「川端康成の小説でおすすめはどれ?」
「『雪国』は知っているけど、他はどんな小説があるの?」
日本で2人しかいないノーベル文学賞を受賞したことで有名な川端康成ですが、彼が執筆した作品は多くあり、どれから読めばいいかわからないという人もいると思います。また、彼の代表作である「雪国」は知っているけど、他にどんな小説があるのかあまり知らないという人もいるのではないでしょうか?
彼の小説では日本の美しさや日本人の情緒が繊細に描かれていることが魅力の一つですが、一方で「魔界」と呼ばれる独特の世界観も必見です。
そこで今回は川端康成の有名作品や魔界が描かれた作品、短編集など彼の著作の中から厳選したおすすめの小説12冊を紹介します。
有名作品
雪国
読んでみて
「国境の長いトンネルを抜けると雪国であった」という冒頭文で有名な「雪国」は川端康成の代表作の一つです。両親の遺産を相続し、勝手気ままに筆を執る島村が芸者の駒子の元へ向かうところから物語は始まります。
冒頭でも分かるように、本文中の一つ一つの文章表現が非常に美しく、実際にその風景を見ているように思えるその技術には惚れ惚れしました。川端康成の代名詞といっても過言ではないこの小説はぜひ一度読んでみてほしい作品の一つです。
みんなのレビュー
伊豆の踊子
読んでみて
「雪国」に並ぶ知名度を誇る「伊豆の踊子」も川端康成の代表作の一つです。常々、孤独を感じていた青年が伊豆に一人旅にでた際、そこで旅芸人一座の踊子に出会い、惹かれていく物語。
この小説は過去に6回も映画化され、ヒロインである踊子を山口百恵や吉永小百合など名立たる女優が演じました。また、この小説は作者が19歳のときに実際に旅にでた伊豆での実体験を基にしており、川端康成の青春時代を垣間見える小説です。
みんなのレビュー
山の音
読んでみて
先程紹介した作品と比べると知名度は低いかもしれませんが、この小説は海外でも高く評価された作品です。還暦を過ぎた信吾は夜中に聞こえた山の音を自分の死期が迫る音だと思い、恐怖を感じます。そんな中で、自分が息子の嫁である菊子に惹かれていることに気づくところから物語は始まります。
戦争の爪痕も残る中で描かれた、家族の愛や想いなどの人間模様が繊細に描かれているとともに、物語の舞台となった鎌倉の美しさも感じ取れる作品でした。
みんなのレビュー
日本の美しさを描いた作品
古都
読んでみて
京都を舞台に生き別れた双子の姉妹が偶然、再会を果たし、失われた時間を取り戻すように、中を深めていきます。そんな2人の交流の中で、起きたさまざまな出来事が描かれた作品。
姉妹の物語も魅力的ですが、それ以上に、京都の四季の美しさが非常に繊細に描かれています。京都の年中行事や四季折々の自然描写が多く、いつの間にか観光しているような気分になれる小説でした。
川端康成の小説の魅力が詰まったおすすめの一冊です。
みんなのレビュー
千羽鶴
読んでみて
主人公の菊治と今は亡き父親の愛人とその娘たちが織りなす人間関係を描いた物語です。内容だけ見れば、ドロドロとした昼ドラのような愛憎劇ですが、そのような印象をまったく与えないどころか美しささえ感じる、川端康成の類まれなる文章表現に魅了されました。
また、作中で登場する志野茶碗などの茶器を筆頭に、茶の湯についても緻密に描かれ、川端の日本文化に対する造詣の深さが感じられます。日本文化の美しさが存分に描かれた作品です。
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名人
読んでみて
囲碁が終身名人制だった頃の最期の名人、本因坊秀哉の実際に行われた引退戦を基に描いた小説です。囲碁の世界、勝負の世界が美しく描かれ、「不敗の名人」と呼ばれた彼の対局から目が離せません。
病に侵された名人が一手打つごとに、死に一歩近づくような鬼気迫る描写には息をのみ、夢中になって読んでしまいました。川端の小説では女性がよく描かれていますが、この作品には女性がほとんど描かれていない珍しい小説でもあります。
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魔界を描いた作品
舞姫
読んでみて
