初心者でも楽しめる落語のおすすめ【落語家、作品、演目など】

「初めてでも楽しめる落語ってどんなのがあるの?」
「おすすめの落語家を教えてほしい!」
「おすすめの落語の演目や作品って何があるの?」

客席から見た落語の高座風景

近年、若い女性を中心に「落語」が秘かなブームとなりつつあります。特に、アニメなどがきっかけで、若い落語家の独演会に女性のファンがたくさん来場されるなど、一部で話題となりました。しかし、いきなり落語を見ようと思ってもどんな落語家や作品、演目から見ればいいかわからない人もいますよね。

今回は卒論で落語について記述するほどの落語好きである筆者が、おすすめの落語についてご紹介いたします。初心者の方におすすめな落語家や演目、落語を題材にした作品なども紹介するので、少しでも興味を持っていただければ嬉しいです。

落語とは

都内にある代表的な寄席の一つ・新宿末広亭

そもそも「落語」とは、江戸時代頃に誕生した話芸の一つで、話に「落ち」が付く、というのが特徴的な芸能の一つです。起源は江戸時代初期までさかのぼり、京都の僧侶だった安楽庵策伝という人物が、様々な笑い話である『醒睡笑』を大名などに披露しました。このことから、安楽庵策伝は「落語の祖」と呼ばれています。

その後、元禄頃になると大阪や京都などで本格的に話を商売として披露する「噺家」が誕生し、現在の「落語家」と言われる人物が登場します。

世間一般的な落語家のイメージ

さて、初心者の方でも知っておきたい違いとして挙げられるのが「江戸落語」と「上方落語」です。江戸落語は、シンプルに座布団の上でセンスと手ぬぐいのみを使って演じられる落語となっています。多くの方が一度はテレビなどで見かけたことはあるのではないでしょうか。

上方落語で使用される見台・膝隠

一方で、上方落語は「見台」と呼ばれる台の前に座り、「小拍子」を使って陽気に演じる、といったタイプの演目もあります。また、江戸落語と上方落語で話の内容は同じなのに、落とし方が違うといった細かな違いがあるのです。徐々に好きになっていくうちに、そうして細やかな違いを見つけるのも楽しいかもしれません。

初心者にもおすすめ落語家10選

江戸落語家5選

三代目古今亭志ん朝

三代目古今亭志ん朝

名人・五代目古今亭志ん生の次男であり、10代目金原亭馬生を兄に持つという落語一家の下で生まれた本名・美濃部強次こと古今亭志ん朝師匠。父の志ん生の弟子となり、5年目にして真打昇進というスピード出世を果たすなど、落語界で今もなお、伝説の落語家として有名な人物です。

早口でまくし立てる江戸弁や、聞いているだけで表情豊かな人物が思い浮かぶ演じ方と、初心者の方にとってはとても聞きやすいおすすめの落語家さんです。その中でも筆者が好きな演目は、父の志ん生師匠から受け継がれた『火焔太鼓』、表情豊かな『宿屋の富』、そして人情噺の『唐茄子屋政談』です。

七代目立川談志

七代目立川談志

演芸番組『笑点』の立ち上げ、参議院議員、落語立川流を立ち上げるなどその破天荒な振る舞いから現在で語り継がれる有名な落語家の1人です。上記の古今亭志ん朝や、笑点の司会で有名な五代目三遊亭円楽などと並び、「江戸落語若手四天王」と並び称されておりました。

談志師匠の枕(導入部分)や噺には、際どいブラックジョークや政治ネタなどが盛り込まれているため、初心者には少し難しいかもしれません。ですが、そそっかしい人物が自分が死んだことに気付かずに混乱していく「粗忽長屋」や、歴史を知らなくても楽しめる「源平盛衰記」、元は講談の人情噺である「人情八百屋」など、一度聞いておきたい名作の一席となっています。

桂歌丸

桂歌丸

歌丸師匠は落語芸術協会の会長を務め、地元の横浜には、大衆芸能専門館である「横浜にぎわい座」の設立に関与し、様々な方面から落語を支援し続けた落語家です。また、演芸番組「笑点」の五代目司会者としても有名であり、番組開始当初から出演し続けた功績から永世名誉司会として、現在でもOPのアニメーションに登場しております。

歌丸師匠の十八番として有名な演目が『つる』です。慌て者の八五郎が、ご隠居さんから聞いた「鶴」の由来を他の人にも聞かせてやろうとするも失敗してしまうという演目で、最も歌丸師匠が得意としたネタでもありましたので、ぜひ聞いてほしいおすすめの一席です。

