「プログレッシブロックってどんな音楽?」
「代表的なプログレッシブロックのバンドが知りたい」
「プログレッシブロックの名曲が知りたい」
日本ではプログレという呼び名で親しまれているプログレッシブロックですが、具体的にはどんな音楽かご存知ですか?
複雑なリズムやフレーズが使われたり10分を越えるような楽曲が少なくないので、一聴では難しく聞こえてしまうことがあります。しかし繰り返し聞いていくとミュージシャンたちの高い技術による演奏や、楽曲の持つ世界観がクセになってしまうジャンルでもあります。
この記事ではプログレッシブロックの特徴や代表的なバンド、聴いておいた方がいい名曲などを詳しく紹介します。
プログレッシブロックとはどんなジャンルなのか?
実験的・革新的なロック
プログレッシブは「実験的な」や「革新的な」などの意味を持つ英単語です。そのためサイケデリックロックの時代から様々な試みが行われてきました。革新的と言われる要因のひとつは他ジャンルとの融合でしょう。
中でもクラシック音楽と融合したものはシンフォニックロックとも呼ばれます。キース・エマーソンはクラシックの楽曲をロックバンド用にアレンジして演奏しています。
プログレッシブロックの草分け的バンドであるムーディー・ブルースはオーケストラとの共演で新しいロックの形を生み出しました。
またジャズとロックとの融合を試みたバンドもありました。イギリスのジャズロックバンドであるソフト・マシーンやアメリカの凄腕ジャズギタリストのジョン・マクラフリン率いるマハビシュヌ・オーケストラがそれにあたります。こちらはロックの激しさとジャズの即興性が合わさったものでした。
1970年代の産業ロックはシングルを発売してヒットさせる手法を使っていました。それに対してプログレッシブロックは作品全体にストーリーや意味を持たせ、芸術性を追求したコンセプト・アルバムと呼ばれる手法を取りました。
発祥はサイケデリックロックの影響プログレッシブロックの発祥
プログレッシブロックは1960年代後半に流行したサイケデリックロックから影響を受けて生まれました。サイケデリックロックとはドラッグによって引き起こされる幻覚を音で表現した音楽で、既存の価値観にとらわれない実験的な試みの数々がプログレッシブロックを生み出したと言えます。
しかしその流行は短く1960年代の終わりごろには勢いを失い衰退してしまいました。その後に台頭してきたのがハードロックとプログレッシブロックです。のちにプログレを代表するバンドとなる「ピンク・フロイド」も結成当時はサイケデリックロックを演奏していて、衰退とともにプログレッシブロックへと変化していきました。
プログレッシブロックの特徴
確かな演奏力で表現される複雑な楽曲
プログレッシブロックは7拍子や11拍子などの変拍子や拍子が変化する複合拍子で演奏されたり、一曲が10分を越えるような長い楽曲も少なくありません。演奏するにはかなりのテクニックを必要としますし、聞くのにも知識や経験が必要です。
そのため難しい音楽だと思われているのも事実です。しかし、難解な楽曲を難無く演奏しているミュージシャンたちの実力は本物で、それも含めてプログレッシブロックの魅力と言えます。その裏打ちされた演奏能力により、壮大でドラマチックな楽曲の表現が可能となります。
シンセサイザーなど最新技術の楽器を使用
当時の最新技術によって生み出された楽器を使用しているのも、プログレッシブロックの特徴のひとつです。中でも1960年代に現れ始めたシンセサイザーやメロトロンなどの鍵盤楽器は、ロックの王道楽器はギターというイメージを揺るがすものでした。
シンセサイザーとは電気信号によって生じる音声を、加工したり組み合わせたりして音を創り出す鍵盤楽器です。メロトロンは鍵盤を演奏すると音声テープが再生される仕組みです。これらの鍵盤楽器のあまりに個性的な音色に多くのミュージシャンが飛びつきました。
プログレッシブロックの世界でもキース・エマーソンやイエスのリック・ウェイクマンなど、偉大なキーボーディストたちがたくさん現れました。
しかしながら最新鋭の楽器はとても高価で、手に入れることが出来るバンドも限られてしまいます。このことからもロックを追求し芸術性を高めるあまり、なかなか大衆には手を出しにくいジャンルとなってしまったことがうかがい知れますね。のちのパンクロックなどに取って代わられたのも頷けます。
