「モーツァルトの死因って何?」
「モーツァルトは毒殺されたって本当?」
ヴォルフガング・アマデウス・モーツァルトはオーストリアの音楽家です。「下書きをしない天才」と噂されるほどの、天才的な音感と記憶力を持って、現在も親しまれている曲を多く作曲しました。
モーツァルトは35歳という若すぎる死を迎えるのですが、謎めいた死で世間を騒がせてもいます。彼の死因は現在も研究が続けられており、幾つか有力な説も出ています。
この記事ではモーツァルトの死因について、最も有力な説からその他様々な説を紹介すると共に墓地問題についても解説していきます。
モーツァルトの死因は何だったのか?4つの説を紹介
モーツァルトは1791年に、15日間に渡って発熱と発疹に悩まされ全身がむくんだ状態で、35歳の短い生涯を終えています。音楽の天才が35歳と若すぎる死を迎えたことだけで話題になりそうですが、死因の病名がはっきりしないことも憶測が憶測を呼び話題となりました。死因はなんと140もの説が出たといいますが、その中でも有力な説を4つ紹介します。
1.一番有力なのは連鎖球菌咽頭炎の合併症
現在一番有力な説として考えられているのが、「連鎖球菌咽頭炎の合併症」で亡くなった説です。この説は2009年にオランダのアムステルダム大学のチームが発表したものです。
連鎖球菌とは連なったウイルスの特徴からついた名前で、肺炎球菌なども含まれ咽頭内の炎症を引き起こすいわゆる「風邪」です。モーツァルトは風邪をひき、風邪を拗らせて合併症を起こし亡くなったといわれています。
モーツァルトは連鎖球菌咽頭炎の合併症として、「リウマチ熱」を引き起こしたと考えられています。リウマチは菌に感染して1週間から3週間に生じる全身性の非化膿性疾患の一つです。特徴は関節・血管・心臓・神経等に炎症を引き起こし、発熱・胸痛・頭痛・倦怠感・食欲不振などを引き起こします。
モーツァルトは最期は全身腫れ物だらけで寝返りもうてなかったといわれており、恐らく炎症により腎不全を起こしてしまったと考えられています。腎不全だと全身の老廃物が排出されなくなるために、全身が腫れあがってしまいます。
症状の憶測から「連鎖球菌咽頭炎」は当てはまり、抗生物質が無い当時は同じような症状で亡くなる人も多かったといいますので、一番有力な説といわれているのです。
2.とんかつが死因の寄生虫性疾患説
アメリカの医師が発表した説で、モーツァルトが病気にかかる前の手紙に「とんかつを食べた」という記述があることに目を付けて、当時流行していた寄生虫病と症状が符合するといいます。即ちモーツァルトの死因は「生煮えのとんかつを食べたための寄生虫病」という説です。
主張される寄生虫とはトリキノシス(旋毛虫病)であり、高熱・発疹・手足の痛みなどを伴うといいます。モーツァルトは発病の44日前に手紙で、
「何の匂いだ?…(中略)君の健康を祝って食べている」
と記しており、50日の潜伏期間内にも当てはまっており、匂いがきついとんかつを食べていたこともわかっているために一番の有力説では無いものの、かなり有力な説の一つとなっています。この病も近年は医学の進歩でほとんど死に至ることはないものの、モーツァルトの時代は死因として多い病気でした。
3.ウィーンの公式記録の「急性粟粒熱」
色々な憶測を呼んでいるモーツァルトの死因ですが、ウィーン市の公式記録には「粟粒熱」と記されています。記録に書いてあるのなら死因はわかっているじゃないかとなりますが、この粟粒熱とは発疹を伴った発熱の症状を表す言葉で病名ではないそうです。
つまり「モーツァルトは高熱と発疹が元で亡くなった」と記されているだけであり、結局なぜ発疹を伴う高熱が出たのかを現在でも憶測する状況となってしまったのです。
4.ライバル、サリエリの毒殺説
モーツァルトの死後噂されたのが毒殺説です。モーツァルトの才能に嫉妬して何者かが毒をもって殺害したというのです。その実行犯は、アントニオ・サリエリと噂したといいます。サリエリでないにしても、誰か嫉妬した音楽家が毒を盛ったのではと市民の間で噂になっていったそうです。モーツァルトは死の5か月前に、
