歴史上の重要人物や芸術家、作家など、様々な分野で歴史に名を残した人々の中には、意外にもギャンブル好きだった人物が少なくありません。近年は、信用できるオンラインカジノの登場や公営競技のインターネット販売により、賭け事がインターネットを通じて手軽に楽しめるようになり、その形態が大きく変化しました。しかし、戦略的な思考や交渉力を駆使して駆け引きを楽しむという魅力は、昔も今も変わらず多くの人々を惹きつけています。そこで今回は、ギャンブルを愛した歴史に残る著名人たちの中でも、特に誰もが知る皇帝や王族、芸術家たちをご紹介します。
アウグストゥス(初代ローマ帝国)
ローマ帝国を築いた初代皇帝アウグストゥス(紀元前63-西暦14年)は、内政を整えた偉大な皇帝として知られていますが、趣味の一つがギャンブルであったとも言われています。特に、サイコロとコマを使って遊ぶ「バックギャモン」の原型である「アレア」という遊びを好んだとされています。
ネロ(第五代ローマ帝国)
暴君として悪名高いローマ帝国の第5代皇帝ネロ(37-68年)が、ギャンブル好きであったという確実な史実は存在しません。しかし、彼の過激な性格を反映したギャンブルにまつわる逸話がいくつか残されています。その中に「身分くじ」と呼ばれる残酷な賭けがあります。これは、ネロが強制的に売りつけたくじで、当たれば奴隷は自由の身分を得られましたが、外れた貧民は奴隷身分に落とされてしまうというものでした。
マリー=アントワネット(フランス王妃)
フランス国王ルイ16世の妃であったマリー=アントワネット(1755-1793)は、トランプを使った賭け事に熱中し、多額の負債を抱えたと言われています。彼女の性格や、ルイ16世との結婚生活の不満、フランス宮廷生活への不慣れから、賭博に没頭したのではないかと考えられており、賭博は彼女にとって寂しさや悲しさを紛らわす手段でもあったようです。
ヴォルフガング・アマデウス・モーツァルト(音楽家)
古典派音楽を代表する大音楽家であるヴォルフガング・アマデウス・モーツァルト(1756-1791)は、現金やチップを賭けて楽しむカードゲームに対して並々ならぬ情熱を持っていたことが史料から明らかになっています。
彼は子供の頃から生涯にわたって、少なくとも14種類のカードゲームに熟達し、家族、友人、同僚、支援者、さらには初対面の人々とも積極的にカードゲームを楽しんでいたといわれています。ただし、彼のギャンブル習慣については、今でも完全には解明されていない部分が存在する他、彼が生涯残した高額の負債の使途についても明らかではなく、彼の借金とギャンブルとの関連性については、研究者の間でも議論が続いているようです。
フランシス・ベーコン(画家)
イギリスの画家フランシス・ベーコン(1909-1992)は、ピカソと並ぶ20世紀を代表する巨匠です。彼はギャンブルにも熱中しており、1940年代後半にモンテカルロ滞在中、「カジノ・ド・モンテカルロ」に魅了され、ルーレットを好んでプレイしていたとされています。この影響で借金を抱え、新しいキャンバスを購入できなくなったベーコンは、以前の作品の裏面に絵を描くようになり、この独特な制作スタイルを生涯続けました。彼の芸術には、こうしたギャンブルとの関係も少なからず影響を与えていたと考えられています。
フョードル・ドストエフスキー(小説家・思想家)
19世紀後半のロシアを代表する小説家・思想家であるフョードル・ドストエフスキー(1821-1881)は、『罪と罰』や『カラマーゾフの兄弟』などの傑作で知られる一方で、ギャンブル愛好家でもありました。ドストエフスキーは、特にルーレットに熱中し、しばしば多額の金を失うこともあったといわれています。彼のギャンブル体験は、1866年に発表された彼の代表作の一つである『賭博者』に反映されています。
まとめ
ギャンブルを愛した歴史に残る著名人たちの中でも、特に誰もが知る皇族、芸術家たちをご紹介しました。古代から現代に至るまで、多くの著名人がギャンブルに魅了されてきました。ただし、彼らがギャンブルに身を投じた裏には、個人的な欲求以外にも、当時の時代背景や社会状況をはじめとする様々な理由があったことも事実です。
ギャンブルは彼らの人生に大きな影響を与え、時に財政的な困難をもたらすこともありましたが、一方で芸術家たちにとっては創造性を刺激し、新たな着想を得る機会にもなったようです。また、政治を司る皇帝にとっては、戦略的思考力を向上させる機会としての役割も果たしていたかもしれません。これらの歴史的著名人たちの経験は、ギャンブルの魅力と危険性、そして人間の複雑な心理を映し出していると言えるでしょう。