【悲劇作家】アイスキュロスとはどんな人?代表作や死因、名言についても簡単に解説

アイスキュロスとは、紀元前5世紀ごろに活躍した古代ギリシャの悲劇作家です。アイスキュロスが活躍した当時はギリシャ悲劇の最盛期で、彼はソフォクレス、エウリピデスと並んで「3大悲劇詩人」と呼ばれました。

アイスキュロスは90編以上もの悲劇を書いたとされていますが、現在残っているのは7編だけです。そのなかでも代表作は「オレステイア」3部作でしょう。アイスキュロスは「本当の正義とは何か」に注目して悲劇を執筆していて、この「オレステイア」にはその思想が詰まっています。

アイスキュロス

「ギリシャ悲劇」と聞くと、現代に生きる私たちからは遠く離れたものに思えます。けれどもその豊かな世界観に触れると、私たちにも通じるものが発見できることに気づくでしょう。この記事では、大学の一般教養でギリシャ悲劇に触れ、そのドラマティックな世界観に魅了された筆者が、アイスキュロスの生涯や死因、そして現存している7作品のあらすじをご紹介します。

この記事を書いた人

一橋大卒 歴史学専攻

京藤 一葉

Rekisiru編集部、京藤 一葉(きょうとういちよう)。一橋大学にて大学院含め6年間歴史学を研究。専攻は世界史の近代〜現代。卒業後は出版業界に就職。世界史・日本史含め多岐に渡る編集業務に従事。その後、結婚を境に地方移住し、現在はWebメディアで編集者に従事。

アイスキュロスとはどんな人物か

名前アイスキュロス
誕生紀元前525年ごろ
死没紀元前456年ごろ(享年69歳)
生地エレシウス
(現在のギリシャ、アッテイカ地方のエレフシナ)
没地ゲラ
(現在のイタリア、シチリア州のジェーラ)

アイスキュロスの生涯をハイライト

アイスキュロス

アイスキュロスは紀元前525年頃、アテナイ(ギリシャの首都・アテネの古い名前)郊外に位置するエレシウスに貴族階級に属する地主の子として生まれました。

その生涯について分かっていることはそう多くないのですが、紀元前490年のマラトンの戦い、紀元前480年のサラミスの海戦に兵士として参加したと伝わっています。特にマラトンの戦いに参加したことは誇りだったようで、アイスキュロスの墓碑にはそのことが記されています。

20代のころから悲劇を作り始め、紀元前484年のデュオニュシア祭の劇大会で初めて優勝しました。デュオニュシア祭は古代アテナイで開催されていた重要な祭りで、主な催しとして悲劇を上演し、その出来を競っていました。アイスキュロスはこの祭りで合計13回も優勝しています。

69歳のとき、シチリア島のゲラで亀が頭に激突して亡くなったとされています。信じられない死因ですが、後ほど詳しくご紹介します。

古代ギリシャの「3大悲劇詩人」の1人

エピダウロスには現存する
最も整ったかたちの劇場の遺構がある

アイスキュロスは古代ギリシャの「3大悲劇詩人」の1人といわれています。ギリシャ悲劇とは、古代アテナイで催されていたディオニュシア祭で上演されていた悲劇や、それを基本にした悲劇のことです。

この祭りでの悲劇の上演は大会の形式で行われていました。参加する悲劇詩人は、3つの悲劇と1つのサテュロス劇(こっけいな劇)を提出していましたが、現在までこの完全な形で作品が残っているのはアイスキュロスの『オレステイア』三部作のみです。聴衆は最も優れていたと思う作品に投票し、優勝者を決めていました。

「3大悲劇詩人」と呼ばれるのはアイスキュロス、ソフォクレス、エウリピデスの3人です。このうちアイスキュロスは「ギリシャ悲劇の確立者」と呼ばれています。彼は90編以上の作品を書き、そのほとんどのタイトルは分かっているのですが、作品自体が残っているのは7作品のみです。

大胆な比喩と重々しい表現が特徴

重々しい文体が特徴的

アイスキュロスは3部構成の作品を好んで書いたといわれています。「本当の正義とは何か」「人間に訪れる栄光と破滅」を描いた作品が多いです。大胆な比喩と重々しい表現が特徴的な文体は、古代アテナイの喜劇詩人・アリストファネスに揶揄されることもありました。

アイスキュロスの死因は「亀」?

亀が空から降ってきて死亡!?

アイスキュロスはその伝説的な死因でも有名です。それは、空から亀が降ってきて、アイスキュロスの頭に激突したというもの。ちょっと信じられないような死因ですよね。

実はこの犯人は「ヒゲワシ」という鳥でした。ヒゲワシにはえさとなる亀を大きな岩などに落とし、甲羅を割って中身を食べる習性があります。アイスキュロスの頭が岩と間違えられたのか、はたまた人間の頭でも割れそうなものだとヒゲワシが判断したのか…真相はわかりませんが、この出来事は「アイスキュロスの亀」という「ありえないことが起こる」ということわざになりました。

アイスキュロスの名言

幸福なる状態において、その生命を終えし者のみを幸福なりというべし。

(出典:『アガメムノン』)

言葉は怒りに病める心の医者となる。

真の悲しみは、苦しみの支え杖なり。

(出典:『アガメムノン』)
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