また、幕末の名人と呼ばれた三遊亭圓朝が創作して以来、誰もやったことがなかったという5時間にもわたる大作『真景累ヶ淵』を1週間かけて全演目を演じたという非常にパワフルな人物でもあったのです。

六代目三遊亭圓楽

六代目三遊亭円楽

以前は三遊亭楽太郎という名前だったのですが、2010年に還暦を迎えるという事で、六代目の三遊亭円楽を襲名。青山学院法学部卒というインテリキャラを生かしながら、「笑点」メンバーでは腹黒いがゆえに友達がいないというキャラとして、お茶の間にも親しまれている落語家の1人でもあります。

円楽師匠は、古来の言葉を現代語訳したうえで噺を披露してくれるので、初心者の方でも噺が頭に入ってきやすいのでおすすめの落語家さんとなっています。中でも、筆者が好きなのは人情噺の『芝浜』です。芝浜は先代の円楽師匠も得意としていた演目で、夫婦の愛情にあふれた内容になっています。他にも数多くの高名な落語家さんが披露されている演目なので、聞き比べてみるのもいいかもしれません。

林家たい平

林家たい平

2000年に真打に昇進し、2004年から師匠である林家こん平師匠の代役として「笑点」に出演。2006年に正式レギュラーに昇格し、現在もオレンジの着物で、ものまねや動きネタなど他のメンバーと比べ派手なネタを披露しております。その一方では、持ち前の歌唱力の高さからCDデビューするなど多方面に活躍をされている落語家です。

たい平師匠は、子供向けのCDや絵本など出版され、落語初心者の子供たちや親子でも楽しめるように落語を知って貰う活動を行っております。なので、他の方を聞いて難しいなと感じたら、たい平師匠の落語から聞くことをおすすめいたします。ちなみに、筆者が好きなたい平師匠の演目は吉原の男女を描いた『明烏』です。

上方落語家5選

三代目桂米朝

三代目桂米朝

戦後に衰退しつつあった上方落語文化を再び復活させ、現在にまで再び継承させた「上方落語中興の祖」と呼ばれる偉大な落語家です。その功績から、落語界二人目の人間国宝に指定され、2009年には演芸界から初の文化勲章受章者となりました。

持ちネタは数多くあり、中には少しお色気ネタが入った「艶笑落語」などを披露することもありました。中でも、米朝師匠の演目で有名なのが『地獄八景亡者戯』です。1時間にも及ぶ大ネタですが、時事ネタなどを交えつつ、身振り手振りなどの演出が入るという見所の多い演目です。上方落語は関西弁で早口なため、最初は難しく聞こえますが、慣れていくうちに好きになっていく、そんな魅力を持った演目です。

二代目桂枝雀

二代目桂枝雀

上方落語を代表する落語家で、1979年から1999年にかけて朝日放送にて「枝雀寄席」という冠番組を持つなど上方落語界で幅広い人気を集めておりました。また、著名人のファンも多く、ダウンタウンの松本人志さんや千原兄弟の千原ジュニアさんなど芸人からも尊敬される落語家です。

枝雀師匠は持ちネタを60までと決めたことが有名で、還暦を迎えた時には「枝雀六十番」というこれまでの演目を全て披露するという興行も予定されていました。そんな枝雀師匠の代表的な演目が引っ越しでのひと騒動を描いた『宿替え』です。江戸落語では『粗忽の釘』という名前で披露されている演目で、枝雀流の「緊張の緩和」が上手く組み込まれた演目となっています。

三代目桂春団治

三代目桂春団治

三代目桂米朝、六代目笑福亭松鶴らと共に「上方落語四天王」として、上方落語界を盛り上げた落語家で、先代の春団治が歌や芝居などを盛り込んでいたのに対し、三代目の春団治師匠はどこか艶っぽい繊細で華麗な落語を披露し、人気を集めておりました。

三代目桂春団治

春団治師匠は、噺の導入である枕を披露せずにそのまま本題に入るため、どこからが本題なのか初心者の方には少しハードルの高い高座となっています。ですが、映像で見ると、スパっと羽織を脱ぐ仕草やピシッと演じる姿など、非常にかっこいい人物となっています。ちなみに、筆者が好きな演目は代表的な持ちネタの『いかけ屋』と少しお色気要素が入った『お玉牛』です。

桂文珍

桂文珍

五代目桂文枝師匠に弟子入りし、兄弟子である桂三枝(現六代目桂文枝)と共に、「ヤングおー!おー!」に出演。その後、関西を中心にMCを務めるほどの人気を集めました。その後、テレビ出演などは限定的にしつつ、現在は高座を中心に若手への育成などに力を入れている落語家です。

