「映画の歴史を調べてみたいけどどの本がいいんだろう?」
「もうちょっとわかりやすい映画論が書かれた本ないのかな?」
Amazonの膨大に並ぶ書籍たちを前にこのようにお考えではないでしょうか?
実は筆者も同じような経験が過去にありました。手に取ったものの難しすぎて途中で投げ出してしまうことも多々。そこで、この記事ではおすすめの「映画史に関する書籍」をランキング形式で7冊ご紹介していきます。
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7位:見るレッスン 映画史特別講義
読んでみて
フランス文学者・映画評論家の蓮實重彦が2020年に出版した『見るレッスン 映画史特別講義』。初期のサイレント映画から現代にいたるまで、およそ120年もの映画の歴史をシンプルな語り口で紹介しています。
蓮實は「映画は自分の好きなものを自由に見ればいい」としながらも、「いい映画には必ずハッとする瞬間があり、それを逃してはならない」と語っています。その一瞬に触れられる映画に出会うためにも、こちらの本はおすすめです。
レビュー
6位:日本映画史110年
読んでみて
映画、文学、さらには都市論まで幅広い分野の批評家として活躍している四方田犬彦。こちらの『日本映画史110年』では、2000年に出版された四方田の著作『日本映画史100年』に新しい論考を加えた2014年の増補改訂版です。
黒澤明や小津安二郎の作品からアニメ映画まで、あらゆるジャンルの日本映画を論じた前作から10年以上が経ち、映画界はさらなる進化を遂げました。制作される映画の数も増えましたし、インターネットでの配信も劇的に増加しています。こちらの書籍は、そのような日本映画をめぐる近年の状況を踏まえて論考が加えられた1冊です。
レビュー
5位:別冊映画秘宝 平成大特撮 1989-2019
読んでみて
戦隊シリーズ、ガメラ、ゴジラ等々。日本の特撮映画が好きな人にはたまらない魅力に溢れた本です。
このジャンルにはコアなファンが多く、レビューでも評価が分かれているようですが、少ないバジェットで工夫しながら、クォリティを確保してきた日本の特撮映画の製作者たちには頭が下がります。
巻頭で軽く時代の流れを説明し、作品はジャンルごとに説明するなど、読みやすく構成されているのも嬉しいですね。
特撮ファンの方には一読の価値はある本です。
こんな人におすすめ
- ハリウッドのSFXより日本の特撮が好きな人
- 日本の特撮の進化を振り返りたい人
レビュー
「スーパー戦隊」、「メタルヒーロー」、「ゴジラ」、「ガメラ」、「ウルトラマン」、「平成ライダー」、「戦争映画」、「オカルト」、「クリーチャー」、「巨大特撮」、「牙狼GARO」、「等身大ヒーロー」、「エクストリーム・バイオレンス」、「ロボット」、「ヒロイン・ファンタジー」、「SF・ファンタジー」、「VFXの発展」、「実写化映画」、「一般映画の特撮」の章に別れており、それぞれに映画やTVドラマ、映像作品のレビューが掲載されている。
興味のある章から、作品レビューを読んでいるが、忘れていた作品や、知らなかった作品、興味深い作品を沢山発見出来た。純然たる特撮作品でなく、特撮が効果的に使われている一般の映画等がレビューで紹介されているのも良い。 もう一度見直したい作品、ぜひ一度見てみたい作品が多数見つかった。
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4位:最も危険なアメリカ映画 『國民の創生』から『バック・トゥ・ザ・フューチャー』まで
読んでみて
映画がプロパガンダの格好のツールであることは、ナチスドイツの例を引くまでもなく、誰でも知っている事実でしょう。
世界中の映画ファンが愛してやまないハリウッド映画の歴史にも、人種差別や世論の操作といった負の側面があることをあからさまに語った本です。
大ヒットした「バック・トゥ・ザ・フューチャー」や「フォレスト・ガンプ」の解釈には、不快感を感じる人がいるかもしれませんが、目からうろこが落ちるのも事実です。
世界をリードするハリウッド映画の裏面を知ることができる、読んで損のない本だと思います。
こんな人におすすめ
