世界を変えたと言われる、Apple共同創業者の一人であるスティーブ・ジョブズ。その神がかったプレゼンテーションの様子は誰もが一度は目にしたことがあると思いますが、それと同時に彼のファッションにも大きな注目が集まりました。スーツではなく、ニットにジーンズ、スニーカーという出立ちだったからです。しかもいつも同じ服を着ているように見えました。
スティーブ・ジョブズが金銭的に余裕がなく服を買えないとは考えられません。何かポリシーがあっていつも同じ服を着ているのか?いつも着ている服はどこのブランドのものなのか?なぜその服を選んだのか?興味をそそられますよね。
この記事では、そんなスティーブ・ジョブズの服にまつわる疑問に答えます。ジョブズと似た考え方でファッションを選んでいる著名人についても紹介しています。最後まで読めば、彼らのファッションに対するポリシーの背景にあるものが見えてくるはずです。
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スティーブ・ジョブズが毎日着ていた服とファッションブランド
スティーブ・ジョブズのトレードマークとも言えるニットとジーンズ、スニーカー。ここではそれらのブランドを紹介します。
愛用ブランド
ニットは、スティーブ・ジョブズがイッセイ・ミヤケにオーダーした特注品です。そのため、同じものを手に入れることはできませんが、似たものは2011年まで「ジョブズT」として販売されていました。ジョブズの死後は生産が中止されていましたが、2017年にHOMME PLISSÉ ISSEY MIYAKEで再販されました。
素材は天竺のコットン100%で、前身頃のセンターにステッチが一本入っているだけのシンプルなデザインです。ジョブズのニットはモックネックでしたが、今回はネック部分が若干高いハイネックになっています。ちなみにジョブズの愛用ニットのカラーは黒と思われがちですが、実際は濃紺です。再販されているトップスは墨のような黒となっています。
ジーンズはリーバイス501モデルです。2005年のiPod nanoの発表の際、リーバイス501のコインポケットからiPod nanoを取り出すジョブズの姿を覚えている方も多いかもしれません。ジョブズがよく履いていたリーバイス501は薄いインディゴでした。現在販売されている1993年のモデルが、ジョブズの愛用したものに近いです。
靴はNew Balanceの991や992モデルを愛用していました。992モデルは991の後継版として2006年に発売され、ジョブズはグレーカラーを履いています。しばらく廃盤となっていましたが、2020年に当時のテクノロジーを再現した待望の復刻をしています。ジョブズ以外にも多くのクリエイターが愛用したモデルとして知られており、今でも根強い人気を誇っています。
ノームコアの代表格
ノームコアとは「Normal」と「hardcore」を掛け合わせた造語で、「究極の普通」といった意味のユニセックスなカジュアルファッションを指す用語です。2014年ごろから使われ始めた言葉ですが、スティーブ・ジョブズの定番のものを身に纏い続けるファッションスタイルは、ノームコアのアイコンのような存在であると言われます。
高級であることや尖った感性を極めるといった、人と違う要素を追い求めるのではなく、どこか似ているような、変哲のない服装を選ぶというトレンドが流行り、ニューヨークで登場した「ノームコア」。ここにはスティーブ・ジョブズの信念に通じるものがあったようです。それは禅の教えでした。
スティーブ・ジョブズが禅に高い関心を抱いていたことは有名ですが、「コツコツ1つのことを続ける人が最も強い」という言葉に感銘を受け、シンプルに生きることをジョブズはモットーにしていました。ノームコアの服装はその考え方がファッションに転化されたものだったのです。
スティーブ・ジョブズはなぜいつも同じ服?
決断の回数を減らすことが目的
スティーブ・ジョブズが同じ服を着る理由は、日常において決断の回数を減らすことが目的でした。私たちは普段、何度も決断を迫られています。朝食に何を食べるか?目的地まで電車で行くのか、車で行くのか?など、何気ない日常でも数々の決断をして生活しているわけで、そこには自分では気づきにくい心理的負担がかかっているものです。
しかしファッションを固定化してみてはどうでしょう?朝、何を着ていくのか悩むことがなくなるだけではなく、ブランドが固定化されていればその服を買うと決めるまでの負担も減ります。
ジョブズは仕事柄、避けることのできない大きな決断に直面することが多かったはずです。その心理的負担を考えれば、ファッションを決めておくというのは生活する上でとても楽なことであり、重要な案件にのみしっかり悩むことができるようになります。「シンプルに生きる」というジョブズの考え方に即したものだったわけです。