テレビでは新作落語を披露されることの多い文珍師匠ですが、古典落語の方も柔らかい語り口でとても聞きやすい一席となっております。新作では名画『ローマの休日』をもじった『老婆の休日』、古典では米朝師匠から教わったという『百年目』などがおすすめの演目です。

笑福亭鶴瓶

笑福亭鶴瓶

六代目笑福亭松鶴師匠に弟子入りし、古典落語に大胆なレンジを加えるなど若手時代から落語家らしくない振る舞いをしていたという鶴瓶師匠。タレント、俳優として活動しているイメージの強い鶴瓶師匠ですが、定期的に「笑福亭鶴瓶落語会」といった独演会を開催するなど、精力的に落語家として活動を行っています。

他の師匠方とは違い、高座での姿を収録しているのですが、現在進行形の舞台を大切にしているため、現在はいずれも独演会のDVD等販売されておりません。なので、テレビとは違う舞台の鶴瓶師匠を体感してみたいという方は、ぜひ独演会などに足を運んでみてはいかがでしょうか。ちなみに、筆者が好きな鶴瓶師匠の演目は酔っ払いの「ラクダ」と呼ばれる人物が周囲の騒動に巻き込まれる「らくだ」です。

初心者でも楽しめる!おすすめ落語作品3選

タイガー&ドラゴン

タイガー&ドラゴン

2005年に放映された宮藤官九郎さん脚本のテレビドラマ。両親を亡くしたショックから笑いを忘れてしまったヤクザの山崎虎児は、借金の取り立てへと訪れた落語家の林屋亭どん兵衛を見物し、再び笑うという感情を思い出しました。そして、虎児はどん兵衛へ弟子入りし、昼間は「林屋亭小虎」という落語家、夜はヤクザとして生活することになりました、という物語。

古典落語の演目をモチーフにした1話完結の物語で、前半部分で西田敏行さん演じるどん兵衛が演目を披露。そして、後半部分ではドラマ内で起きた出来事を交えつつ、TOKIOの長瀬智也さん演じる主人公の林屋亭小虎がその演目をアレンジして演じるという流れになっております。『第43回ギャラクシー賞』テレビ部門で対象に輝くなど、世間からの注目度も高く、本作をきっかけに、落語にハマったという人も多くいらっしゃいます。

また、本作の影響で演芸番組「笑点」の視聴率が上がったという逸話も残っており、それがきっかけでお正月に放映された「笑点」のスペシャルにてTOKIOの長瀬さんが六代目円楽師匠指導の下、落語を一席披露されたこともあります。

赤めだか

赤めだか

2005年から2007年まで季刊誌『en-taxi』にて連載された立川談春さんのエッセイ本。『下町ロケット』『いだてん』などで俳優としても活躍している落語家の立川談春さんが、七代目立川談志師匠の下で修行し、真打へ昇進するまでの物語を描いた一冊。

2015年にはTBS系列にてスペシャルドラマが放映され、立川談春役には嵐の二宮和也さん。立川談志役には、実際に談春さんの落語界で客演し「立川梅春」という高座名を貰ったビートたけしさんが演じたことで話題になりました。

昭和元禄落語心中

昭和元禄落語心中

2010年から2016年まで『ITAN』にて連載された雲田はるこさん原作の落語漫画。刑務所から出所した元チンピラが慰問に訪れた名人・八代目有楽亭八雲に弟子入りし「与太郎」という名前を貰うも、度重なる失敗により破門されてしまいました。

しかし、八雲の養女である小夏の仲介により、なんとか破門は免れ、さらに八雲は小夏の父であり自身のライバルでもあった有楽亭助六について語るのでした、という物語。

与太郎放浪篇、八雲と助六篇、助六再び篇の三部構成となっている漫画で、落語という芸の道を追求し続ける事に生き続ける人々を描いた人間ドラマが魅力的な作品となっています。また、2016年にはテレビアニメ化、2018年には実写ドラマが放映されるなど、様々な媒体で楽しむことが出来る作品となっています。

落語おすすめに関するまとめ

一部演目は検索すれば動画サイトなどで配信されている場合もあります。しかし、そのほとんどが違法アップロードの場合が多いので、音楽配信のサブスクリプションサービス、もしくはレンタルCD店で落語のCDを借りるのがおすすめです。

そして、2014年に「THE MANZAI」を優勝した博多華丸大吉さんの優勝コメントに、こんな言葉があります。

「面白い人は先輩にも後輩にも劇場にいっぱいいるので、ぜひ劇場へ足を運んでください」

テレビとは違う劇場ならではの臨場感などを味わうことが出来ます。コロナが明けたら、ぜひ演芸場へ足を運んでみてはいかがでしょうか。本記事をきっかけに落語に興味を持っていただければ幸いです。

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