- アメリカ映画に何となくうさん臭さを感じたことがある人
- 物事を裏側から見ることが好きな人
レビュー
アメリカ在住の映画評論家である町山智浩氏。様々なメディアで拝見・拝聴する町山氏の映画評論は、映画そのもののみならず、映画の背景や歴史、製作現場やスタッフ・キャストの裏話、また、特にアメリカ文化の深堀りなども絡めながら、とても分かりやすく、生き生きと、そして時に生々しくもあり、映画好きの私としては、いつも楽しく味わい、そして学ばせていただいています。
そんな町山氏ならではの本書。アメリカの政治・経済・文化とその歴史を背景とした、「最も危険なアメリカ映画」たちが紹介されています。そして、取り上げられているテーマは、もちろん、同国の暗い、負の側面。
かつて『バック・トゥ・ザ・フューチャー』を何十回と鑑賞しまくってきた私。もちろん、本書で取り上げられているような背景や解釈など全く知らず、純粋なエンタメ作品としてたいへんお気に入りの作品でした。が、本書に触れると、これまでのような観方はできなくなってしまうように思います。それだけインパクトの強い本書。
本書における各章のメインに取り上げられている映画はあまり馴染みのないタイトルばかりでしたが、それも、本書で取り上げられている歴史・背景等から、さもありなん、と納得するところでもあります。
「アメリカ映画」と言えば、壮大なスケールで、華やかで、煌びやかな、いわゆる「ハリウッド映画」的なものを思い浮かべてしまいがち。しかしながら、歴史や背景を知ることで観方が180度変わってしまう。また、時代や距離がそれなりに離れてしまった我々までには届かない作品も多く存在していること。
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いろいろと学ばせていただくとともに、映画の世界の深さ・広さを改めて実感させられた本書です。
3位:映画秘宝COLLECTION決定版20世紀戦争映画クロニクル
読んでみて
この本は単なる戦争映画の紹介本ではありません。
コンセプトは戦争の歴史という年表の中に、戦争映画を動画として貼り付けていくというものです。
単純明快なコンセプトですが実に分かりやすく、「映画で歴史を知る」という欲求と「歴史をビジュアルで見る」という欲求を同時に満たしてくれる本だと言えます。
逆に言うと戦争映画の詳しい解説本として読んでしまうと、物足りなく感じるかもしれませんね。包括的にまとめられた歴史本であり映画本であるのは珍しく、一読の価値はあり、買って損はないと思います。
こんな人におすすめ
- 戦争史をビジュアル的に学びたい人
- 戦争映画を年表的に整理してみたい人
レビュー
戦争映画のカタログというよりも、戦争史を時系列的に追う本です。
映画秘宝でよく見かける著者の名前ですが、散発的な雑誌企画ではなく、一冊の単行本が上梓されたことはありがたいことです。登場するのは傑作・名作からB級マイナー作品まで多彩。いままで背景を考えずに見てきたさまざまな映画が、パズルのピースがはまるように歴史のなかに組み込まれていき、戦史に疎い自分の頭はだいぶ整理されました。さらに当然のことながら、知らない映画が大量に紹介されるので、今後の戦争映画鑑賞ライフに手放せない一冊になると思います。
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2位:映画館と観客の文化史
読んでみて
「映画の見方」が、多様化する現代。映画館で見ること以外に、DVDやブルーレイを借りてきて見たり、インターネットの配信サイトで見たり、TPOに合わせた楽しみ方ができる時代になりました。
それでも私たちはなぜ映画館に足を運ぶのでしょうか?巻き戻してみることも早送りすることも出来ないのに・・・
この本は「映画の見方の歴史という一点」に焦点を当てることによって、その疑問に明確に答えてくれます。
日米の映画館の比較論としても楽しめる本です。
こんな人におすすめ
- 映画が好きだけどなかなか映画館に足を運べない人
- 日米の映画館の歴史に興味がある人
レビュー
映画は映画館に行ってみるのがスタンダードな映画の見方だ、多くの人がそう思っているだろう。
