「ルソーの名前は知っているけど、その思想についてはよく知らない!」
「ルソーの本はどれがおすすめ?」
18世紀、ジャン=ジャック・ルソーが『社会契約論』を著し、フランス革命に大きな影響を与えたということは、世界史や倫理の授業で習ったけれど、果たしてどんな思想なのか、その概要は今ひとつ分からない、という方も多いのではないでしょうか?
「自由」と「平等」をとなえ、「近代デモクラシー」の父と呼ばれることもあるルソーを知ることは、私たちが当然のものとして受け止めている民主主義という価値観を改めて見つめ直すきっかけを与えてくれるでしょう。
とはいえ、古典的な思想の名著を読んで深く理解するのは、とても時間がかかる作業になります。そこで、ルソーを知るためのガイダンスとして優れた本を読んで、ルソーの思想に近づいてみてはいかがでしょうか。ここではルソーとその思想を解説し、さらにはルソーの現代的な意味を示唆してくれる書籍をランキング形式で7冊ご紹介します。
この記事を書いた人
一橋大卒 歴史学専攻
Rekisiru編集部、京藤 一葉(きょうとういちよう)。一橋大学にて大学院含め6年間歴史学を研究。専攻は世界史の近代〜現代。卒業後は出版業界に就職。世界史・日本史含め多岐に渡る編集業務に従事。その後、結婚を境に地方移住し、現在はWebメディアで編集者に従事。
7位:人間不平等起源論
読んでみて
光文社から出版されているルソーの著作です。人間不平等起源論は「人間の間にある不平等の起源は何か?」というテーマの懸賞論文なのですが、この論文でルソーは名を知られるようになりました。
ルソーといえば『社会契約論』『エミール』などが有名ですが、この『人間不平等起源論』はそれらよりも短いです。その点で読みやすいといえますが、まずはこの後にご紹介する解説本などを読んでからこちらに戻ってくるのもよいでしょう。
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6位:一般意志2.0 ルソー、フロイト、グーグル
読んでみて
ルソーが「社会契約論」の中で唱えた「一般意志」という概念は、21世紀のいまこそ実現し得るという、斬新な見解が展開される一冊です。ルソーは、国家や民族などの人間集団には、「公」に属する一般意志があると言います。この一般意志は、政治による意識的な合意ではなく、それらの基底を成す、いわば情念あふれる集合的な無意識と位置付けられています。
本書の著者は、ルソーの一般意思を「一般意志1.0」と呼び、インターネット上に格納される膨大な情報を集団的無意識として捉え、これを「一般意志2.0」と位置付けています。
人々の無意識を現代の情報技術を駆使することで可視化し、それを政治に反映することこそが、一般意志の実現につながる
著者は「一般意志2.0」に、成熟と行き詰まりを見せる現代の民主主義を突破する可能性を見出しており、ルソーによって現代社会を相対化する刺激にあふれた一冊です。
みんなのレビュー
ルソーの『社会契約論』を現代の情報技術を前提に読み直し、新しい民主主義の形を考える本。要はインターネットで民衆の一般意志を可視化し、その一般意志をこれまでの間接民主制による熟議の場に投影することにより、これまで閉ざされていた政治の壁を、部屋に居ながらにして通り抜けられるようにできるのではないかという話だと理解した。一般意志が果たしてどのように、またどれほど正確に可視化できるのかは疑問だが、たしかに近い未来のうちに実現できそう。第13章のローティのアイロニーの話が面白かった。
引用元:読書メーター
5位:今こそルソーを読み直す
読んでみて
ルソーの政治社会思想に焦点を当てた本です。「社会契約論」や「エミール」などの主著に即して、「一般意志」というコンセプトの下、理想の社会のあり方を提示したルソーの考え方を明快に論じています。
思想・哲学を論じる場合、どうしても抽象的な議論に傾きがちですが、この本は実例が絶妙に織り込まれ、わかりやすく説明されています。また、ジャック・デリダによるルソー読解やハンナ・アーレントによるルソー批判も整理されており、ルソーを読む際の座標軸を作ることができる一冊です。
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思想整理には定評のある筆者だけに、テンポよくルソーのポイントが示される。例えば、ルソーは、不平等の制度化は三段階で完成というロジックは面白かった。というのも、最近よく読むユートピア(コミューン等)の建設ストーリーのポイントと類似点があるからだ。それは富者と貧者の状態(第一段階)、強者と弱者(第二段階)、そして主人と奴隷(第三段階)という流れが特に顕著。また筆者は、ルソーが不平等論で自然人を我々人間の醜さに失望した我々の「ないものねだり」願望を投影では、という推論部分はユートピアへの希求に直結し面白かった。
引用元:読書メーター
4位:人と思想 14 ルソー
読んでみて
どのような思想も、その思想を作った人物が生きた時代や、関わりがあった人々から多くの影響を受けています。この本は、まずルソーが生きた時代とルソーの生涯を概観した上で、「エミール」・「学問芸術論」・「人間不平等起源論」・「社会契約論」などルソーの主要な著作に即して、その思想をひも解いています。
また附論では、ルソーによる文明批判の現代的意義が論じられています。近代文明が「自由」や「人間性」を抑圧するというルソーの文明批判は、民主主義という概念が当然のものとなったにも関わらず、知らず知らずのうちに自由や平等が侵されているかもしれない現代社会の問題として、見つめ直さなければいけないテーマでしょう。この本は、その入り口にふさわしい一冊となるでしょう。
