「三浦しをんの小説はどれが読みやすいかな?」
「三浦しをんのエッセイも読んでみたいけれど、何がいいのかな?」
三浦しをんの本を読んでみたいと思ってAmazonで検索すると、共著を含めてたくさんの本が出てくるので、どれから読んだらいいのか困ってしまいますよね。最初は筆者も、題名だけ見ても小説なのかエッセイなのか区別がつかず、いちいち調べて探していた記憶があります。
雑誌で三浦しをんのインタビューを読んで以来、そのざっくばらんな人柄と独特で面白い視点に魅せられ、新刊が出ると必ずチェックしている筆者が、最もおすすめな三浦しをんの作品を、今回は「代表作」「ディープな世界へ誘う本」「爆笑エッセイ」の3つの切り口に分けて6冊ご紹介します。
代表作
舟を編む
読んでみて
辞書を編纂する仕事に携わる、愛おしくなるほどの個性に溢れた人たちの物語です。一つの言葉に拘り続ける姿は可笑しくもありますが、一生をかけて仕事に向き合っている姿はとても眩しく、いつまでも見ていたくなります。
一つの表現にそんなに執着しなくてもいいのでは?と考える人もいるかもしれませんが、SNSの普及で、社会に対して気軽に言葉を発せられる世の中であるからこそ、言葉にもっと関心を持つべきだと思います。そういう意味でも、今だからこそおすすめしたい本です。
みんなのレビュー
面白かった。辞書という地味な、でもないと困る書籍作りの情熱も伝わってきたが、周りのキャラが良い。前半出でてくる西岡君と、後半の岸辺さんが共に良い。こういう人がいると自然と現場は盛り上がるよなぁと感心してしまった。
特に西岡君、良いヤツだなぁ。また、最後の完成までの追い込み部分と松本先生のくだりが生まれてくるモノと消えゆくモノの対比のようで自然と熱くなった。 「何かを生み出すには言葉が必要」このフレーズだけで自国語を大事にしようという気にさせる。 賞を貰うだけのことはある。楽しい作品でした。
honto
風が強く吹いている
読んでみて
三浦しをんは登場人物の描き方が巧みで、ある意味落ちこぼれのような人でも何故だか応援したくなり、いつの間にか小説の世界にどっぷり浸かっている自分がいます。この作品はその筆頭で、読み始めたら時が経つのも忘れてしまい、三浦しをんに嵌められた!と思ったものです。
陸上競技に縁がなかった若者たちが、箱根駅伝という無謀ともいえる夢に立ち向かう青春小説です。逆風もたくさんある中で、でも単純に楽しいから走るという気持ちを大切にしているところがとても爽やかで、清々しい読了感でした。これを読むと、お正月の箱根駅伝がさらに面白くなるでしょう。
みんなのレビュー
スポーツが苦手なのでずっと敬遠していた作品。でも読み終わった後はなんで今まで読まなかったんだろと思いました。ザ、判官贔屓という物語ですが、私は一所懸命な人間が好きなので、その懸命さを笑う人間のことを好きになれません。
10人の走者が登場しますが混乱することなくキャラが分かりやすいのが作者さんのすごいところ。映画化やマンガ化がされていますが心理描写が素晴らしく、この作品はぜひ小説で読んで欲しいと思いました。がむしゃらに前へと進む人間は美しい。
ブックメーター
まほろ駅前狂騒曲
読んでみて
多田と行天という、人生全く上手くいっていない便利屋をしている2人の男が主人公の、シリーズ作品完結編です。バディものの小説は凹凸コンビが魅力の一つですが、この二人の凹凸の差は激しすぎて面白いです。振り回される多田に同情する一方で、行天の意味不明さにも何故か惹かれてしまいます。
最初は軽い読み物と思っていましたが、シリーズを読み進めるうちにホロリとさせられる展開もあって、最後はこの二人の関係性を羨ましく感じました。個人的にはこの最終巻が一番良かったです。人生は、こんな出会いがあるから面白いと思います。
みんなのレビュー
ずっと500ページしかない、もう終わってしまうという気持ちで読んでいた。序盤からクライマックスの連続。文句をつけるなら、いいシーンが多すぎて感想をまとめきれない!というところか。
もちろん今作もビル爆破予告のような「いかにも」な大事件は起きない。ともすれば日常にもありそうな小さな出来事の積み重ねで、人々の感情の変化や、成長と再生を描き出している。
きっとこれからも色々あるだろうけど、多田と行天はもう大丈夫、というところで幕が降りる。僕も自分の挫折から再生すべく今日を生きよう、と素直に感じられる物語だった。
ブックメーター
ディープな世界へ誘う本
仏果を得ず
読んでみて
文楽に目覚めた青年が、義太夫を目指し、修行しながら成長していく物語です。文楽というと難しそうな印象もあるかもしれませんが、若者らしい恋も描かれ、とても読みやすいです。
個人的に大好きな文楽の小説と聞いて読み始めたのですが、文楽の世界をこれほどまでにわかりやすく、魅力的に描いた作品を書いてくれたことに、古典芸能を愛する者として心から感謝しました。文楽を見たことがない人も、これを読めばきっと見たくなると思います。
みんなのレビュー
傑作です!裏表紙に書いてあったとおりでした。業と欲の間でなんとか生きていく人間。そのどの生き方も否定しない三浦しをんさんの描き方は違和感なく胸に伝わってきます。人形浄瑠璃・文楽は全く知りませんが、ぜんぜん問題ありません。文楽が人の心を捉えるわけもこの本の中にあります。
ブックメーター
黄金の丘で君と転げまわりたいのだ 進め マイワイン道!