しかし、現在のような映画館の在り方は、シネマ・コンプレックス形式が定着した80年代以降の話である。
ではそれまで、映画はどのように見られていたのだろうか。
本書で最初の映画として紹介されているのは、キネトスコープという覗き穴のついた箱で映像を一つ30秒ほど見るものであった(大体複数の箱が並んでおり連続してみる)。
移動カメラがなくピント固定のこの時代に30秒で切られる映像として人気を博したのがボクシングの試合であったという。このように本書では、リュミエール神格化は避け、非投影型の映画にも注意を払っている。
特に本書ではアメリカと日本の映画史が取り上げられる。
1900年前後の映画はヴォードヴィル劇場という、歌やダンス、奇術などの大規模パフォーマンスの一環として見られた。
1905年ごろから常設映画館ニッケルオディオンが生まれてくるが、そこでもフィルム架け替えの時間もあり、そのため早書きや合唱、ピアノなどのアトラクションは間間に盛り込まれており、人も出入りが激しく飲み散らかしも多い大衆的な空間であった。
当初のサイレントはこのようにちっとも静かには聞かれていなかったが、1910年少し前くらいのニッケルオディオン中期に説明者やセリフを述べる人が現れる。やや趣向は違うが1900~1910にはヘイルズ・ツアーズという、客車のようなものの中に入って世界各地の鉄道旅を見るというものも現れた。
1910年~30年ごろは映画内容に合わせて伴奏を入れる音楽的志向も現れている。1915年ごろからは1時間半ほどの長編映画が定着するとともに、設備の良い劇場が映画館化されニッケルオディオンは衰退し、また非常に豪華なピクチュア・パレスも現れる。 1930年代に入るとトーキーが現れ、ピクチュア・パレスが衰退する一方で中規模映画館が興隆する。
30~50年代には巨大駐車場の前に巨大スクリーンを置き、車の中にいながら映画を見るドライブ・イン・シアターが現れる。 遊園地が併設されて子供を遊ばせておいたり、売り子が売りに来たり、今の野球場に近いような施設とも見える。60年代にテレビが完全普及すると、一本集中で高収益を狙うブロックバスター方式(「ジョーズ」が嚆矢)が導入され、ショッピング的に自分の見たいタイミングで見たいものを選ぶシネマコンプレックスの流れもそれに合わせたものとなった。日本の方で弁士の出現、「クーラーがあること」が宣伝になった戦後すぐの状況、ハリウッドの荒廃した状況など、なかなか面白い話が多い。なにより、映画の見られ方というのが(古い映画でもDVDで見れてしまう今日ではなおさら)こんなに今と違ったのかと驚かされる。映画を見る人ならば本書を読んで損はないだろう。
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1位:イラストでわかる映画の歴史 いちばんやさしい映画教室
読んでみて
特定のジャンルに偏らずに、映画の歴史を一通り知りたいという人には、良い本です。かわいいイラストを中心に、映画の歴史を10年ごとに区切り2ページから4ページでまとめています。
時代ごとのカメラや色や音のつけ方などの技術の変遷、また映画館の歴史など、映画の歴史を知る入門書としてもってこいの本だと思います。
黒澤明監督が、資金不足からの撮影中断中ものんびりと釣りに興じていたとか、エピソードとして紹介される小ネタも楽しく、気軽に読める映画史の本ですね。
こんな人におすすめ
- 映画の歴史を一通り知りたい人
- 子供と一緒に楽しく映画の歴史を勉強したい人
レビュー
サンプルのイラストが可愛いので思わず購入。100年ちょっとの間に進化してきた映画にまつわる豆知識が豊富に詰まってます。
Amazon Review
時代ごとの代表する作品やカメラ機材、色・音の付け方、映画館の変遷などがわかり、歴史を知るにはもってこいの入門書です。(2001年宇宙の旅の「モノリス」のイラストには笑ってしまいました)
最後に
いかがでしたでしょうか?映画史に関する本を紹介させていただきました。
映画の通史にこだわらず、個人的に好きなジャンルに関する本も紹介しましたが、どれも読んで損はなく、映画鑑賞がもっと楽しくなること間違いなしです。
是非ご一読ください。