「乙一の本を読んでみたいけれど、どれから読んだらいいのかわからない…」
「乙一の本で面白い本ってどれだろう?」
弱冠16歳が書いたとは思えない印象的なデビュー作を筆頭に、数々の物語で人々を魅了してきた作家、乙一。
背筋が凍るようなホラー作品の執筆が目立ちますが、一方で寂しさを抱えた人の心に寄り添う作品や、クスりと笑えるような場面、思わずほっこりしてしまうストーリーなど、幅広い作品数で多くの読者を魅了しています。
特に終盤に衝撃のどんでん返しを含む作品を得意とし、どの物語も予測不可能な展開も見どころのひとつです。作風も幅広く、ファンの間では独特のサスペンス・ホラー作品を「黒乙一」、せつなさの残る作品を「白乙一」と分類しています。
今回は乙一の描く世界観にどっぷりハマリ込んだ私が、「初めての一冊におすすめ」「サスペンス・ホラー編」「切なさが残る作品編」の3つの特徴に分けてご紹介します。
初めての一冊におすすめ
夏と花火と私の死体
読んでみて
主人公はまさかの死体。9歳の女の子五月(さつき)は友達の弥生ちゃんに殺されてしまい、弥生ちゃんとお兄さんの健くんの2人が五月の死体を隠そうと奔走する4日間を、死体となった五月の目線で語られるという斬新なストーリーです。本作から乙一の世界観にハマったという方も多いでしょう。
乙一のデビュー作である本作は、弱冠16歳で執筆したとは思えないほどの独特の視点、誰も予測のつかない展開が魅力です。短いストーリーに少ない登場人物で一気に読まされ、衝撃のラストが待っています。初心者にもおすすめの一冊です。
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暗いところで待ち合わせ
読んでみて
映像化もされた本作は、心温まる物語として乙一の作品の中でも人気の高い一作です。視力をなくしたミチルの家に、事件の犯人として追われるアキヒロが逃げ込むことではじまった、奇妙な同棲生活をメインにストーリーが展開します。
アキヒロがいることに気づいたミチルがアキヒロの分のご飯を用意したり、ミチルが家の中で怪我をしそうになるとアキヒロがこっそり助けてくれたり、といった小さな思いやりが、2人の距離を近づけていく様子にほっこり。読み終わると、なんだかやさしい気持ちになれます。
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サスペンス・ホラー編
GOTH―リストカット事件
読んでみて
人間の暗い側面に惹かれる主人公の「僕」と森野夜という美少女が、異常犯罪に巻き込まれていく連作短編集です。手首のみを持ち去るという奇妙な犯罪を追う表題作の「リストカット事件」をはじめ、残酷な描写や異常な犯罪心理を全面に押し出しているのが特徴です。
乙一の得意とする小説ならではの文章トリックや、他に類を見ない犯罪の異常さに驚かされるのはもちろんのこと、本作の魅力は主人公が最も異常なのでは?と思わせるところでしょう。異常な感覚を持った主人公と共にダークな世界観に浸ってみたい方におすすめです。
みんなのレビュー
ZOO
読んでみて
乙一独特の世界観を、10の短編でたっぷり堪能できる一冊です。恋人の腐乱死体の写真が送られてくる男が犯人を探す表題作の「ZOO」をはじめ、グロテスクな描写や奇妙な設定、登場人物の異常さが描かれる話が連なり、全体に漂う気味の悪さがクセになります。
とはいえすべてが恐怖に彩られた作品かというとそうでもありません。「陽だまりの詩」はせつなさが残りますし、「血液を探せ!」「落ちる飛行機の中で」はぎょっとさせられる設定をコミカルに描いています。初期の乙一の作風がすべて詰まった一冊ともいえるでしょう。
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切なさが残る作品編
きみにしか聞こえない -CALLING YOU-
読んでみて
「黒い」乙一作品とは打って変わって、「せつなさの達人」と評される短編が収録されています。表題作の「Calling You」はひとりぼっちの主人公が頭の中にある想像の電話で秘密の友達との通話を楽しむ話で、涙なくしては読めないラストが待ち受けています。
表題作と同様実写映画化もされた「傷-KIDZ-」も「華歌」も、日常の風景に奇妙な設定が溶け込んでいて、独特の世界観に引き込まれてしまいます。気づけばすっかり感情移入してしまい、読者の心を揺さぶり、つかんで離しません。
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さみしさの周波数
読んでみて
読み終えると「さみしさ」で胸がいっぱいになる短編集です。結婚を「予報」された男女のすれ違いを描く「未来予報」、どこかシュールな「手を握る泥棒の物語」、ホラーからせつないラストへとつなげる「フィルムの中の少女」、右腕以外の感覚を失った男が主人公の「失はれる物語」。
短編を得意とする乙一の作品の中でも、特に涙なしでは読めない作品ばかりが集まっています。乙一の奇想天外な発想から生まれる独特の舞台設定が、読者を世界観にしっかりと惹き込み、短編とは思えない濃厚な時間を味わわせてくれます。
みんなのレビュー
まとめ
乙一の本を「初心者向け」「サスペンス・ホラー編」「切なさの残る作品編」の特徴に分けてご紹介しました。いかがでしたでしょうか。
ダークな世界観が好みの方には「」サスペンス・ホラー編」、せつなさに酔いしれたいという方には「切なさの残る作品編」がおすすめです。
初めて読まれる方は、乙一の独特の世界観や斬新な切り口が特徴の本で、乙一という作家の幅広さを体感する事ができるはずです。
この記事が、皆さんの読書のお役に立てれば幸いです。