読んでみて
ワインに関わる仕事をしていた時、ワインの個性を語るには、語彙力と表現力が必要なことを痛切に感じていました。ワインの知識ももちろん大切ですが、その味わいや香り、色をどんなふうに例えるかで、そのワインの魅力は何倍にも膨れ上がったりするものです。
この本は、アルコールならなんでも良いと言い切るほど、ワイン超初心者の三浦しをんが、ワイン研究家の岡元麻理恵に学ぶ勉強会(飲み会?)をまとめたものです。岡元先生の解説はわかりやすいですが、やはり三浦しをんならではの独特な表現力が、ワインの面白さを引き立てていました。
みんなのレビュー
三浦しをんさんのワイン本。特技「お酒」が物凄く羨ましい。酒豪が集まるワインを楽しく飲みながら勉強する会の議事録?出版関係者の集まりだから、ワインの世界で正しいかは別にして、表現が豊か。酔っ払いのエッセイとちゃんと先生の解説の2部構成で、笑って学べるワインを楽しみたい人にオススメのワイン本。
ブックメーター
爆笑エッセイ
悶絶スパイラル
読んでみて
三浦しをんの趣味嗜好が満載のエッセイです。エッセイは何冊も出版されていて、どれも抱腹絶倒この上ないものの、個人的に一番ツボだったのがこの一冊です。疲れている時、何もかも忘れて大笑いしたい時、これを読めば楽になれます。
三浦しをん本人もかなりぶっ飛んでいますが、出てくる登場人物たちもかなりの個性派揃いで、内容が濃すぎて人によってはついていけないかもしれません。しかし逆に一冊でも読んでいて笑いが止まらなければ、三浦しをんのエッセイはどれも楽しめること請負です。
みんなのレビュー
しをんさんのエッセイは人前で読めない。つい笑ってしまうからである。キ〇キのくだり、「愛のかたまり」と来たら「溺愛ロジック」だろう…!と思っていたら、まさにその流れで笑った。「メゾン・ド・ヒミコ」は良い映画だったし、オダギリジョーは本当に良かったなぁと懐かしく振り返りつつ、確かにシャツインしてたわ!とまた笑う。
漫画ネタはどれも面白かったが、ジョジョの台詞だけで進む会話が一番ツボだったかな。御本人も周りのお友達の面白さも安定のまま。趣味に走る人生の何が悪いのか。いつまでもこのまま突っ走ってもらいたいものだ。
ブックメーター
まとめ
心惹かれる本はありましたか?
三浦しをんの作品は、映画やアニメ、漫画としても多くの作品が親しまれています。中でも映画「舟を編む」は、日本アカデミー賞にも輝いた映画としての評価も高い作品でした。原作とともに映画もおすすめです。
「まほろ駅前」シリーズは映画とドラマで映像化され、多田を永山瑛太が、行天を松田龍平が演じていました。若い頃から共演を重ねてきた二人だからこそ取れるバランスの良さが、この映像化の成功ポイントだった気がします。気負わず見られるので、原作を読む前に見てもいいですね。
三浦しをんは、物事を見る角度が変わっています。意識的なのかもしれませんが、そうすることで多くの人が見過ごしている物事の面白みが見つけられるのでしょう。見方を変えれば印象も変わり、辛いことも楽しく感じられるものです。三浦しをんの作品を読むと、楽しく生きるヒントを教えてもらっている気がしてきます。