NIEs(新興工業経済地域)とは?特徴や加盟国、背景までわかりやすく紹介

「NIEsってなに?」
「NIEsにはどこの地域や国が含まれているの?」
「NIEsの特徴や歴史について詳しく知りたい!」

この記事を見ているあなたはこのように思っているのではないでしょうか。

NIEsとは、新興工業経済地域(Newly Industrialized Economies)の略称で、先進諸国がオイルショックなどの経済危機の影響を受ける中、1980年代に急速な経済成長を果たした国や地域を指します。

1980年代にNIEsは高度経済成長を達成

ただNIEsは似たような経済圏があったり、形成までの流れが複雑だったりと、分かりづらい点も多々あります。

そこでこの記事では、NIEsにはどこの地域や国が含まれているのか、また、NIEsの特徴や歴史について詳しく紹介していきます。NICsとの違いなども解説するので、ぜひ参考にしてください。

この記事を書いた人

一橋大卒 歴史学専攻

京藤 一葉

Rekisiru編集部、京藤 一葉(きょうとういちよう)。一橋大学にて大学院含め6年間歴史学を研究。専攻は世界史の近代〜現代。卒業後は出版業界に就職。世界史・日本史含め多岐に渡る編集業務に従事。その後、結婚を境に地方移住し、現在はWebメディアで編集者に従事。

NIEs(新興工業経済地域)とは何か?

NIEsの意味を簡単に紹介

NIEsという呼称は、OECD(経済協力開発機構)が発表した報告書によって命名されました。OECDとは、国際経済の発展を目的に、先進工業諸国によって組織された国際機関です。

OECD(経済協力開発機構)のロゴ
出典:経済産業省

NIEs諸国が台頭するまで、世界経済は日本やヨーロッパ諸国を含む先進国と、その他の後進国に分類されていました。しかし、後進国とされていた発展途上国のうち、一部の地域や国が輸出業を中心に力をつけ始め、目覚ましい経済発展を遂げたのです。その結果、OECDはそれらの地域をNIEsと呼称し始めました。

また、NIEs諸国は先進国と後進国の間に位置している国々として、中進国と呼ばれることがあります。そして、NIEsに含まれる新興工業国のうち、政治や軍事においても影響力を持つ場合は「新興国」として扱われるのです。

NIEsの特徴とは

世界最大の積み替え港であるシンガポール港

NIEs諸国の特徴として、強力な政治指導者の存在や開放的な市場経済、農業経済から工業経済への移行などが挙げられます。これらの特徴は、NIEs諸国に分類される多くの地域に共通して見られたのです。

20世紀後半、世界各地の後進諸国において、貧困から抜け出すことを目的とした輸出志向型の工業化政策が行われました。しかし、この工業化政策は強い政治力を持つ指導者のもとで独裁的に行われた地域が多く、それらの地域では民主政治が抑圧されたため、国民の生活を犠牲にする形での経済成長となったのです。

その結果、急速な工業化と経済成長が行われたNIEs諸国の世界的な重要性は増大していきましたが、独裁的な開発優先政策は多くの民衆による批判を集めることになりました。

NIEsとNICsの違い

NIEsと似た意味を持つ言葉で、「NICs」が使われることがあります。

NIEsとNICsの違いは、英語表記において国以外を含んで表すか、もしくは国のみを表すかという点にあります。NIEsはNewly Industrialized Economies(新興工業経済地域)の略称ですが、NICsはNewly Industrialized Countries(新興工業諸国)の略称です。

当初、NIEsに該当する地域はNICsとして扱われていました。そして、NICsに含まれる地域の中でも、「アジア4小龍」と呼ばれる大韓民国、シンガポール、香港、台湾は、世界経済において確固たる地位を築いていたのです。

しかし、NICsに含まれている香港と台湾は、現在においても正式には国家ではありません。その結果、1988年にカナダのトロントで開催された第14回先進国首脳会議において、NICsと呼ばれていた国々をNIEsと呼ぶよう改められたのです。

アジア4小龍の位置を示した地図(北から順に韓国、台湾、香港、シンガポール)
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