西郷隆盛は薩摩藩の志士で、「維新の三傑」と呼ばれる人物です。薩長同盟の成立や王政復古に成功させ日本の新時代を築くのに大きく貢献しました。
歴史上で見ると西郷隆盛は「反逆者」ですが、西郷の人柄もあり現在は名誉回復し鹿児島県のシンボル的な存在となっています。そしてそんな西郷隆盛は数々の名言を残しています。
この記事では西郷隆盛の名言10選と、その発言の意図や背景を解説します。
西郷隆盛の名言と発言の意図や背景
迷ったときは善いか悪いかで決めること
迷ったときは、損するか得するかではなく、善いか悪いかで決めろ。そうすれば、おのずと答えは出る
現在も西郷家の家訓として伝わる言葉です。隆盛の曾孫であり陶芸家である西郷隆文氏は、今でもこの精神を忘れずに日々を過ごしていると語っています。「損得を考えず、善悪で決める」その精神を忘れずに、私たちも道を踏み外すことなく自分というものを持って行動していきたいものです。
過ちを悔やむことは割れた茶碗の欠片を集めるようなものだ
「過ちを改めるには、自分が間違いを犯したと自覚すれば、それでよい。そのことをさっぱり思いすてて、ただちに一歩を踏み出すことが大事である。過ちを犯したことを悔やんで、あれこれと取りつくろおうと心配するのは、たとえば茶碗を割って、そのかけらを集めて合わせてみるようなもので、何の役にも立たぬことである」
西郷は幕末に、江戸幕府から追われる身となっていました。そのため一度「死んだ者」として島流しとなるなど、波乱万丈な人生を送っています。きっと後で「しまった」と思うことも多々あったと想像できますが、自分の過ちを反省し進みだしたからこそ大きなことを成し遂げることが出来たのがわかる言葉です。
自分を甘やかしてはいけない
「自分を愛する(甘やかす)ことは、最もよくないことである。修業ができないのも、ことが成就できないのも、過ちを改めることができないのも、自分の功績を誇って驕り高ぶるのも、みな自分を愛することから生ずることであり、決して自分を甘やかす心を持ってはならない」
自分に厳しく生きる必要性を説いています。西郷自身は明治政府の高官になった後も、贅沢をせずおごり高ぶらない性格だったといいます。自分自身を客観的に見ることは、自己愛が強いと中々できないものです。やはり自分を褒めたい気持ちは誰しも持っていますが、「まだまだ」と自らを高めないといけないと感じる言葉です。
文明とは外面から出るものではない
「文明というのは、道理にかなったことが広く行われることを褒め称えていう言葉であって、宮殿が荘厳であるとか、衣服がきらびやかだとかといった、外観の華やかさをいうものではない」
西郷は明治政府高官たちが「西洋かぶれ」になっていることを嫌っていたといいます。流行に影響されやすいのは古来からの日本人の特性ですが、「文明開化」の本質はそこではないと考えていたのかもしれません。真の文明は「道理にかなったこと」であるとし、今の私たちも心がけたい言葉です。
人を欺く人は成功しても醜いことこの上ない
「人を言いくるめて、陰でこそこそ事を企てる者は、たとえそれがうまくいったとしても、物事を見抜く力のある者から見れば、醜いことこの上もない。人に提言するときは、公平かつ誠実でなければならない。公平でなければ、すぐれた人の心をつかむことはできないものだ」
こそこそ企てる人は見ていて醜く、誠実な人こそ人の心を掴めることを教えてくれています。確かにこそこそ何かしている人は意外に周りから気づかれているものです。そういう人が信頼されるわけもなく、本当に信頼してもらえる人は誠実な人であることは間違いないでしょう。
策略を立てたとしても後で必ず後悔するものだ
「策略は日常的にすることではない。はかりごとをめぐらしてやったことは、あとから見ると善くないことがはっきりしていて、必ず後悔するものである」
策略は確かにあとから見ると必ずほころびが出てきます。策略を続けるとずっと続けなければならず信用も失っていくものです。西郷が鹿児島県民は元より、明治天皇にも慕われていたのは策略をせず実直な性格が皆に好かれたからではないでしょうか。
