「あの有名なベートーヴェンについて知りたいけど、本が多すぎて読むべきものがわからない」
「ベートーヴェンは偉人と聞くけど、実際どんな生涯だったのだろう?」
日本では「楽聖」との称号を付され、音楽の知識が深くない人でも知っているベートーヴェン。小学校や中学校の音楽室には、必ずと言っていいほど彼の肖像画が飾られています。しかしよほど音楽に興味のある人でない限り、彼の偉大さを詳細に人前で話せるほど知識の深い方はいないでしょう。
世界で最も有名で偉大なベートーヴェンという存在を深く知るにはやはり本を読むに限ります。今回は、幼いころからピアノを習い、ベートーヴェンの描く曲想に誘惑され、彼に関する本も読み漁った筆者が、初心者から上級者まで最もおすすめなベートーヴェンの本を6冊紹介します。
ベートーヴェンの生涯
読んでみて
この本の筆者は青木やよひ氏。日本におけるベートーヴェン研究の先端を走る彼女が自らの研究を元に書いたものとなっています。世界で初めてベートーヴェンの不滅の恋人を特定した人物としても知られています。
この本はベートーヴェンの人生をそこまで深く追い求めることはせず、しかし筆者の膨大な知識量に基づいて書かれた良本です。この本一冊あればベートーヴェンの生涯を簡潔に知ることができます。さらに、本の後方には年表も付属されているので、こちらを見ながら読んでもよし、ちょっとした時に年表を確認するために本を開くのもよし、そんな手軽な本となっています。
みんなのレビュー
ベートーベンの人生が知りたくて、大人向けの伝記本として選んだけど、この本はベートーベンの人生だけでなく、ベートーベンという感受性豊かな芸術家であり自然詩人でもある1人の人間の内面も、愛情を込めて描かれていた。ベートーベンのイメージが変わった。とても良い本だった。
https://bookmeter.com/books/369425
ベートーヴェンを聴けば世界史がわかる
読んでみて
こちらは上記の本とは違ってベートーヴェン本人の事実関係を描くものではなく、彼を取り巻く歴史的事実に重点を置いた本となっています。筆者は慶應義塾大学の教授であり思想史研究者としても知られる片山杜秀氏。音楽家とはまた違った観点から、ベートーヴェンを語っています。
気になる内容ですが、こちらは専門書のように堅苦しく記されているものではなく、音楽をさほど知らない人でも簡単に読むことができます。ベートーヴェンの時代に生きた他の音楽家たちの人生も追い求めながら、思想史研究者ならではの観点から宗教や歴史的事実としての世界史に触れていく、そんな良書です。
みんなのレビュー
音楽は絵画や文学と違って、演奏され、聞かれなければ成立さえしない芸術だ。歌は世につれ世は歌につれ、と言われるのももっともなことだ。ベートーベンの登場は、資本主義の発展、市民社会の出現という世情と切り離せない。実は資本主義経済が負の側面を見せ始める前の絶頂期と、クラシック音楽の最盛期って、重なっているのかも知れない。本書はそこに至るまでの、そしてそこから先の音楽史を、その受取り手の変遷と絡めて分かりやすく解きほぐしてくれる。クラシック音楽を聴くのにも楽しくなりそう。
https://bookmeter.com/books/13233286
音楽家の伝記 はじめに読む1冊 ベートーヴェン
読んでみて
こちらの本の筆者は、東京芸術大学器楽科(ヴァイオリン専攻)を卒業し、ヴァイオリニストとしても知られている、ひのまどか氏。音楽家としての演奏活動の傍ら作家としても活躍され、新書を中心として何冊もの本を出版しています。
この本はそんなひのまどか氏が、プロの演奏家としての独自の観点からベートーヴェンという偉大な作曲家を細かく丁寧に記した本となっています。研究者のように堅苦しい言葉で書かれているわけではなく、読者に寄り添って書かれた本ですので、子供から大人まで、老若男女問わず読み易いものとなっています。ベートーヴェンを既に知っている人でも全く知らない人でも、楽しみながら読める本です。
みんなのレビュー
