたことが判明し…という物語。

上述で紹介した作品以上にファンタジー色強めな作品となっており、読み進めていくうちに、幼少期の妄想していた日々を思い出すのではないでしょうか。また、2018年にアニメ映画化されており、そちらでは、よりファンタジーな映像表現を楽しむことが出来ます。

みんなのレビュー

どうにもならない、理不尽なこと、それも世界の果てなのだ。 世界の果てはずっと遠くにあるのでなく日常に折り込まれている。 こどもはこんなふうにある日突然、大人への階段をのぼる。 それにしてもペンギンが突飛すぎて、ラスト直前まで一体何の話なのか心配しながら読んだ。 でも読み終わった途端に少年が愛おしくなった。

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太陽の塔

読んでみて

2003年に新潮社から刊行された森見氏のデビュー小説。京都大学農学部の5回生である主人公の森本こと私は自主休学をしており、かつての恋人である「水尾さん」の研究に没頭しており、彼女の行動を観察しているのだが…という物語。

大学生特有の捻じ曲がった愛情や捻くれた感性などが如実に描かれております。また、本作は第15回ファンタジーノベル大賞を受賞した作品であり、様々な作家からも高評価を得ております。

みんなのレビュー

森見さん特有の言い回しが独特で引き込まれた。ユーモアに溢れつつも水野さん?(名前を失念してしまった)との甘酸っぱい思い出を回想するシーンはどこか切なかった。所々に学識が感じられる。

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郵便少年

読んでみて

2011年にほっと文庫から書き下ろされた短編小説。主人公のアオヤマ君は赤くて四角い郵便ポストと郵便屋さんが好きな小学3年生の男の子で、歯医者で出会ったヒサコさん、同級生のハセガワ君と言った人達と仲良くなり…という、物語。

ペンギンハイウェイの主人公であるアオヤマ君の1年前の物語であり、既にペンギンハイウェイのような豊かな想像力を持っていたんだなと言うのがよくわかる物語となっております。ペンギンハイウェイと合わせて読むことで、より温かい気持ちになるかもしれません。

みんなのレビュー

ペンギン*ハイウェイを読みたいと思い、長年積んどいた本作を先駆けて読んだ。森見さんの書く少年はとてもいい。非常にいい。まさに見所のある少年である。他の登場人物も、クセがある人でも見所のある少年と係わるといい人となる。相対する人は自分の鏡なんだよね。わかっちゃいるが、社会で居心地よく過ごすのはなかなかに難しい。今日からまた精進せねば、と思わせてくれた32ページだった。

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熱帯

読んでみて

2018年に単行本が刊行されたファンタジー小説。「汝にかかわりなきことを語るなかれ――」という書き出しで始まり、誰も結末まで読んだことがない小説「熱帯」という作品を巡り、作品に隠された謎を解き明かそうとする物語です。

作品の構造がとても難しいものとなっており、読み進めているうちにいつの間にか違う人の視点になっていたりと、初心者の方には難しい作品かもしれません。ですが、もう一度、本に隠された謎を理解したいという事で何回も読み返したくなる作品となっております。

みんなのレビュー

読後にすぐに読み返したいと思ったのは、『熱帯』が初めてかもしれない。はじめは作者自身の話のようだったのに、いつの間にか話し手が変わっていたりして、一読しただけでは細部がぼやける。(それでも十分面白いし、むしろそれが面白いのかもしれないが)それくらい作り込まれてる印象。とても面白かった。

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その他の作品

きつねのはなし

読んでみて

2006年に単行本が刊行された連作短編集。全4作からなる短編小説で構成されており、一乗谷の小道具店・芳蓮堂のアルバイトが体験した不思議な出来事の「きつねのはなし」、一乗谷の先輩の秘密に迫る「果実の中の龍」、祖父の家宝にまつわる「水神」といった作品が収録されております。

これまでの作品に比べ、独特な古めかしい言い回しなどが登場しない作品となっております。また、4作に明確なつながりはないのですが、どこかのお話に登場した要素が登場するなど、ちょっとした繋がりがあることを表しております。

みんなのレビュー

古都京都の夜のにおい香るような怪しい奇談四編です。その中でも表題の「きつねのはなし」話が一番好きでした。「何も差し出してはいけません」という禁を破り、物を渡してしまったことから少しずつ何かを失ってゆく、現実と虚構の狭間を行き来するようなぼんやりとした感じが良かったです。この怪しげな雰囲気を味わうために何度でも繰り返し読みたい一冊です。

