「カートコバーンって、どんなギターとかエフェクターを使ってたの?」
「カートコバーンのギタープレイの特徴は?」
「カートコバーンって、ぶっちゃけギター上手いの?」
こんな疑問をお持ちではありませんか?
当記事では、バンド歴10年、カートコバーンに関する資料収集が趣味の筆者が、カートコバーンのギター機材やギタープレイを徹底解説していきます。
ぜひご一読ください。
カートコバーンが愛用していたギターは?
カートコバーンは多くのギターを所有していました。ここでは、そんな彼が愛用したギターをいくつかご紹介していきます。
FENDER/Jaguar ’65
カートコバーンが「NEVERMIND」の時期にメインとして使っていたのが、1965年にFender社が製造したジャガーです。
このジャガーは、通常のモデルとは異なり、ピックアップがシングルコイルからハムバッカーに変更されているのが特徴です。そのため、普通のジャガーよりも野太く、パワフルな音の出力が可能になっています。
なお、ピックアップのメーカーは、フロントがディマジオ社のPAF、リアがSUPER DISTORTION(93年にはSeymour DumcunのSH-4 JBに変更)です。現在でも、これらのピックアップの後継機種はネットなどで購入できますよ。
PAFの購入はこちら
Super Distortionの購入はこちら
ジャガーをお持ちの方は、カートの音を目指してピックアップを交換してみるのもアリなのではないでしょうか。
また、カートコバーンモデルのジャガーもFender社から発売されているので、コアなファンの方にはこちらもオススメです。
その他の改造点は?
カートの所持していたジャガーの改造点は、他にもいくつかあります。
たとえば、ブリッジの部分がシャーラー製のチューン・O・マティックタイプに変更されていること。これにより、「強くピッキングすると弦が外れてしまう」というジャガーの弱点をカバーしています。
また、コントロール部も通常の1ボリューム・1トーンという仕様から、2ボリューム・1トーンという仕様に変更されています。
ただ、これらの改造はカートが施したものではなく、以前の持ち主が行ったものだったようです。カートは、「NEVERMIND」のレコーディングの直前にロサンゼルスの楽器店でこのジャガーを購入しました。
Fender/ Mustang ’69(Competition Model)
カートコバーンはムスタングを数本所持していましたが、その中で最も気に入っていたとされているのがこの1969年製のムスタング。
美しいレイク・プラシッド・ブルーが特徴で、「NEVERMIND」期に主に使用されていたギターです。バンド最大のヒット曲である「Smells Like Teen Spirit」のPVでもこのムスタングが使われていますよ。
なお、こちらのギターについては、ブリッジがゴトー製のチューン・O・マティックタイプに変更されています。
Fender/ Mustang(Fasta red,Sonic Blue)
カートコバーンが「IN UTERO」期に好んで使っていたムスタングで、Fasta redとSonic Blueのカラーリングがあります。
主な改造点は、リアのピックアップがSeymour DumcunのJBに、ブリッジがチューン・O・マティックに変更されていることです。
Fender/JAG-STANG
ジャガーとムスタングを掛け合わせて作られたギターが「JAG-STANG」。カート自身がデザインし、Fender Custom Shopのラリー・L・ブルックスという人物が製作にあたりました。
こちらのギターは、「IN UTERO」のライブツアーで何度か使用されたようです。
UNIvox/Hi Flyer
カートコバーンは、ギターの値段にあまりこだわらず、むしろ安価なギターを使用する傾向がありました。
Univox社製のギターはまさにそのようなギターの1本で、かなりチープな作りなのが特徴。
カートはニルヴァーナ初期からこのギターを愛用しており、「IN UTERO」のレコーディングでも使用されたと考えられています。
Fender/Stratocaster”Vandalism”
カートコバーンと言えば、ムスタングやジャガーのイメージが強いですが、実はストラトキャスターやテレキャスターなども好んで用いていました。
ただ、それらは過激なライブパフォーマンスによってしばしば破壊されたため、正確なモデル名や詳細などがわかっていないものも多数あります。
そんな中、ギターの詳細がはっきりとわかっているのが通称”Vandalism”。リアピックアップにSeymour DumcunのJBを載せたモデルです。
この名前は、カートコバーンが黒のストラトキャスターに貼っていた「Vandalism:As Beautiful as a rock in a cop’s face」というステッカーに由来しています。
これは、「破壊行為:警官の顔に石を投げるのと同じぐらい美しい」という意味。The Feererzというバンドの作品に同名のアルバムがあり、カートコバーンは彼らからステッカーを贈られたそうです。
カートはこのギターを1992年まで愛用し、破壊と修理を繰り返してライブで使っていました。
カートコバーンのギタープレイの特徴は?
カートコバーンのギタープレイを一言で表すとスレば、「感情の吐露」。
カート自身の感じた苦しみや悲しみ、怒りなどを音にそのまま乗せてかき鳴らすようなスタイルが特徴です。そのため、あえてテクニカルなものを避け、荒削りなプレイを前面に押し出すような傾向があります。
カートコバーンはどれぐらいギターがうまかった?
