小林一茶のオススメ本・作品9選【絵本や小説、句集まで】

「小林一茶の人生について知りたい・・・!」
「小林一茶の詠んだ俳句って、どんなものがあるのかな・・・?」

江戸時代、俳人として名を馳せた小林一茶。虫や動物といった、小さな命を題材に、たくさんの俳句を詠んだことで知られています。

しかし、一茶が生涯に残した俳句は2万句もあり、その中にどんな俳句があるのかといったことや、そもそも一茶の人生がどんなものであったのかについては、あまり知られていないかと思います。

そこで今回は、小林一茶に関連する書籍の中から「絵本」「小説」「俳句」といったジャンルごとの切り口で、9冊の本をご紹介いたします。

なお、小林一茶の生涯について知りたい方は、以下の記事をお読みいただければと思います。

小林一茶とはどんな人?生涯・年表まとめ【有名俳句や代表作、松尾芭蕉との関係についても紹介】

絵本編

蛙となれよ冷し瓜――一茶の人生と俳句

読んでみて

表紙の愛らしい絵、目立ちつつもやさしい色彩が気になって、手に取りました。一茶の生涯について、俳句をまじえつつ紐解いていく感覚で読むことができます。

驚くべきことに、この本は「翻訳もの」つまり原著はアメリカで出版されたもの(マシュー・ゴラブ著)です。日本文化について書かれた本を、逆輸入し、日本人が読んでいるというのはちょっと不思議な感覚があります。

俳句や一茶についてあまり知らないという人でも、十分読むことができる本だと感じました。子どもから大人まで楽しめる一冊だと思います。

みんなのレビュー

小林一茶の俳句に惹かれた海外の方が英語の俳句を詠み、外国の方が日本情緒溢れるイラストを描き、絵本になったもの。それを日本の子供向けに俳句の文字を読みやすくして、英語俳句に訳をつけて日本で出版しました。絵本も一茶と同じで旅をしてきたようです。

継母と折り合いが悪く、小さいうちから丁稚に出された一茶。それでも小さなものに向ける眼差しは優しく直向で、生涯に二万句も詠んだそうです。遅くにできた子供を病気で次々に亡くした一茶ですが、日本の子供だけでなく、海外の子供達も楽しませていることを知ったら、きっと喜ぶでしょう。

ブックメーター

ちひろと一茶

読んでみて

小林一茶(1763年-1828年)といわさきちひろ(1918年-1974年)に、直接の接点はありません。にもかかわらず、どうしてこの組み合わせにしたのかと不思議に思い、本を手に取りました。

もともと、いわさきちひろの絵のやわらかい雰囲気が好きだったのですが、そこに小林一茶が合うのかどうか未知数でした。実際に読みはじめて、それは杞憂であったと気づきました。

思えば、どちらも小さな生き物や子どもにやさしいまなざしを向けているところがあり、そういう点での整合性があったのでしょう。

この発想は素晴らしいと思います。読後もずっとそばに置きたい名作だと感じています。

みんなのレビュー

一茶の句が112句、ちひろさんの絵が50枚。150年もの隔たりがあるにもかかわらず、まるでその句のために描かれたような絵がある。何度も何度も手にとって好きな頁から読むことができる。こんなコラボなら嬉しい。永久保存版だなと思っていたらお茶こぼいてしもた。(泣) 蕪村や啄木など他の俳句でも・・・と欲が出てしまいます。

ブックメーター

小説編

ひねくれ一茶 (講談社文庫)

読んでみて

田辺聖子による小説です。淡々とした語り口で一茶の人生が語られてゆきます。

物語の中の一茶は、純粋で、小心で、頑固者で、計算高い。生身の人間であるといったイメージが、読み進むにつれ大きくなってゆきます。信州のことばづかいも、読者を物語の中に誘う効果を発揮しています。

随所に配置された俳句も、当時の一茶の消息や気持ちを推量する小道具として使われているかのようです。改めて、俳句という短い詩が「詠み手の心情」を雄弁に物語るものだと感じられます。

みんなのレビュー

著者の訃報に触れて手に取った。最初の数ページで「これは面白い本だ」と思うのは久々。あくまで一茶の半生を描いているため、話の筋は坦々としたものだが、伝記小説として誠実。

何より、著者のからりとした書き振りと次々と現れる俳句が、独特のテンポを作り出していて調子よく読める。また、その調子があるからこそ、小林一茶をただ不遇の人にしていない点も良い。

ブックメーター

新装版 一茶 (文春文庫)

読んでみて

藤沢周平による小説です。丹念に一茶の実像を追い、その人生ターニングポイントでは、ひときわ考察を深めています。2017年には、リリーフランキー主演で映画化されました。

本作を読むと、改めて小林一茶という人の魅力を感じることができます。聖人君子というようなものとはかけ離れた、おなじ人間としての魅力。生臭く、泥臭く、しかし理想に燃え、現実に打ち砕かれながらも俳句に打ち込んでゆく姿に、どこか自分を重ねてしまうのです。

どのような苦境にあっても、俳句を諦められない一茶。読後には、そのような一茶の矜恃が自分の中にも芽生えたように思える一冊です。

みんなのレビュー

「おらが春」など作品は知っていても、その生涯についてはほとんど知識がなかった小林一茶。庶民に寄り添った素朴な句が多い、穏やかそうな人という勝手な印象がひっくり返り、俗にまみれ、生い立ちや貧困などに生涯つきまとわれた一茶の生き様が藤沢氏の筆でありありと描かれています。

