有名芸能人が自身の番組内でボードゲームをプレイしたり、人気YouTuberとコラボレーションしたり。「ボードゲームそのものがテーマ」である番組も増えたりしてきました。
この記事では、そんな現在注目が集まっている「ボードゲーム」の歴史について紹介していきます。
「ボードゲームが話題になっているけど、そもそもボードゲームって何?」という方にはもちろん、「好きなジャンルなので深く知りたい」という方にもオススメです。
奥深い「ボードゲーム」の世界に、まずはその歴史から触れてみてください。
ボードゲームとは?
ボードゲームとは、大きなゲームジャンルの呼び方の一つです。ほかにも、アナログゲーム、非電源ゲーム、テーブルゲーム、と言った呼ばれ方をすることもしばしば。
コンシューマーゲーム(いわゆるテレビゲーム、コンピューターゲーム)やスマートフォンなどでプレイするゲームアプリなどと区別して、このように呼ばれています。
ですが、「ボードゲーム」と呼んだ場合、「TCG(トレーディングカードゲーム)」や「TRPG(テーブルトークロールプレイングゲーム)」は含まないことが多いでしょう。
アナログゲーム、非電源ゲームといった呼び方は、TCGやTRPGも含んだニュアンスです。TCGもTRPGも奥深い歴史をもっていますが、少しジャンルが異なるため今回の記事では省略しています。
ボードゲームの歴史とは?
文明の発展とともにボードゲームも発展
ボードゲームは古くから人間のそばにあり、文明の発展とともにボードゲームも発展してきました。
ボードゲームの起源としては、現在発見されている最古のものはエジプトの「セネト」が知られています。紀元前3500年頃の古代エジプトで生まれた、双六(すごろく)のようなルールをもつゲームです。
また、メーヘン(Mehen )と呼ばれる詳しいルールが不明のゲームも古代エジプトの発祥。こちらも双六のようなゲームで、紀元前3000年頃の成立だったといわれています。
紀元前2600年頃、古代文明の一つであるメソポタミアの都市国家ウルでも、ボードゲームが生まれています。「ウル王のロイヤルゲーム」と呼ばれるもので、これも双六のようなルールです。
特に古代には、サイコロを振ってゴールを目指すというルールのボードゲームが数多く誕生しました。それには、実は文明発展に関わる大きな理由があります。
最古のボードゲームとして知られる「セネト」ですが、これは古代エジプトの宗教観に大きな影響を受けていました。ゲームのテーマは死後の世界の旅を描いたものであり、一説には「死後の予習をするためのボードゲーム」であったともいわれています。
死者の副葬品として財宝や日用品とともにセネトも埋葬されていたほど、宗教的に意味のあるものだったのです。
「サイコロの出目は、神が決めるもの」「運(神の導き)に任せれば、正しい者が勝利する」といった考え方があったようです。
「戦争」もボードゲームではジャンルの一つ
その後、人類の歴史では文明の発展や他文化との衝突などを経て、大小さまざまな規模の戦争が起こるようになります。
それに伴ってボードゲームの世界でも、格子状の盤面で勢力を競う戦争ゲームが生まれました。
西暦400年頃、古代のドイツ付近やケルトで盤面上の兵士を戦わせる戦略ゲームが発祥。それらは北ヨーロッパを越えて、インドにまで到達しました。
インドに到達した戦略ゲームは6世紀前後に「チャトランガ」として発展。7世紀にはサーサーン朝ペルシアに渡り、その後同王朝がイスラム系の帝国に滅ぼされて吸収されると、アラビア語読みの「シャトランジ」となりました。
アラビア世界との交易のなかで「シャトランジ」は再度ヨーロッパへと戻り、現代でも良く知られる「チェス」となったのです。
6世紀頃のインドとの交易は中国、朝鮮半島、日本にも影響を与え、「シャトランジ」は中国では「シャンチー」、朝鮮半島では「チャンギ」、日本では「将棋」へと変化していきます。
アフリカでも独自のゲームが生まれる
西暦700年頃、アフリカでは「マンカラ」と呼ばれるゲームが生まれました。
数個の窪みと駒があれば簡単にできるゲームでありながら、大変戦略的なルールをもったゲームです。窪みを地面の穴で、駒を石で代用すればどこでもできるため、爆発的に広まりました。
アフリカだけでなく世界に伝わり、名前を変えながら東南アジアやヨーロッパでも親しまれています。現在のボードゲームシステムにも「マンカラ系」と呼ばれるものがあるほど、大きな影響を与えたゲームです。
現代は「新ジャンル」が大量に生まれている
ボードゲームの元祖と考えられる双六系のゲームや、戦略ゲーム、囲碁のような陣取りゲーム、
