「アラン・チューリングってどんな人?」
「アラン・チューリングの死因とは?」
「アラン・チューリングの功績や名言について知りたい!」
アラン・チューリングは、イギリス出身の数学者であり、かつて敵国であったドイツの暗号機エニグマの解読に成功した人物です。それだけでなく、彼はイギリスにおける初期コンピューターの開発にも携わっています。
また、彼の研究は電子計算機の発展にも大きく関わりました。彼の業績により、コンピュータープログラムや情報処理の分野における基礎的な理論が進歩していきます。
そこで、今回はアラン・チューリングの生涯について詳しく紹介していきます。また、彼の性格や名言、功績についても併せて解説していきますので、ぜひ最後までご覧ください。
この記事を書いた人
一橋大卒 歴史学専攻
Rekisiru編集部、京藤 一葉(きょうとういちよう)。一橋大学にて大学院含め6年間歴史学を研究。専攻は世界史の近代〜現代。卒業後は出版業界に就職。世界史・日本史含め多岐に渡る編集業務に従事。その後、結婚を境に地方移住し、現在はWebメディアで編集者に従事。
アラン・チューリングとはどんな人?
名前 | アラン・マシスン・チューリング |
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誕生日 | 1912年6月23日 |
生地 | イギリス ロンドン |
没日 | 1954年6月7日 |
没地 | イギリス ウィムズロウ |
配偶者 | なし |
埋葬場所 | イギリス ウォーキング クリマトリアム |
アラン・チューリングの生涯をハイライト
まずはアラン・チューリングの生涯を簡単に解説しましょう。
1912年、アラン・チューリングはイギリス領インドの高級官僚であった父ジュリアス・チューリングと母エセルの間に生まれ、イギリスで育ちました。彼は幼い頃より数学と科学の分野において才能を発揮し、微分積分学などの難問を早くから解いていたようです。
彼はケンブリッジ大学のキングス・カレッジに進学し、優秀な成績と論文を残します。その結果、卒業後も彼は特別研究員(フェロー)としてキングスカレッジに残ることになり、計算可能性理論やコンピューター科学の研究を行いました。
1939年に第二次世界大戦が始まると、彼はナチス・ドイツが使用していた暗号機エニグマの解読を任されます。そして、彼は暗号解読機「bombe」の開発に成功し、戦後には大英帝国勲章を授与されました。
その後、1946年頃にアラン・チューリングはイギリス国立物理学研究所へ移ります。そこで彼は、イギリス初期のコンピューターである「ACE」を設計し、現代に続く情報化時代の基礎を形作りました。
1952年、40歳だったアラン・チューリングは19歳の青年アーノルド・マレーと出会い、恋人関係に至ります。しかし、当時のイギリスでは同性愛が違法とされており、2人は逮捕されてしまいました。
そして、1954年にはアラン・チューリングの死体が自宅で発見されました。彼の死因は青酸中毒による自殺であったことがわかっています。祖国のために偉大な功績を上げ、未来へつながる画期的な発明をした天才数学者の41年にわたる人生は静かに終わりを迎えました。
イギリスの50ポンド紙幣に採用された
2019年、イギリスの通貨であるスターリング・ポンドの新50ポンド紙幣(円換算約7500円)にアラン・チューリングの肖像画が採用されました。2021年6月23日より、アラン・チューリングの肖像画が裏面に描かれた紙幣の流通が始まります。
イングランド銀行のベイリー総裁によると、アラン・チューリングの功績を讃える目的で彼の肖像画が新紙幣に採用されたようです。このようにして、彼はアダム・スミスやチャールズ・ダーウィンらと肩を並べる偉人として改めて歴史に名を刻みました。
伝記映画が制作された
2014年、アメリカ合衆国においてアラン・チューリングの人生を題材とした伝記映画「イミテーション・ゲーム/エニグマと天才数学者の秘密」が制作されました。この作品は多くの批評家たちから高い評価を受けており、欧米だけでなく日本でも公開されています。
この作品はアラン・チューリングの功績を広く世間に知らしめることへ繋がりました。さらに、同性愛への理解についても大きな意味を持ち、LGBTの権利向上を目的に活動する団体ヒューマン・ライツ・キャンペーンによって映画の製作関係者が表彰を受けています。
実はアスペルガー症候群だった?