世界のプログレッシブロックの代表的なバンド
ピンク・フロイド
プログレッシブロックの先駆者として有名なバンドです。活動初期にはサイケデリックロックを演奏していましたが、1970年のアルバム「原子心母」あたりからプログレッシブロックと認識されています。2年後の72年に発売したアルバム「狂気」は、世界で大ヒットし5000万枚以上を売り上げました。
またギタリストであるデヴィッド・ギルモアは、2011年のローリング・ストーン誌の選ぶ「歴史上最も偉大な100人のギタリスト」で第14位にランクインしています。ピンク・フロイドとしての作品の総売り上げは2億5000万枚以上とも言われています。
キング・クリムゾン
1968年に結成されたプログレッシブロックの最重要バンドです。1969年にデビュー・アルバム「クリムゾン・キングの宮殿」が発売されたことで、プログレッシブロックは始まったと言っても過言ではありません。鍵盤楽器であるメロトロンを効果的に使用して世界中に広めたアルバムでもあります。
また日本の漫画家である荒木飛呂彦はプログレ好きで、マンガ「ジョジョの奇妙な冒険」の作中にキング・クリムゾンという名前が引用されています。
エマーソン・レイク・アンド・パーマー
キーボードのキース・エマーソンを中心にベースボーカルのグレッグ・レイク、ドラムのカール・パーマーの3名からなるロックバンドで、通称「ELP」と呼ばれています。ギターのいないロックバンドとしての先駆者で、のちのロック・キーボーディストに多大な影響を与えました。
クラシック音楽の楽曲をシンセサイザーを駆使してロック調にアレンジして演奏するなど、個性的な音楽性を持つバンドでもあります。1971年発売のセカンド・アルバム「タルカス」では、エマーソンの生み出したストーリーをコンセプトに制作され全英1位・全米9位を獲得しました。
イエス
1968年にボーカルのジョン・アンダーソンとベースのクリス・スクワイアを中心に結成されたバンドです。イエスは最初からプログレッシブロックを演奏していたわけではなく、活動初期はビートルズやザ・フーのようなサイケデリックロックでした。
その後ギターのスティーブ・ハウとキーボードのリック・ウェイクマンが加入し、1971年にプログレッシブロックの名盤「こわれもの」が発売されました。このアルバムで全米1位を獲得したイエスは、キング・クリムゾンやピンク・フロイドと並びプログレッシブロックを代表するバンドとなりました。
ジェネシス
1969年にデビューしたイギリスのロックバンドです。ボーカルであるピーター・ガブリエルの独自の世界観と歌声を押し出した3作目のアルバム「怪奇骨董音楽箱」がイタリアで大ヒットしたことで、プログレッシブロックのバンドとしての認識を強めました。
ピーター・ガブリエルが脱退しドラマーであったフィル・コリンズがヴォーカルも担当するようになると、ジェネシスは徐々にポップ色を強めていきます。「フォロー・ユー・フォロー・ミー」がアメリカでヒットするなどバンドとしての黄金期を迎えていきました。
日本のプログレッシブロックの代表的なバンド
四人囃子
ギターボーカルの森園勝敏、リーダーでドラムの岡井大二、ベースの中村真一、キーボードの坂下秀実によって1969年に結成された日本を代表するグレッシブロックバンドです。またザ・ブルーハーツやJUDY AND MARY、GLAYなどのプロデューサーであった佐久間 正英が、2代目のベーシストとして在籍していたことでも有名です。
1975年にはイギリスのハードロックバンドであるディープ・パープルの日本公演のオープニング・アクトを務めました。その他にもジェフ・ベックやフランク・ザッパなど、数々の海外のアーティストとも共演を果たしています。
ゴダイゴ
ゴダイゴは「ガンダーラ」「モンキーマジック」「銀河鉄道999」などのヒット曲を持つ日本のロックバンドです。流行した楽曲がキャッチーなものが多くポップなバンドだと思われがちですが、実は日本のプログレッシブロックの草分け的存在でもありました。
