「レオナルド・ダ・ヴィンチの『最後の晩餐』で描かれているものって何?」
「最後の晩餐って何がすごいの?どんな絵なのか詳しく知りたい!」
この記事を読んでいる方はこのようなことを考えているのではないでしょうか。西洋世界で最も有名な絵画の一つに数えられる「最後の晩餐」に、どのような背景や特徴があるのか気になりますよね。
今回の記事を読むことで、「最後の晩餐」を制作するにあたって、万能の天才レオナルド・ダ・ヴィンチが用いた技法や、絵に登場する人物が何を表現しているのかなど、詳しく理解することができます。ぜひ最後までご覧ください。
「最後の晩餐」の概要
まず「最後の晩餐」とはどのような絵画なのでしょうか。これからその概要をご紹介していきます。
「最後の晩餐」が描かれた場所
「最後の晩餐」が描かれた場所はミラノのサンタ・マリア・デッレ・グラツェ教会です。1490年代に教会内にある修道院の食堂の壁に460cm×880cmというサイズで描かれました。
壁画は床から2メートルほど離れた場所に描かれています。一般的な絵画に比べ、相当大きなサイズです。
「最後の晩餐」の背景
「最後の晩餐」で描かれている場面は、新約聖書に記されたストーリーがモデルとなっています。イエスと12人の弟子が食事をする場面があり、それを切り取って1枚の絵画にしたのです。
では「最後の晩餐」の「最後」とはいったいどういう意味なのでしょうか。実は、弟子の中に潜む裏切り者の働きによって、この晩餐会の翌日にイエスが捕らえられ処刑されてしまったのです。そのため、この場面がイエスにとって最後の食事となりました。
「最後の晩餐」の制作期間
「最後の晩餐」の制作にかかった期間は1495年から1498年までの3年間です。
3年と聞いて長いと思った方もいるかもしれませんが、制作者のレオナルド・ダ・ヴィンチは絵を描くのが遅いことで有名でした。そのため、彼の作品はほとんどが未完成のままです。
完成すらしなかった他の作品に比べると、ダヴィンチにしてはかなりのスピードで描き上げたと言えるでしょう。
「最後の晩餐」の画風
「最後の晩餐」はテンペラという塗料を用いて描かれたテンペラ画です。本来壁画には、半永久的に保存が可能と言われるほど長持ちする特徴を持つフレスコ画が最も向いていました。
しかしダヴィンチはテンペラで「最後の晩餐」を描いたのです。テンペラは卵、ニカワ、植物性油などを混ぜて作った塗料で、上から何度でも重ね塗りができるという特徴があります。さらに多彩な色を使えるという点でも優れていました。
ですが結果的に彼のテンペラ画は失敗に終わりました。描きあげてから20年ほど経つ頃には彼の壁画は風化でボロボロの状態になっていたといいます。
「最後の晩餐」の技法
ダヴィンチは「最後の晩餐」を描くにあたって、「一点透視図法」という技法を用いました。
一点透視図法とは、ある一点(消失点)を基準にそこから広がるように線を引くことで奥行きのある空間を表現することができる技法です。こうすることで、壁画ではなく食堂がさらに奥に続いているような感覚になるのです。
また、ダヴィンチは消失点をイエスの右のこめかみに定めました。それによりイエスを中心に部屋が広がっているように感じ、絵を見る人の視線が自然とイエスに向くようになります。ダヴィンチはそこまで計算して絵の構図を決めていたのです。
「最後の晩餐」の魅力や特徴
人物の配置が斬新
今回描かれた「最後の晩餐」では、イエスと12人の弟子たちが横一列に並ぶように配置されています。これはかなり斬新な表現です。
これまでの「最後の晩餐」を題材とした絵画では、裏切り者の弟子だけテーブルの端に座らせるなどして、はっきりと区別して描かれていました。しかし今回の作品では全員が横一列に並び、裏切り者が弟子たちの中に溶け込むように配置されています。
「弟子の裏切り」を預言している
先ほど、「晩餐会の翌日にイエスが捕らえられ処刑されてしまう」と説明しましたが、実はこの時イエスは、自分が何者かに裏切られ処刑されてしまうということを預言していました。
「あなた方のうちの一人が私を裏切ろうとしている」そう言い放ったイエスと、それを聞いた12人の弟子が驚きや怒りの感情を露わにしている瞬間を切り取ったのが「最後の晩餐」という絵画なのです。
「最後の晩餐」の登場人物
「最後の晩餐」では、絵の中に多くの人物が描かれています。ここからは、絵の中に登場する13人の名前やそれぞれの動きについて解説していきます。
重要人物
この絵において重要人物はイエスとユダの二人です。
イエスは弟子の中に裏切り者がいることを見抜きましたが、その裏切り者こそがユダという人物だったのです。この二人は絵の中でこのように描かれています。
イエス
絵の真ん中の席に座っている人物がイエスです。
「あなた方のうちの一人が、私を裏切ろうとしている」と預言した直後で、悲しみや怒りの感情を表すことなく、全ての運命を受け入れているような顔をしています。
絵画全体をよく見てみると、12人の弟子たちが3人ずつ固まって4つのグループになっているのがわかると思います。その中でイエスだけが独立して中央に座り、落ち着いた態度でたたずんでいますね。
ユダ
左から5番目の位置に座りテーブルに肘をついている人物、彼こそがイエスを裏切り処刑へと導いたユダです。
ユダは30枚の銀貨と引き換えに、イエスを反キリスト教信者に売りました。そのためユダの手には銀貨の入った袋が握られています。
その他の人物
その他の11人の人物について左から順に簡単に説明していきます。
人物 | 特徴 |
---|---|
バルトロマイ | イエスの言葉に驚き身を乗り出している |
ヤコブ | 左手を怒るペトロに伸ばし制止しようとしている |
アンデレ | 両手を前に出し、 分かりやすく驚いたリアクションをしている |
ペトロ | 怒りを露わにし、右手にはナイフを握っている |
ヨハネ | イエスの右隣に座り、 ペトロに寄りかかるような姿勢をしている |
トマス | イエスに向かって指を1本立てている。 「裏切り者は一人だけですか?」と 問いかけているのではという説がある |
大ヤコブ | 両手を広げ驚いた様子で、 かなり険しい顔をしてある |
フィリポ | 胸に手を当て、 イエスに訴えかけるような素振りを見せている |
マタイ | 両手をイエスに向けながら、 右端に座るシモンに疑問を投げかけているかに見える |
タダイ | マタイと同様、 シモンに問いかけるような素振りをしている |
シモン | 2人に対し混乱しているような態度を示している。 3人とも「主は何を言っているのだ」といった 表情をしているかに見える。 |
「最後の晩餐」にまつわるエピソード
本当は「最後の晩餐」は最後ではない?
