ブラックホールとは?仕組みや大きさ、でき方をわかりやすく簡単に解説

ブラックホールという言葉を聞いて、あなたはどのようなイメージを思い浮かべますか?「怖い」「大きい」「真っ暗」など、さまざまなイメージがあると思います。

「ブラックホール」という言葉が世界中に広まったのは、実は1967年のことです。ブラックホールは非常に重く、重力の強い星で、そのほとんどが銀河の中心にあります。

ブラックホールには、物理学的な視点からだけでなく、天文学的な側面からも調査されています。謎の多いブラックホールですが、実は近年の探査船の調査により多くのことが判明しています。

この記事では、ブラックホールに関して、そもそもブラックホールとは何なのか?始まりから特徴、寿命などなど、その多くの謎を解説していきますので、是非最後までお付き合いください。

この記事を書いた人

一橋大卒 歴史学専攻

京藤 一葉

Rekisiru編集部、京藤 一葉(きょうとういちよう)。一橋大学にて大学院含め6年間歴史学を研究。専攻は世界史の近代〜現代。卒業後は出版業界に就職。世界史・日本史含め多岐に渡る編集業務に従事。その後、結婚を境に地方移住し、現在はWebメディアで編集者に従事。

ブラックホールとは

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ブラックホール

ブラックホールの誕生

星などの大きな天体が自分自身にかかる重さに耐え切れなくなると、重力により縮小していきます。これを「重力崩壊」と呼びます。

この現象は物理学的な観点により、星を構成する物質が縮んでいくのではなく、時空が歪んで縮んでいくと考えられています。そしてこの時空の歪みが光よりも早いスピードで起こった場合、この歪みに到達した光は歪みから逃げることができず、その場所は真っ黒の空間となります。これがブラックホールと言われる所以です。

一般的にブラックホールとなり得るのは大きな質量を持った恒星になります。恒星の中心では水素同士による核融合反応が行われ、大量のエネルギーを外へ放出しています。私たちのよく知る太陽も、この恒星の一つで、私たちは太陽の発するエネルギに多くの恩恵を受けています。そしてこの時に生成される放射量と重力のバランスが保たれることにより、恒星の核は安定して活動を続けます。

しかし恒星内部の水素はいずれ枯渇し、星はバランスを維持するために、水素同士の核融合反応でできたヘリウムなどの重い原子を使った核融合反応が起きるようになります。ヘリウムがなくなれば、ヘリウム同士の反応で起きた原子、この原子がなくなればさらに次へと、核融合反応を起こすようになり、最後には鉄ができます。

他の原子とは異なり、鉄は核融合反応が起きてもエネルギーを放出しません。エネルギーが放出されず、放射量と重力のバランスが崩れ、中心核が重力により小さく圧縮します。それにより、非常に重い質量を持つ中心核が生成され、星の終焉である超新星爆発が起きます。

超新星爆発の後は、中心核があった場所には高温かつ高密度の中性子星が誕生します。この星が重力崩壊を起こし、ブラックホールとなるのです。

ブラックホールの寿命

ブラックホールに寿命はあるのでしょうか?答えは「はい」です。

詳しく解明されているわけではありませんが、現在判明しているブラックホールの中には非常に質量が大きく、太陽の何十億倍もあるものもあります。一つの天体がこれだけ質量の大きいブラックホールを生み出したとは考えにくいため、ブラックホール同士で合体・融合して大きく成長しているのではないかと考えられています。

光でさえも飲みこんでしまうブラックホールですが、研究・調査により、どんなブラックホールであっても永遠に成長しつづけることはなく、寿命があることが判明しました。これは天文学・物理学において高名なスティーヴン・ホーキング博士が導き出した考えです。

スティーヴン・ウィリアム・ホーキング(1942~2018):イギリスの物理学者でホーキング放射の発見だけでなく、一般相対性理論の研究を前進させた。学生時代に患った筋委縮性側索硬化症(ALS)により「車椅子の物理学者」としても知られている。

一般的に天体は自分自身から熱エネルギーを放射しています。それはブラックホールも例外ではなく、少しずつエネルギーを放射しており、このエネルギーの喪失で徐々に縮小していきます。時間の経過とともに縮小していったブラックホールは、やがて蒸発し、なくなってしまうと考えられており、これを「ホーキング放射」と呼んでいます。

