人類の進化の過程・歴史
ホモサピエンスについて説明をしてきましたが、ここでホモサピエンスが登場するまで、どのような人間がいたのかを紹介します。ただし、昔言われていたように猿人が現在の人間に進化したと単純には考えられません。
猿人に分類されるアウストラロピテクスからホモ属が分化したという説は有力ですが、いまだにはっきりしたことはわかっていません。
しかし、こうして順を追っていくことで、人間が環境に合わせてどのように変化や進化をしてきたのかがわかります。
猿人(アウストラロピテクス)
猿人とは、アウストラロピテクスに代表される初期の人類です。アウストラロピテクスとは、「南部の猿」という意味があり、約400万年前から200万年前にアフリカに存在していたとされています。
身長は120cmから140cmと小さく、脳の容量も現在生きている人類の35%ほどしかありませんでした。これは現在のチンパンジーとほとんど変わりません。
しかし、その骨格からは直立して二足歩行をしていたことがわかります。脳の容量の小ささと二足歩行をしていたことが、猿人と呼ばれる理由であり、類人猿と猿人の大きな違いでもあります。石器を使うまでには発達せず、食べ物は植物が中心で、タンパク質を摂るためには肉食獣の食べ残しを漁ることもあったようです。
原人(ホモ・エレクトス)
先程紹介したホモ・エレクトスは原人に含まれます。ホモ・エレクトスは私たちにつながっていると考えているため、原人は私たち人類が誕生するために、重要な役割を果たしたことがわかります。
ただし、原人はホモ・エレクトスだけではなくさまざまな種を含みます。言ってみれば、人類の進化の歴史の中で、猿人と旧人、そして現在生きている人類を含む新人を除いたヒト属ヒト科の生物を原人と呼んでいるのです。
このため、種が多いだけでなく時代も多岐にわたります。ホモ・ハビリスとホモ・エレクトスはどちらも原人に区分けされますが、ホモ・エレクトスは約258万年前から約1万年前まで存在していました(ホモ・ハビリスは240万年前から140万年前でした)。原人が存在していた時代の長いことがわかります。
原人は猿人と比べると脳の容量が大きくなっていたため、精巧な石器を作り、使用していたということです。
旧人(ホモ・ネアンデルターレンシスなど)
ホモ・ネアンデルターレンシス(ネアンデルタール人という名前の方を知っている人も多いでしょう)に代表される旧人は、約40万年前から2万数千年前まで存在していたとされています。
彼らの脳の容量は現代人よりも大きいのが特徴ですが、現代の人類と違って突顎(とつがく・顎の骨が顔面から突き出している状態)で、オトガイは発達していませんでした。
このため、言語を話すことは得意ではなかったと思われます。男性の身長は165cmほど、体重は80kgほどだったといい、成長スピードは現在の人類よりも早かったそうです。
能力も高く、石器を作り使用するだけでなく、火も使っていました。家畜を飼っていたという説もありますし、洞窟に描かれた壁画も発見されているため、芸術を楽しんでいたと思われます。
新人(ホモ・サピエンス)
先程紹介した旧人(ホモ・ネアンデルターレンシス)に対して、現在生きている人類を新人と言います。旧人と新人を比べた時の一番の違いは、言語や文字により、コミュニケーションが取れるところでしょう。この特徴により、人類は社会を作り、発展してきたと言えます。
その他、体毛が少ないことや手が器用なことも新人の特徴と言えます。体毛が少ないのは、生活していく上で身体を順応させた可能性があります。身体についた寄生虫を取りやすくするためとも、体熱を放出しやすくしたためとも考えられています。
手が器用なことは直立二足歩行の結果、移動のために前脚を使わなくてもよくなったことが理由でしょう。ホモ・ハビリスも手が器用でしたが、新人は指を複雑に動かすことができました。さらに器用な手を持ったために、新人はその数を増やし、現在に至るまで発展を続けています。