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岡本太郎の代表作品5選!絵画やモニュメント、壁画の制作秘話も解説

「芸術は爆発だ!」などの名言や、「太陽の塔」「明日の神話」などの作品で知られる芸術家・岡本太郎。アートにあまり詳しくなくても、岡本の名前は聞いたことがあるという人も多いのではないでしょうか。

岡本太郎は芸術を「鑑賞者を激しく引きつけ、圧倒すること」と定義づけ、美しく心地いいだけの作品は作りませんでした。岡本の作品は「激しい」「エネルギッシュ」という言葉で形容するのがぴったりであり、時には不快感を覚えることすらあるかもしれません。けれども、岡本が残した言葉同様、元気のないときにはパワーをくれるし、私たちを鼓舞してくれます。

この記事では、岡本太郎の代表作を5つご紹介します。作品に込められた意図や、制作の背景なども詳しく解説しますので、ぜひ岡本の作品の一端に触れてみてください。

太陽の塔

太陽の塔

岡本太郎「太陽の塔」は、1968年に着工、1970年に完成した作品です。大阪府吹田市の万博公園に設置されています。

4つの顔をもつ塔

「太陽の塔」は高さおよそ70メートル、塔の頂点には未来を表す「黄金の顔」、正面には現在を表す「太陽の顔」、背面には過去を表す「黒い太陽」という3つの顔をもっています。「黄金の顔」の目は日没とともに光るようになっていて、2010年3月からは毎晩灯りがともるようになりました。

実は「太陽の塔」には第4の顔があります。万博当時、塔の地下には「地底の太陽」という全長11メートルもの巨大なモニュメントがあったのですが、万博終了後に行方が分からなくなってしまったのです。2014年に大阪府が「地底の太陽」を修復することを決定、関係者の話や当時の写真などをもとに修復を進め、内部の一般公開に合わせて完成させました。

万物のエネルギーの象徴である「太陽の塔」

「太陽の塔」は地球誕生から現在・未来を通して生まれるすべてのもののエネルギーの象徴であり、生命・祭りの中心です。塔の内部に作られている「生命の樹」はすべての生命を支えるエネルギーの象徴で、未来へと向かう生命のエネルギッシュなパワーを表現しています。樹には下から上に向かって、地球の歴史を追うように各時代の代表的な生き物の模型が配置されています。

岡本は「太陽の塔」について、「原始と現代を直結させたような、べらぼうな神殿」と述べています。モダンでもない、ヨーロッパ的な雰囲気でもない、かといって和風でもない…岡本は人間から「文化」という尺度を取り除いた丸のままの「生命」を表現したかったのだ、と感じます。

岡本太郎の「芸術は爆発だ」という言葉は、「生命のエネルギーが宇宙に向かってパーッと拡がっていく、それこそが芸術だ」ということを意図したものです。岡本の芸術には「生命」「宇宙」「時間」「拡がる・成長する」というテーマが通奏低音のように流れています。「太陽の塔」は、岡本が作品制作によって表現しようとしたものの集大成のような、きわめて重要な作品です。

明日の神話

明日の神話

岡本太郎「明日の神話」は、1968から翌年にかけてメキシコで制作された壁画です。現在は渋谷駅の連絡通路に展示されています。

行方不明になっていた壁画

「明日の神話」は、1968年にメキシコで岡本太郎が制作した壁画です。その前年、あるメキシコ人実業家がメキシコシティに建築中だったホテルに壁画を描いてほしいと岡本に依頼したことから始まりました。1969年には高さ5メートル、幅30メートルの巨大な「明日の神話」が完成、ホテルのロビーに仮設置されます。

しかし、岡本に依頼した実業家の事業がうまくいかなくなり、ホテルは人手に渡ることに成ります。その後、「明日の神話」はどこにあるのか分からない状態が長く続きました。2003年に発見されたときにはかなりのダメージを受けていましたがその後修復作業を続け、2006年に初めて公開されました。

核爆弾に焼かれる人間を誇り高く描いた作品

「明日の神話」は、中央に核爆弾に焼かれる骸骨が、その右側にアメリカの水爆実験により被爆した第五福竜丸、左側には平和に憩う人々が描かれています。きのこ雲はもくもくと湧き上がり、小さな生き物たちが逃げ惑っています。骸骨の背後にもぞろぞろと亡者の列が続く、まさに「惨劇」としかいいようのない場面です。

けれども「明日の神話」は「ただ惨めな、酷い、被害者の絵ではない」と岡本太郎の最大の理解者・岡本敏子はいいます。中央の骸骨は高らかに哄笑しています。画面の外に向かって力強く放たれるような放射状の構図は、確かに強いエネルギーが人間に秘められていることを予感させます。

人間は被爆という惨劇さえも誇りをもって乗り越えることができるし、その先に私たちの「神話」は生まれるのです。「太陽の塔」と同時期に制作され、対とみなされることも多い「明日の神話」は、21世紀の今こそ目にしておきたい作品です。

