シュメール人とは?文明や特徴、日本人との関係をわかりやすく解説

シュメール人・文明の宗教&神話

アヌンナキの創造神話

古代シュメール人が描いたアヌンナキの印章

シュメール人の宗教の間では、アヌンナキの創造神話が語り継がれていました。アヌンナキとは、シュメール神話に登場する神々の集団です。そして、このアヌンナキが人間を創造したとされています。

この神々の集団は、最高神である空の神アヌと地・死後の世界を司る女神キという2柱の兄妹神が結婚して生んだ子供たちです。アヌンナキは神々の最高議会であり、代表的な名称としてはエンリルやエンキ、イシュタルなどの神々がいました。

神話の時代において、神々の増加により食糧不足に困った知恵の神エンキは、労働をさせる目的で人間を作る方法を発案します。その結果、アヌンナキの神々に奉仕するために人間が作られました。そして、この神話の存在はシュメール人の王が神権政治を行う根拠となったのです。

シュメール人が崇拝した神々

神々の母ナンム

神々の母ナンムは海の女神でもあった

ナンムとは、シュメール神話における海の女神であり、全ての神々を生んだ母なる存在です。ナンムは永遠の昔より世界に存在し、天と地を生んだとされています。

そして、アヌンナキの長である偉大なる空の神アヌと、その配偶者である地・死後の神キを生んだのが原初の神ナンムです。ナンムは、蛇のような姿をしていたとされており、かつてはドラゴンなのではないかと考えられていたこともありました。

また、ナンムはメソポタミア神話における海の女神ティアマトの原型になったとも考えられています。しかし、ティアマトは秩序と創造の象徴でありながら、同時に原初の混沌の具現化とも言われているのです。

愛と美の女神イシュタル

イシュタルを描いたイラスト

イシュタルとは、シュメールの都市国家にある神殿でまつられていた神の1柱です。イシュタルは、金星、戦い、豊穣、愛、美を象徴する女神であり、都市国家ウルクの守護神としてシュメール人から崇拝されていました。

シュメール時代の遺跡から「イナンナ女神の歌」が描かれた粘土板が発見されています。実は、イシュタルという名称はアッカド人による名称であり、シュメールにおける呼称は「イナンナ」なのです。イナンナとは、シュメール語で天の女主人を意味しているとされています。

また、系譜上のイシュタルは最高神アヌの娘とされていますが、ウルの主神である月神ナンナの娘とされることもあり、その場合は太陽神ウトゥや冥界の女王エレシュキガルとの血縁関係があると言われているのです。

風を司る守護神エンリル

エンリルは風や嵐を象徴する神だった

エンリルとは、都市国家ニップルの守護神であり、風や嵐、力を象徴することから破壊的で暴力的な神格を持つと言われています。そして、エンリルは人間を作った知恵の神エンキと腹違いの兄弟であり、両者は度々意見を対立させて争いました。

シュメール神話において、エンキとエンリルはアヌンナキにおける最高神であるアヌの後継を巡って争います。その結果、エンリルが勝利して最高指導者の地位に就任しました。その後も争いは続き、人類一掃を目論むエンリルと、人類に好意的なエンキの対立が様々な形で描かれています。

このような神話の存在によって、シュメール人の間では異民族の侵入や天変地異などの原因は、エンリルの怒りや欲求にあったと考えられていました。シュメール人にとって、エンリルが如何に畏れ多い存在であったかということがわかります。

シュメール人・文明にまつわる謎&都市伝説

謎&都市伝説1「日本人シュメール起源説」

シュメール人が日本人の起源だった?

日本人シュメール起源説とは、シュメール人などのバビロニアを居住地としていた民族と日本人の間に見られる様々な共通点から、大昔にシュメール人の一部が日本に移住してきたのではないかという仮説です。

日本人とシュメール人の関係性における根拠として、代表的なものが日本の古語とシュメール語の共通点です。「すめらみこと」という天皇を意味する古語は、シュメールから来ているのではないかという説が存在します。また、天皇を指す「みかど」に対して、シュメール語には天降る者を意味する「ミグド」という言葉も存在しているのです。

そして、山口県にある彦島杉田遺跡では、複数のペトログラフが発見されており、シュメール語に近い文字が刻まれていることがわかりました。ペトログラフとは、古代人が岩に刻んだ文字や模様を指します。つまり、大昔に日本列島へやってきた民族の中に、シュメール語を知っている人々がいたかもしれないのです。

謎&都市伝説2「古代宇宙飛行士説」

シュメール人を創造し、知恵を授けたのは宇宙人だったかもしれない

古代宇宙飛行士説とは、人類史の古代において、地球に飛来した宇宙人が人間を創造し、人類に知恵と文明を授けたという説です。この都市伝説は、サイエンスフィクション作品において題材とされることが多く、アメリカのドキュメンタリー番組「古代の宇宙人」における主題にもなりました。