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重田さんの社会契約論を読んでルソーという人にとても興味がわき、告白を読む前におさらいとして拝読しました。とてもわかりやすくおそらく高校生くらいを想定した平易な文章でわかりやすかったのですが、やはりルソーを味わいたく、次に告白に行きます。 ルソーが生身の人間として感じたところはとても共感ができるのですが、たどり着いた政体論、教育論、男女についてなどさまざまに考えさせられる点がありました。
引用元:読書メーター
3位:NHK「100分de名著」ブックス ルソー エミール 自分のために生き、みんなのために生きる
読んでみて
この本は、ルソーによる教育論「エミール」を軸に、真の民主主義とは何かを読み解いていきます。ルソーが提示する「自由な社会」とはそれを担う人間教育と不可分であり、教育論「エミール」はルソーの思想の根幹に触れる重要な著作です。
自由な社会、民主による自治が成り立つためには、私の利益や私の自由を守るだけでなく、公共の利益を考え実現しようとする姿勢が必要です。そして自分も含めた「みんな」に利益が生まれるルールを作らなければいけないとルソーは考えます。とはいえ人間が「私」中心になりがちなのも事実です。そこで「教育」が大きな意味を持ちます。自分とみんなの利益になることを考える人間をどうやって育てるのか、そして真に自由な人間としてどう生きるかということをテーマに、ルソーは教育論「エミール」を著しました。その「エミール」の現代的な意味を浮き彫りにした本としておすすめの一冊です。
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とてもいい解説書だと思った。『社会契約論』との論理的関係を丁寧に解説してあって、分かりやすいのではないかと感じた。特に、通常の読者に分かりにくいのは「一般意志」の概念なのだが、「公共」の概念と絡めてうまく説明している。「公共」概念の重要性も丁寧に述べられている。読みやすかったのは、まあ、私の思想的方向とよく似ているというのも、あるのだろうけど。
引用元:眼鏡文化史研究室
2位:社会契約論(まんがで読破)
読んでみて
ルソーの「社会契約論」の全4編のうち第1編の1章から6章の内容をもとにした漫画です。フランス革命前の封建的社会を舞台にしたストーリー仕立てで、ルソーの思想を学ぶことができます。歴史的考証などを深く行った漫画ではありませんが、ルソーの思想のアウトラインを知る導入編として読んでみると良いでしょう。
ルソーの思想「自然状態」「一般意志」「社会契約」などの概念が抽象的でとっつきにくいとか、歴史・政治・哲学に対する知識に自信がない場合は、漫画という体裁から初めてみるのも良いのではないでしょうか。この漫画で「社会契約論」のアウトラインをつかんでから、ルソーの解説本や論考にステップアップし、さらには原典に触れることをおすすめします。
みんなのレビュー
Knidle本。ルソーの『社会契約論』をマンガにして分かりやすく噛み砕いたもの。「力でねじ伏せること≠権利」ということを絵と図を使って分かりやすく解説されている。ただ、本書でも記述されているが第一編 第一章「第一編の主題」〜第六章「社会契約について」までしか描かれていない。そのため、「一般意思」について深く知るには少し物足りないものになっているという印象。しかし『社会契約論』の入り口としては正解だと思う。
引用元:読書メーター
1位:ルソーを学ぶ人のために
読んでみて
ルソーを読み解くための入門書にふさわしく、ルソーの生涯をまとめた上で、主要作品の解説が執筆年代順にまとめられています。そのため、ルソーの人物像および著作を網羅的に知りたいというルソー初心者にもオススメです。
また、最新のルソー研究の動向が示されているのがこの本の大きな魅力です。ルソー研究の変遷、そしてルソー研究の今が広範囲にまとめられているので、もう一歩踏み込んでルソーを読んでみたい、ルソーを読むための道しるべが欲しい、ルソー研究のガイダンス的なデータが欲しいという人にもオススメの一冊です。
みんなのレビュー
多面的なルソーらしく幅広い分野の12名の研究者による最近の研究動向紹介。政治思想史や政治理論ではなく、文学・哲学寄りの分析が中心なのは、偶然なのか。ルソーといえば、フランス革命そして民主主義にすぐに結びつけたがる私などにとっては、新鮮ではあるが手強過ぎ。ルソーが語るのではなく、フランス現代思想の哲学的考察の対象としてルソーが語られる。つまり、デリダであり、ドゥールズであり、ラクー=ラバルトの解説って感じ。ルソーはそれだけ奥深いということか。全体像の概観には役立ったが、エミールや告白も読んで立ち戻りたい。
引用元:読書メーター
まとめ
ルソーは「近代デモクラシー」の父と呼ばれ、民主主義的価値観を切り開く突破口になった思想家です。私たちは今、民主主義をあたりまえのものとして受け止めていますが、その「あたりまえ」を相対化してみると、今まで見えていなかったものに気づくかもしれません。
近代民主主義・自由・平等ということについて、ちょっと立ち止まって考えてみるならルソーの人となり、生きた時代、その思想をわかりやすくまとめた書籍をガイダンスに、一度は近代の父であるルソーの思想に立ち返ってみてはいかがでしょうか。