「モーツァルトの死因って何?」
「モーツァルトは毒殺されたって本当?」
ヴォルフガング・アマデウス・モーツァルトはオーストリアの音楽家です。「下書きをしない天才」と噂されるほどの、天才的な音感と記憶力を持って、現在も親しまれている曲を多く作曲しました。
モーツァルトは35歳という若すぎる死を迎えるのですが、謎めいた死で世間を騒がせてもいます。彼の死因は現在も研究が続けられており、幾つか有力な説も出ています。
この記事ではモーツァルトの死因について、最も有力な説からその他様々な説を紹介すると共に墓地問題についても解説していきます。
この記事を書いた人
フリーランスライター
フリーランスライター、高田里美(たかださとみ)。大学は日本語・日本文学科を専攻。同時にドイツ史に興味を持ち、語学学校に通いながら研究に励む。ドイツ史研究歴は約20年で、過去に読んだヨーロッパ史の専門書は100冊以上。日本語教師、会社員を経て結婚し、現在は歴史研究を続けながらWebライターとして活躍中。
モーツァルトの死因は何だったのか?4つの説を紹介
モーツァルトは1791年に、15日間に渡って発熱と発疹に悩まされ全身がむくんだ状態で、35歳の短い生涯を終えています。音楽の天才が35歳と若すぎる死を迎えたことだけで話題になりそうですが、死因の病名がはっきりしないことも憶測が憶測を呼び話題となりました。死因はなんと140もの説が出たといいますが、その中でも有力な説を4つ紹介します。
1.一番有力なのは連鎖球菌咽頭炎の合併症
現在一番有力な説として考えられているのが、「連鎖球菌咽頭炎の合併症」で亡くなった説です。この説は2009年にオランダのアムステルダム大学のチームが発表したものです。
連鎖球菌とは連なったウイルスの特徴からついた名前で、肺炎球菌なども含まれ咽頭内の炎症を引き起こすいわゆる「風邪」です。モーツァルトは風邪をひき、風邪を拗らせて合併症を起こし亡くなったといわれています。
モーツァルトは連鎖球菌咽頭炎の合併症として、「リウマチ熱」を引き起こしたと考えられています。リウマチは菌に感染して1週間から3週間に生じる全身性の非化膿性疾患の一つです。特徴は関節・血管・心臓・神経等に炎症を引き起こし、発熱・胸痛・頭痛・倦怠感・食欲不振などを引き起こします。
モーツァルトは最期は全身腫れ物だらけで寝返りもうてなかったといわれており、恐らく炎症により腎不全を起こしてしまったと考えられています。腎不全だと全身の老廃物が排出されなくなるために、全身が腫れあがってしまいます。
症状の憶測から「連鎖球菌咽頭炎」は当てはまり、抗生物質が無い当時は同じような症状で亡くなる人も多かったといいますので、一番有力な説といわれているのです。
2.とんかつが死因の寄生虫性疾患説
アメリカの医師が発表した説で、モーツァルトが病気にかかる前の手紙に「とんかつを食べた」という記述があることに目を付けて、当時流行していた寄生虫病と症状が符合するといいます。即ちモーツァルトの死因は「生煮えのとんかつを食べたための寄生虫病」という説です。
主張される寄生虫とはトリキノシス(旋毛虫病)であり、高熱・発疹・手足の痛みなどを伴うといいます。モーツァルトは発病の44日前に手紙で、
「何の匂いだ?…(中略)君の健康を祝って食べている」
と記しており、50日の潜伏期間内にも当てはまっており、匂いがきついとんかつを食べていたこともわかっているために一番の有力説では無いものの、かなり有力な説の一つとなっています。この病も近年は医学の進歩でほとんど死に至ることはないものの、モーツァルトの時代は死因として多い病気でした。
3.ウィーンの公式記録の「急性粟粒熱」
色々な憶測を呼んでいるモーツァルトの死因ですが、ウィーン市の公式記録には「粟粒熱」と記されています。記録に書いてあるのなら死因はわかっているじゃないかとなりますが、この粟粒熱とは発疹を伴った発熱の症状を表す言葉で病名ではないそうです。
つまり「モーツァルトは高熱と発疹が元で亡くなった」と記されているだけであり、結局なぜ発疹を伴う高熱が出たのかを現在でも憶測する状況となってしまったのです。