実は、正教会では「最後の晩餐」の場面は「最後」という呼ばれ方をしていません。「機密制定の晩餐」という名前で呼ばれているのです。
なぜ最後ではないかというと、イエスの処刑後、彼は復活し再び弟子たちと食事を行なっていたからです。確かに復活後だからとはいえ、何度も弟子と食事を行なっていたら、処刑前日の晩餐会を「最後」とは言えないですよね。
実際に描いた部分はほとんど剥がれてしまった
「最後の晩餐」はテンペラという塗料を用いて描かれたのですが、テンペラは温度や湿度の変化に弱く、すぐに侵食や損傷を受けることになってしまいます。
そのため完成から20年経つ頃には、ダヴィンチが実際に描いた部分はほとんど残らない状態となってしまいました。現在は修復作業によって完成当時に近い状態が再現されています。
「最後の晩餐」の様子を描いた作品は他にもある
「最後の晩餐」の様子を描いた作品は、ダヴィンチのものだけではありません。その他にも何人もの画家の手によって描かれています。
例えば、ドメニコ・ギルランダイオによって描かれた「最後の晩餐」では、ダヴィンチの作品同様、横一列に弟子たちが並んでいます。しかし裏切り者であるユダのみがテーブルの手前側に座り、明らかにほかの弟子と描き分けられていますね。
レオナルド・ダ・ヴィンチとはどんな人物か
西洋の名画「最後の晩餐」を描いたレオナルド・ダ・ヴィンチは、「万能の天才」と呼ばれるほど幅広い分野で才能を発揮しました。
彼は絵だけでなく、音楽、建築、数学、幾何学、解剖学など様々な場面で優れた結果を残しているのです。そんな彼の逸話をいくつかご紹介します。
- 絵の師匠であるヴェロッキオより上手い絵を描いてしまい、ヴェロッキオはそれ以来2度と絵を描かなくなった
- 支柱なしでも、石を積み上げるだけで安定する橋を設計した
- 今から500年も前にヘリコプターに似た空飛ぶ機械を設計していた
- 軍事の知識や経験を一切持たない状態で軍事顧問兼技術者として働き、そこで戦車の設計もしている
- 内臓、骨、筋肉の仕組みだけでなく、眼球の仕組みなども細かく理解していた
こうしてみると、彼がなぜ「万能の天才」と呼ばれているかがよく分かりますね。
レオナルド・ダ・ヴィンチの他の作品
ダヴィンチは「最後の晩餐」以外にも世界的に有名な絵画を描いています。これから特に有名な作品を2つご紹介します。
「モナリザ」
- 制作年 1503年-1506年
- サイズ 77cm×53cm
- 所蔵所 ルーブル美術館
1つ目は、ダヴィンチの最高傑作と言われる「モナリザ」です。世界で最も高額な絵画であり、1962年に1億ドルの価値があると査定されました。現代の価値に直すと約6億5000万ドルにもなるそうです。
まるで生きているかのような柔らかな肌、真顔にも微笑んでいるようにも見える表情など、様々な特徴を持つ「モナリザ」は、これまで多くの人々を魅了してきました。
「岩窟の聖母」
- 制作年 1483年-1486年
- サイズ 199cm×122cm
- 所蔵所 ルーブル美術館
「岩窟の聖母」は、ほとんど同じ構成で描かれた作品が2つ存在していて、どちらの作品にも聖母マリア、イエス、ヨハネ、天使の4人が登場します。
こちらの作品ではスフマートという技法が用いられています。スフマートとは、色彩の透明な層を上塗りすることで、色彩の境目がわからないほどに色を混合させるぼかしの技法です。「岩窟の聖母」ではこのスフマートが非常に巧みに用いられていて、美しい肌の質感を見事に再現しています。
まとめ
いかがだったでしょうか?今回は、レオナルド・ダ・ヴィンチの「最後の晩餐」について説明してきました。
「最後の晩餐」は今なお世界中で多くの人々に愛される作品です。天才レオナルド・ダ・ヴィンチが3年間かけて生み出した傑作、その魅力がよく伝わったのではないでしょうか。今後もダヴィンチの作品について深く探究していただければと思います。
この記事が皆さんのお役に立つことを願っています。
かっこええ
> 匿名さん
コメントありがとうございます!^^
最後の晩餐を一言で表すと、動揺、キリストの見破り、困惑、衝撃、計算された絵…などと出た。これからもっとこの絵について勉強していきたい。
> やべえやつさん
コメントありがとうございます!