そして「トランプ(英語ではプレイングカード)」など、ボードゲームの世界ではたびたび大きな「発明」が起こってきました。
ですが、大きな発明が起こるとしばらくは大きな発明は起こらず、既存のゲームを楽しむようになります。
それから一定期間は、マイナーチェンジしたり、基礎ルールを組み合わせたりしたゲームが多数生まれつつ、人々を楽しませてきました。例えば、ブームとなったバックギャモンやモノポリー、人生ゲームなどは双六ゲームの発展系です。
それらに大きな変化をもたらしたのが、1995年の「カタンの開拓者たち」ではないでしょうか。
複雑な要素を組み合わせて「勝利点」を獲得するという、まったく新しいタイプのゲームです。ヨーロッパ生まれの同ゲームは、特にアメリカを中心に爆発的な人気となりました。
30言語以上に翻訳され世界中に広まり、現在の日本でも多くの愛好家がいます。
その前後に、前述のTCGやTRPGなどが生まれ、ボードゲームも含めてお互いに影響を与え合ってきました。
そして現在は、今までになく「まったく新しいルール」のゲームが多数生まれています。
昨今のボードゲームブームは間違いなく、新作の豊富さに支えられているでしょう。
時代や地域によって、発展の仕方やトレンドに大きな差がある
発祥地やブームなどの影響もありますが、ボードゲームの発展は地域性と密着に関わってきました。
例えば早くから師弟制度などを取り入れ、木製品の製作が盛んだったドイツでは、ボードゲームが大きな文化として発展し社会的に広まっています。世界最大のボードゲームの祭典は何か、と問われれば、ドイツのエッセンで行われる「エッセンシュピール」でしょう。
そのためか、1プレイに数時間もかかるような「重厚なボードゲーム(いわゆる、重ゲー)」が好まれる傾向があります。
また、特にアメリカ産のボードゲームでは、大きなプレイボードや豪華なコンポーネント(駒などの備品)が好まれる傾向があります。住宅が大きなアメリカでは、日本の民家では到底プレイできないような、広いプレイスペースを要求するゲームが多数制作されています。
一方の日本ではアメリカの逆で、「ミニマルゲーム」と呼ばれる、コンポーネントが小さく数が少なくまとまっているゲームが好まれるようです。
「ラブレター」という日本産のゲームは、わずか16枚・8種のカードしか使わないにも関わらず、高い戦略性と飽きの来ないプレイ感をもっています。「ミニマルにまとまっているのに、深いゲーム性がある」という点から、同ゲームは世界的にも高く評価され、ドイツでは栄誉あるゲーム賞を受賞しました。
このように、文化の発展とともに歩んできたボードゲームの歴史は、その地の文化に大きな影響を受けているのです。
人気の有名ボードゲームは?
ここでは、人気のある有名ゲームをいくつか紹介していきます。
カタン
無人島を舞台に、陣取りをしながら決められた勝ち点の獲得を目指すゲーム。勝ち点につながる資源の獲得はサイコロの出目で決まっており、「いかに良い場所をとるか」はもちろん、サイコロの目という運要素も影響しています。
いまだに根強いファンが多い、ボードゲーム業界に革新を起こしたゲーム。
ドミニオン
プレイヤーは、手札を使って自身に有利になる効果を発揮したり、手札を資金としてカードを購入し自身のデッキを強化したりしていきます。
最終的にはデッキ内の勝ち点カードの合計が高いプレイヤーが勝利となりますが、勝ち点カードは効果を持たないことが多く、勝ち点カードを獲得するとデッキが弱くなってしまうという点がポイント。
「デッキ構築型」という新たなジャンルの先駆けとなったパイオニアです。
パンデミック
世界をまたにかけて、疫病の治療・根絶を目指すゲーム。プレイヤーは科学者や研究員といった病気の治療に関して有利になる職能をもっており、各人が異なる職種を担当します。
最大の特長は、プレイヤー全員で勝利を目指す「協力ゲーム」であること。もちろん、ルール的にイヤらしいアクシデントがたくさん用意されており、世界が滅亡してしまうこともしばしば。
勝っても負けても、終わったあとの「感想戦」が楽しいゲーム。
レジスタンス:アヴァロン
アーサー王側の正義の勢力が王国のためにミッションを遂行していきますが、ミッションメンバーには「敵のスパイ」が混じっているかもしれず・・・。
「招待隠匿系」と呼ばれるゲームの代表格で、ほかには「人狼」などが有名です。当ゲームは、スパイであることが見破られても脱落することはなく、ジャマしつづけることができる点が人気の理由。
「誰がスパイかわかるが、自分の役職がバレると負けてしまう」といった役職カードの配分によって、難易度を調節できるのも大きな利点です。