ただ、そんな俗な部分を隠すことなく描いた一茶の句と藤沢氏の描写はけっして忌み嫌われるものではなく、やはり俗の中で生きる多くの現代人にも共鳴する部分は多いのではないでしょうか。また時間を置いて読み返したい一冊。

ブックメーター

句集編

一茶句集 現代語訳付き (角川ソフィア文庫)

読んでみて

小林一茶の句集です。角川ソフィア文庫の「現代語訳」シリーズから刊行されています。

現代語訳が付されているため、俳句の解釈に自信がない方でも、問題なく読みすすめることができます。

また、季語別に俳句をならべた本書は、俳句入門用としてだけでなく、すでに俳句に親しんでいる人が読んでも役にたつように構成されています。同じ季語に対し、一茶がどのような切り口で俳句を詠んでいたのか、ということも把握できるからです。

みんなのレビュー

解説付き季語別に千首。「我と来て遊べや親のない雀」など動植物への労りの視点、「ぼた餅や地蔵のひざも春の風」などぬくもりのあるユーモアは句に親しませてくれる。一方で「衣替えて居てみてもひとりかな」「露の世ハ露の世ながらさりながら」など子供たちを幼くして失った悲しみが全編濃厚。

ブックメーター

一茶俳句集 (岩波文庫)

読んでみて

解説は最小限ですので、俳句初心者の方には、すこし読みにくいかもしれません。慣れてくれば、この程度の注釈でも1つ1つの俳句を味わうことができるようになります。

時系列に並べられた俳句は、その年ごとの一茶の動静を思い浮かべるのに適しているともいえます。

だいぶ時間が経ってから、類句(似たような俳句)を詠むところなど、興味深いです。「言葉が擦り切れるまで」という一茶の俳句スタイルが現れているなと感じられます。

みんなのレビュー

一茶の庶民臭さ、貧乏臭さ(褒め言葉)から発する句が好きだ。岩波文庫版のこれは簡単な注釈のみで、あとは年代順に並べてあるだけだけれど、だからこそ彼の句の世界に入り込みやすい。。

一句一句全てにおいて、一茶が詠んだその時々の情景が頭に浮かぶ。詩集や句集というのはいかに作者とシンクロできるかという部分が評価の大部分を占めると思うので、好みの物と出会えるかは運次第だよな。人の心や思うことは200年程度じゃ大して変わらないんだなあということも再確認。

ブックメーター

父の終焉日記・おらが春 他一篇 (岩波文庫)

読んでみて

一茶が父の臨終に立ち会った際の『父の終焉日記』、愛娘・さとの誕生と死をテーマとする『おらが春』のほか『我春集』をあつめた一冊です。

一茶の故郷・柏原は、善光寺にほど近く、一茶もまた熱心な浄土真宗門徒でした。父の死は、その時点で最後の肉親を看取る気魄を感じます。また、愛する娘の誕生と死は、大きな幸福から底知れない喪失感につながってゆく様子まで、しっかりと伝わってきます。

いずれも一茶の代表作とされており、小林一茶を知る上で必読の本というべきだと思います。

みんなのレビュー

素晴らしい本だった。今年のベストの一つに選びたい一冊。「父の終焉日記」は題の通り、小林一茶が父の死に立ち会った時の記録。継母や義弟との確執も書かれているが、胸を打つのは一茶の父を想う気持ち。少年の時に彼が江戸へ向かう時に父が示してくれた愛情が書かれる。

ここに書かれている肉親を失う時の身を裂かれるような悲しみは、どんな人でも経験するだろう。「おらが春」は一茶の代表的な作品が織り込まれた句集。有名な「露の世は露の世ながらさりながら」も収録されている。困難の中で身を削るようにして句作を続ける一茶の姿に感動。

ブックメーター

猫と一茶

読んでみて

最後は、ちょっと異色の俳句集をご紹介します。一見すると猫の写真集です。猫好きにはたまりませんね。続編『猫と一茶ふたたび』のほか、姉妹編『犬と一茶』も刊行されています。

そこに一茶の俳句が配置されているのです。くるくると忙しく変わることを「猫の目」にたとえたりしますが、様々な視点から詠まれる一茶の俳句と猫との相性がすばらしいと感じます。

気がつけば本の世界に引き込まれる、なんともいえない魅力があります。俳句に興味はあるけどとっつきにくいなぁと感じている方にもお勧めしたい一冊です。

みんなのレビュー

猫ってつくづく陽だまりが似合うなあと思う。あくびする猫。丸くなる猫。万歳して眠る猫。蛙を見つめる猫。匂いを嗅ぐ猫。俳人一茶は、生涯句の中で猫を詠んだものが最も多いという。

52歳でようやく結婚するも、家庭には恵まれなかった彼は、猫のおおらかさや自由さに憧れを持っていたのかもしれない。安房猫(あほうねこ)、ばか猫、と詠む言葉の端々に温かな眼差しを確かに感じて、愛おしくてうっかり涙が出そうになる。たびたび使われる〈猫の恋〉は、立派な春の季語。

ブックメーター

まとめ

小林一茶の俳句に興味があっても、そのあまりの多さに躊躇ったり、そもそも俳句なんて読んで分かるのか不安だったりしますよね。

そんな時は、ぜひビジュアル色の濃いものをセレクトされてはどうでしょうか。本格的な句集などに手を出すのは、それからでも遅くないと思います。

遺産相続争いや家族の病死からどうにも暗い影を感じてしまう小林一茶。しかし、小さな命を詠んだ俳句は、まぎれもなく、一茶の透明な心を投影しています。

家にいる時間が増えた昨今、一茶をきっかけとして俳句に親しむのも良いかもしれません。さまざまな俳句を通して、一茶の俳句世界を体感してみてください!

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