1976年に発売されたデビュー・アルバム「GODIEGO (組曲:新創世紀)」は、日本で初めての全曲英語の歌詞で作成されたアルバムでした。この英語の歌詞というのがネックとなって中々ヒットに恵まれませんでしたが、テレビドラマ「西遊記」に使用された「ガンダーラ」「モンキーマジック」により日本全国に知られるバンドとなりました。
マンドレイク
音楽プロデューサーである平沢進と安部文泰が結成したプログレッシブロックのバンドです。結成当初はハードロック色が強く、イギリスのハードロックバンドであるブラック・サバスなどの楽曲を演奏していました。
初のオリジナル曲を制作中に安部文泰がバイオリンを持ち込んだことから、方向性をプログレッシブロックに転向しました。残念ながら公式の音源を残さずに解散してしまいましたが、非公式のレコーディング音源や未発表のライブ音源を寄せ集めたアルバムが1997年に発売されました。
ノヴェラ
1980年にデビューした関西出身のプログレッシブロックバンドです。メンバーが元々ハードロックやヘビーメタルを演奏していたことやメイクをしていたことから、のちに多数のビジュアル系バンドに影響を与えました。
また少女漫画とのつながりも深く、多田かおるの「愛してナイト」に描かれているバンドのモデルとなったり、山田ミネコの「最終戦争伝説」のイメージアルバムを制作したりしています。これによりプログレッシブロックバンドには珍しく、女性のファンが多いのもノヴェラの特徴です。
センス・オブ・ワンダー
山下達郎などのサポート・キーボーディストとして知られる難波弘之が結成したプログレッシブロックバンドです。バンド名の由来はSF用語の「センス・オブ・ワンダー」で、SF作品から受ける感動や感覚を意味する言葉です。
1979年にデビューアルバム「センス・オブ・ワンダー」をリリース。このアルバムのジャケットは漫画家の手塚治虫が担当していることでも有名です。また楽曲名はすべて海外のSF作品から引用されています。
編成としてはキーボードが主役のプログレッシブロックですが、エマーソン・レイク・アンド・パーマーとはまた違うサウンドを楽しむことが出来ます。
プログレッシブロックの名曲
イエス「ラウンドアバウト」
イエスの4作目のアルバム「こわれもの」に収録されている楽曲で、全米チャート13位を獲得しました。哀愁漂うアコースティック・ギターのイントロが印象的。また今作から加入したリック・ウェイクマンのキーボードプレイも存分に発揮されています。
日本では2012年に放送されたアニメ「ジョジョの奇妙な冒険」のエンディングテーマとして使用されたました。これにより再び注目を浴びた同曲は、AmazonやiTunesの配信で高いランキングを記録しています。
キング・クリムゾン「クリムゾン・キングの宮殿」
キング・クリムゾンの衝撃的なデビュー作「クリムゾン・キングの宮殿」のタイトル曲です。イントロ部分で演奏されているシンセサイザーによるメロディがとても印象的。サビで現れる荘厳なコーラスパートや間奏のフルートのソロも非常に美しいです。
イギリスとアメリカの合作映画「トゥモロー・ワールド」の劇中で使用されました。
エマーソン・レイク・アンド・パーマー「タルカス」
全英1位・全米9位を記録したエマーソン・レイク・アンド・パーマーの代表アルバムのタイトル曲。曲とは言ったものの、20分を越える壮大な組曲となっています。想像上の怪物「タルカス」が火山から現れ、地上のすべてを破壊し尽くして海に帰っていくまでの物語を表現しています。
2010年に日本の作曲家である吉松隆がオーケストラ用に編曲し、「タルカス〜クラシック meets ロック」として発表されました。このバージョンは2012年の大河ドラマ『平清盛』の劇中に使用されています。
プログレッシブロックに関するまとめ
いかがでしたか?
ロックの中で最も芸術性が高いと言われるプログレッシブロックは、実験的にクラシック音楽と融合しながら当時の最新の機材を使用して革新的に発展してきました。そのため難しい音楽だと思われがちで、なかなか理解されにくい一面も持っています。
しかし高い演奏力と新しい音楽を作る努力は、今聞いても決して古臭くは聴こえません。プログレッシブロックの不思議な世界観をまだ体験していない人は、ぜひこの記事で紹介した楽曲を聴いてみてください!