「私を嫉妬する敵がポーク・カツレツに毒を入れ、その毒が体中を回り、体が膨れ、体全体が痛み苦しい」
と妻に手紙を送っています。そのために妻が死後に「夫に誰か毒を盛ったのだ」と言ったために噂は広がっていったのです。そしていつしかウィーン宮廷楽長のサリエリが盛ったのだという噂になっていったといいます。
映画「アマデウス」では毒殺と描かれているが…
映画「アマデウス」(1984年作)は、サリエリの毒殺説をかいています。物語のあらすじは、モーツァルトの死後にウィーンの新聞で、「サリエリが盗作するために、毒殺したのではないか」とセンセーショナルに書き立てます。サリエリは世間に「宮廷楽長の座に長く居座るためにモーツァルトを毒殺したのだ」といわれるようになるのです。
そしてサリエリが精神病院で余生を送り、「自分がモーツァルトを毒殺したのだ」と告白して生涯を閉じて物語は終わります。
しかし映画の「アマデウス」のような毒殺説は現在ほぼ否定されています。まず、現実では確かにサリエリは噂が元で抑うつ状態にはなっていますが、入院したのは痛風と視力低下のために起きた怪我がもとだったといいます。
そしてサリエリは音楽家として成功し、経済的に恵まれ慈善活動に心血を注いでいたといいます。またモーツァルトの作品「魔笛」を高く評価してモーツァルトと親交も持っています。要するにそもそも音楽家として高い地位にいて、非常に高潔な人物であり、モーツァルトともかなり親交があったためにわざわざ毒殺する必要が無いのです。
モーツァルトのお墓問題とは?
モーツァルトの死にまつわる話に、もう一つ後世の人を悩ませたものに、お墓問題があります。そこには、モーツァルトの時代の政策「共同墓地」というシステムに起因しています。
共同墓地に埋葬された
モーツァルトはザンクト・マルクス墓地に埋葬されています。しかし何処に埋葬されているかがわかっていないのです。あまりにもひっそり亡くなって、参列者も無く埋葬されています。
理由はモーツァルトが死去した時代は、オーストリアではお葬式の方法や埋葬方法が見直されている時期でした。参列者をつけずに共同の墓地に数人で埋葬されたので、どこに埋葬されたのかがわからないのです。
そのため現在ザンクト・マルクス墓地の「モーツァルトの墓とされるもの」は、看守が打ち捨てられた他人の墓の適当に集めて適当に建てたものだといいます。
遺骨が行方不明になる
埋葬した場所がわからないために、当然遺骨も行方不明となりました。しかし現在国際モーツァルテイム財団にモーツァルトのものとされる頭蓋骨が保管されています。
これはモーツァルトが埋葬された10年後に、墓地が再利用のために遺骨はわからなくなってしまい、頭蓋骨だけが保管されて所有者を何人か変えた後に1902年に財団に寄付されたというものです。
現在頭蓋骨が保管されているが…
モーツァルトの頭蓋骨は2004年にウィーン医科大学が、モーツァルトの親族の発掘許可を得て、問題の頭蓋骨とのDNA鑑定が行われています。しかし結果は、叔母や姪と縁戚関係がない事が判明しています。
ということは別人の遺骨なのか?となってきますが、DNA鑑定をした叔母と姪も縁戚関係がないことがわかり結局信憑性にかけるために遺骨は謎のままとなっています。もしかしたら今後、新たな事実が研究によりわかってくるかもしれません。
モーツァルトの死因に関するまとめ
いかがでしたでしょうか?筆者は実はモーツァルトは毒殺説のイメージが強かったのですが、恐らく間違いで、感染症で亡くなったのだろうということを知り、現在のコロナ感染を思い出し感染症の怖さを感じています。
モーツァルトが本格的に評価されたのが死後だったために、死因や墓の場所がはっきりわかっていないのも残念であるとともに、そこが歴史の面白さともどかしさだなと感じました。これから更に研究が進んで新しい事実がわかるのを楽しみにしようと思っています。最後まで読んでいただきありがとうございました。