いとうせいこうのオススメ本6選【小説や対談、作品集まで】

「いとうせいこうに興味があるけれど、著書の中で読みやすい本はないかな?」
「いとうせいこうの小説も読んでみたいけれど、どれから読み始めればいいんだろう?」

様々なメディアで活躍する、いとうせいこうの思考に興味を抱く人は多いでしょう。とはいえ、著書を読んでみたいと思って探してみても、いとうせいこうの作品はジャンルが幅広いばかりか、小説、対談、共著など形態も多岐に渡っていて、一体何から手をつけたらいいのか迷ってしまいます。

学生の頃観に行ったお芝居で、いとうせいこうの言葉の操り方に魅了されて以来、出版されている作品はどれもチェックしている筆者が、ぜひおすすめしたい6冊のいとうせいこうの本を、「気軽に読める本」「社会について考えさせられる本」「言葉の面白さを楽しめる本」の3つのタイプに分けてご紹介します。

気軽に読める本

ボタニカル・ライフ ー 植物生活

読んでみて

ベランダで植物を育てるというただそれだけの話なのに、いとうせいこうの手にかかると可笑しくて仕方がありません。読みながら、いとうせいこうの言葉選びの巧みさに何度も膝を打ちました。文章のリズムが心地良くて読みやすく、清々しい気分にさえなります。豊富な語彙と見識にも感心させられます。

いとうせいこうをよく知らなくても、植物に興味がなくても、どんな世代の人にも自信を持ってすすめられる面白さです。読んだらちょっと植物に優しくなれる気がします。

みんなのレビュー

爆笑必至。 植物に興味そんなになくてもいとうさんの執着ぶりに笑える。 でも植物好きなら、しかも、ベランダーなら、もっと笑える。そしてあるあるってなる。 アロエなんだから自分の傷くらい自分で治すべき。 なるほど。

ブックメーター

見仏記

読んでみて

今や人気シリーズともなった、いとうせいこうがみうらじゅんと「見仏」する本の一作目です。毎回二人の仏像の見方に度肝を抜かれ、みうらじゅんの魅力的な口絵も相まって、クスクス笑いながら読んでいます。何より真剣に楽しんで「見仏」している二人が微笑ましいです。

みうらじゅんは仏像マニアですが、いとうせいこうは門外漢だからこそ「そこに結びつける?!」と突っ込みたくなるような発想をするので、それがこの本の面白さを倍増させている気がします。仏像に「会いに」行けるように地図も載っているので、観光ガイドブックとしてもおすすめです。

みんなのレビュー

仏像を厳かなものとして神妙に、ではなくこんな風に楽しく見ていいんだ!という提案は見仏記以前にもあったんだろうか?

仏像は現在のように正面からではなく当時の人が下から拝むこと前提のパースで造られた、東北仏は京都から伝来する過程で独自の造型が加わったのでは等、みうらさんの「当時の人になる」見仏法は初めて読んだ時衝撃だった。

法要をコンサートになぞらえるセンスも独特。 そのように時に理にかない時に自由なみうらさん、対して観念的なイメージを走らせるいとうさん、二人の妄想の力のバランスが魅力的。

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社会について考えさせられる本

国境なき医師団を見に行く

読んでみて

いとうせいこうは、社会問題にきちんと向き合い、問いかける姿勢を大切にする作家だと感じます。自分の立場を踏まえた上でできることは何かを問い続け、実行に移す強い意思は、ノブレス・オブリージュに通じる信念のようにも思いますが、それが色濃く出ているのがこの作品でしょう。

国境なき医師団という名前は聞いたことがあっても、よく知らないという人が多いですが、いとうせいこう自身が現地に赴き、感じたことを書くことで、幅広い層に伝えることができた良書です。「彼らは自分だ」という、いとうせいこうの一言が、他人事ではないと気づかせてくれます。

みんなのレビュー

Yahoo!連載中~チラチラ読んでいました。国境なき医師団=MSFを、いとう氏の取材で読める幸せ。「善行を見て偽善とバカにする者は、生き延びた者の胸張り裂けそうな悲しみや苦しみを見たことがないのだ。」歳を重ねてなお柔らかい彼の感性で描写される、スタッフや難民の方々。

ハイチ、ギリシャ、フィリピン、ウガンダでの様子が、誠実な敬意をもって書かれています。大切なのは、心のシャッターを閉じず共感することだ、全てはそこから始まるのだ、と思いました。今、自分の出来ることを精一杯やろう、と改めて思わせてくれた本。

