チェルノブイリ原発事故とは?原因から被害・死者数、現在の様子まで解説

その他の原子力災害

スリーマイル島の原発事故(レベル5:施設外へのリスクを伴う事故)

スリーマイル原発(現在は閉鎖)

1979年3月28日、アメリカ・スリーマイル島原発2号機で発生した事故です。二次冷却水ポンプの故障のため冷却水の供給が止まったことにより炉心の圧力が上昇。非常用炉心冷却装置(ECCS)が切られてしまうなど人為的なミスも加わり、メルトダウンに至った事例です。

福島第一原子力発電所事故(レベル7:深刻な事故)

事故後の福島第一原発

2011年3月11日、東日本大震災により発生した津波が福島第一原発に到達、全電源喪失という事態に陥ります。このため1~3号基においてメルトダウンが発生し、このため1号基、2号基、4号基において爆発が発生、90京ベクレルの放射性物質が漏えいした事例です。

チェルノブイリ原発事故の現在

原子炉には新シェルターが設置

工事中(2016年当時)の新・安全閉じ込め構造物

石棺の寿命はおよそ30年とされていました。石棺が崩壊すれば、また内部の放射性物質の拡散がおこります。そのため、新たな安全閉じ込め構造物を石棺の上から設置する必要がありました。

この結果作られたのが、現在の新安全閉じ込め構造物です。高さ110m、幅260m、長さ160mのアーチ形で可動式構造物としては世界最大規模を誇ります。建設費は17億ドル、40か国におよぶ国際的な協力のもと実現しました。原発近くで組み立てられ、300mほどを油圧ジャッキを用いて移動させることにより、事故をおこした4号炉を覆っている石棺ごと密閉することができました。この新シェルターの使命は、ひとつは放射性物質の密封。もうひとつは将来的に石棺の一部と4号炉の解体を安全に行うことにあります。

周辺の集落の状況

絶滅危惧種モウコノウマの群れ

原発周辺は、現在野生動物のおおく見られる地域に様変わりをしています。高い放射線量にもかかわらず、ヘラジカやビーバー、フクロウ、ヒグマ、オオヤマネコなど多種多様な生物が自然に繁殖をしたのでした。しかしこれをもって、現地を「人にとって安全かどうか」を考えることには議論があります。野生動物にとっては、放射能よりも人間の方が脅威であったとも考えられますが、自然界の食物連鎖などにより放射性物質を体内にどれだけとり込むかは動物ごとによって異なると考えられます。

一方で、現地の「観光地化」が進んでいる実態も。ウクライナ政府は2016年から外部に公開する政策を開始し、観光ビジネスとして成り立たせようとする背景がありました。2015年に年間8000人ほどだった「チェルノブイリ」訪問客は、2019年には年間10万人規模とされており、世界中の人びとの関心の高さを伺わせる数字となっています。

チェルノブイリ原発事故をテーマとした書籍・映画・音楽等

書籍

チェルノブイリの祈り――未来の物語 (岩波現代文庫)

未曽有の原子力事故に直面した人びとは、その時何を想い、何をしたのか。ドキュメンタリーとして拾い上げた人びとの肉声。それまであたり前だった暮らしが崩壊するさまが各人各様に語られています。核の平和利用、クリーンエネルギー。色々言い方はあれ、やっぱり核などというものは人間が触れてはいけない代物だったのではないか、と。

チェルノブイリの少年たち (新潮文庫)

チェルノブイリ原発事故を主題とした小説。事故に絡んで引き裂かれる家族の状況が綴られており、読み進むにつれ同じ虚空に堕ちていく感覚になります。書かれている内容が史実なのかどうかという点では賛否がわかれるところです。ただ、ひとたび事故が起きれば手に負えない代物をどう使いこなすのか、安全をどう担保するのかという課題は一人ひとり考えてみるべきだろうと思います。

映画

チェルノブイリ ーCHERNOBYLー ブルーレイ コンプリート・ボックス (2枚組) [Blu-ray]

人類が史上初めて遭遇した原子力事故を克明に描いた衝撃作です。爆発したRBMK型原子炉の設計者であるバレリー・レガソフ博士と党のボリス・シチェルビナ副議長との掛け合いが凄まじい当時の空気を見事に再現しているかのようです。心理的にではなく、物理的に「直視することすらできない」。それが原子力事故なのだと思い知らされます。

カリーナの林檎~チェルノブイリの森~メモリアルエディション

淡々と描かれる少女・カリーナの物語。ベラルーシの豊かな自然が印象的です。入院中の母親、汚染地域で暮らす祖母との暮らし。淡々としているだけに、強烈に迫ってくる余韻が後を絶たず、作品世界に没頭してしまいます。平凡な暮らしを祈りながらも、しかしそれが困難である現実。この乖離こそ観る者を悩ませるのでしょう。

チェルノブイリ原発事故に関するまとめ

今回は、チェルノブイリ原発事故について、原因と経緯、死者数や放射能汚染といった被害状況、さらにチェルノブイリ原発の現状について解説をしました。人類がはじめて遭遇した核の暴走、原子力事故。その真の姿を直視しただけで灼けただれてしまうような惨状が発生してしまったのです。ひとたび原子炉が破壊されてしまえば、もう人類にはどうすることもできません。

電力は、人類に快適な暮らしを与えてくれました。おかげで暗闇におびえることも減り、猛暑・酷寒を防ぐことも可能になりました。しかしそうした便利な暮らしの影で、今も原子力発電所が世界中に存在しています。いまさら電力のない暮らしに戻ることはできようはずもありませんが、せめて日々の節電を心がけ、原子力発電への依存度を下げていくことが大切ではないでしょうか。

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