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芥川賞とは?直木賞との違いや選考基準、おすすめ受賞作品まで解説

「芥川賞って毎回話題になるけれど、いったいどんな賞なんだろう?」
「どんな基準で作品が選ばれているんだろう?」

普段小説に馴染みがない人でも1度は耳にしたことがある「芥川賞」。授賞後のインタビューなどをニュースで目にしたことがある人も多いのではないでしょうか。

けれども結局どういう賞なのかよく分からないし、受賞作品も読んだことがないという人もたくさんいます。「芥川賞受賞作はつまらない…」なんて声も聞かれますが、それは他の小説と楽しむポイントが違うからそう感じてしまうだけ、と筆者は考えています。

ここでは、純文学が好きで「芥川賞受賞作は面白い!」と断言している筆者が芥川賞がどのような賞なのか解説します。また、後半では芥川賞受賞作のうち特におすすめの作品を5冊ご紹介していますので、楽しみにしていてください。

芥川賞とは

芥川賞は年に2回、純文学の作品に贈られる文学賞です。その名の通り文豪・芥川龍之介の業績を記念して創設されました。文学雑誌「文藝春秋」の社内にある「日本文学振興会」が主催しています。

上半期の受賞作はその年の12月から翌年5月までに発表された作品の中から候補が選ばれ、7月中旬に選考会と発表が行われます。下半期は6月から11月までが対象となり、翌年の1月中旬に選考会・発表があります。発表の翌月には授賞式が行われ、さらにその翌月の「文藝春秋」に受賞作の全文が掲載されます。

直木賞との違いは

第153回芥川賞授賞式

芥川賞と同じくらい権威のある文学賞に「直木賞」があります。2つの賞の違いは、対象とする作品のジャンルです。

芥川賞は芸術性を重視した純文学作品を、直木賞はストーリー性を大切にした大衆小説を対象としています。「芥川賞の受賞作はつまらない」といわれるのはここがポイントで、純文学作品はストーリーの面白さをさほど重要視していないのです。起伏のある起承転結よりも、表現の美しさや革新性を大切にしています。

芸術性とストーリー性が相反するなのかというと、それは違うと筆者は考えています。革新的な表現でさらに内容も面白い、という作品も存在するからです。どちらが小説として優れているというよりも、2つの賞は評価する基準が違うので比べられない、というのが正解でしょう。

芥川賞を創設した菊池寛

菊池寛

芥川賞は「文藝春秋」を創刊した小説家・菊池寛が1935年に創設しました。菊池は芥川龍之介の友人で、芥川が1927年に自殺した後、彼の業績を記念するために芥川賞を考案したのです。合わせて、1934年に亡くなった直木三十五の名を冠した直木賞も設立されました。

海外には古くからノーベル文学賞やゴンクール賞などの名誉ある文学賞があるので、日本にも作るべきだという文章を菊池が目にしたこともきっかけの1つだったようです。設立当時はあまり話題になる文学賞ではなかったのですが、1956年に石原慎太郎が『太陽の季節』で芥川賞を受賞したことが転機となりました。『太陽の季節』は大ベストセラーとなり、秩序を無視するような享楽的な若者を指す「太陽族」という流行語も生まれました。

芥川賞の選考基準

候補となるのはどんな作品?

では、どんな作品が芥川賞の候補となるのでしょうか。純文学作品であることを前提とすると、条件には次の2つが挙げられます。

新人の作品であること

芥川賞は、候補となる小説の作者を「無名、または新進の作家」としています。その作者は新人と呼べるかどうかは論点となることがあり、例えば1958年上半期の大江健三郎の受賞は論議を呼びました。

大江は1957年下半期に開高健と受賞を争って落選したのですが、それから受賞までの半年間にたくさんの作品を発表し、1958年上半期の候補作のうちでは抜群の完成度を誇っていました。彼が新人と本当に呼べるのか、議論が交わされた結果の受賞だったのです。そのときの選考委員を務めた佐藤春夫は、「芥川賞は新進作家の地位を安定させるための賞になってしまった」と皮肉を述べています。

短編、または中編小説であること

作品の短さも大切

明確な規定があるわけではありませんが、原稿用紙に換算すると100枚から200枚程度の長さの小説が候補に挙がります。けれども今までにもごくまれに、中編小説以上の長さの作品が候補となったり受賞したりすることがありました。柴田翔『されどわれらが日々―』は原稿用紙で280枚ほどの作品でしたが、1964年上半期に芥川賞を受賞しています。

作品の長さが魅力と比例するわけでも、逆に反比例するわけでもないのでこの「短編、もしくは中編」という基準は選考のしやすさや商品としての売りやすさが関係していると考えられています。

芥川賞の賞金は

正賞は懐中時計

芥川賞を受賞すると正賞として懐中時計が、副賞として100万円がもらえます。懐中時計は戦争中には硯や壺に変わったこともありましたが、戦後には再び懐中時計に戻ったそうです。なぜ「懐中時計」なのでしょうか。

芥川賞の設立当時、受賞する新進作家たちは貧しい青年が多かったといいます。そこで創立者の菊池寛は「お金のほかに、いざとなったら質屋で小金に替えられるものを」と懐中時計を贈ることに決めたそうです。菊池の思いやりは現在でも受け継がれているのですね。

