「アマルナ芸術って聞いたことがあるけど、どんな表現なのかイメージが湧かない」
「アマルナ芸術は”写実的”だって教科書で習ったけど、写実的ってどういうこと?」
「エジプト芸術の中で、アマルナ美術が注目されるのはなんで?」
この記事にたどり着いた人はこのようにお考えでしょう。
アマルナ芸術(以下、アマルナ美術に統一)とは、紀元前14世紀に新エジプト王国時代で起こった、写実的で叙情的な美術の新様式のことをいいます。アマルナ美術の前後は、エジプトは伝統的な美術様式を守り続けたので、歴史の中でも例外的な期間となりました。
では、どうしてその時代に新しい美術様式をエジプトは生み出すことになったのでしょうか。それには、当時の王様アメンホテプ4世が行った宗教改革が大きく関係しています。アメンホテプ4世が信仰した神アトンは、世界を写実的に(リアルに)表現することをエジプトに求めたのです。
この記事ではエジプト美術マニアの筆者が、
- アマルナ美術の基本情報
- アマルナ美術の誕生から発展、衰退までの歴史
- アマルナ美術の作品や特徴
などを解説していきます。
この記事を書いた人
一橋大卒 歴史学専攻
Rekisiru編集部、京藤 一葉(きょうとういちよう)。一橋大学にて大学院含め6年間歴史学を研究。専攻は世界史の近代〜現代。卒業後は出版業界に就職。世界史・日本史含め多岐に渡る編集業務に従事。その後、結婚を境に地方移住し、現在はWebメディアで編集者に従事。
アマルナ美術とは何か
時代と文明
アマルナ美術が起こったのは、紀元前14世紀、いまから約3,400年まえのエジプト新王国時代です。この時期には都がそれまでのテーベからテル・エル・アマルナへ遷都したり、宗教改革が行われるなど、エジプトにとって変化の多い時期でした。
そんな環境や信仰の変化にあわせるようにして、美術分野でも新しい流れ「アマルナ美術」が生み出されたのです。
アマルナ美術の特徴
アマルナ美術の一番の特徴はその「写実性」といえます。写実とは現実のものを、ありのままに再現する芸術のスタイルのことをいいます。
アマルナより前のエジプト美術は、宗教的に理想化された対象が描かれることが一般的でした。しかしアマルナ美術では、人間の柔らかみ、細やかな感情がリアルに表現されるようになります。このような特徴が見られるのは、エジプト王国の長い歴史の中でもアマルナ期の作品に限られるため、その特異性を注目されることになりました。
アマルナ美術の誕生と発展、衰退
アマルナ美術はなぜ誕生したのか
アマルナ美術はなぜ誕生したのか?ひとことでいえば宗教改革によって、信仰する神が変わったからです。
アマルナ文化の生みの親は、エジプト第18王朝の王アメンホテプ4世(イクナートン)です。彼が行った政治的・宗教的改革は「アマルナ改革」と呼ばれ、エジプト王国の歴史の中でも少しばかり異質な時代といえるでしょう。改革の肝となったのは、テル・エル・アマルナへの遷都(首都を移すこと)と、多神教から一神教(アトン神)への宗教改革です。
特に宗教改革は美術作品に変化を与えました。アトン神は太陽光線をともなった姿をしており、その光線は、事実をありのままに映し出すと考えられていました。そんなアトン神の信仰のために、芸術面でも物事をよりリアルに描きだすことが求められたのです。
また、アメンホテプ4世が自分の絵を描かせる時には、指示を出して奇形かのように描かせることがあったようです。これだけ聞くと理解できない行動のように思いますが、人民に自分を神として崇拝させるための一つの手段でした。絵師に王自らが注文をつけて描かせていたのですから、アマルナ美術を先導していたのはアメンホテプ4世だったといえるでしょう。
アマルナ美術はなぜ発展し衰退したのか
アマルナ改革を主導した王アメンホテプ4世の没後は、アマルナの文化は徐々に失われていきました。改革の肝であったアトン神の信仰も、後の王によって終了させられています。
アマルナの美術様式に関しては後代の王にも支持され、しばらくの間は受け継がれました。しかしエジプト美術にとってあまりにも急な変化だったためか、保守的なエジプト文化には馴染まず、徐々に忘れ去られていくことになります。
世界史の教科書には「宗教改革の影響で古い伝統にとらわれない写実的なアマルナ美術がうみだされた」の一節があるのみ。アマルナ美術とはどんなものかと検索したところこちらにたどり着きました。分かりやすい説明で、理解が進みました。ありがとうございました。
>Haruさん
コメントありがとうございます!
アマルナ美術含め、エジプト美術は奥が深いですが、世界史という大きい括りでは一部分にしかすぎないので、情報があまり見つけづらかったりしますよね・・・わかります。
レキシルでは、こういった歴史的事象を深堀りするコンテンツを今後も増やしていきたい思っていますので、また機会があればいらしてください^^