ブックメーター

想像ラジオ

読んでみて

いとうせいこうが東日本大震災と向き合って生まれた小説です。初版は震災からまだ2年後の2013年で、当時3.11をモチーフにした作品を出すのは批判も予想され、とても勇気がいるものだったと思います。結果的には野間文芸新人賞など数多くの賞を受賞した、いとうせいこうの代表作になりました。

死者とどう向き合えばいいのか、震災当時も今も折り合いがつかない人が多い中、この作品はそこに優しい手を差し伸べてくれています。いとうせいこう自身、当時は小説を書けないスランプ時期だったそうですが、今描かなければという、作家としての強い意思が生んだ傑作だと言えるでしょう。

みんなのレビュー

3.11東日本大震災の犠牲者や被災者の方々に対し、どういう風に哀悼や思いやりの気持ちを届けることができるのか?当時、民間ではボランティアや様々なアーチストたちが自分なりの活動で被災地の東北を支援していた。

文学は何かできるのだろうか、と思っていたが、こういう方法があったのですね。生者と死者が思い思いの想像力の電波を飛ばし周波数を合わせている。字面が表面的でなく、そこから奥深い思想の広がりがあるように感じた。 まさに「想像」力を働かせる大切さを気づかせてくれる物語。

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言葉の面白さを楽しめる本

能・狂言/説経節/曾根崎心中/女殺油地獄/菅原伝授手習鑑/義経千本桜/仮名手本忠臣蔵 (池澤夏樹=個人編集 日本文学全集10)

読んでみて

作家の池澤夏樹が編集している日本文学全集のうちの一冊。いとうせいこうは「曽根崎心中」の訳を担当しています。原作者である近松門左衛門の作品の音の響きやリズムはとにかく心地良く、つい身を委ねてしまうものです。いとうせいこうはその良さを損なうことなく現代語訳していて、流石だと思いました。

いとうせいこうが浄瑠璃に精通していることを知る人は少ないかもしれませんが、その知識に加え、言葉の選び方がラッパーや演劇人としての才能を感じさせてくれる作品です。いとうせいこうの、近松門左衛門への愛情がひしひしと伝わってきました。

みんなのレビュー

初読。図書館。現代語訳を担当した作家さんのラインナップが華やか。人気作家であり、歌舞伎や文楽に造詣のある方ばかり。素人にはぶっ飛んだ自由奔放に思える訳は楽しく、浄瑠璃5編は文楽や歌舞伎で途切れ途切れに見ていたので、おさらいにもよかった。

能は必ず眠くなるので敬遠していたが、これを読んで十分な予習をして再挑戦してみたくなるほど引き込まれた。訳者あとがきや解題もしっかりしていて、勉強になりました。

honto

解体屋外伝

読んでみて

いとうせいこうの小説の大半は、読み慣れていない人には難しく感じるかもしれません。しかし、その中でも本作は最も読みやすく、冒険ものでエンタメ性の高いストーリーだと思います。SF小説ですが、言葉遊びの面白さに溢れていて、そこを楽しめる人はどんどんのめり込んでいく世界観でしょう。

「暗示の外に出ろ」という印象的なセリフは、初めて読んだ時には鳥肌が立ちました。言葉の力をリアルに感じた瞬間だったように思います。

みんなのレビュー

とにかく面白い。世界観はワールズ・エンド・ガーデンの方が私にはとっつきやすかったけれど、世界が言葉で出来ている、ということを改めて感じた。

いくつか心にぐっとくるフレーズがあって、それは冷静に読むと少し気恥ずかしい言葉遣いのものだったりするんだけれど、気恥ずかしさを取り払う強さと、ぐっとくる言葉独特の普遍性を感じた。若いうちに読むと、もっと心にまっすぐ入ってくるんだろうなあと思った。

ブックメーター

まとめ

手に取ってみようと思った本はありましたか?

迷ったらまずは「ボタニカル・ライフ ー 植物生活」をおすすめします。これはNHKにより「植物男子ベランダー」という題名でドラマも作られているので、それを先に見るのも良いですね。人気番組でシリーズ化もされました。「見仏記」も「TV見仏記」として映像化され、現在も続いています。

また、「解体屋外伝」は「ウルトラバロック・デプログラマー」という題名で浅田寅ヲにより漫画化もされています。こちらも大変人気がある作品で、もし小説に読みづらさを感じたら、漫画から読んでみるとわかりやすいかもしれません。

ラッパーや俳優など、様々な顔を持ついとうせいこうですが、全てに共通して言えることは、言葉の持つ力も、そして怖さもよく理解している人だということです。著書を読むとそれがよくわかります。

これらの本をきっかけに、普段見過ごしがちな言葉そのものに目を向けて、充実した読書時間を過ごしてもらえたら、とても嬉しいです。

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