資料用。なるほど…芸術家とは本当に生きにくさを抱える生き物よ…。そしてその生きにくさをが芸術作品を生む…。だいぶ読みやすいように書いてあるけれど、人としてはほんまえらいこっちゃ…!!な人…。しかし周りが優しくて、むしろそこまで面倒みちゃう⁈ってぐらい過保護描写で、読んでておもしろかったり、たまに、⁈⁈となったり(笑)自分は音楽に明るくないのでそこまで理解がおいついてないけれど、それだけ彼の曲は人々から期待され、愛され、求められていたということか…。そしてこの現代でもなお。
https://bookmeter.com/books/13609682
学習漫画 世界の伝記 ベートーベン 楽聖とよばれた大作曲家
読んでみて
こちらの本は上記で紹介してきた本とは観点を変え、堅苦しい文章ではなく漫画でベートーヴェンを学ぶのに打ってつけの本となっています。文章の嫌いな子供でも気軽に読めるという学習漫画の特性を大いに活用し、子供に興味を持たせるような工夫が多く施されています。
漫画の中には実際の写真が織り込まれてあったり、豆知識としてコラムがところどころに配置されていたりなど、ベートーヴェンだけでなく、その周辺知識も自然と頭に入ってくる内容となっています。年表も付属されているので、これを一冊読めばベートーヴェンを広く知ることができます。
みんなのレビュー
幼い頃、偉人の伝記漫画を読むのが大好きだった。毎日飽きもせず貪るように読んでは、過去に存在した素晴らしきヒーローに心踊らせた。ベートーベンも私のヒーローの1人だ。改めて読み、その努力と執念に感動した。すっきりした絵柄が見やすく、解説の量も丁度いい。
https://bookmeter.com/books/210316
交響曲「第九」の秘密-楽聖・ベートーヴェンが歌詞に隠した真実
読んでみて
この本の著者はマンフレッド・クラメス氏。ドイツ生まれで医学や心理学を研究し、心身症の専門家として活躍していますが、他方でベートーヴェンの研究家としても知られており、ベートーヴェンの最も有名な曲である「歓喜の歌」の歌詞を解読した人物です。
この本はそんな筆者が、長年の研究により解読した「ベートーヴェン交響曲第九番」に基づき、医学・心理学の専門家としての知識をふんだんに活用しながら、「歓喜の歌」に秘められた想いを記した本となっています。定説とは異なった解釈に読み始めは困惑してしまいますが、読んでいくうちに自然と筆者の考えに共感してしまいます。心理学を研究している彼の言葉の巧みさと言うのでしょうか。
さらに凄いのは、この本が翻訳されたものではないということ。マンフレッド・クラメス氏は日本に精通しており、日本語も達者な人物です。翻訳であれば多少なりとも筆者の意見が違って翻訳されてしまうこともありますが、筆者自身の言葉で書かれているので、非常に説得力があります。
みんなのレビュー
ドイツ人の医師によるベートーヴェン「第九」の研究成果をまとめた本。コーラスの先生に紹介いただき手に取りました。難解な内容ではなく、ベートーヴェンの人生や「第九」と日本との関わりは興味深かったですし、この本の主題である「歓喜の歌」の歌詞がいくつかに分けて解説され、そこに込められた意味がキリスト教とは無縁だったという点も驚かされました。ベートーヴェンの凄さを改めて確認できる1冊。駐日オーストリア大使の推薦文もいいですね。
https://bookmeter.com/books/12288394
ベートーヴェン 3大ソナタ《悲愴》《月光》《熱情》
読んでみて
最後には少し観点を変えて、楽譜を紹介します。こちらの楽譜は、ベートーヴェンの三大ソナタとされている「悲愴」「月光」「熱情」を贅沢に3曲収録したものとなっています。ベートーヴェンのソナタは曲によって難易度が変わってきますが、この3曲が弾ければ、友人や親戚に弾くよう頼まれたとしても盛り上がること間違いなし。
みんなのレビュー
無し
まとめ
いかがだったでしょうか。
今回はベートーヴェンの生涯を記す伝記から漫画、生きた時代を取り巻く世界史に関する本まで、多岐にわたって紹介してきました。
紹介した本は初心者から上級者向けの本ですので、さらに深く知りたいと思えば、音楽家であれば実際に楽器を持ち出して弾いても良いですし、楽器を弾いたことがない方であれば図書館でさらに詳しい学術書を読んでみるのも良いのではないでしょうか。きっと新たな発見があるかと思います。
この記事によって、音楽をもっと深く知りたい、ベートーヴェンをもっと深く知りたい、という契機になっていただければ幸いです。