社会主義と共産主義の違いは?
「社会主義」と「共産主義」と、どちらも耳にすることが多い思想ですが、2つには違いがあります。そこでここでは思想の違いを紹介します。
「社会主義」の先の理想が「共産主義」
結論からいうと、理想とする「共産主義」に到達するまでの第一段階が「社会主義」です。社会主義が発展すると共産主義になるといわれました。社会が発展するにつれて生産力が向上し、社会主義が実現できれば人々は能力に応じて働き、最終的には「必要に応じて物が手に入る」と考えたのです。
社会主義は「国体」の考え方
社会主義とは、「国が経済管理することにより平等な社会を実現しよう」という平等をベースとした思想です。マルクスやエンゲルスが考えた理論によると、「資本主義社会が発展したものが社会主義」とされました。
社会主義のメリットは、「市場による失敗がない」といった点です。これは1929年の世界恐慌の時に立証されており、ソ連は5か年計画による農業の集団化や、国家主体の重工業化が進み発展していきました。当時は資本主義国家からも「理想郷」と見られた時期もあったのです。
しかしその反面、政治犯や思想犯など社会主義に反対する人は強制労働させられ、富も共産党上層部のみが分配されるといった事実もあります。
共産主義は「経済体制」を表す
共産主義を簡単にいうと、「資本や財産をみんなで共有する平等な社会体制」を表します。土地や財産などを全て国のものにし、生産されたものはみんなの物になり、均等に分配していくといった考え方です。最終的には全ての利益をみんなで共有し、国が管理する制度自体がいらないといった考えになります。
マルクス主義では、資本主義は資本を持っている人が富を独占しており、人々に貧富の差が出ると考えました。資本家ばかりがお金を増やし、労働者は資産が増えない制度への限界を見越したものだったといいます。
社会主義の特徴は?
社会主義国家の代表的な特徴や、現在の社会主義国家について解説していきます。
仕事は国が決める
社会主義国家において仕事は、国や地方公共団体などに管理されているのが特徴です。そして国や地方公共団体などが個人の仕事の割り振りをしています。よって資本家と労働者の関係はなく、全員が平等となるのです。そのため給料も平等に配布されるために、貧富の差が拡大しないのが特徴といえます。
ただしどんな仕事ぶりでも給料は一律だというデメリットがあります。頑張っても給料は上がらず、効率的に仕事をしようという努力もありませんでした。そのため生産性が低下してしまい、経済が停滞してしまう事態が起きる側面があります。このことも1つの要因として、1991年のソ連崩壊に繋がりました。
現在の社会主義国家は?
現在も社会主義国家として残っているのは、中国・北朝鮮・ベトナム・キューバ・ラオスなどです。また、インドやポルトガルは憲法上において「社会主義」と定義している国もあります。
近年は社会主義も多様化し、中国以外にベトナムなども「市場経済」を取り入れているのです。ベトナムは現在も一党独裁制を取っており、合法な政党は「共産党」だけです。そして市場経済が導入されているものの、投資による規制は厳しく、特に外資の規制が近年厳しくなってきているといいます。
共産主義の特徴は?
次に共産主義の特徴について解説していきます。
実現はかなり難しい
共産主義とは社会主義を一歩進んで、「能力において労働し、必要に応じて受け取る社会」を目指しており、職業革命家や労働者革命を肯定し、国有化や経済の中央集権化を行う思想です。しかし共産主義を実現させた場合、最終的には国の管理もいらなくなるのを目標としており、「共産主義の国」というのは存在しえないことになります。そのためあくまで理想であり、共産主義に少しでも近づける「社会主義国家」が存在しているのです。
共産主義国家はまだ成立せず独裁者も
結論からいうと、国の管理がいらなくなるという「共産主義国家」は存在していません。そもそも共産主義とは、民主主義の発達した資本主義国家が格差や矛盾を克服するために「社会主義」へと変革し、やがて「共産主義」になるという考え方です。
そのために社会主義国は「民主主義の発達した資本主義」を経るのが理想であり、「社会を変えたい」という民衆が社会主義へと変革した上で成り立つとマルクスは説いていました。しかし実際には独裁者や党の主導で変革し、反対するものには大静粛がされていきます。結果、ソ連のスターリンなど独裁者が現れる要因にもなったのです。
中国は社会主義と共産主義のどっちに関するまとめ
中国は社会主義と共産主義のどっちなの?といった疑問ですが、筆者もこの記事を通じて改めて社会主義と共産主義について新たに分かった部分も多く勉強になりました。これらの思想を理解したら、世界史の理解もより深まるのでより知識を深めて頂けたら幸いに思います。