天台宗をよく知れるおすすめ本6選【漫画や小説、学術書まで】

「天台宗って有名だけど、どんな宗教なのかな?」
「比叡山や最澄のことを知りたいけれど、何を読めばいいかな?」

天台宗や比叡山、最澄に関する書籍は、Amazonで検索するとたくさん出てきますよね。しかし何から読んだら良いのか、本のリストを前に呆然としてしまう人も多いのではないでしょうか?

筆者もその一人でした。しかし、アプローチの仕方を工夫したことで、天台宗を知る読書の世界に踏み込むことができました。ここでは筆者がお勧めするアプローチ方法を、「漫画・小説編」「写真編」「学術書編」の3つの段階に分けてご紹介します。

漫画・小説編

阿・吽

読んでみて

永遠のライバルとも言われる最澄と空海の世界を描いた、評判の高い漫画です。仏教にも日本史にも興味がない人でさえ、「阿・吽」ワールドに夢中になる人が続出しています。逆にいえば、最澄や空海に少しでも関心がある人は、嵌ってしまうこと請け合いの作品とも言えます。

漫画とはいえ時代背景もきっちり描かれているので、興味はあってもほとんど知識がないという人には格好の学習材料にもなるでしょう。画の力が知らず知らずのうちにぐいぐいと物語の世界へ引き込んでくれます。

個人的には、何もかも飲み込むようなスケールの大きい空海に比べて最澄の純粋さが切なく感じられ、胸を打ちました。

みんなのレビュー

比叡山延暦寺の開祖、伝教大師最澄と、高野山金剛峯寺の開祖、弘法大師空海の仏教二大巨頭の、苦悩の物語。どっちかというと、最澄は、理知的空海は、動物的な感じ。

でもどちらがいい、悪いではなく、疫病流行したり、世の中が荒廃していた時代に、仏教は果たして何の役に立つのだろうか?という困難な問いに、二人とも、自分なりのアプローチで、挑んだ末に、唐に渡るという結論を得た。それがすごいと思う。

おかざきさんの華麗な絵と相まって、すごい迫力で、彼らが私の心を駆け抜けた。すげぇよ~‼

引用元:読書メーター

雲と風とー伝教大師最澄の生涯

読んでみて

永井路子が吉川英治文学賞を受賞した作品。小説という形態を取っていますが、歴史的な解説が多く書かれているので、天台宗や最澄を知るのにとても良い本です。学術書を読むのは尻込みしてしまうけれど、きちんと知りたいという人には最適でしょう。

紙の本は手に入りづらいようですが、電子書籍では読めます。また、「永井路子歴史小説全集第3巻」にも収録されていますので、図書館などで探す時には参考にしてください。

みんなのレビュー

地味なタイトルだが大著であった。天武系から天智系への交替、奈良から京都への遷都、小乗仏教から大乗仏教へ、さらには密教の導入という激動の時代に、国家を守護する仏教として天台宗を完成させようとする最澄の人生が描かれる。

空海とのライバル関係も面白い。歴史は常に2人の才能を競わせるものなのだ。いや、競合があってはじめて歴史になると言うべきか。

引用元:読書メーター

写真編

伝教大師最澄の寺を歩くー比叡山延暦寺を中心に、最澄ゆかりの地へ

読んでみて

文字ばかり読んでもなかなか理解できないものですが、写真を見ると内容がすっと頭に入ることがよくあります。天台宗も、総本山である延暦寺を “見る” ことで身近に感じられるように思いました。写真を眺めているとついつい行ってみたくなります。

この本には最澄の生涯や天台宗の教義についても触れられています。気軽に手に取りやすい点がお勧めです。

みんなのレビュー

行く前にも最澄に関する本を読んだが、やはり帰ってきてから読むとココ行った、そうだったのか!とちょっと感動。宗教と思うとハードル高くなるが、この本は写真も多く、言葉もさほど難しくないので読みやすい。

引用元:読書メーター

天台密教の本ー王城の鬼門を護る星神の秘儀・秘伝

読んでみて

密教に興味がある人には是非読んでほしいです。真言宗系の東密との解釈の違いも説明されています。現在はチベット周辺と日本にしか残っていない密教は、秘密の仏教として窺い知ることが難しいものですが、この本で少し垣間見られるかもしれません。

