「生物史に関心があるけど、どんな本から読めばいいの?」
書店や書籍サイトにあるたくさんの生物史・生物の歴史関連の本を前に、そんなことを考えている人も多いのではないでしょうか?
そのようなあなたのために、この記事では、生物の歴史を愛してやまない筆者が、日本で出版されている生物史に関するおすすめの本を7冊厳選してご紹介します。
ぜひ参考にしてみてください。
この記事を書いた人
一橋大卒 歴史学専攻
Rekisiru編集部、京藤 一葉(きょうとういちよう)。一橋大学にて大学院含め6年間歴史学を研究。専攻は世界史の近代〜現代。卒業後は出版業界に就職。世界史・日本史含め多岐に渡る編集業務に従事。その後、結婚を境に地方移住し、現在はWebメディアで編集者に従事。
7位:進化とはなんだろうか
読んでみて
生物史を理解する上で重要な進化学について、難しい記述などはほとんどなく具体例を多く出しながら基礎的な部分を丁寧に解説されているため、生物学や進化学の入門書として最適な本です。
生物の適応や淘汰のエピソードは面白く読めますし、「進化」と聞いてよく誤解される「進化には目的・意味がある」といった「進化」に対する誤解も正してくれるため、生物学をこれまで学んだことのない人にとっても一読の価値があります。
こんな人におすすめ
- 生物学を全く勉強したことがない人
- 生物の進化に興味がある人
レビュー
学生のとき生物学を選択しなかったので生物学オンチな私ですが、進化論の話に全くついていけないのはまずいと思い本書を手に取りました。恥ずかしながらDNAや遺伝子の話も知らなかったので勉強になりました。自然淘汰というと種が減っていいくイメージを持っていましたが、逆に種の多様化につながっているという説明がわかりやすかったです。難しい話ばかりでなく実に見事に環境に適応している動物たちの生態の話など好奇心がそそられる話もあり飽きずに読むことができました。
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6位:分子からみた生物進化 DNAが明かす生物の歴史 (ブルーバックス)
読んでみて
生物史上での色々な論争が分子遺伝学によって解決されるエピソードが多く書かれている本です。他の生物史の本でどのような論争があったのかを知っているとより楽しめる本です。
分子遺伝学は、いま生きている生物のDNAを解析することで進化の過程を推測する学問です。ところどころ説明が詳細になり難しい部分がありますが、興味のある部分を読んでいくだけでも分子遺伝学の基礎から最先端まで知ることもできます。
こんな人におすすめ
- 生物学史上の論争をある程度把握している人
- DNA・遺伝子といったキーワードに興味がある人
レビュー
科学の分野における最先端の知見というものは、専門外の人ではなかなか近づけないものだろうと思っていたが、本著では平易に説明されており、楽しく読ませて頂いた。もちろん、サラッと読んだだけでは(深く読んでも?)分からない細かい説明も多いが、文章の途中の所々で簡単な要約があるため、概念として理解するのに支障はないと思う。そういった意味では難しいところは読み飛ばしても大筋は把握できるだろう。
本著の構成としては、進化論についての歴史(第1章)から、分子進化論の概念の説明(2章から7章)、最近のトピックスや論点など(8章から14章)、分子系統進化学(15章から22章)という構成になっている。本著全体を通して、進化という深淵な世界を、哲学/宗教から脱して、科学(分子)の観点から解き明かしており、知的好奇心をくすぐられた。文章の所々や第13章で(マクロレベルの)ダーウィンの自然選択説と(ミクロレベルの)分子進化の中立説が対比されており面白い。また、様々な発見・解明の過程・方法が書かれており、当時の研究者たちの熱い息吹が感じられ興奮した。
「分子時計」「オス駆動進化説」「カンブリア爆発」などは、面白い概念・事実であり新鮮だった。
表紙にアノマロカリスが書かれているが、以前にアノマロカリス解明のドキュメンタリー番組を見て感動したのを思い出し、カンブリア爆発の章と結び付いて嬉しかった。
学校の授業でもサラッと進化論が出てくるが、こういう本を読むと関心が高まるのではと思う。
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5位:生物学の歴史 (講談社学術文庫)
