アマルナ美術とそれまでのエジプト美術との違い
エジプト美術の特徴
エジプト美術といえば、胴体は正面を向き、脚と頭は横を向いた平面的な絵を思い浮かべますよね。まさにその表現が、エジプト美術の典型と考えて間違いありません。エジプト文明は保守的・伝統的な価値観が強く、2500年の間先に述べたような様式で作品が作り続けられていました。
また、絵画や像のテーマ設定にもエジプト美術の特徴があります。特徴として神話や宗教的儀式など、市民の実生活とは離れた主題がたいへん好まれました。これには死後の世界観を最重要視するエジプトの宗教による影響があったためです。そのためエジプト美術では想像の具現化や、理想化された表現がごく一般的だったのです。
アマルナ美術が写実的と言われる理由
アマルナ美術は前述のエジプト美術とは対照的に、人間の姿や表情のリアルな表現を追求しました。典型的なエジプト美術の絵画よりも、人物は柔らかくふくよかに描かれ、女性を男性よりも明るい色で描くといった習慣は止められました。
これは宗教改革でアトン神を信仰するようになったのがきっかけです。アトン神は太陽光線をともなった姿をしており、その光線は、事実をありのままに映し出すと考えられていました。そんなアトン神の信仰のために、芸術面でも物事をよりリアルに描きだすことが求められたのです。
アマルナ美術を代表する作品
ネフェルティティ像
アマルナ美術を代表する作品としてもっとも有名なのが、アメンホテプ4世の妃ネフェルティティの胸像です。古代エジプトの彫刻家トトメスによって製作された作品です。この像の鮮やかな着色と、柔らかな頬の膨らみは、古代の女性美の象徴として世界中から注目を集め続けています。
現在はドイツのベルリン新美術館で常設展示されています。
ツタンカーメンの黄金のマスク
世界的に有名な「ツタンカーメンの黄金のマスク」も、アマルナ美術の影響を受けた作品といわれています。ツタンカーメンは生前、王位についていた間に、宗教を一神教アトン信仰から多神教アメン信仰に戻すなど、アメンホテプ4世が行った宗教改革とは逆行する政策を行いました。しかし、美術についてはアマルナ様式を好んでいたようで、彼の墓からは多くのアマルナ式のものが多く見つかっています。
黄金のマスクは現在、エジプト・カイロにあるエジプト考古学博物館に収容されています。
アマルナ美術に関するまとめ
アマルナ美術が流行ったのはアメンホテプ4世の時代がほとんどで、エジプトの長い歴史から見ると一時的なものに過ぎません。しかしながら、この時代にエジプト美術を代表する作品がいくつも生み出されていて、貴重な変化の時代だったように感じます。
紹介した作品はおよそ3,400年も前のものですが、そんな古代の作品とはとても思えない完成度と美しさには感動をおぼえます。また現存している作品を美術館で鑑賞できるというのも、なんとも歴史のロマンを感じませんか?
美術作品にはそれぞれの歴史や背景がありますが、気になる作品はぜひ深掘りしてみてください。一見理解できないようなものでも、きっと愛着が湧いて、作品鑑賞がたのしくなりますよ。
最後まで読んでいただき、ありがとうございました。
世界史の教科書には「宗教改革の影響で古い伝統にとらわれない写実的なアマルナ美術がうみだされた」の一節があるのみ。アマルナ美術とはどんなものかと検索したところこちらにたどり着きました。分かりやすい説明で、理解が進みました。ありがとうございました。
>Haruさん
コメントありがとうございます!
アマルナ美術含め、エジプト美術は奥が深いですが、世界史という大きい括りでは一部分にしかすぎないので、情報があまり見つけづらかったりしますよね・・・わかります。
レキシルでは、こういった歴史的事象を深堀りするコンテンツを今後も増やしていきたい思っていますので、また機会があればいらしてください^^