ローマ法王と教皇の違いとは?意味や使い分けを分かりやすく解説

法王と教皇は意味が違うのか調べてみると…

そもそも「法王」と「教皇」という2つの言葉の意味の違いとは何なのでしょうか。意味の違いを知るには辞書を使うのが一番。ということで、本章では、国語辞典、英和辞典、そして放送関係者が採用している「ことばのハンドブック」でそれぞれ調べてみました。

1937年当時の新聞では「ローマ法王」と記載されている。

まずは国語辞典です。いくつかの時点を1冊ずつ見ていきたい、と言いたいところですが、実はすべての辞書で「ローマ教皇はローマ法王」という堂々巡りの解説しかされていませんでした。結局、意味は同じということがわかったのですが、どちらの呼称が正しいかまでは言及されていないのです。

2019年の新聞各紙では「ローマ教皇」に表記が変更されている。

また和英辞典のほうも同様でした。カトリック教会の最高指導者を調べると、「ローマ法王」も「ローマ教皇」も別項目として存在しました。しかし、その英訳はどちらも「Pope」。そう、英語圏でも区別されていないのです。

正しくは「教皇」のはずだが、テレビでは「法皇」と表示されている。

ところが、明確に違いを記載しているものが1つだけありました。それが「ことばのハンドブック」です。

「ことばのハンドブック」とは、主に放送業界で使われているアナウンサーの教科書とも呼べる辞書の一種です。今回の「法王」「教皇」のように、相手に伝えるときにはどちらの表現が正しいかを調べる時などに使います。

気になる説明ですが、次のように書いてありました。

正式名称は教皇

正しくは「教皇」との答えが書いてありました。しかしながらその続きには次のような文言が書いてあります。

放送では一般に慣れ親しんだ『ローマ法王』を使う

つまり、ここまで3種類の辞書で比較をしましたが、意味は両者とも同じということがわかりました。呼び方が違うだけで同じ意味なので、究極どちらでも正解ということになるのでしょう。

そもそもローマ教皇とはどんな人なのか

前ローマ教皇、ベネディクト16世は数百年ぶりの生前退位をしたことで知られる。

ではそもそもローマ教皇とはどんな人物なのでしょうか。「宗教の一番えらい人」で間違ってはいないのですが、ローマ教皇にはそれ以外の性格もあります。そして気になるのはどうやったらローマ教皇になれるのか、です。

ここではローマ教皇が持つ性格となるための方法、そしてローマ教皇として名前の決め方を簡単にご紹介します。

カトリックの頂点に立つ司教

ローマカトリック教会のヒエラルキー。ローマ教皇は世界中のカトリック教徒の頂点に立っている。

ローマ教皇の第一の性格は、言わずもがなカトリック教会の最高指導者です。司教、枢機卿のさらに上に立つ身分であり、使徒座と呼ばれる最高位の後継者となります。

最初の教皇を創始者イエスの弟子ペトロとしており、その後継者としての地位が現在の教皇です。ローマ教皇は司教の1人でもありますが、このように特別な地位を授かる人間として特別扱いされています。なお、現在の教皇・フランシスコで第266代となります。

実は国家元首

天皇と談笑する教皇フランシスコ。外交もまたローマ教皇の大事な仕事のひとつ。

ローマ教皇のもうひとつの性格は国家元首です。各国の首相や大統領と同じ身分であるということです。

カトリック教会の総本山は、バチカン市国として独立国家の体裁をなしています。言い換えれば、カトリック教会の国ということです。この国の国家元首としての性格もローマ教皇にはあります。人口1,000人未満の小さな国ですが、国家である以上国家元首は絶対必要です。日本ではあまり知られていませんが、政治家としての側面もあることを覚えておいてください。

ローマ教皇になるには?

コンクラーベの終結は白い煙が上がることが合図とされている。それはつまり新教皇が決まったことを意味する。

ローマ教皇は、それに次ぐ地位である枢機卿の中から話し合いで、かつ満場一致にて選ばれます。これを「コンクラーベ」といいます。

「話し合い」と聞くと一見穏やかそうなイメージですが、実は決まるまでの10日間、一切会議の場から出ることができません。「コンクラーべ」の名前の由来どおり議場には鍵がかけられてしまうからです。もちろん、食事やトイレも例外ではないため、まさに「根比べ」で決まるのです。

ちなみに、前段階である枢機卿になるには熱心なカトリック教徒であることはもちろん、生涯で一度も性交渉を持ったことがない80歳未満の男性であることが条件です。

名前の決め方は自由

2005年に行われたコンクラーベの様子。ここで法皇が決まるまで枢機卿達は話し合いを続ける。

教皇の名前は自由に選ぶことができますが本名ではありません。多くは事前に用意された候補の中から名前を選ぶのが通例のようです。

過去の教皇と名前が同じ場合は、名前のうしろに「○世」とつけて区別します。実際の血のつながりはありませんが、ペトロから数えて何代目の教皇かをわかるようにするためです。もちろん、候補にない名前をつけることも可能です。

このように決まった教皇は、死去するか、自らの意志で退位するかまで教皇の地位を守ることになります。

ローマ法王と教皇の違いに関するまとめ

「ローマ法王」と「ローマ教皇」の使い分けは、つい最近まで違っていたことがわかり、そして公式には「ローマ教皇」であることもわかりました。しかし、意味が同じである以上、今後も混同されることが多いのではないでしょうか。どちらにしてもカトリック教会の最高指導者であることに変わりはないので、みなさんが生活の中で使うのはどちらでもいいです。

ローマ教皇は、宗教を通じて世界に平和の祈りとメッセージを与え続ける稀有な存在。世界の指導者の中でも特に力を持った、特別な存在なのです。ローマ教皇の祈りが世界を平和へと導いてくれるといいですね。

では、長い時間お付き合いいただきありがとうございました。

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1 COMMENT

匿名

大変参考になりました。
経緯や外務省の現在のスタンスなど、有益な情報を知ることができました。
ただ、本文の中に、「正確」が「性格」、「意外」が「以外」、「教会」が「協会」と誤って変換、記載されたと思われる単語がありますので、再確認された方がよいと思います。

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