何かしら罪を犯した人が収監される刑務所ですが、どんな食事が出るのか気になる人も多いのでははないでしょうか?
「意外に美味しい」という噂もありますし、「臭い飯」などと表現されることもあります。そこでこの記事では、刑務所の食事について詳しく紹介いたします。実際の献立例や食事に関する実態、海外刑務所の食事についても調査しました。
この記事を書いた人
フリーランスライター
フリーランスライター、高田里美(たかださとみ)。大学は日本語・日本文学科を専攻。同時にドイツ史に興味を持ち、語学学校に通いながら研究に励む。ドイツ史研究歴は約20年で、過去に読んだヨーロッパ史の専門書は100冊以上。日本語教師、会社員を経て結婚し、現在は歴史研究を続けながらWebライターとして活躍中。
刑務所での食事はどのようなもの?
罪を犯した受刑者の食事ですが、刑に服している時の食事はどのようなものかを紹介します。
刑務所でのメニュー例
刑務所では質素ですが、栄養バランスが考えられた食事が出されているようです。食事の一例を見てみます。
- 朝食:麦飯・味噌汁・豆腐・桜漬
- 昼食:麦飯・味噌汁・八宝菜・おでん
- 夜食:麦飯・スープ・餃子・がんも煮つけ・味付け山菜
シンプルですがしっかりとおかずもあり、栄養面もしっかりとれそうです。食事は麦飯で、麦と白米が3:7の割合でブレンドされているものが出されています。麦を入れる意図は白米よりも安価で済むことと、腹を膨らませられるからという理由だそうです。その他にも、血糖値を上昇させにくく、便通にも良い効果があるといいます。
一昔前は刑務所のご飯は「くさい飯を食う」という言葉があるように、刑務所というとご飯がまずいというイメージでした。理由は備え付けのトイレが近いために「臭い」という意味と、戦後まもなくは予算の関係で古い米しか手に入らなかったため、「臭い飯」になってしまったという説があるそうです。しかし上記のメニューや写真を見る限り、現在は米に関しては「臭い飯」ではなさそうです。
クリスマスなどの行事時は食事が豪華
刑務所でも、クリスマスや年越しなどのイベントの時は少しご飯が豪華になるようです。クリスマスの日は夕食に、ケーキとチキンが出てくるといいます。チキンはフライドチキンではなくローストチキンだったり、ケーキもショートケーキではないそうですが、甘いものが出てくるので受刑者は楽しみにしているそうです。
年越しの時にはカップ麺「どん兵衛」の年越しそばが出て、正月にはおせちが出ます。出されたおせちは正月三が日自由に食べることが許されていますが、3日までに食べきらないといけない決まりがあるそうです。食べきらないからと、他の受刑者たちにあげると規則違反になってしまいます。そして正月の三が日だけは麦飯ではなく、白米が出るといいます。
受刑者に人気の食事は?
受刑者に美味しくて人気な食事は、「どぶ汁」と呼ばれる味噌汁や「さつまいもとリンゴの重ね煮」「たくあん炒め」「中華ポテト」などの名前が挙がっていました。「どぶ汁」とは関東の刑務所に昔からある味噌汁で、天かすをたっぷり入れたものだといいます。「さつまいもとリンゴの重ね煮」も人気で、甘いのでパンにはさんで食べる人が多いとのことです。
「たくあん炒め」はたくあんを薄く切ってニンニクを効かせて炒めたもので、出所後に作りたいからレシピを教えてほしいと話している受刑者もいたそう。「中華ポテト」は半分凍ったたれがほとんどない「大学芋」のようなものらしいですが、これが甘くて美味しくて最後まで取っておいて食べる人もいる程の人気メニューだといいます。
刑務所での食事の実態
懲役刑のための刑務所では、色々な食事の決まりごとが存在します。そんな刑務所での食事ルールを紹介します。
一日の食事の予算
食事の予算は、受刑者の1人あたり420円程度といわれています。豪華ではありませんが品数もしっかりしており、管理栄養士の資格を持った技官が配置されているために、一日に必要なカロリーを計算して献立が作られています。
日によってはカツカレーやウナギといった豪華な食事が出ることもあり、時々いつもより豪華と感じる食事がでるのが、受刑者の楽しみとなっているそうです。
作業と身長で食事の量が違う
刑務所では作業と身長によって、主食(ご飯やパン)の量が違います。作業での食事差は、ランクが特A・A・B・Cとわかれて決まっているようです。
- 特A:500g(除雪作業や造林作業)
- A:370g(立ち作業の人、例えば炊場・外掃など)
- B:300g(主に座って作業する人)
- C:280g(作業しない人、懲罰中・入病中など)
そして身長によっても量が変わり、180センチ以上の人は5センチ単位で増量されていくといいます。
刑務所でおかわりは可能?