そして、この説の論者の中に、アゼルバイジャン出身の著作家ゼカリア・シッチンという人物がいます。ゼカリア・シッチンは、シュメール人を創造したアヌンナキの神々は、仮説上の惑星であるニビルからやって来た種族であるという説を提唱しました。

現在、この仮説は様々な観点から否定されています。しかし、もし古代人が崇拝した超自然的な力を持っていたとされる神々や、それにまつわる神話が、地球外からやって来た先進的な文明によるものであれば、人類がこれまで培ってきた常識が大きく覆ることは間違いありません。

謎&都市伝説3「世界各地に残る大洪水伝説」

大昔の大洪水を描いたイラスト

この世界には、神々が人類や文明を滅ぼすことを目的に起こしたとされる、数多くの大洪水伝説が残されています。そして、シュメール神話にも大洪水伝説が登場するのです。

神話において、アヌとエンリルは人類を滅ぼすために大洪水を起こすことを決定します。しかし、人類に友好的だった知恵の神エンキは、神を敬う人間の王に大洪水が起こることを伝えました。そして、エンキは王に巨大な船を建造することを命じ、大洪水に備えさせたのです。

この神話は、旧約聖書に登場する「ノアの箱舟」に酷似しており、その存在はヨーロッパ世界に衝撃を与えました。また、洪水にまつわる神話はアメリカ大陸や中国、日本にも存在しています。そして、それらの伝説の多くには、古い文明を何者かが壊滅させようとしているという共通点があるのです。

シュメール人・文明の歴史年表

紀元前3500年頃 – 「ウルク文化の形成」

紀元前3500年頃、青銅器時代初期のメソポタミア南部のバビロニアにおいて、シュメール人による都市文明であるウルク文化が形成されました。ウルクとは、シュメールの古代都市であり、イラクの語源になったとも言われています。

ウルク文化初期のシュメール人支配領域

この時代、メソポタミア南部では多数の都市国家が興り、それぞれの都市文化が発展しました。そして、地中海からペルシア湾にかけての広い範囲で交易が行われ、その過程において、楔形文字が発明されていったのです。

その後、ウルク文化時代が終わり、ジェムデド・ナスル期が始まると、青銅器の発達によって強力な武器の生産が可能となり、シュメール文明は都市国家間の戦乱期に突入します。しかし、この時代の末期にはメソポタミア全域において大洪水が発生し、古代都市ウルクの時代は終焉を迎えるのです。

紀元前2900年頃 – 「初期王朝時代」

紀元前2900年頃から紀元前2350年頃の初期王朝時代には、ウルやラガシュをはじめとする新興のシュメール人都市国家が誕生します。そして、この頃に初めて王が出現し、最古の王朝が成立しました。

現代の考古学においては、紀元前2800年頃に興ったキシュ第1王朝のエンメバラゲシ王が、実在した最古の王と言われています。そして、紀元前2600年頃に存在していたとされるのが、ウルク第1王朝の王ギルガメシュなのです。

都市国家ウンマの航空写真

その後、都市国家間においてシュメール地方の覇権争いが勃発し、再び戦乱の時代が始まります。この混乱期は長期化し、世界最古の戦争とされる「ラガシュ・ウンマ戦争」は100年に渡って行われました。

最終的に、シュメール地方の統一を果たした都市国家ウンマの王ルガルザゲシは、ウルク第3王朝を建国。しかし、この王朝も長続きはしませんでした。

紀元前2350年頃 – 「アッカド帝国誕生」

紀元前2350年頃、メソポタミア最古の帝国であるアッカド帝国が誕生します。この帝国は、アッカド人の王サルゴンが建国し、強大な軍事力をもってシュメール文明へ侵攻しました。

アッカド帝国の強大な軍事力の背景には、常備軍の存在がありました。当時、シュメールにおける戦争は、農民や労働者によって行われるものでした。そのため、常備軍を保有していたアッカド帝国は、シュメールに対して圧倒的に優位な軍事力を持っていたのです。

アッカド帝国の地図

その後、アッカド帝国は領土拡大を目的とした軍事遠征を積極的に行い、紀元前2300年頃にはアッカド帝国の版図は最大となりました。しかし、領土拡大は国境の拡大に繋がり、アッカド帝国は異民族の侵入を許してしまいます。その結果、アッカド帝国は無政府状態に陥り、国力の低下を避けられず、暗黒時代へと突入したのです。

紀元前2120年頃 – 「ウル第3王朝の成立」

紀元前2120年頃、シュメール人のウルク王ウトゥ・ヘガルが混乱を収拾し、ウトゥ・ヘガルの部下であったウル・ナンムがウル第3王朝を建国しました。この王朝は、シュメール人にとって最後の王朝となります。

