「樋口一葉が五千円紙幣の肖像に選ばれた理由は?」
「五千円紙幣の肖像が樋口一葉になったのはいつ?」
「樋口一葉以前の五千円紙幣には誰が選ばれていたの?」
樋口一葉が五千円札の肖像に選ばれた経緯に関して、以上のような疑問をお持ちの方も多いのではないでしょうか?
樋口一葉は「たけくらべ」「にごりえ」「十三夜」といった作品を執筆し、24歳という若さでこの世を去った明治時代の小説家です。
そんな彼女がなぜ五千円紙幣の肖像に選ばれたのか?あるいは、樋口一葉の他に、五千円紙幣にはどんな人物が選ばれてきたのか?など、樋口一葉と五千円札にまつわるお話を、わかりやすくお伝えしていきます。
この記事を書いた人
一橋大卒 歴史学専攻
Rekisiru編集部、京藤 一葉(きょうとういちよう)。一橋大学にて大学院含め6年間歴史学を研究。専攻は世界史の近代〜現代。卒業後は出版業界に就職。世界史・日本史含め多岐に渡る編集業務に従事。その後、結婚を境に地方移住し、現在はWebメディアで編集者に従事。
樋口一葉が五千円札に選ばれた理由とは
そもそもお札に選ばれる人の条件は?
では最初に、樋口一葉が五千円紙幣に選ばれた理由をみていきましょう。その前段階として、そもそも紙幣の肖像画に選ばれる人物にはどのような条件があるのか解説いたします。
そこで、まずは日本の財政を司る財務省が公式ホームページにで発表している「紙幣に描かれている肖像画の基準」について確認してみましょう。
紙幣は、老若男女すべての人が使用するものであることから、学校の教科書にも登場するなど、一般に良く知られており、また、偽造防止の目的から、なるべく精密な人物像の写真・絵画を手に入れられる人物であることなどを基準に、採用しています。
出典:財務省公式ホームページ
このような基準で、紙幣の肖像を選んでいます。では樋口一葉が、この条件に当てはまっているのか見てみることにしましょう。
知名度がある人物
樋口一葉は近代の小説家として歴史的にも貴重な人物です。さらに、彼女の残した作品が注目され、その代表作である「たけくらべ」などが、国語の教科書に採用されるケースも少なくありません。
また、その作品は文庫化されていたり全集になっていたりと、現代でも気軽に読むことができます。そういった意味では、一定の知名度を持っているのは間違いなく、紙幣の肖像に選ばれる資格を満たしていると言えますね。
精密な肖像画が残っている人物
そしてもうひとつ、「精密な肖像画が残っている」という観点です。これに関しては、実際に五千円札にその肖像が採用されているので、きちんとした顔を確認することが出来ますね。しかし、樋口一葉を採用するにあたり、ちょっとした問題があったようなので、そのエピソードをお伝えします。
財務省のホームページもある通り、紙幣の肖像には「偽造防止の目的から、なるべく精密な人物像の写真・絵画を手に入れられる人物」が求められます。このような理由から、比較的顔の皺か多く(肌の凹凸が大きく)、髭が生えている男性の顔は紙幣の肖像に向いています。その方が偽造が困難だからです。
一方、樋口一葉は若くして亡くなっていることから顔の皺が少なく、女性なので髭も生えていないため、偽造防止用の肖像を起こすのに手間取り、製造開始が遅れることになってしまいました。
五千円札の肖像が樋口一葉になったのはいつ?
では、樋口一葉はいつから五千円札に採用されているのでしょうか?五千円紙幣の肖像が新渡戸稲造から樋口一葉に切り替わったのは平成16年(2004年)11月1日発行分からです。
女性が紙幣の肖像に採用されたのは、明治14年(1881年)の神功皇后(じんぐうこうごう)以来123年ぶりでした。なお、令和6年(2024年)をもって、五千円紙幣の肖像は津田梅子という教育者に切り替わる予定となっています。
これまでに五千円札に選ばれた偉人たち
樋口一葉を含め、これまで五千円札には計3名に人物が選ばれてきました。そして、今後選ばれる人物を合わせると計4名の人物が五千円紙幣の肖像を飾っています。実際にどんな人物が5千円札の肖像に選ばれてきたか見て行きましょう。
聖徳太子
昭和32年(1957年)10月1日から、昭和61年(1986年)1月4日までの約29年間は、聖徳太子が五千円札の肖像として採用されていました。これが日本における初の五千円紙幣です。
なお、聖徳太子の肖像は、昭和33年(1958年)12月1日から、昭和61年(1986年)1月4日まで一万円紙幣に、さらには昭和25年(1950年)1月7日から、昭和40年(1965年)1月4日まで千円紙幣の肖像にも採用されていました。
新渡戸稲造
昭和59年(1984年)11月1日から、平成19年(2007年)4月2日までの約23年間は、新渡戸稲造が五千円札の肖像として採用されていました。また、新渡戸稲造と同時期に紙幣となった千円札の夏目漱石、一万円札の福沢諭吉らを含め、このタイミングで文化人が紙幣の肖像に選ばれるようになっています。
なお、この時すでに樋口一葉を始め、紫式部や清少納言、与謝野晶子といった女性文化人を採用する案があったのですが、紫式部と清少納言は精密な肖像画や写真が残っていないこと、与謝野晶子は孫が当時の国会議員であったこと、樋口一葉は若くして亡くなっていたことなどから、この案は見送られることになりました。
津田梅子
樋口一葉に変わり、令和6年(2024年)より発行予定の五千円紙幣です。樋口一葉に引き続き、五千円紙幣には女性が選出されています。なお、同じタイミングで一万円紙幣が福沢諭吉から渋沢栄一へ、千円紙幣が野口英世から北里柴三郎へと変更になる予定です。
樋口一葉と五千円札に関するまとめ
いかがでしたでしょうか?樋口一葉が五千円紙幣に採用されたのには、それ相応の理由があったのです。昨今は現金を使用することが少なくなってきましたが、やはり紙幣の肖像が変わるとなれば、新たに誰が採用されるのか気になるものです。
樋口一葉を始め、現在の紙幣が使われるのも残り数年。そう考えると少し寂しい気もしてきますね。最後まで読んでいただきありがとうございました。
納得できる