カトリック系キリスト教の最高指導者を、みなさんはなんと呼んでいますか。おそらく「ローマ法王」と呼ぶ人と「ローマ教皇」と呼ぶ人に分かれると思います。この「法王」と「教皇」という2種類の表現、一体何が違うのでしょう。いざ訊かれてみると難しいと思います。
では、この「法王」と「教皇」、何が違うのかを調べて見たらどうなのでしょうか。この記事では両者のうち正しいのはどちらなのかのお話と、言葉の意味に違いがあるのか辞書で調べてみました。また、ローマ法王(教皇)とはどんな人なのかについても迫っていきます。
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ローマ法王とローマ教皇、どちらが正しい?
「ローマ法王」が正しいのか、それとも「ローマ教皇」が正しいのかの問題は今にはじまった話ではありません。実はかなり前からどちらが正しいのかについては議論されていたのです。そして、この両者のうち、正しい呼称も実は決まっているのです。
そこでこの章では、日本国的・カトリック的にはどちらが正しいのかに迫っていきます。
正しくはローマ教皇
日本の法律的に、カトリック教会の最高指導者は「ローマ教皇」が正しいと明記されています。カトリック教会も「ローマ教皇」が正式な呼称であるとしているので、正しくは「ローマ教皇」となります。
「ローマ法王」という呼び方は、そもそも外務省が大使館設置時に「ローマ法王庁大使館」と名付けたことに起因します。しかもこの「法王」としたのは外務省が勝手に決めたわけではなく、相手国が申請するとき「ローマ法王庁」で申請してきたからだとされているのです。つまり、最初は「ローマ法王」という呼び名は相手方の申請によって生まれたということになります。
国交樹立当時は法王が正式名称だった
第二次世界大戦前に日本がローマカトリック教会の総本山であるバチカン市国と国交を樹立した当初、日本では「ローマ法王」が正式名称とされていました。理由は先の「ローマ法王庁」と同様です。
1942年から使われていたこの表記ですが、最終的には2019年まで使われていました。きっかけは教皇フランシスコが来日するに際し、表記をカトリック中央協議会の要請に応えて変更したものです。当然、「法王」で馴染みのある日本人が多数なので、放送業界では「法王」の呼称を用いる、ただし性格には「教皇」ですよ、としているのです。
国会でも議論される法王と教皇
両者の呼称については国会でも積極的に議論を重ねていました。教皇フランシスコ来日より1年前の2018年、国会では立憲民主党の山内康一氏と当時の外務大臣・河野太郎氏が次のようなやり取りをしています。
ローマ法王庁大使館、バチカンの大使館の名称が実はカトリックの人たちにとっては余り望ましくない。日本語名称をローマ教皇と呼んでほしいというのがカトリック教会の公式な見解のようです。バチカン市国の大使館の名称変更を相手の政府に対して相談、協議する、もし相手が望むのであれば変えていくことをお考えになる余地はありますでしょうか。
駐日ローマ法王庁の大使並びに大使館及びバチカンに問合せをいたしましたが、いずれからも名称変更を求めていないという御返答でございましたので、特にその後のアクションはとっておりませんが、いずれの大使館からも名称変更の要請がありましたときには、外務省としてしっかり対応をする。
つまり、「相手国から申し出があればいつでも変えるが、今の時点ではないから変更しない」とのことです。なお、こののち指導者に関しては呼称変更の依頼があったものの、大使館の名称変更は申請がなかったため現在も「ローマ法王庁」のままとなっています。
カトリックは教皇と呼んでほしい
気になるのは、ローマ教皇を頂点とするキリスト教の一派であるカトリック教会はどう考えているのか、という点です。
カトリック中央協議会では、自分たちの最高指導者について「ローマ教皇」の名称を使ってほしいという声明を発表しています。しかしその声明を発表したのは1981年と以外にも最近の話で、それ以前は両者の表記が協会内でも混在していました。
しかし、そこから教皇フランシスコの来日まで、政府・メディアの「法王」という呼び名と、協会側が正式名称とする「教皇」が使われていたのです。2019年の呼称変更の背景には、政府・メディアが協会の正式名称に合わせたという背景があるのです。
大変参考になりました。
経緯や外務省の現在のスタンスなど、有益な情報を知ることができました。
ただ、本文の中に、「正確」が「性格」、「意外」が「以外」、「教会」が「協会」と誤って変換、記載されたと思われる単語がありますので、再確認された方がよいと思います。