大阪・万博記念公園の「太陽の塔」や、渋谷駅にある「明日の神話」など、数々の印象的な芸術作品を残したことで知られる岡本太郎。「芸術は爆発だ!」という言葉でも有名ですよね。
けれどもこの「芸術は爆発だ!」という言葉、どういう意図で発言したかご存知でしょうか?言葉だけが独り歩きしてしまって、岡本太郎の意図と違う理解をされていることが少なくありません。
この記事では、岡本太郎が残した名言をその意図や背景と合わせて10選解説します。また、名言が満載の岡本太郎の著作もご紹介しますので、ぜひチェックしてみてください。
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岡本太郎の名言と意図・背景
芸術は爆発だ!
芸術は爆発だ。
これは随分前からの私の信念であり、貫いてきた生き方だ。
全身全霊が宇宙に向かって無条件にパーッとひらくこと。
それが爆発だ。
CMにもなった「芸術は爆発だ!」という言葉は、後ほどご紹介する『自分の中に毒を持て』という岡本太郎の著作に書かれています。岡本の作品は抽象的でシュールレアリズムの側面をもち、また原色を多用することから「よく分からないけど激しいもの=爆発」と理解されていることが多いように感じます。岡本は「明日の神話」を水爆が爆発する瞬間をモチーフに描いていることもあって、爆弾が炸裂する様子をイメージしている人も多いでしょう。
けれども、岡本の意味する「爆発」とは上の引用にあるように「全身全霊が宇宙に向かってパーッとひらくこと」です。もしかしたら「放つ」という言葉の方がイメージしやすいかもしれません。人間に秘められているカラフルなパワーが漆黒の宇宙へと激しい勢いをもって放出される…そのようなイメージが岡本太郎の「芸術」であり、「爆発」なのです。
「能力がない」? なければなおいい。
自分に能力がないなんて決めて、引っ込んでしまっては駄目だ。
なければなおいい、 今まで世の中で能力とか、才能なんて思われていたものを越えた、決意の凄みを見せてやる、というつもりでやればいいんだよ。
岡本太郎は子供の頃からよく絵を描いていたそうですが、中学生の頃から「自分は何のために描くのだろう?」という疑問に悩まされていました。けれどもパリに滞在していた1932年、パブロ・ピカソの「水差しと果物鉢」を見て強い衝撃を受け、「ピカソを超える」という目標を掲げて制作に打ち込むようになります。上に引用した「決意の凄み」という言葉は、そういった大きな目標をもって制作した岡本にこそ当てはまる言葉だと感じます。
失敗する方を選べ
迷ったら、失敗する可能性が高い方、自分がダメになる方を選べ。
そうするとエネルギーが湧いてくる。
岡本太郎には「失敗」に関する名言がいくつもあります。失敗してもなおチャレンジし、さらに失敗してもまたチャレンジ…不屈の精神で物事に挑めというメッセージが伝わってきます。上に引用したのはそんな失敗についての名言のなかで筆者がもっとも衝撃を受けたものです。
おそらく、岡本が自分の制作に姿勢とはこういうものだったのではないでしょうか。自分の表現したいイメージがどれだけ不可能なものに思えれば思えるほど、ますますエネルギーが湧いてくる。岡本太郎はそのような人だったのではないかと感じます。
芸術はきれいであってはならない
(芸術は)うまくあってはならない。
きれいであってはならない。
ここちよくあってはならない。
岡本太郎がデパートで個展を開いたとき、ある作品の前から2時間も動かなかった女性がいたそうです。そのとき個展を管理していた支配人によると、その女性はぽつんと「やな感じ!」と吐き捨てるようにつぶやき、会場を後にしたといいます。それを支配人から聞いた岡本は大変喜びました。
このエピソードからうかがい知れるように、岡本は「うまく作ろう」「きれいな作品にしよう」「観た人が心地よいようにしよう」とは思っていなかったようです。確かに岡本の作品は、痛ましいものや目を背けたくなるようなものすらあります。いわば「不快感」を感じる鑑賞者が自分自身の心の動きに気づくのが岡本の芸術でした。
人生の目的は「生きる」こと
人生の目的は悟ることではありません。
生きるんです。
人間は動物ですから。
岡本太郎は縄文時代に強く惹かれていて、さまざまな縄文土器の写真や縄文美術についての著作を残しています。縄文時代の人々には独自の宗教観こそあれ、「悟る」ことを目的に生きてはいなかったように思います。
その日1日の自分の命を精一杯生きること、それは1番最初に引用した「芸術は爆発だ!」という言葉にもつながります。人生の目的は生きること、自分の命をパーッと開くこと…岡本太郎の芸術観であり、人生観でもある言葉です。