上述した通り、カートコバーンのギターは決してテクニカルではなく、パワーコードをひたすら弾き続けるような基礎的なプレイが多いのが特徴です。
ただ、よく「カートコバーンはギターが下手だった」というような批評を目にしますが、個人的にはそれはズレている意見だと思います。
というのは、彼にとってのギターとは「自分の感じているものを表現する手段」に過ぎなかったからです。楽曲を耳にすれば、そのギタープレイや音作り、バンドの世界観からカートの鬱屈とした感情は一聴して伝わってきますし、そういった意味で、彼のギタープレイは十分その目的を果たしていると言えるで翔。
彼自身の人生や表現したかったもの、音楽的センスなどを棚に上げてギターのテクニカルさのみを口にするのは、まさに「木を見て森を見ず」です。
カートコバーンが使っていたアンプ、エフェクターは?
野太い歪みや特徴的な空間系を使用しているのも、カートコバーンのギターサウンドの特徴のひとつ。ここではそんなカートの音作りの主軸となったアンプやエフェクターなどをご紹介していきます。
アンプ
ここでは、カートが使用していたアンプを3つご紹介します。
Mesa/Boogie Studio 22 Preamp & Crown 800W Power Amp
ラウドで野太い音を好んだカートコバーンが、「NEVERMIND」期から愛用していたプリアンプがこちら。
トーンコントロールに関しては、カートコバーンはインタビューで「ミドル」をフルにしていると語っています。
Fender Twin Reverb 60’s
名演であるアコースティックライブ、「MTV Unplugged」などで使用されていたギターアンプ。
大音量でもそれほど歪まず、美しいリバーブがかかるのが特徴です。
ギタリストにとっては定番中の定番のアンプで、「IN UTERO」のレコーディングの際にも用いられていたようです。
Randall RG120PH
インディーレーベル所属時代からツアーなどで使用していたのがRandall のヘッドアンプ。
ニルヴァーナのファーストアルバム、「BLEACH」のころに使用されていました。
エフェクター
次に、カートが使用していたエフェクターを4つ見ていきましょう。
BOSS DS-1
レッド・ホット・チリ・ペッパーズのジョンフルシアンテが使用していることでも有名な歪みペダル、DS-1。カートコバーンも活動初期から「NEVERMIND」期にかけてこのエフェクターを愛用していたようです。
設定はディストーションとレベルをMAXまで上げており、それによって野太い歪みサウンドを作り出していました。
BOSS DS-2
上述したBOSSのDS-1の後継機種がこちら。ツアー中にDS-1が故障したことをきっかけに購入し、それ以降そのままDS-2が使われ続けました。
Electro-Harmonix Small Clone Chorus
こちらもカートコバーンの代名詞と言えるようなエフェクター。
うねるようなサウンドを得られるのが特徴のコーラス・ペダルです。
カートのサウンドの要となるのがこのエフェクターで、特に「NEVERMIND」の曲をコピーする際には欠かせないエフェクターだと言えるでしょう。
TECH21 SANSAMP CLASSIC
「IN UTERO」のレコーディング・ツアーで使用された歪みです。
多様なコントロールやつまみがあるのが特徴で、組み合わせによって様々な音色を得ることができます。
カートは、このエフェクターのHIGH以外をすべてフルテンにして使用していました。
カートコバーンのプレイスタイルがよく分かる動画・音源
ここまで文章でカートコバーンのギターについて解説してきましたが、ここではそんなカートのプレイを実際に動画で見ていきましょう。
Smells Like Teen Spirit
カートがひたすらラフにギターをプレイしている動画です。
「文章を書き殴る」という言葉がありますが、この動画のカートはまさに「ギターを弾き殴っている」状態。オリジナルの譜面を完全に無視した、狂気を感じさせるようなギターは彼のアーティストとしての非凡さを物語っています。
彼の口から発せられる歌声とは別に、カートの心をラフスケッチのように描くギタープレイを聴くことのできる名演です。
In Bloom
全てを諦めたかのようなルーズさでギターをかき鳴らすカートが特徴的なライブ映像。
虚無感と退廃感が満ち溢れるギタープレイは、グランジ好きならたまらなく心に響くでしょう。
ややフラット気味の音程の歌と相性抜群なヘビーなギターサウンドを、ぜひ一度聴いてみてください。
All Apologies
こちらの動画では、カートがアコースティックギターをプレイしています。クリーントーンで演奏しているため、彼のピッキングの強弱まで生のまま感じることができますよ。
死期が徐々に迫りつつある中、静かにギターを奏でるカートの姿は必見です。
カートコバーンのギターに関するまとめ
この記事では、カートコバーンのギタープレイや使用機材、演奏動画などをご紹介してきました。
個人的に言うと、カートのギタープレイの魅力は「狂いきることができなかった虚無感」です。
カートのギターと言うと、よく取り沙汰されるのが「ギタープレイの激しさ」ですが、正直なところ、本質はそこではないように思います。 というのは、どのライブを観ても、彼が切なそうな顔をしてギターをかき鳴らす瞬間が必ず存在するからです。
いっそのこと狂気に身を任せて振り切ってしまえば楽になれたのかもしれませんが、彼は生涯心の内奥で悩みを抱え続ける繊細さを持った人物でもありました。
狂気に身を任せてしまいたい、しかし身を任せ切ることもできない・・・
彼のギタープレイには、苦しみ抜いた挙句「もうどうにでもなれ」というような、「投げやりな虚無感」が感じられます。きっと、カートのラフなギタープレイはそのようなところに端を発しているのでしょう。
この記事を読んで、カートのギターに興味を持った方は、ぜひ実際の音源も聴いてみてくださいね!