読んでみて
生物史の本として、医科大学の教授でもありSF作家でもあるアイザック・アシモフがまとめた本です。著者は作家ということだけあって、生物史の古代ギリシャから近代20世紀に至るまで非常に幅広いトピックが分かりやすくコンパクトにまとめられた本です。
また、学術本のような文体の堅さはなく最後までワクワクしながら読み進めることができます。約50年前の本ですが20世紀までの生物史の流れ全体を俯瞰できるため、生物学をそこまで詳しく知らない人が生物学を理解するのにも最適です。
こんな人におすすめ
- 生物学の流れを俯瞰したい人
- 生物学を昔勉強したことがある人
レビュー
今我々が常識と思っている生物学の知識、例えば自然発生の否定や生気論の否定、あるいはもっと素朴にたんぱく質やビタミン、細菌といった知識は一体いつどのように見つかってきたのだろうか。
著名なSF作家であり生化学者でもあるアイザック・アシモフが、生物学のたどってきた道のりをコンパクトに見せてくれる。扱う歴史の長さは、ヒポクラテスの時代からワトソン・クリックのDNA二重らせん構造の発見までと非常に長い。
しかし、古代と中世はそれぞれ一章ずつ、ページ数にすると40ページに満たない長さで、ウェイトは近代以降が圧倒的に重い。
特徴としては、筆者が生化学を専門にしているということもあり、進化などの一般受けの良いトピックスよりも、地味な生化学反応の知見を多めに取り扱っているという点が挙げられよう。
例えば有機物・無機物を巡る議論や代謝、たんぱく質の発見と分離などが詳しく扱われている。記述の仕方は、現在の生物学の知見に沿わせて、その「正解」にだれが至ったかという感じの書き方になっている。
そのためかなり「進歩史観」的ではあり、また時代背景や当時の共通認識などの扱いは少なめとなっている。科学事実を軸にしているため、科学者の人物像もあまり掘り下げはなされていない。代わりに、トリビア的な幅広い薀蓄話が取り入れられているという印象である。類書ではないが、医療にやや寄せて、また歴史以外の扱いも多くてよいならば医学概論 (ちくま学芸文庫)にも思ったよりも同様の話題は多く出ており、こちらの方が思想的背景などは多く出ているので、進歩史観が鼻についた人はこちらを読んでみるのもいいだろう。
ともあれ、コンパクトに手堅くまとまった生物学史という印象で、悪くない本ではあると思う
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4位:歌うカタツムリ-進化とらせんの物語 (岩波科学ライブラリー)
読んでみて
タイトルからは少し想像しづらいかもしれませんが、しっかりと生物史上の論争の歴史を描いた本です。カタツムリは殻の形状や色が個体群ごとに差異があるため進化学の研究題材として適しているそうです。そんなカタツムリを中心に繰り広げられる研修者達の論争がドラマティックに描かれている本です。
著者自身も研究者であり、内容の信憑性には問題はありません。また、非常に読みやすい文章で最後まで好奇心に従って読むことができます。最後まで読むと本書のタイトルである「歌うカタツムリ」についても謎が解決されるので、ぜひ最後まで読むことをおすすめします。
こんな人におすすめ
- 生物進化学の歴史が好きな人
- 研究者の人間ドラマに興味がある人
レビュー
素晴らしいの一言に尽きる。日本にもサイエンスライターを自称する人は多数いるが、たいがいは文章も書ける、というレベルで、欧米の本職サイエンスライターとは文章力、構成力、取材力、そしてそもそものサイエンスの知識において、雲泥の差があるのが普通だ。
そんな中、本書は欧米の第1級のサイエンスライターと遜色ない力量を示している。これまでどんな本を書いてこられたのかと、略歴を見てみるとほとんど本書が一般向けの初めての本のようだ。そんなことってあるのかとビックリしてamazonで検索してみたが、どうやら本当らしい。すごい新人が登場したと思ったが、経歴を見るともう大ベテランの研究者だった。いろいろ良い意味で驚かされる良書である。
・・・と思っていたら毎日出版文化賞を受賞されたとか。おめでとうございます。
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3位:種の起源(上)