刑務所で食事のおかわりは不可です。ただし最初に盛られた食事が割と量が多いために、逆に残す人も割といるといいます。また他の受刑者とおかずを交換したり、あげたりもらったりしても不正受給となるそうです。ただし、嫌いなものを残すことができます。
炊場工場は重要なポジション
食事を作る炊場工場は、食事において重要なポジションにあります。炊場工場に知り合いや友人がいた場合は、おかずや味噌汁の具を沢山入れてもらえるといったことがあるようです。逆に気にくわない場合は、見るからに少なく割り菜することもあるといいます。そのためできるだけ炊場工場の人と喧嘩したくないようです。
刑務所ごとで食事の美味しさは違う?
刑務所では懲役同士の噂話で、「どこの刑務所のご飯が美味しかったか?」といった話題をよく話すそうです。懲役を受けている人には複数の刑務所を経験している人もおり、とても盛り上がる話題といわれています。そこで、刑務所の中でも美味しいと評判の施設を調査しました。
長野刑務所での食事メニュー例
長野刑務所は、とてもご飯が美味しいことで有名な刑務所です。長野刑務所はホリエモンこと堀江貴文さんが収監されていたため、ご飯のことも漫画で触れています。漫画で紹介されている献立を見てみると、以下のような献立でした。
- 朝食:麦飯・味噌汁・サバ味噌煮・ふりかけ
- 昼食:麦飯・八宝菜・中華春雨・シューマイ・グレープフルーツ
- 夜食:麦飯・豚肉の利休焼き・ラタトゥユ・ブロッコリーサラダ
豚肉の利休焼き、ラタトゥユなど凝った名前のメニューが登場しています。豚の利休焼きとは、ゴマをたっぷりと入れたたれで漬け込んだ肉を焼いたものだそうです。一般の食卓よりも凝った食事が出ているような印象を受けますね。
府中刑務所での食事メニュー例
府中刑務所の献立はわかりませんでしたが、府中刑務所は毎年「文化祭」が開かれており、刑務所の疑似体験をすることができます。文化祭では「麦飯食堂」でランチ目当てに来る人と、「府中刑務所特製パン」という刑務所で焼かれた100円のコッペパンを目当てに来る人が多いといいます。
麦飯食堂で人気なのが「プリズンカレー」で、麦飯にカレーがついたセットです。食べた人の口コミによると、「お母さんが作ったカレー」のような素朴な味だったということです。実際に刑務所内で食べているカレーとはまた違う味かもしれませんが、麦飯カレーを食べているということは間違いなさそうです。
旭川刑務所での食事メニュー例
旭川刑務所は改築により雑居房がなくなり、全て個室になったことで「贅沢だ!」と話題になった刑務所です。そんな旭川刑務所の食事メニューが、取材されていました。
昼食のメニューですが、「ご飯・味噌ラーメン・ゆで卵とナスのサラダ・ワサビの油揚げソテー」とあります。ここでは一食ではなく、一日三食で500円ということです。ネットでも「羨ましい」というコメントが沢山見られ、物議を醸しだしています。確かに写真を見る限り、美味しそうで3食500円は安いですね。
女性刑務所での食事事情は?
