【隠れた名曲も】バッハの代表曲13選!ジャンルごとに分けて紹介

「マタイ受難曲編」バッハの代表曲2選

実は豊かな感情表現の宝庫。珠玉の作品に触れてみてください

一説にバッハの傑作3選、といえば「マタイ受難曲」「ヨハネ受難曲」「ミサ曲ロ短調」と言われています。このマタイ受難曲は晩年のJ.S.バッハ会心の作品で、あのメンデルスゾーンが指揮で再演したことによって蘇ったという奇跡的な作品です。

プロテスタント教徒が「受難週」でイエス・キリストの受難の内容を覚える、という習慣があったため、音楽と劇で受難の内容をわかりやすく表したものを「受難曲」と言います。テーマのストイックさから何だか「難しそうだな…」と思ってしまいますが、ドラマティックで面白い要素も沢山あります。

現在のオーケストラ編成やコンサートホールでこの「マタイ受難曲」を演奏すると、指揮者の演出次第ではマーラーの「復活」やベートーヴェンの「第九」並みに壮大な演奏をすることができます。まるでハリウッド映画のような大スペクタクルで新約聖書のハイライトを追体験できるすごい作品ですので、皆さんも是非味わってみてください。

Erbarme dich, mein Gott (Matthäuspassion)

2幕の「憐みたまえ、我が神よ」というアルトのアリアです。このシーンは聖書の中の「ペテロの否認」のを歌ったものとなっています。

イエスに「あなたは鶏が鳴く前に(夜が明けるのを待たずに)私を裏切り、私のことを知らないと3回言うでしょう」と言われ、最初は否定するペテロですが、イエスが逮捕されて自身の身も危うくなると、師であるイエスを3度「知らない」と言ってしまいます。

その後鶏が鳴き、我に返ったペテロが後悔に泣き崩れたシーンを表したのがこの曲です。もし歌詞がわからなくても、メロディやヴァイオリンの痛々しい響きでペテロの感情が伝わってきます。

Kommt, ihr Töchter, helft mir klagen (Matthäus-Passion JS Bach)

1幕の第1曲目の曲です。合唱、オーケストラ、少年合唱など珍しい編成が目を惹きますね。前奏のコントラバス(或いはチェロ)の音が「イエスが自ら十字架を引き摺って歩く音」を表しています。

感情の表現だけではなく、このような叙事的な表現も音楽でされていたりと、「マタイ受難曲」は聴くたびに発見があります。

曲名の後についている「BWV.⚪︎⚪︎(数字)」って何?

バッハの作品に必ず書かれているBWV.⚪︎⚪︎というのは作品番号で、シュミーダー番号と呼ばれています。これはバッハ自身が自分の作品を管理していた訳ではなく、後年にドイツの音楽学者・ヴォルフガング・シュミーダーが独自にナンバリングしたものです。

読み方は「バッハ作品番号」、「ビー・ダブリュー・ブイ」「ベー・ヴェー・ファウ」などと読みます。クラシック音楽の作品番号は一般的にOp.(オーパス)などで表記されることが多いですが、このように作曲家独自の作品番号が存在することもあります。

なぜ演奏する人によってこんなに曲のイメージがちがうの?

バッハの時代というのは今から330年以上も昔です。楽器なども今私たちが知っているピアノやヴァイオリンなどとは少し違っていたり、今は使われなくなってしまっている楽器などがあったりもしました。ですので、演奏者や指揮者によって使う楽器自体が違っていることも珍しくありません。

またバッハの曲は、楽譜にもテンポの設定や強弱についての細かい記述がありません。親切に書いているものもありますが、原典に近いものほど記述が少なく、強弱や曲のテンポなどは演奏する人に委ねられることが多いのです。そのため、バッハ曲の演奏のためにはあらゆる勉強が必要となる大変さもあるのですが、その反面どのようにもアレンジができるという面白い一面があります。

あのミュージシャンたちも?意外すぎるバッハのカバー曲2選

先に述べたように、バッハの楽曲はどのようにも演奏することが可能です。モダン・ジャズ風に演奏しても、ヘヴィ・メタルの曲のギターソロ・フレーズに組み込んでも、違和感がないという面白さがあるのです。日本では「クラシカロイド」というアニメの中で、あの「つんく」がバッハ曲のアレンジをして話題になりました。意外なアーティストたちによるカバーをいくつかご紹介します。

SWEETBOX “EVERYTHING’S GONNA BE ALRIGHT

ドイツの音楽グループ「SWEET BOX」による「G線上のアリア」を元にした「EVERYTHING’S GONNA BE ALRIGHT」と言うヒット曲です。R&B系のサウンドとバッハの曲のマッチングが大ヒットし、日本でもゴールドディスク賞を受賞しました。

Dismember – Life, Another Shape Of Sorrow

こちらはスウェーデンのデスメタルバンドによる曲で、Komm, süßer Tod(甘き死よ来たれ)というバッハの曲を元にした曲です。一見すると大胆なアレンジに思えますが、曲のテンポなどもあまり変わっていないのが不思議です。

筆者オススメの隠れたバッハの名曲編

BACH – Mass in B-minor – Kyrie eleison

バッハの「ミサ曲ロ短調」はバッハ最晩年にして最高峰と言われる作品です。ファンからすると「隠れた名曲」に分類するには忍びない大傑作なのですが、色々な知識を得た上で更にその深みに触れられる作品、という意味で、この記事には収まりきらないほどの意義ある作品です。今回は「キリエ」のみを簡単に紹介させて頂きます。

Bach (1685-1750) Kaffeekantate BWV 211 – Harnoncourt

こちらは世俗カンタータと呼ばれる声楽曲のジャンルで、「コーヒー・カンタータ」と呼ばれる少しユーモラスな作品です。コーヒーが大好きでカフェイン中毒な娘と、それをどうにかやめさせたいお父さんとがコミカルなやりとりをしています。

あの「マタイ受難曲」の作詞を担当したピカンダーとバッハがコンビを組んで、このようにコントのような作品を作ったというのが意外ですね。

バッハの曲に関するまとめ

いかがでしたでしょうか?今回ご紹介したのはバッハの音楽のほんの一部であり、また筆者の主観も多分に反映されていると思います。個人的には、記事を書きながら「イギリス組曲2番」をピアノで必死に練習した日々を思い出して感慨深くなってしまいました。

聴く人それぞれの心の中に「自分の中のバッハ」があると思います。皆さんの好みの演奏、曲に出会えるお手伝いが少しでも出来ていれば幸いです。

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