チューリングは自分の関心があることに対しては、熱意を持って取り組むがそれ以外は無関心。声は甲高く、話好きで機知に富み、学者ぶったところがあったといわれています。
髪は終始ぼさぼさであり、爪も伸び放題、容姿には無頓着でした。交友関係は少なく、アスペルガー症候群であったともいわれています。
アラン・チューリングは同性愛者だった
ここでなぜ女性関係としなかったかと言えば、アラン・チューリングは同性愛者だったからです。今ではLGBTと一括りにされていますが、現代においても差別を無くそうという運動が展開されているくらいなので、アラン・チューリングが生きた時代は現代よりも差別が大きかったと想像は容易にできます。
アラン・チューリングが愛した人物は、少年時代に出会ったクリストファー・マルコムという少年です。この少年は出会いから数年後に死んでしまいますが、この出会いによって生涯この少年の面影のある人を追い続けます。
しかし、実際にはチューリングは女性とも付き合っていたことがあるのです。この女性は暗号解読のための施設ブレッチリー・パークで一緒に働いていた、ジョーン・エリザベス・ラウザー・マレーという女性で、趣味・性格もアラン・チューリングに似ておりだからこそ付き合うことができたのでしょう。
死因は毒リンゴを食べたこと…
上記の同性愛者だったことが主因となりますが、時代の犠牲になって死ななければならなかったことを考えると、ものすごく悲しい気分になります。当時同性愛は犯罪でした。少年時代に愛したクリストファーに似た人物と一夜をともにします。
この後にチューリングの家は空き巣に入られ、犯人が逮捕されて犯人を調べていくと一夜をともにした青年が手引きをしていたことがしれてしまうのです。
チューリングは精神科医への受診・ホルモン治療を強要され、身体が女性化していきました。
その最期は国家功労者なのに、あまりにもひどいものです。うつ状態であり常に監視される生活を送っていたアラン・チューリング。逮捕され、精神科医への受診・ホルモン治療を強要されて2年で精神にはもはや生きる気力もなかったのかもしれません。
白雪姫と同じように、毒リンゴを食べて死んでしまうのです。青酸カリによる自殺、他殺説もありますが筆者は自殺だと考えています。
アラン・チューリングの功績
功績1「人工知能の父と呼ばれた」
初期コンピューター「ACE」の設計をしたことで知られるアラン・チューリングは、コンピューター科学の世界において「人工知能の父」と呼ばれていました。そう呼ばれた理由として、彼が提案したチューリングテストが挙げられます。
チューリングテストとは、コンピュータープログラムなどのような特定の機械が人間的であるかどうかを判定するためのテストです。彼はこのテストを行うことで、機械が知能をもつことはありえないとする定説に反論しようと試みました。
功績2「ドイツの暗号機エニグマを解読した」
彼の最大の功績として、ナチス・ドイツが使用していた暗号機エニグマの解読を成功させたことが挙げられます。彼は暗号解読機「bombe」を開発し、イギリスが第二次世界大戦を有利に進める手助けをしました。
しかし、この功績は国家にとって極秘のものであったため、生前に大衆から評価されることはありませんでした。彼の死後、1974年に出版された書籍「ウルトラ・シークレット」において彼の功績を世間が知ることになり、イギリス政府は謝罪と賞賛の言葉を公式に発表することになりました。
アラン・チューリングの名言
ヒトの代わりに考える機械をつくることはできない
この言葉は、アラン・チューリングの人工知能に対する考え方がよく表現された名言です。この前提がある上で、彼はコンピュータープログラムや人工知能の研究に取り組んでいました。
彼が提案したチューリングテストにおいても、コンピュータープログラムはあくまで人間を模倣する存在であり、機械が人間の代わりに思考することはできないとしています。科学力に依存してしまいがちな現代人にとっては、教訓のように捉えることもできる名言です。
魔法の秘薬にリンゴを浸けよう、永遠なる眠りがしみこむように
この言葉は、アラン・チューリングが映画「白雪姫」を見た後に発した台詞です。この名言における魔法の秘薬とは毒のことであり、永遠なる眠りとは死を意味していると考えられます。
作中において、白雪姫は悪い王女に渡された毒リンゴを口にして命を奪われてしまいました。この描写がアラン・チューリングの死因に酷似していたため、彼の死は「白雪姫」に登場するワンシーンの影響を受けたのではないかと言われています。
アラン・チューリングにまつわる逸話・都市伝説
逸話・都市伝説1「Apple社のロゴはアラン・チューリングが自殺した時のリンゴをモチーフにしている?」
誰もが知っている有名な企業であるアップル、そのロゴを見てみるとリンゴを一口かじったものとなっています。しかし初めはニュートンがリンゴの木に寄りかかっているところが描かれた絵がロゴとなっていました。
では現在のロゴになったのは、いつなのか?それはスティーブ・ジョブズがアップルに復帰してからです。誰もが見て分かるシンプルなものをと考えたジョブズは、リンゴがかじられたようなデザインをロゴにしました。これは、かじるという英語の「a bite」とコンピューターの情報単位である「byte」をかけたものです。
しかし、都市伝説としてアラン・チューリングが自殺した際に使用したリンゴをモチーフにしたと囁かれています。
逸話・都市伝説2「チューリングテストで合格者が現れた」
チューリングテストとは、チューリングが提案した「ある機械が人間がAIかどうかを見極める」テストです。
AIを相手にキーボードとディスプレイのみで会話を行い、質問も自由に行ってよいので、AIにそれなりの思考能力がなければ「人間らしく回答」できません。
30%以上の審査員がAIを「人間」と間違えると、そのAIの人間らしさは合格と考えられているのですが、ついに33%の審査員が人間だと判断してしまったAIが2014年に現れました。
それは、ロシアが作成したチャットボット「ユージン・グーツマン」です。現在は2019年、合格者が出てから5年が経過しています。今もどこかで人間に近いAIが誰かの返信を行なっているかもしれまん。ネット上で知り合った友達が、実はAIだったなんてこともなくはありませんね。