人にそしられたり褒められたりするのは儚く消えていくものだ
「世の中で、人からそしられたり誉められたりするといったことは、塵のように儚く消え去ってしまうものである」
想像にはなりますが西郷は恐らく偉業を多くの人に褒められることもあれば、逆にそしられることも多く経験したことでしょう。やはり自分が人にどう思われているかはどうしても気になってしまうものですが、西郷のいう通りどちらも儚く消えていくものなので自分の好きなように生きていきたいものです。
人材はその人の長所を活かすことだ
「人材を採用するとき、君子(徳行の備わった人)と小人(徳のない人)との区別を厳格にし過ぎると、かえって害を引き起こすものである。というのは、世の中で十人のうち七、八人までは小人であるから、よくこのような小人の長所をとり入れ、これを下役に用い、その力を発揮させるのがよい」
人材は確かに多種多様である上に、本当に優れている人はごく一握りで多くの人は「凡人」です。中々できることではありませんが、理想はその人の得意分野を活かすことこそ組織を円滑に進める秘訣だと教えてくれる言葉です。
人が踏むべき道は西洋も東洋も根本は同じもの
「漢学を勉強した者は、ますます漢書から道を学ぶのがよい。人が踏み行うべき道は、この天地のおのずからなる道理であるから、東洋・西洋の区別はないのである。もしも現在の万国対峙の形勢について知りたいと思うならば、漢書の『春秋左氏伝』を熟読し、さらに「孫子」で補えばよい。当時の形勢も今の情勢とほとんど大差ないだろう」
人が踏むべき道の本質は「東洋」も「西洋」も関係なく同じものだと教えてくれています。日本人が西洋文化に夢中になっている時でも、西郷は人の本質を見抜いていました。文化や考え方は違いますが人として歩む根本は同じであるため、漢学を学んでいる人は更に漢学を極めなさいと薦めたことがわかる言葉です。
「敬天愛人」の心を忘れるないこと
「人が踏み行うべき道は、この天地のおのずからなる道理であるから、学問の道は敬天愛人(天を敬い人を愛する)を目的とし、自分の修養には、つねに己れに克つことを心がけねばならない。己れに克つための極意は、論語にある「意なし、必なし、固なし、我なし」(主観だけで判断しない。無理押しをしない。固執しない。我を通さない)ということだ」
西郷の名言で最も有名な言葉です。西郷は「敬天愛人」の心を常日頃学問のすすめで説いていたといいます。天を敬い、人を慈しむことこそ大事なことであり、論語の精神を活かすことが必要だと述べています。この言葉は西郷の子供たちにも受け継がれ、西郷の息子・菊次郎は台湾の洪水に悩む人たちのために「西郷堤防」を作り現在も台湾の人に感謝されているのです。
人生を切り開く 西郷隆盛の言葉100
西郷隆盛の言葉を分かりやすく解説してあります。漢学に造詣が深かった西郷は、漢文から取り入れた名言を多く残しています。しかし漢文を引用した名言は難しいために意味を解説してくれている本書は非常におすすめです。
命もいらず 名もいらず 西郷隆盛
西郷の考え方がわかる本です。西郷が求めていた先進化は「欧米化」ではなく、「徳」を持った王道で国をまとめあげようとしていました。そんな西郷の政治や人への考え方を紹介してくれます。西郷の考え方を知ることができ、新たなビジョンが見えてくるため自己啓発のために読んでみるのもおすすめです。
西郷隆盛の名言についてのまとめ
いかがでしたでしょうか?筆者は名言から西郷隆盛の実直さを改めて感じ取れました。社会では西郷のいう「策略をめぐらす人」が成功する場合もありますが、やはりあとで厳しくなっていくというのは本当にその通りだと感じています。
表面上は隠していてもそういう人は信用されないために、最後は誠実な人が人望を得るものです。こういった精神があったからこそ、西郷隆盛という人物は反乱を起こした人物でありながら今も人々に愛される存在になったのだろうと感じている次第です。この名言を読んで自分の糧にして頂けたら幸いです。最後までお読みいただきありがとうございました。