コードネーム
単語が書かれたカードが5×5枚並んでおり、「自軍の単語カード」「敵軍の単語カード」「関係ないカード」「選ぶと即座に負けてしまうカード」が割り振られます。
ボス役のプレイヤーは、部下役のプレイヤーたちに「自軍の単語カード」をすべて選んでもらうことで勝利。しかし、伝えられるのは「単語カード」には書かれていない、直接的でない言葉のみ。
例えば「ボール」「ゴール」という単語カードを選んで欲しいなら、「サッカー」と伝える、といった進め方。ただし、「敵軍の単語カード」や「選ぶと即座に負けてしまうカード」に「シュート」や「イギリス」といった単語がある場合、そちらを連想されてしまうかもしれません。
そういった連想と意思疎通の駆け引きが楽しめるゲームです。
チケット・トゥ・ライド
自分の「鉄道路線」を引いていくゲーム。長く引くほど得点をもらえるのですが、路線を引くには「対応した色カード」を手札から消費する必要があります。
「手札を集める」「路線を引く」が一手番で同時にはできないため、「路線を引こうとしていた場所に割り込まれた」「一手早く路線を引けた」といった駆け引きが生まれます。
モダンアート
画商となり、絵画の競売を行うゲーム。絵の価値はプレイヤー同士の駆け引きや取引結果によって変化していきます。
思い切って買った絵の価値がまったく上がらず損してしまったり、一気に価値が上がって逆転したり。また、「ここまで来たら引き返せない」という意地を張り合ったりする場面も体験できるでしょう。
「競り(せり)ゲーム」と呼ばれるジャンルの金字塔的なゲームです。
アグリコラ
各プレイヤーは農場の経営者である夫婦となり、畑を大きくしたり家畜を飼育したりすることで勝利を目指します。
自分の分身となり仕事を行う「ワーカー」を特定のスペースに配置することから「ワーカープレイスメント」と呼ばれるタイプのゲーム。
アグリコラは、同ジャンルの先駆者であり完成形ともいえるシステムを備えており、多くの支持者を抱えています。
電力会社
プレイヤーは電力会社の経営者となり、さまざまな都市に「自分の会社の電力網」を伸ばしていきます。
電力網によって得られた利益で「発電所」を買い、さらに発電網を伸ばしていくのですが、「発電所」は石炭/石油などの異なる資源が必要で・・・といった内容です。
プレイボードの広さに比べてあっさりとプレイできる一方で、「あちらを立てればこちらが立たず」といったジレンマやプレイヤー間の複雑な駆け引きを十分楽しむことができます。
ラブレター
プレイヤーはカードを1枚だけ持っており、手番プレイヤーは「カードを1枚引き、2枚となった手札のうちどちらか1枚を使う」という行動を行います。
山札がなくなった時点で手札のカード数値がもっとも高い人が勝利するのですが、数値が高いカードは保持しつづけるのが難しく、脱落してしまう危険性が高くなるというジレンマが。
カードの種類はわずか8種類ですが、覚えることの少なさとできることの簡単さとは裏腹に、大変深い戦略性と駆け引きが楽しめます。
1プレイがすぐに終わるので何度でもプレイしたくなるし、それが出来てしまう飽きのこないゲーム性が見事。
ゲームデザイナーは日本人で、小さいながらも世界観やプレイ感がまとまっていることが世界からも高く評価され、日本産ゲームブームの火付け役ともなりました。
上記で紹介したのは、もはや「定番」と化した有名ゲームばかり。ほかにもたくさんの有名定番ゲームはありますが、もし何からプレイしたらいいかわからない、と感じるようなら上記を試してみてください。
まとめ
私は、趣味の一環としてボードゲームを楽しんでいます。
近年、ボードゲームカフェが増えたり、日本のボードゲームの祭典であるゲームマーケットの規模が大きくなったりと、ボードゲーム業界が活気づいていると感じています。
テレビやYouTubeなどでも目にする機会が増えたことをうれしく思う反面、敷居を高く感じてしまう人もいるのではないか、と懸念していました。
実際にボードゲームの歴史は奥深いものでしたが、今回調査したことで、それはすべて「人類の歴史の奥深さと共通していたのだ」と気づかされました。
つまり、あなたの周りで流行っているボードゲームは、あなたの身近な文化と密接に関係しているため、あなたにも合っている可能性が高いのです。
決してボードゲームは敷居の高い特別な物ではありません。気軽に「ちょっと流行り物を体験してみる」くらいの気持ちで触れてみてはいかがでしょうか。
これを機に、あなたがボードゲームに触れてみることを、そしてすでに好きな人はもっと好きになってくれることを願っています。
かわちいねー