女性刑務所での食事の違いがあるのかが気になりますが、特に通常の刑務所と大きな違いはないようです。女性刑務所の昼食の献立を見てみると、「レトルトのハンバーグ・ブロッコリーマヨネーズ(人参入り)・ナポリタン・麦飯・牛乳」が出ています。
彩までしっかり考えられていて、通常の刑務所と同じく質素ですがしっかりと栄養が取れそうです。盛り付けは喧嘩の原因にもなるために、量が均等か刑務官が厳しくチェックしているといいます。私語ができるかは全国で統一のルールはないそうですが、喧嘩防止のために禁止しているところが多いようです。私語厳禁の刑務所では、目も合わせずに黙々と食べる食事風景が見られます。
海外の刑務所の食事事情
日本の刑務所は質素ながら栄養バランスの取れた食事が提供されている印象ですが、海外ではどうなのか?海外刑務所の食事事情を調査しました。
アメリカの場合
アメリカの留置所や刑務所は、食事が酷いことで知られています。基本的に主食はパンで、スパゲティやカレー、野菜やジュースがついたりするようです。アメリカは2000年代に大幅な経費削減を実施しているため、刑務所の食事は質も量も低下していってるといいます。
またアメリカでは特に態度が悪い受刑者や喧嘩した受刑者に対して、「ヌトラローフ」という特別な食事が与えられるそうです。受刑者が嫌がるほど味がなく、材料は刑務所によって若干違うものの牛乳・米・芋・キャベツ・人参・豆・オートミール・マーガリンで作られているそうです。
これらを混ぜて作られており、栄養面は全く問題ないのですが食べた人は「まるで段ボールを食べているようだ」というそうなので、かなりまずいことが想定できますね。
ただしアメリカでは、死刑執行の前日や前々日に希望の食事を取らせる「ラスト・ミール」と呼ばれるシステムがあります。州によって予算の基準が違うものの、豪華な食事や好物の食事を頼めるのです。死刑囚によってはまったく喉を通らないという人もいれば、とても豪華な食事をとって刑を受ける人もいるそうです。
フィリピンの場合
フィリピンの刑務所は、日本の刑務所と比べると生活や食事など全ての面において過酷なようです。フィリピンの刑務所では非常に過密状態のために、階段のスペースで雑魚寝したり、人が重なって寝ていたりするといいます。またトイレもトイレットペーパーがないために手で拭かないといけないような状況であり、病気が蔓延し毎年5人に1人が死亡している環境です。
そんな過酷なフィリピンの刑務所での食事は、「米とイワシを混ぜたご飯」などです。栄養価は高くなく、不衛生な調理法で調理されているといいます。慈善団体からの寄付があるクリスマスなどは、多少豪華になり「野菜のシチューや肉の缶詰」が出てくるそうです。
ノルウェーの場合
ノルウェーの刑務所は「世界一人道的な刑務所」で話題となっています。囚人の部屋には冷蔵庫やテレビ、冷蔵庫が完備されているそうです。銃を装備した刑務官もおらず、監視カメラも施設の外にしかないといいます。
そんなノルウェーの刑務所の食事も写真を見る限り、とても刑務所の食事とは思えない豪華さです。一見したところ、サーモンやお肉があるのがわかります。まるでバイキングのような食事に驚かされるばかりですが、懲役の部屋の中にもキッチンがあり、自炊できるといいます。そのような境遇できちんと更生できるのかが気になりますが、ノルウェーの再犯率は世界最低レベルの16パーセントだそうです。
快適な囚人生活なのに再犯率が低い理由は、より「更生する」点に力を入れているからといいます。ノルウェーの先住民の教えである「報復が新たな報復を呼び、新たな犯罪を呼ぶ」を大事にし、同じ過ちを繰り返さないような指導を行っているということです。
刑務所の食事を体験する方法は?
刑務所の食事を体験したいという時は、網走刑務所の食事を体験できる「監獄食堂」というところがあります。食堂は「博物館網走監獄」にあり、現在の網走刑務所の収容者が食べている食事のメニューを再現したものを食べられるのです。
食事した人からは「意外に美味しい」と言われるそう。一食900円ということですので、是非博物館網走監獄を訪れた時は利用したいものですね。また少し先述しましたが、「府中刑務所」で年に一度行われる「矯正展」では、刑務所食体験コーナーがありお弁当を買えます。こちらも一度訪れてみると良いのではないでしょうか。
刑務所の食事に関するまとめ
いかがでしたでしょうか?今回は刑務所の食事を解説しましたが、筆者は国によって全く考え方が違ったりと国・地域などで差があることにとても驚いています。食事を通しても、国別の考え方が繁栄されていて、正解はわかりませんが結果的に受刑者が更生できたならば良いのではないかと感じた次第です。最後までお読みいただきありがとうございました。
もう少し長期にわたって取材してみてはどうでしょうか?
私の知る限りそんなにいい料理が毎日出た記憶がないのですが…
それとも最近は変わったのか。
しかし、良い記事をありがとうございました。