しかしブラックホールの消滅には非常に長い時間が必要です。太陽程度の質量を持つブラックホールが誕生後してから、蒸発し消滅するまでに、約10⁶⁷年必要とされています。私たちの概念をはるかに超えた時間が必要となり、ブラックホールの終わりを見ることのできる人はいないでしょうね。

ブラックホールの特徴

ブラックホールは実は非常に単純な天体です。というのも、他の天体や惑星、銀河はその質量や構成している原子・物質、距離など調べなくてはならないことが山ほどあります。それに対し、ブラックホールの性質を決めるためには3つのポイントで十分だからです。

質量

どんな天体にも質量はありますが、ブラックホールも例外ではありません。しかし一般的にブラックホールとなるためには非常に大きな質量が必要です。

例えば地球ほどの質量を持つ天体がブラックホールになったと仮定します。アインシュタインやシュバルツシルトたち先人の残した計算式に当てはめて計算すると、わずか9mmのブラックホールが誕生することになります。これはピンポン玉よりも小さいサイズです。

次に太陽ほどの質量を持つ天体がブラックホールになったと仮定しましょう。先ほどと同様にして計算すると、誕生するブラックホールの大きさは3kmとなります。

しかしながら、現実では地球や太陽がブラックホールにあることはありえません。それぞれ質量が軽すぎてしまい、重力崩壊が起きないためです。

地球と太陽の大きさ

実際に存在しているブラックホールは太陽の数十万倍、数百万倍もの質量を持つ天体が重力崩壊によって誕生しています。これまで観測された中で一番大きいブラックホールの質量は、なんと太陽の約100億倍もあります。

運動量

どんな天体にも自転による回転運動がみられます。回転をしているということは回転するための運動量が発生していることになります。そして回転する運動量を持った天体がブラックホールになったとき、そのブラックホールには必ず運動量が残ると考えられています。

ただし、回転する運動量はその天体によって異なってきます。速度の速い天体があれば、非常にのんびりとした速度の遅い天体もあるでしょう。そのような回転の遅い天体がブラックホールになった場合、運動量はほぼゼロに近いケースがあります。

電荷

原子の構成

全ての星を構成しているのは原子で構成されています。原子は陽子、中性子から成る原子核と、それを取り巻く電子でできています。陽子はプラスの電荷、電子はマイナスの電荷を持っており、星がブラックホールになった時、電荷を取り込むことになります。そのためブラックホールは電荷を持った状態であることが推測されています。

ブラックホールの発見

巨大ブラックホールの発見

初めて発見されたブラックホールは?

アインシュタインやシュバルツシルト、ほか多くの研究者たちにより、ブラックホールの理論的な研究は進みました。しかし実際に観測することは叶わず、誰もが本当にブラックホールが存在するのか不透明な中で研究は続けられてきました。そしてこの研究は意外な形で実ることとなります。

1963年、マーテン・シュミット(1929~)により非常に強い電波を発する天体の情報が発表されました。天体というのは強弱の差はあれ、すべて何らかの電磁波を発しています。観測された天体は今まで発見したことのない電磁波を発しており、非常に遠く地球から約40億光年も離れていることが判明しました。これを新種の天体とし、「クェーサー(quasar)」と呼ばれるようになりました。

クェーサー

クェーサーの調査をする中で、新しく判明したことがあります。クェーサーは膨大な電磁波エネルギーを発していること、またエネルギーを放射している部分が非常にコンパクトだということです。クェーサーのエネルギー源は何なのか、多くの研究者たちが頭を悩ませました。

そして3人の研究者によってクェーサーの正体が判明する時がきます。その3人とはエドウィン・サルピーター(1924~2008)、ヤーコフ・ゼルドヴィッチ(1914~1987)、ドナルド・リンデン・ベル(1935~2018)です。全員素晴らしい研究業績を残した研究者たちです。

彼らが研究によって導き出した結論は、クェーサーは天体ではなく、中心のブラックホールによって引き寄せられた大量のガスであるというものです。ブラックホールによって引き寄せられると、円盤状にガスが集まり、これを「降着円盤」と呼んでいます。