芥川賞の最年少・最年長受賞者は

最年少受賞者は

綿矢りさ

芥川賞の最年少受賞者は当時19歳11か月の綿矢りさです。『蹴りたい背中』で第130回芥川賞を受賞したとき、綿矢は早稲田大学の文学部に在学していた大学生でした。17歳のときには『インストール』で文藝賞も受賞している、まさに早熟の天才です。

ちなみに、第130回の芥川賞は金原ひとみの『蛇にピアス』とのダブル受賞でした。このとき金原も20歳5か月、さらに候補に挙がっていた『生まれる森』の島本理生も20歳8か月です。若い世代が文学界に名乗りを上げてきた記念すべき回といえるでしょう。

最年長受賞者は

黒田夏子

それでは、最年長受賞者は誰だったのでしょうか?それは、2013年に第148回芥川賞を受賞した黒田夏子です。75歳8か月での受賞は当時大きな話題を呼びました。

黒田の受賞作『abさんご』はかなり実験的な小説で、全文横書きの携帯小説のような体裁ながら「固有名詞」を一切使っていません。1960年代から執筆を続けていたとはいえ、黒田は『abさんご』がデビュー作です。1963年に1度受賞歴があるものの、その後文学賞への応募や印刷物での発表はせずにコツコツ書いてきたものが結実して『abさんご』になったのだと感じます。

芥川賞こぼれ話

芥川賞と直木賞、どちらもとることは可能?

ダブル受賞は可能なのか

芥川賞と直木賞の境は時々あいまいになることがあります。けれども、まだどちらも受賞した作家や作品はありません。

直木賞の候補となっていた作品が選考委員の判断で芥川賞に回され、そのまま受賞に至ったケースはあります。松本清張の『或る『小倉日記』伝』です。松本清張といえば現代ではサスペンスの作品が頻繁にドラマや映画になるので、芥川賞を受賞しているというのは意外ですね。

また、山田詠美や角田光代、島本理生などは芥川賞の候補になりながら、その後に直木賞を受賞しています。直木賞は芥川賞と違ってある程度キャリアがある作家を対象としている部分もあるので、そういったことがよく起こるのです。

芥川賞がほしくてたまらなかった太宰治

第1回の芥川賞には、デビューしたばかりだった太宰治も候補となっていました。当時、太宰はパビナールという麻薬の中毒に陥っていて、多額の借金もある状態でした。そのため芥川賞の賞金500円を熱望していたのですが、結局受賞はできませんでした。

当時の選考委員を務めていた川端康成によると、太宰の落選理由は「彼自身の生活に問題があるため」。同じく選考委員だった佐藤春夫は太宰の『道化の華』を推薦していたらしいのですが、選考会ででは太宰の麻薬中毒のことも考慮に入れたうえでの判断を下したといいます。太宰は「川端は大悪党だ」という反論をしたのですが、川端はそれに対して「受賞した石川達三と太宰の票が接近していたわけではないし、太宰を強く推す人もいなかった」とさらに反論しました。

太宰はその後も、自分の作品を推してくれた佐藤春夫に何度もお願いの手紙を送ったり、第3回のときには川端にもぜひ自分に賞を与えてくれるよう手紙を出したりしたのですが、結局受賞することはありませんでした。

おすすめ芥川賞受賞作品5選

スティル・ライフ

『スティル・ライフ』は1988年に芥川賞を受賞した池澤夏樹の小説です。人との出会いによって変化していく世界の見方を鮮やかに、そして詩的に描いています。池澤は1995年から16年間、芥川賞の選考委員も務めていました。

妊娠カレンダー

小川洋子の『妊娠カレンダー』は、1991年に芥川賞を受賞した作品です。描かれているのは主人公の姉の妊娠中のさまざまな変化で、主題自体は珍しいものではありません。けれども小川の独特な静けさをもつ世界観が展開されていて、読んでいると思わず引き込まれます。

乳と卵

2008年に芥川賞を受賞した川上未映子の『乳と卵』。大阪弁交じりの特徴的な文体で、女性の身体とその変化を描いた物語が展開されています。ちなみに、川上の夫は同じく芥川賞作家の阿部和重です。

火花

お笑いコンビ・ピースの又吉直樹の小説『火花』。芸人として初めての芥川賞受賞ということで大変話題を呼び、ドラマや映画、舞台にもなりました。厳しい芸人の世界を通して描く人間模様は、人にとって「笑い」とは何なのかを問いかけてきます。

コンビニ人間

2016年に芥川賞を受賞した村田沙耶香の『コンビニ人間』は、36歳独身で恋人もいず、コンビニでアルバイトを18年続けている女性が主人公の小説です。主人公の生き方は私たちにとって「普通」とは何なのかを真摯に問いかけてきます。20か国語に翻訳され、世界中で読まれている作品です。

芥川賞に関するまとめ

芥川賞について、その選考基準や受賞作の魅力などをお伝えしてきました。いかがでしたでしょうか。

芥川賞は純文学を対象とした文学賞なので、一見とっつきにくいと思われるかもしれません。けれども、賞自体について詳しく知ってみると少し身近に感じられてこないでしょうか。この記事を読んで、これからどんな作品が受賞するのか楽しみに思ってくれたら嬉しいです。

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