ウル第3王朝のジッグラト

建国者であるウル・ナンム王は、神殿や運河を建設し、現存する最古の法典であるウル・ナンム法典を定めました。このウル・ナンム法典は、後にバビロン第1王朝において発布されるハンムラビ法典に影響を与えることになります。このようにして、初代ウル・ナンム王はウル第3王朝の最盛期を築きました。

ウル第3王朝は、王権の神格化と法の整備により、中央集権国家としてメソポタミア地方を統治していきます。しかし、第2代シュルギ王や第3代シュ・シン王の時代になると、アムル人やエラム人などの異民族の侵入が増加し、防壁を築くなどの対策が必要となっていったのです。

紀元前2000年頃 – 「シュメール人都市国家の滅亡」

紀元前2000年頃、度重なる異民族の侵入によってウル第3王朝は崩壊し、シュメール人都市国家は滅亡することになります。そして、ウル第3王朝を滅ぼしたエラム人は、シュメール人最後の王となった第5代イビ・シン王を東方へ連れ去りました。

ウル第3王朝の滅亡後、都市国家バビロンにはアムル人のバビロン第1王朝が成立。その後、カッシート人王朝やアッシリア帝国、新バビロニア王国と、メソポタミアの支配者は次々と入れ替わります。そして、最終的にメソポタミア地方を含む古代オリエント世界を統一したのがアケメネス朝ペルシア帝国でした。

アケメネス朝ペルシアがバビロニアを併合した頃には、既にシュメール人は歴史上から姿を消していました。しかし、バビロニアにおいて成立した全ての王朝は、かつてシュメール人が築いた文明の影響を強く受けているのです。

外敵と戦うシュメール人が描かれた壁画

シュメール人についてよく分かる関連作品

おすすめ書籍・本・漫画

シュメル―人類最古の文明 (中公新書)

シュメールの歴史における文献、粘土板、円筒印章、碑文などについて解説されています。シュメール人の王朝や民族についての歴史を押さえながら、文学や庶民の日常生活なども多く取り上げており、予備知識が全く無くても楽しく読める1冊です。

また、シュメール人の時代が如何に天候などに左右される不安定な時代であったかがよくわかります。彼らは神々に祈ることしかできなかったのです。

図説 メソポタミア文明 (ふくろうの本/世界の歴史)

メソポタミア文明の歴代国の概略を、豊富な写真と解説で理解することができる1冊です。シュメール人の時代における戦争や王を賞賛するレリーフや楔形文字、遺跡やジグラッド、シュメール神話など、文明の特徴が図説でわかりやすくまとめられています。

また、農業や牧畜などもしっかりと扱われており、紀元前3000年頃の粘土板に書かれた葦造りの家や家畜小屋とよく似ているものが、現代におけるイランの一部地域に残っているという話は非常に興味深いです。

ギルガメシュ叙事詩 (ちくま学芸文庫)

粘土板に刻まれたギルガメッシュ叙事詩は、多くの欠損があるのが特徴です。しかし、本書ではできる限りの翻訳がされており、抜けた文もそのままであるため読みにくくはありますが、下手な憶測や創作もなく、忠実な翻訳となっています。

粘土板に古代文字で描かれている物語を読むことができるということは、非常にロマン溢れることです。神話や伝説の世界浸ることができる素晴らしい1冊になっています。

おすすめの動画

シュメール文明について

聞きやすいナレーションと字幕、史料などを活用しながら、シュメール人の文明について詳しく解説されている動画です。

そして、通説だけでなく、都市伝説に通じるような非常に興味深い内容にも触れており、シュメール人の魅力をたっぷりと味わうことができます。

シュメール人は、どこから来て、どこへ行ってしまったのか? シュメール人と日本人の共通点

シュメール人がどこから来てどこへ行ったのか、という人類史の謎について詳しく解説している動画です。また、日本人とシュメール人の間にある共通点についても紹介しています。皇室と古代シュメール人の間に一体どのような関係があったのでしょうか。

そして、アヌンナキの創世神話についても触れており、古代宇宙飛行士説にも繋がる内容を用いてシュメール人の謎に迫っています。

シュメール人に関するまとめ

今回はシュメール人について解説しました。

シュメール人は、人類最古の都市文明を築き、様々な技術や文化を考案しました。そして、彼らが行った楔形文字の発明や、都市国家の形成は古代オリエントの歴史において重要な役割を担い、その後に続く人類の発展のきっかけを生み出したのです。

この記事ではシュメール人について、特徴から歴史、神話まで紹介しましたが、それに続く古代オリエント世界の歴史についてより詳しく調べてみるのも面白いでしょう。

それでは長い時間お付き合いいただき、誠にありがとうございました。

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