降着円盤によって周囲に集まったガスは絶えずブラックホールに供給され、エネルギーを生み出します。さらに生み出されたエネルギーが周囲のガスによって電磁波へ変換され、その電磁波で明るく輝くのです。

ブラックホールの観測はできなかったものの、初めてブラックホールに迫る発見ができたと大きく話題になりました。

その後の調査で発見されたブラックホール

その後も多くの研究者によって観測が続けられる中で、いくつかの天体がブラックホールではないかと候補に挙げられました。中でもはくちょう座V1357(V1357Cyg)という恒星は連星系をなしており、そのパートナーがブラックホールといわれています。

理由として、この星が発している放射線量が星の質量に見合わないためです。
したがってV1357Cygのパートナーである天体はブラックホールだと考えられています。

またガリレオ・ガリレイが初めて天体観測に望遠鏡を用いてから、多くの科学者や研究者たちが、より高性能な望遠鏡の開発に携わってきました。2016年、米国に設置された最新鋭のレーザー干渉計型重力波天文台LIGO(Laser Interferometer Gravitational wave Observratory)がブラックホール同士が合体するときに発するわずかな重力の歪みを感知しました。その歪みを発した天体の名はGW 150914といいます。

重力波天文台LIGO

ブラックホール同士が合体するときに発する歪みのことを重力波といいます。そして重力波はブラックホール同士が近づいていった時が最も大きくなり、合体と同時にゼロになり、この現象のことを「リング・ダウン現象」と呼んでいます。

最近新たにブラックホールが発見!?

公開されたブラックホールの姿

2019年4月10日、イベント・ホライズン・テレスコープという国際協力プロジェクトチームは世界6か所で同時に行われた記者会見において、巨大ブラックホールを観測・撮影に成功したことを発表しました。

今回撮影されたのは、おとめ座銀河団の楕円銀河M87の中心にある巨大ブラックホールです。このブラックホールは地球から約5500万光年離れた位置にあり、その質量は太陽の65億倍にもなります。

ブラックホールの撮影は人類史上初の快挙であり、今日まで観測を続けてきた取り組みの賜物でした。現在撮影された画像を用いて、さらなる解析が行われており、新しいブラックホールの一面が見えてくるかもしれませんね。

ブラックホールの分類

宇宙初期

原始ブラックホール

宇宙が誕生した直後はガスが不安定で、密度の薄い部分もあれば、逆に濃い部分もありました。ガスの濃い部分が重力崩壊し、最初のブラックホールである「原始ブラックホール(primordial black hole)」ができたと考えられています。

この原始ブラックホールは宇宙初期の限られた中で作られたため、地球とほぼ同じ程度の質量であったと考えられています。そのため形成されたブラックホールはわずか9mm程度の非常に小さいブラックホールのため、「マイクロ・ブラックホール」や「ミニ・ブラックホール」ともいわれています。

中質量ブラックホール

恒星からできたブラックホールと超大質量ブラックホールでは大きさが違い、その差は数桁以上にもなります。この広大な宇宙で、ブラックホールを探すときに大きな手がかりとなるのが、電磁波の観測です。そしてスターバースト銀河M82で強い電磁波が観測されました。

降着円盤から発する電磁波と合わせて量を測定した際に、太陽と比較すると1000倍程度の質量で、恒星起源のブラックホールと比較すると約100倍以上もの質量がありました。このブラックホールは「中質量ブラックホール」名付けられ、ブラックホール同士の合体により生成されると考えられています。

超大質量ブラックホール

天の川銀河-中心部に超大質量ブラックホールがあります

宇宙が誕生したばかりの頃、宇宙空間に漂うガス雲の主成分は水素とヘリウムでした。この水素とヘリウムは熱放射しにくい性質を持っていたため、ガス雲がより多く集まって放射していました。大量のガスが集まったことにより、その部分は重力崩壊し、ブラックホールが誕生します。

この時にできたブラックホールは太陽の質量と比較すると、およそ100倍程度といわれ、中質量ブラックホール程度の大きさでした。

大質量ブラックホールの生成にはいまだ謎の多い部分があり、解明しきれていないのが現状です。そんな中、英国のマーティン・リース(1942~)によって大質量ブラックホールの形成機構が発表されました。それによると大質量のガス雲が直接重力崩壊し、超大質量ブラックホールを形成するパターンと、大質量のガス雲から星団が生まれ、その星団が進化して超大質量ブラックホールを形成するパターンの2つの方法が大質量ブラックホールを形成するルートではないかとされています。