真言密教についての本は書店にもよく並んでいますが、天台密教に関する著作は少なく、とても貴重です。販売が終了しているために手に入りづらいのが残念ですが、古書で手に入れるか、県立図書館など大きな図書館であれば所蔵しているところもありますので、探してみてください。

みんなのレビュー

この本の後半に記された諸尊の修法に関する記述が非常に充実しており、ぜひ一読を薦めたい。

最も興味深いものは阿弥陀如来に関する記述で、天台宗の教えでは浄土系宗派とは異なり極楽浄土はあくまで菩薩になるための通過点に過ぎず、やがて釈迦如来の霊山浄土へ至りそこからさらに現世へ再度転生することになるということや法華経の功徳で極楽浄土に往生できるという一見無関係そうなところにおいても意外な「つながり」があることを匂わせることも記されており、法華経を教条主義的に解釈する方々や現世を諦め来世に期待するという方々にとっては少し耳の痛い話だと思わずにやけてしまった。

引用元:honto

学術書編

比叡山延暦寺はなぜ6大宗派の開祖を生んだのか

読んでみて

ブラタモリの比叡山の回でも似たような話が出ていましたが、日本の歴史の中で、比叡山で学んだ高僧が次々と新しい宗派を生み出していることは、注目すべき点だと思います。

この本ではその理由を筆者なりの論理で述べていて、興味深いです。天台宗の持つ特殊さがよくわかります。

みんなのレビュー

井沢元彦が『逆説の…』で、「金剛峯寺は密教単科大学、延暦寺は仏教総合大学」と例えていたのを思い出しました。

真言宗では、密教への研究に集中して、仏の教えをより探る方向へすすみ、天台宗では、法華経を第一としつつも四宗兼学の道場として、禅・戒・念仏・密教の要素も含んだ立場で仏教をとらえていたので、宗教的に拡散する余地があったということでしょうか…。

「宗教哲学の進化を考える」ってところなのかしら? 面白いけど難しいなあ。

引用元:読書メーター

最澄と空海

読んでみて

最澄が秀才型で空海が天才型とよく言われますが、そう評されると最澄はどうしても分が悪くなりがちです。秀才は天才に勝てない、と。しかしこの本では最澄の有能さがしっかり語られていて、最澄を冷静に評価している点が特徴的です。

梅原猛の著作はどれも熱量が大きくて圧倒されますが、この本も然り。まるで最澄と空海を見知っているかのような親しみを込めて書いているので、読者にもその熱い気持ちが伝わってきます。それがこの本の最大の魅力かもしれません。

みんなのレビュー

何冊か空海も最澄も読んでいるが、梅原猛さん独自の見解が他の本に無い面白さ。最澄の項が半分以上を占めるが、同時代に現れた二人をそれぞれの立場からとらえている。最澄は一般的な人と同じく円型人間だが、空海は楕円形人間。これに尽きる。

空海の言動や伝説においての怪しさも梅原猛さんは指摘している。それは空海が怪しいのではなくその伝説を語る側にあろう。語るにも理由もあろう。

その時代の最澄も空海も朝廷との関係性を得るために動いた。空海は張ったりに近いことも言っているであろうが、空海本人がそう言うならそうなんだろうと梅原猛さんは締め括っている。

空海作の仏像がお遍路のお寺や全国にあるがはたして空海が自ら彫ってあのような見事な仏像ができるのか?それもそんなに多く?の疑問も梅原猛さんの論では納得もできそうな気がする。

引用元:https://shooting-tv.at.webry.info/201912/article_33.html

まとめ

読んでみたい本は見つかりましたか?

旅行好きであれば3冊目「伝教大師最澄の寺を歩く」を手に取ると良いですね。これは見ているだけで楽しいです。空海について少しでも知識があるのであれば、6冊目の「最澄と空海」から入っても面白いと思います。

迷ったらまずは1冊目の漫画「阿・吽」を読んでみてください。最澄と空海の生きるこの世界に心を奪われたなら、もうしめたものです。きっとどんな本でも内容が遠くに感じることはなく、読み進められるでしょう。

これらの本をきっかけに、天台宗の世界に触れる、素敵な読書の時間が訪れたら幸いです。