「舞姫」と言えば森鷗外のイメージが強いかもしれませんが、川端康成の「舞姫」もおすすめです。この作品は川端が初めて「魔界」という言葉を作中に用いた小説で、これ以降、時々、川端康成は「魔界」を描いた作品を世に送り出しました。
夢を諦めた元バレリーナ一家の人間関係が描かれ、その家族がすれ違い、バラバラになっていく様は切なく、悲しいものでした。小説全体を通して、虚無感や無力感に溢れており、人間の抱える孤独を川端康成がうまく描いた小説です。
みんなのレビュー
みずうみ
読んでみて
川端康成の小説の中でも特に異質な作品として有名な「みずうみ」ですが、この小説は何とストーカーが主人公の小説です。主人公の銀平が考えること、成すことほとんどが変質的で犯罪になるようなことばかりが描かれ、何とも言えない不気味さが漂っていました。
しかし、川端康成の流麗な表現のおかげなのか、それほど嫌悪感を感じることなく読めます。発表当初、評価の別れた本作ですが、ぜひ一度読んでみてはいかがでしょうか?
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たんぽぽ
読んでみて
突然目の前の愛する人が見えなくなる「人体欠視症」と呼ばれる病にかかった稲子が、精神病院に預けられるところから物語は始まります。稲子の母と恋人である久野の会話で物語は進行し、病に侵された稲子本人はほとんど登場しないという一風変わった物語。
この小説は1964年から執筆していましたが、1972年に作者が自殺したことにより、完結することなく物語の幕を閉じた川端康成が残した最後の小説となりました。川端の描く「魔界」に魅了された人にはぜひ読んでほしい一冊です。
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短編集
掌の小説
読んでみて
川端康成が書いた122編もの短編が収録された短編集です。1つの話が2~3ページで完結し、どんなに長い話でも10ページ程度で終わりるため、読書が苦手な人にもおすすめの一冊。
自伝的な作品から伊豆や浅草を舞台にした作品、幻想的な作品など様々なジャンルの短編が収録されているため、読んでいて飽きず、一冊で何度も楽しめる短編集でした。夜寝る前に1編ずつ読むのも、乙なものだと思いませんか?
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葬式の名人
読んでみて
「葬式の名人」は短編集に収録されている1つの作品です。顔も知らない親戚の葬式に3度も参列することになった主人公は従兄に「あんた、葬式の名人やさかい」と言われます。
この小説の主人公は川端康成自身の経験を基に描かれ、彼も15歳までに両親、姉、祖父母を相次いで亡くしました。川端康成の作品ではしばしば「死」をテーマにしたものが描かれますが、そんな彼の実体験が小説に活かされ、多数の芸術的な作品が生まれたのかもしれません。
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愛する人達
読んでみて
この作品は先述の「掌の小説」より1編が長く、全9編が収録された「愛」をテーマに描いた短編集です。9人の主人公それぞれの心の描写が非常に丁寧で、揺れ動く心の様子が美しく、川端康成の描く日本の女性の美しさ、儚さを存分に楽しめました。
また、川端の作品の特徴でもある、まるで目の前にその風景があるかのように思える、鮮明な自然描写も必見です。彼の作品の中でも特に読みやすいため、気軽に手に取って読んでみてほしい短編集です。
みんなのレビュー
まとめ
今回は川端康成の作品の中から厳選したおすすめ小説12冊を紹介しました。どの作品を読んでも損はないおすすめの小説ばかりですが、個人的にはやはり有名な作品である「雪国」と「伊豆の踊子」を特におすすめします。
この2つの小説は川端の描く日本の美しさや女性の美しさが詰まっていて、読んだことがない人にはぜひ1度読んでほしい作品です。また、たとえ読んだことがあっても、もう一度読むと新たな発見やまた違った良さが味わえる素晴らしい作品だと思います。
この記事を読んだ皆さんが読んでみたいと思える川端康成の小説が見つかれば幸いです。