しかし最初の大質量のガス雲から超大質量ブラックホールが形成されるパターンは、実現しないと考えられています。なぜならば、ガス雲が集まって高密度になった場合、重力崩壊によって大質量ブラックホールが形成される前に恒星が誕生してしまうからです。

後者のガス雲から星団ができ、その星団が超大質量ブラックホールを形成したと考えるのが理論的に可能とされています。こちらは作られたブラックホールが周囲の星を飲み込み、どんどん巨大化していったパターンや中質量ブラックホール同士が合体して超大質量ブラックホールになったパターンなど、さまざまな可能性が考えられています。

超大質量ブラックホールの形成過程が判明した時、人類はよりブラックホールの謎に迫ることができるでしょう。

ブラックホールの謎

ブラックホールはどこにあるのか

一般的にブラックホールの多くは銀河の中心にあると考えられています。アンドロメダ銀河や天の川銀河など知名度の高い銀河もそれぞれ中心部には超大質量ブラックホールがあります。

ただし例外もあります。銀河にはその形を模して円盤状や楕円などの構造をしていますが、この構造を持たない銀河にはブラックホールはないとされています。例で挙げると、天の川銀河の衛星銀河である大マゼラン雲や小マゼラン雲です。これらは銀河としては規模が小さく、小さい銀河の場合は中心部にブラックホールを持ちません。

ブラックホールは成長するのか

ブラックホールは周囲のガス雲や星を飲みこむことで、質量を増していきます。近傍銀河の中心部にあるブラックホールたちを検証してみると、それぞれ40億~120億ほどの年齢差があることが判明し、年齢を重ねたブラックホールの方が年齢の若いブラックホールよりも重い質量であるということがわかっています。

またブラックホール同士の合体による成長もあるでしょう。この場合、中質量程度のブラックホール同士が合体することで大質量ブラックホールを生み出します。ブラックホールが合体し合うことで、周囲にあったガス雲だけでなく、星も飲みこむことで新たな銀河が形成されることもあります。

ブラックホールに関する本・書籍

この記事で手短にまとめてしまった部分もありますので、ブラックホールについて、多くの情報が掲載されている本や書籍をご紹介していきます。ぜひ参考にしてみてください。

ゼロからわかるブラックホール―空を歪める暗黒天体が吸い込み、輝き、噴出するメカニズム

ブラックホールの形成から超大質量ブラックホールの存在やブラックホールの発する電磁波、ホーキング放射まで、多くのブラックホールに関する事象がまとめられている良書です。著者の誰でもわかるようにという意図が明確で、入門書としてもおすすめの一冊です。

国立天文台教授が教える ブラックホールってすごいやつ

ブラックホール撮影にも関わった研究者である、本間希樹(ほんま まれき)さんの執筆した本になります。ブラックホールの存在だけでなく、ユーモアあふれる雑学もところどころに織り交ぜられており、楽しみながら読み進めることができます。

ブラックホールをのぞいてみたら

『ゼロからわかるブラックホール―空を歪める暗黒天体が吸い込み、輝き、噴出するメカニズム』を執筆した大須賀健さんの別の著書になります。ブラックホールのメカニズムがたくさんのイラストともに解説されています。特にブラックホールがなぜ光や天体、物を吸い込むのか、知りたい方にはおすすめです。

ブラックホールに関するまとめ

ブラックホールについて多くのことを解説してきました。いかがでしたでしょうか。

ほとんどの銀河の中心部に存在するブラックホールは天文学においては避けて通れない話題です。多くの観測データや膨大なエネルギー放射量などのたくさんの情報がブラックホールが実際に存在することを証明してくれています。

筆者もこの記事を執筆するにあたってブラックホールに関する書籍や文献を読み、改めて宇宙の広大さを感じることができました。研究者たちの日々の観測や調査によって、今は果てしなく遠い位置にあるブラックホールを身近に感じる事ができるようになる日も、そう遠くないかもしれませんね。

長い記事となりましたが、最後まで読んでいただき、ありがとうございました。
この記事を読んで、ブラックホールに興味を持っていただけましたら幸いです。

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