エチュード編
エチュードというのは日本語で「練習曲」のことを指します。ショパンの時代となるとピアノも発達したため、演奏家の技術向上も同時に求められたのです。また「ヴィルトゥオーゾ」という演奏の名手たちが聴衆に望まれるようになり、演奏家たちはその技術を競っていたのでした。
ショパンのエチュードは練習曲でありながら音楽的にも完成されており、冒頭に紹介した「革命」や「別れの曲」などもエチュードにあたります。全体的に演奏の難易度も高いため、プロのピアニストの演奏会などで演奏される機会が多いです。
12の練習曲 作品10 第2番 イ短調
「12の練習曲 作品10」は、ショパンからフランツ・リストに捧げられた練習曲です。ピアノの練習や作曲活動にひたむきだった若きリストに向けて作られました。
この曲は1:30ほどしかない短い練習曲ですが、力の弱い中指や薬指などを酷使する難しい曲で、弾きこなすためには熟練のピアニストでも相当な努力を要とすると言われています。
12の練習曲 作品10 第5番 変ト長調「黒鍵」
タイトルの通りピアノの黒い鍵盤の部分ばかり(1音をのぞいて全て黒鍵で)演奏する曲で、ショパン自身もそのことを意識して作った曲です。天才ピアニストとして名高いシューマンの妻・クララ・シューマン(クララ・ヴィーク)もこの曲を演奏したことがあったようです。
動画で視聴すると、黒鍵を弾いている様子をはっきりと見ることができて楽しいです。是非視聴してみてくださいね。
12の練習曲 作品25 第11番 へ短調「木枯らし」
静かに始まりますが、すぐに急激な展開を迎えます。不思議な和声の響きも相まって異様な雰囲気を纏った名曲です。演奏中は曲の展開にハラハラし、曲が終わると何故かホッとしてしまうまさに「木枯らし」のような曲といえるでしょう。
演奏の難易度は非常に高く、ピアニストの技巧や持久力、集中力、指の器用さを鍛えあげる練習曲です。
ワルツ編
ワルツは本来ダンスのための音楽ですが、ショパンのワルツは踊りが前提というよりはピアノ演奏のため・音楽のために作曲されたワルツです。ショパンの曲の中では比較的難易度が低いものも多く、ピアノ初級者や中級者が発表会で演奏するのにも適しています。
曲の魅力も抜群で、憧れのショパンに無理なく挑戦できる素敵なワルツ曲をご紹介します。
華麗なる大円舞曲 作品18
作品名に恥じない華麗で軽やかなワルツ曲です。ショパンは当時ウィーンで流行していた「ウィンナ・ワルツ」やウィーン音楽の表面的な華やかさに批判的ではありましたが、同時に自身の地名度向上のためにはそのような音楽の必要性を感じていたようです。そして思惑通りこの曲は多くの聴衆に受け入れられました。
ショパンにとって不本意なヒットだったようですが、この曲の華麗さ、キャッチーさは見事に聴衆の心を掴み、長く愛される曲となりました。
ワルツ第7番嬰ハ短調 作品64-2
ショパンが生前最後に作曲したといわれているのがこのワルツで、ショパンの作曲技術やその魅力が凝縮されている曲として不朽の人気を誇っています。「華麗なる大円舞曲」とは対照的に演奏のみを目的に作曲され、ショパンの本領が発揮されているワルツです。
繊細さ、優雅さ、ノスタルジーを感じる雰囲気など、ショパンの魅力に溢れた曲でありながら比較的演奏にも挑戦しやすい曲です。
ピアノ協奏曲編
ピアノ協奏曲はオーケストラとピアノ独奏が合わさった形式の曲のことをいいます。ショパンは生涯のうち2曲の協奏曲と、4曲のピアノと管弦楽のための楽曲を作曲しました。
一般的にショパンはあまりオーケストラの楽譜を書くのが得意では無かったのではないかと言われており、協奏曲でもピアノの存在感が圧倒的なものとなっています。
ピアノ協奏曲第1番 第3楽章
3楽章からなる協奏曲で、ショパンが故郷・ワルシャワを離れる前に開かれた告別演奏会で演奏されました。この第3楽章はポーランドの舞踊「クラコヴィアク」を彷彿とさせるリズムが特徴で、ショパンの母国を愛する気持ちと、更なる飛翔を望む気持ちが弾むようなリズムから伝わってきます。
漫画「のだめカンタービレ」でも主人公がこの曲を演奏し、海外の公演で強烈な個性と存在感を発揮するというシーンで使われました。独奏部分はピアニストによって印象が大きく変わりますので、聴き比べるのも楽しいかもしれません。
ピアノ曲以外のショパンについて
最近では、意外にもショパンはピアノ曲以外の曲でも積極的に作曲していたという説が有力です。ショパンの家族や友人、また恋人には歌手が多かったため、一緒に演奏するための歌曲も書きました。また晩年には管弦楽の曲を作曲していたこともわかっています。
ピアノ曲とは少し違うショパンの一面がありますので、ご紹介します。
歌曲編 2選
ショパンは19曲の歌曲を残しており、歌詞はポーランド語で書かれているものが多いです。ピアノ曲の洗練された華麗なイメージとは対照的に、意外にもショパンの歌曲は素朴なイメージです。
その素朴さがショパンの愛国心がより強く反映されていると感じるものが多く、これまでのイメージとはまた違った魅力があります。今回はその歌曲の中から2曲ピックアップしてみたいと思います。
願い
おそらくショパンの歌曲のうち一番知られている曲だと思われます。しかしリストの編曲によるピアノ独奏曲の方が有名かも知れません。
まだワルシャワにいた頃の18歳の頃のショパンが作曲しました。歌曲の動画は少ないので、気になった方はCDなどの音源を探してみることをおすすめします。
春
こちらもピアノ独奏曲の編曲(ショパン本人の編曲によるもの)が有名です。ショパンは春を題材とした曲をいくつか作曲していますが、どの曲も翳りのある雰囲気を持つ隠れた名曲です。
ショパンの曲に関するまとめ
定番曲からあまり知られていない歌曲まで紹介させていただきました。ピアノを少しでも習ったことのある人なら一度はショパンに憧れたことがあるのではないでしょうか。
ご紹介した曲以外にも素敵な曲が沢山ありますので、ご興味のある方は色々と検索してみてください。この記事が少しでも皆さんの助けになるようお祈りします。