読んでみて
知らない人はいないだろう、というくらい有名な、ダーウィンの「種の起源」。古典ですが、非常に読みやすく論理的でわかりやすいです。
生物学や生物史が気になる人のみならず誰もが読むべき書物ではないでしょうか?これを読まずして生命は語れない。
こんな人におすすめ
- 進化論に興味がある人
- 人間という生物がどうして生き残れたのか知りたい人
レビュー
なんか話題なので、動物とか進化とかについて学ぶ
— Masaya Nakamuta (@masaya_nakamuta) October 1, 2019
左から読み進めているけど、『21世紀に読む「種の起原」』が、とても面白い
ぶっちゃ進化論って、聞いたことはあるけど、まともに読んだり学んだことないやつ
ソロモンの指環、利己的な遺伝子、ことばの起源は、少し前に読んだことある pic.twitter.com/srmVjjEQNK
2位:生命の歴史は繰り返すのか?ー進化の偶然と必然のナゾに実験で挑む
読んでみて
この本は単に生物の進化の過程が記述されている本ではありません。実際に行われた進化実験と学者立ちが繰り広げた生物進化についての論争、ウイルスや細菌の進化、そしてさらには地球外生命体についての考察など、生物史上の学者達の人間ドラマや進化学・遺伝学のロマンが描かれた本です。
読み進めるにつれて謎解きのような要素が多くなり、筆者の軽妙な書きぶりと相まって興味深い生物史上の物語にどんどん引き込まれます。
こんな人におすすめ
- 生物学・進化学に興味がある人
- 学者達の人間ドラマに興味がある人
みんなのレビュー
「淵にグッピーを放すと生態系に重大な変化が起きることがわかってきた」
放す前にわかるわ!
この本は真面目な遺伝学の本だが、実験をする学者の行動がとにかく面白い。
上の実験はグッピーの体色、模様、行動の変化を観察したかったそうだ。野生のグッピーを捕まえてきて養殖、捕食者(パイクシクリッド)と同じ水槽にしたりもしている。別のグループはトカゲだ。
捕食者(ゼンマイトカゲ)がいるとアノールトカゲの足が短くなり、木に逃げやすく進化することを確かめるために、本来はその島には存在しないゼンマイトカゲを放した。
お前もすんのかい!
そして、巨大ハリケーン「フロイド」により島は6時間ほど海に沈み、トカゲは全滅する。
まさしく「自然淘汰」だ。懲りない彼らは違う12の島全部のトカゲを捕まえ、識別のためゴム色素を注入した。そして、再度ゼンマイトカゲを6つの島に放す。
この実験は数年でトカゲが進化するといった快挙を記録したが、ハリケーン「フランシス」、「ジーン」のダブルパンチを喰らいトカゲは全滅した。遺伝の本として読んでも面白いですが、学者の行動に注目してみるともっと面白い。
こんな学者・・ダメじゃん
いえいえ、こんなんじゃないと新発見は出来ないんです!
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1位:35億年のスーパー絵巻~生物が始まってからの全歴史をひと目で見る~
読んでみて
絵本とタイトルに書いてあるので「幼児向けなのかな・・・」と思ってしまったらもったいないです。長さ2メートルの年表いっぱいに広がる生物の全歴史を楽しむスーパー絵巻です。
先カンブリア紀から新第三紀・第四紀まで、 生物の進化の過程を美しいイラストとともに楽しみながら学べます。 各時代の生物たちの誕生話も必見です。大人向けのプレゼントとしてもありな35億年の壮大な生命の物語を巡る新感覚の絵本です。
こんな人におすすめ
- 生物学・進化学に興味がある人
- 文字が苦手でライトに生物史を学びたい人
レビュー
最近だとこれがグイグイ心に来た☺️
— gimix (@u3_rk0f) April 19, 2018
35億年のスーパー絵巻~生物が始まってからの全歴史をひと目で見る~ エクスナレッジ https://t.co/luuebvp98l @amazonJPより
まとめ
いかがでしたでしょうか?生物史に関する書籍を紹介しました。
どの本を買えば良いか分からなかったら、1冊目で紹介した「35億年のスーパー絵巻」を手にとってみてはいかがでしょうか。
情報量も豊富で、読みやすく包括的に学べると思います。以上、生物史の書籍をまとめました。