中国国家主席歴代7人とその評価・功績を紹介!権限や選出方法なども解説

李先念(りせんねん)

第3代国家主席の李先念
出典:Wikipedia

名前李先念
3代目
第4期
在任期間1983年6月18日~
1988年4月8日
所属政党中国共産党
副主席ウランフ

李先念は1980~1990年代にかけて強い権力を有していた中国共産党の八代元老の一人でした。毛沢東が一度、国家主席という役職が廃止しますが、彼の死後、再度設置された際に就任した初めての国家主席です。

先述の通り、再設置された国家主席は儀礼的、象徴的意味合いが強く、彼は実権を多くは持っておらず、このとき中央軍事委員会主席であった鄧小平が大半の実権を握っていました。鄧小平は自分に近しい人たちを重要なポストに就けることで実権を握り、鄧小平体制と呼ばれる体制を築き上げます。この体制は次代の国家主席である楊尚昆まで続きました。

鄧小平は毛沢東のこれまでの政策から方針転換し、市場経済への移行、一人っ子政策など現在に続く中国の大まかな方針を決定づけました。

楊尚昆(ようしょうこん)

第4代国家主席の楊尚昆
出典:Wikipedia

名前楊尚昆
4代目
第5期
在任期間1988年4月8日~1993年3月27日
所属政党中国共産党
副主席王震

楊尚昆も先代の国家主席である李先念と同様に八大元老の一人で、彼は中国人民解放軍に大きな影響力を持っていました。彼の在任期間中にあの有名な天安門事件が起きます。

民主化を求めたデモ隊に対する武力行使に楊尚昆は当初反対し、武力による鎮圧に批判的な立場でした。しかし、50年来の朋友である鄧小平の意志が強いとわかると、彼に従い国家主席の権限で戒厳令を発布します。そして楊尚昆の弟が軍を指揮して、デモ隊を鎮圧しました。

この一件から楊尚昆はさらに中国人民解放軍への影響力を強め、その力は鄧小平も無視できないものとなっていきます。このとき、鄧小平は自身の後任として江沢民へ権力の移譲を画策していたため、楊尚昆の影響力を危惧し、彼に引退を迫ります。さらには楊尚昆よりの軍幹部も辞任を迫られることになりました。

これを受けて楊尚昆は退任し、政界を去ることになります。

江沢民(こうたくみん)

第5代国家主席の江沢民
出典:Wikipedia

名前江沢民
5代目
第6期・第7期
在任期間1993年3月27日~
2003年3月15日
所属政党中国共産党
副主席栄毅仁(第6期)
胡錦濤(第7期)

江沢民は初めて最高指導者として国家主席、総書記、中央軍事委員会主席の3つの役職を兼任して、権力の一元化に成功した人物です。先ほど紹介した通り、これまでは地位と実権が一致しておらず、国家主席ではない鄧小平が実権を握っていました。

しかし、江沢民が国家主席に就任して以降、国家主席が3つの役職を兼任する権力集中体制は次代の国家主席にも受け継がれます。江沢民は国家主席に就任すると、鄧小平の政策を引継ぎ、共産党の独裁体制の維持と経済発展を推し進めます。

彼が自身の基盤を固め、地位を盤石なものにした後、中国を資本主義国化していき、さらには2001年WTO(世界貿易機関)に加盟しました。そして、彼は外資の受け入れと国を挙げて輸出に注力したことで、後に「世界の工場」と評される製造大国への道の礎を作り上げました。

胡錦涛(こきんとう)

第6代国家主席の胡錦涛
出典:Wikipedia

名前胡錦濤
6代目
第8期・第9期
在任期間2003年3月15日~2013年3月14日
所属政党中国共産党
副主席曽慶紅(第8期)
習近平(第9期)

胡錦濤が国家主席に就任すると、これまで経済優先の政策による高度経済成長の弊害で起きた、農村部と都市部の格差や公害などの問題解決に取り組みました。しかし、経済を軽視したわけではなく、彼の任期中に当時史上最大規模の北京五輪や上海万博の誘致・開催に成功します。

また、今まで輸出重視の政策を転換し、輸出のみに頼るのではなく、国内の消費を重視する内需拡大を目指しました。そしてついに、中国のGDPが日本を抜き、世界2位に躍り出ます。

胡錦涛が在任期間に中国もリーマンショックに起因する世界金融危機に巻き込まれますが、金融緩和や高速鉄道の建設など4兆元もの財政出動により、世界最速でこの金融危機を乗り越えます。

この政策により、世界のGDP成長率の半分以上に関与したことから、胡錦涛はリーマンショック後の世界経済を救済したと評価されました。その一方で、国内に数多くの不良債権を抱えたと批判的に評価されることもあります。

習近平(しゅうきんぺい)

第7代国家主席の習近平
出典:Wikipedia

名前習近平
7代目
第10期・第11期
在任期間2013年3月14日~
現在(2021年6月時点)
所属政党中国共産党
副主席李源潮(第10期)
王岐山(第11期)

習近平は2013年から現在(2021年6月時点)に至るまで、国家主席に就任している人物です。彼はこれまでの国家主席の経済重視の政策を引継ぎ、「一帯一路」と呼ばれる中国からヨーロッパにかけての巨大な経済圏構想を唱えます。

この構想は100以上の国から支持、協力を取り付け、さらには国連総会、国連安全保障理事会、ASEAN、EUなど多くの国際機関も支持しました。習近平は中国建国100周年にあたる2049年までに一帯一路の完成を目指しています。

一方で自身の政権を維持するためなのか、2018年の全人代でこれまで2期10年が上限だった国家主席の制限を撤廃する憲法改正をしました。これは国内外に衝撃を与え、事実上の習近平政権の終身体制が整ったという見方もされています。

また、国内外のメディアへの圧力や言論弾圧を進める姿勢と新疆ウイグル自治区に住むウイグル人への監視・洗脳などの人権侵害の疑惑で批判を受けています。

中国の歴代国家主席まとめ

今回は中国の歴代国家主席を紹介するとともに、国家主席はどのような役割を持つのか、また、任期や選出方法、その権限について解説しました。

中国の国家主席と言えば、絶大な権力を持っているイメージでしたが、国家主席という役職そのものには大きな権限を有していないことに驚きですよね。毛沢東以降、歴代の国家主席は経済を重視した政策を推し進め、それにより中国は爆発的な経済成長を成し遂げました。

一方で、中国共産党による一党独裁の弊害として、人権問題や表現の自由、汚職問題などが表面に出てきています。これからの中国がどのような動きを見せるのか見守る必要がありそうです。

この記事を読んで、皆様が中国の歴代国家主席について少しでも理解を深めことができたなら幸いです。

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