「浄土宗ってどんな宗教なのか知りたいな」
「浄土宗を開いた法然ってどんな人だったのだろう?」
こんな思いを抱いて本を探してみても、檀信徒向けから研究者向けまで色々な種類の本が出版されていて、何をどこから読み始めればいいのか、途方にくれてしまいませんか?
国宝「法然上人絵伝」が面白く、そこから法然に興味を持って本を探した筆者もかなり悩みました。しかし浄土宗や法然に関する書物はユニークなものも多くて、その世界にあっという間に引き込まれました。そんな筆者選りすぐりのお勧め本を、「入門者向け」「法然を知れる本」「浄土宗を学べる本」という3つのタイプに分けてご紹介します。
入門者向け
法然(図解雑学)
読んでみて
この本は法然について知りたい初心者向けの本として、浄土宗の僧侶から学者まで多くの人が推薦するスタンダードなものです。挿絵や写真が多いので抵抗なく読めるでしょう。わかりやすいと評判で一時絶版になるほどの人気でしたが、重版がかかり、手に入れる機会も増えてきました。
法然の伝記の他、門弟のことや専修念仏の教えについても解説があります。まさに王道を行く入門書です。
みんなのレビュー
仏教の入門書。法然の伝記を通しての鎌倉新仏教の解説がわかりやすい。父の死に直面し、仏門に帰する叔父の「仏教とは」という話しを傾聴した。叔父の話に感銘し、「もっと知りたい」と思い手にしたのがこの本。仏教って深いなぁ…
引用元:honto
法然の編集力
読んでみて
法然は浄土宗の開祖ということを知ってはいても、”開祖” ということの凄さを自分は理解していなかったと痛感した一冊でした。
著者の松岡正剛は、著述家であり編集工学を確立した人としてよく知られています。本書の中で、法然は経典の内容を抽出し編集する力がいかに優れていたかが語られています。松岡正剛だからこその説得力がある話でした。
法然についての著作はいろいろありますが、こういった視点で書かれたものは珍しく、また、浄土宗や法然に詳しくない人でも入りやすい内容です。
みんなのレビュー
800年前の法然上人は、それまでの仏教を、「編集」し直したんだ、という主張に納得。法然の生涯をたどり、思想の形成プロセスを検証していく第1部「法然の選択思想を読む」は、わかりやすさの点で、秀逸だと思いました。
個人的におもしろかったのは、町田宗鳳さんとの対談。3.11と法然。と題する第三部。町田さんは、法然の口称念仏に空海の口密(真言=マントラ)との関連をみている。(P165)
もうひとつ。法然上人は、観想念仏ではなく、口称念仏を立てたけれど、上人ご自身は、観法にたけている、という見方。
「・・・・幻視体験であり、神秘体験ですね。それが確固たる自信につながっている。法然さんは他人には「この修行はやる必要はない」と言っているけれど、自分自身は死ぬまで続けている」(P168)
さらに、念仏は身体感覚、身体行動なんだという指摘。かつては、歩くという行為をはじめ、実によく体をつかう時代であった。身体を使うことは、思想を深めていくこととの条件であった。
「法然さんは声の力に注目して、それを何万遍もリピートすることによってイマジネーションを促進した。」(P172)
法然上人の教えを考えるとき、「ああそうか」 「なるほど」という感じで受けとめられることが大切と思った次第でした。
引用元:アメブロ
法然を知れる本
法然の涙
読んでみて
法然の生涯をフィクションも交えながら綴った小説です。歴史的な事実はともかく、物語としてとても面白く、引き込まれます。
著者の町田宗鳳は大徳寺で修行後、アメリカの大学に進学するという異色の経歴を持っています。大学の卒論で法然を扱ったそうで、法然への強い思い入れが、この小説に溢れている気がしました。
みんなのレビュー
歴史について、書かれたものというと、その依拠するところは、そのことについて書かれた「史料」であることについては、論を待たないと個人的には思います。そうした制約を超えて、自身の考え方や思いを伝える手法として、町田氏は小説という手法を考えた。
ご存じのように、町田宗鳳氏は宗教学者。こういうのって、ありかな、と思います。
小説という手法は用いないまでも、似たようなやり方をとっているのが、井沢元彦氏であると思います。ともすれば、無味乾燥といえば、書かれた学者の方には失礼にあたるかもしれませんが、小説に落とした方が腑に落ちるというか、しっくりくるケースが本書だと思います。