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新釈 走れメロス

読んでみて

2007年に祥伝社から刊行された短編小説集。名作文学作品を現代に置き換えた作品となっており、太宰治の「走れメロス」、中島敦の「山月記」、芥川龍之介の「藪の中」、坂口安吾の「桜の森の満開の下」、森鴎外の「百物語」の5作品が収録されております。

いずれもパロディ作品として原作を知らなくても楽しめる内容となっており、この作品をきっかけに元の作品を読んでみる、といった楽しみなどがあります。

みんなのレビュー

あとがきで、「名の知られた古典的短編の中から、読んで何かを書きたくなったという基準で選んだ」との事で、『山月記』虎ではなく天狗斉藤、『藪の中』誰が殺したかじゃなくて何でこれを撮ったか、『走れメロス』詭弁論部存続をかけ図書警察に追われる芽野と桃色ブリーフ、『桜の森の満開の下』男と女と桜と斉藤と、『百物語』鹿島さん?。名作も森見ワールドへ。斉藤とその大学の友達らと、「一乗寺杯争奪戦」麻雀、小説を書く人たち。大学は京都だったから、茅野が走り回るのが目に浮かぶようだった。京都、久しぶりに行きたいです。

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四畳半王国見聞録

読んでみて

2011年に新潮社から初版が刊行された短編小説集。大学生活をこじらせた結果、四畳半王国を建国した「余」による物語。凡人を目指す非凡人の集いである「大日本凡人會」、世界を四畳半化することを狙う団体「四畳半統括委員会」などの物語が収録されております。

「四畳半神話大系」の続編ではありませんが、他の森見作品のキャラらしき人物が登場したり、お得意の並行世界を横断するなど、森見作品の魅力とらしさが、存分に詰まった作品となっております。

みんなのレビュー

京都を舞台とした、学生たちのくだらなくも明るい小説集です。 森見さんの本を読んでいると、京都で大学生活送るのも良かったなあと感じますね。 なんせ、大学もイッパイあるし、学生たちが過ごしやすい雰囲気もあるしなあ。 最近の外国からの旅行客が多すぎてどうなったかは知らんけど。 もしもう一度大学生活をやり直すとしたら、もっとちゃんと勉強すると思います。だって学生の本業だもの!

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四畳半タイムマシンブルース

読んでみて

2020年にKADOKAWAから刊行された小説。下鴨幽水荘に住む「私」は、ある夏の日にクーラーのリモコンを水没させてしまい、リモコンを取り戻すため、タイムトラベラーの悪友の力を借り、昨日へと戻るのだが…という物語。

アニメ版「四畳半神話大系」や「ペンギンハイウェイ」で脚本を務めた劇団「ヨーロッパ企画」の代表作、「サマータイムマシンブルース」を原案にした作品で、映画の「サマータイムマシンブルース」を見てから読んでも、より楽しめる作品となっています。

みんなのレビュー

森見登美彦の京都ぐるぐる案内

読んでみて

2014年に新潮社から刊行されたエッセイ本。森見作品の様々な舞台となった京都を、森見作品と共に紹介する紀行文的な作品となっております。また、随筆が2編も収録され、森見氏の京都への愛情が深く知れる一冊となっています。

もし、京都へ行く機会があれば、この本を片手に様々な名所を巡りながら、森見作品に思いを馳せてみてはいかがでしょうか。

みんなのレビュー

落ち着いたら、この本を片手に京都に行くんだ。 行ったことのある場所、ない場所。登美彦氏の小説に出てくるキャラクター達に想いを馳せながら、ぶらぶら散歩する日を夢見るばかりである。 来月の連休、行くことができたらいいな。

読書メーター

まとめ

独特の言い回しや個性的な捻くれた登場人物などが魅力的な森見作品は、何回でも読み返したくなるのが特徴的な作品です。「読むのに時間がかかりそう」「理解が難しそう」と思う方は、短編小説集から入ることをおすすめします。

また、アニメ化されてる作品も多数あり、そういった作品から森見作品の世界観などに慣れていくのもいいかもしれません。この記事をきっかけに、森見登美彦作品に興味を持って頂ければ幸いです。

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