痛ましき腕

痛ましき腕

「痛ましき腕」は1936年に制作された絵画です。現在は川崎市岡本太郎美術館に収蔵されています。

大きすぎるリボンの不思議な存在感

首もとに大きなリボンをつけた人物の半身を描いた絵です。右腕を曲げている様子なのですが、その腕は皮膚が切り裂かれていて、ピンクの肉が等間隔に見えています。こぶしを強く握ったその腕の持ち主の顔は髪に覆われて見えず、暗い画面に大きなリボンと腕だけがあります。

岡本太郎は1935年ごろから絵画のモチーフにリボンを用いていました。そして翌年の1936年、この「痛ましき腕」が描かれます。大きなリボンを首もとにつけている、というとピエロのようなどことなく陽気な印象がありますが「痛ましき腕」ではむしろ逆、不必要なほどのリボンの大きさが不気味な存在感を醸している作品です。

不穏な世情と岡本の葛藤を表現

「痛ましき腕」は、岡本がパリに滞在していた時代に描かれたものです。当時、岡本は抽象画の制作に行き詰まりを感じていました。より自分の現実を生々しく表現する方法を模索していました。

それに加えて、1930年代は世界中が第二次世界大戦へと進んでいった時代でした。どこか不穏な空気が立ち込めていたその世の中の雰囲気と、岡本自信の葛藤や迷い、2つが合わさって生まれたのが「痛ましき腕」だと考えられています。

最初に描かれたものは戦争で焼失してしまったため、現在川崎市岡本太郎美術館に収蔵されている「痛ましき腕」は1949年に再制作されたものです。当初感じていた不穏さが戦争となって現れ、それから時間が経って「痛ましき腕」を再制作したとき岡本は何を感じたのでしょうか。

森の掟

森の掟

「森の掟」は1950年に制作された油彩画です。現在は川崎市岡本太郎美術館に収蔵されています。

「対極主義」という芸術観

深い森の中で、背にファスナーをもつ赤い怪獣が小さな生き物を襲っています。周囲の生き物はその勢いに吹き飛ばされたり、怖がって隠れたりしています。ファスナーをもつ怪獣は何者なのでしょうか?

岡本太郎の「森の掟」は、彼の芸術思想の1つである「対極主義」を表現しています。「対極主義」とは、今までに作られた概念や思想にとらわれず、正反対の概念をぶつけることで新たな価値観を得られるという考え方です。岡本は「森の掟」で、深い森という自然と「ファスナー」という人工物という対極のモチーフを使いました。

社会にはびこる「権力」への批判

ファスナーをもつ怪獣は、人間が生み出した「権力」の象徴です。岡本は権力やそれに追随するものを激しく批判しました。「森の掟」では、権力が弱い者を食い物にする様子が描かれています。

さて、この怪獣のファスナーを開けたらどうなるでしょうか?中身は空っぽ、権力の象徴である怪獣はまったくの空虚な存在です。岡本は社会にはびこる強大な権力を怪獣にたとえ、その正体が空っぽであることを強く表現しました。

森の掟が支配しているはずの深い森の中を、空っぽの権力怪獣が荒らし回っている…こんなことが許されるはずがない、という岡本の声が聞こえてきそうな作品です。

坐ることを拒否する椅子

坐ることを拒否する椅子

「坐ることを拒否する椅子」は、1963年に制作された陶製の椅子です。現在は川崎市岡本太郎美術館や、川崎市民ミュージアムなどに設置されています。

「生活とは闘いである」

信楽の陶器で作られた「坐ることを拒否する椅子」には、どの椅子にも顔がついています。座面はデコボコとしていて、陶器の硬さと相まって確かに座りにくいことこのうえありません。

岡本太郎は、快適なだけの惰性で続くような生活では生きがいがないと考えていました。座り心地のいい椅子は病身の人やお年寄りが使うべきであって、何かに熱い気持ちをもって取り組もうとしている人はそんな椅子に座っていてはダメだ、と説いています。休憩のために少しだけ腰掛けさせ、あとは自分を戦わせようと鼓舞してくれるもの、それが「坐ることを拒否する椅子」なのです。

デザイナーとしての岡本太郎

岡本太郎はインダストリアルデザイナーとしての顔をもっています。映画タイトルのロゴや卓上ライター、着物やこいのぼり、さらにはおまけとしてのブランデーグラスまでさまざまなものをデザインしました。デザインの仕事をすることに対して「芸術の価値が落ちてしまう」と批判した人たちもいましたが、岡本は意に介さなかったといいます。

岡本のデザインした商品には、彼の芸術哲学や人間観が色濃く反映されています。ブランデーグラス「顔のグラス」は、グラスの側面ではなく底に顔がデザインされているのですが、このことに対して岡本は「グラスの底に顔があってもいいじゃないか」と発言しています。お酒を飲み干した後にひょこっと現れる顔はなかなか愛嬌があり、高い人気を呼びました。

岡本太郎の作品に関するまとめ

岡本太郎の作品を5点ご紹介してきました。みなさんはどのように感じられたでしょうか?

岡本の作品は「高尚で優雅」というような芸術のイメージとはかけ離れたものです。その代わり強いエネルギーがあり、パワースポットを訪れたかのような元気をもらえます。私たちはその力強い作品に触れて、明日を生きる勇気や力を抱くことができます。

岡本太郎は21世紀の現在にこそ、多くの人たちに触れてほしい芸術家です。