法然の生涯、そしてその考え方を理解していく第一歩目として読まれるといい小説だと思います。これを足掛かりに、徐々に専門的な記述のものにシフトしていけばよい、と思います。
私は以前、新書である学者の方のものを読みましたが、匙を投げにかかりました。小説だと、とっつきやすいと思います。入門用に小説もあり、そんな思いを抱いた一冊です。学者の方が書かれた小説もたまにはいかがですか。
引用元:アメブロ
法然の哀しみ 上・下
読んでみて
哲学者である梅原猛の代表作の一つである本書は、法然について掘り下げた、かなり重厚な作品です。
上巻は法然の人生を歴史的背景を交えて捉えています。少年期に負った心の傷が哀しみとなって法然の胸に止まっていたからこそ、浄土宗の開教に至ったという論理がとても興味深かったです。
下巻では浄土宗のリーダーとしての法然の才能について語られた後、法然流罪事件の謎を解くというミステリー調の話になります。日本史が好きな人には特に面白い部分でしょう。
みんなのレビュー
著者が言う様に日本の仏教を見渡せるのが法然である。この言葉の意味は読後に理解できた。骨太な内容であるが味わいながら読み進めて行く内にその意味がおぼろげながら仏教を理解するためにはまず原点に立ち返り勉強するのが正しいと感じさせてくれた。
引用元:honto
浄土宗を学べる本
選択本願念仏集 法然の教え
読んでみて
浄土宗の基本文献と言われている選択本願念仏集ですが、原典は漢語。読みづらくてどうしても手が出ませんでした。しかし宗教学者の阿満利麿が訳したこの本は、現代語訳がとてもわかりやすくて素晴らしいです。
特に巻末のエッセイが秀逸です。これを読むことで、本文の理解の助けになりますし、もし本文が理解できないと思ったら、まずはエッセイだけ読むというのもお勧めです。
みんなのレビュー
学生の立場ならレジュメがつくりやすいだろうと思うくらい法然さんの話の進め方はシンプルだ。
「AかBか」という選択肢からはBを選ぼう、次に立ちあがる「CかDかEか」の選択肢からはCを選ぼう、次の選択肢「FかGか」だったらFを…といった具合に、樹形図が書きやすい構成になっている。補足説明も①②③と丁寧に整えてあって「智慧第一の法然」と呼ばれたのも納得できる。
ただし「Bを選択する理由」については明記されてなくて、どこそこにそう書いてあったから、とあるだけ。ここらへんに法然さんの宗教的飛躍があるのかなと思った。
引用元:読書メーター
南無阿弥陀仏と南無妙法蓮華経
読んでみて
題名に惹かれて手に取った本です。「南無阿弥陀仏」も「南無妙法蓮華経」も、信者でなくとも耳にしたことのあるフレーズですが、だからと言って何がどう違うのかまではよく知らないなあと思って読み始めました。
信仰に関係なく、純粋に関心がある人に向けて書かれた、フラットな本で好印象でした。法然と日蓮を比較することで、法然や浄土宗についての理解も深まります。参考文献が多く載っているので、さらによく知りたい場合にもその道標を指し示してくれる本となるでしょう。
みんなのレビュー
法然と日蓮という、犬猿の仲といえる二つの宗派の比較。念仏か唱題か、本地垂迹を肯定するか否定するか、個人が先か国家が先か、現世否定か肯定かなど、対立的な要素は数多くあるが、私には、その違い以上に、既成の顕密仏教に対決した二人が同志に見えてくる。
称える言葉に違いはあれど、最下層の人たちでも、称えさえすれば往生できるんだという「平等性・普遍性」こそ、二人がともに目指したものなのかもしれない。両者の共通点と相違点だけでなく、当時の仏教や社会の状況を見事に分析しているという意味でも、とても勉強になる一冊だった。
引用元:読書メーター
まとめ
気になった本はありましたか?
一番読みやすいのは3番目に紹介した「法然の涙」でしょう。小説なので気楽に読めます。梅原猛や松岡正剛など、好きな作家がいればその著作から手をつけるのもお勧めです。5冊目の「選択本願念仏集」を翻訳した阿満利麿は、本作以外にも法然に関した面白い作品を多く書いているので、興味があれば是非探してみてください。
法然は、日本の仏教を理解する上で欠かせない人物と言われます。法然とその教えを理解することは、日本を知ることにも繋がるでしょう。これらの本がその一助になれば幸いです。