東方三博士の礼拝
制作年 | 1481年 |
展示場所 | フィレンツェのウフィツィ美術館 |
技法 | スフマート技法、明暗法 |
東方三博士の礼拝の創作背景・解説
「東方三博士の礼拝」は、レオナルドの未完の傑作のひとつで、1481年ころフィレンツェ郊外のサン・ドナート・ア・スコペート修道院から祭壇の中央に飾る祭壇画として依頼されたものです。未完で終わった理由は定かではありませんが、1482年にレオナルドがミラノへ向かった際に未完の状態でフィレンツェに残され、1621年にメディチ家へ所有権が移行しました。
「東方三博士の礼拝」は、聖母マリアがベツレヘムの家畜小屋でイエスを産んだあと、東方から3人の賢者達(メルヒオール、カスパル、バルタザール)が、神の子イエスの生誕を祝福するためにベツレヘムを訪れ、黄金、乳香、没薬を捧げる場面が描いています。
三博士が聖母マリアと幼子イエスを囲み、その外側を羊飼いたち、さらにその外側を廃墟や馬に乗った人物が取り囲んでいて、背後にはイエスの誕生を恐れたヘロデ王が幼児を殺していった殺戮の情景が描かれています。
白テンを抱く貴婦人の肖像
制作年 | 1489年 |
展示場所 | ポーランドのクラクフ国立美術館 |
技法 | スフマート技法 |
白テンを抱く貴婦人の肖像の創作背景・解説
「白貂を抱く貴婦人」は、レオナルドが制作し油彩作品で、モデルはレオナルドが仕えていたミラノ公ルドヴィーコ・スフォルツァの愛妾チェチリア・ガッレラーニです。
本作に描かれている半身像は、身体は右方向を向き、首は左に向いているピラミッド型螺旋の構図で、レオナルドが生涯にわたってこだわった技法とされています。胸に抱いている動物は、ルネッサンス期において「純潔の象徴」とされていたオコジョであると考えられます。
本作は、1939年のナチス・ドイツのポーランド侵攻の際にナチスに収奪され、ベルリンのカイザー・フリードリヒ博物館へ送られました。その後、行方が分からなくなりましたが、第二次世界大戦が終結した後、連合国兵士がバイエルンにあるフランク群の家で発見しました。現在、ポーランドの国宝となっています。
岩窟の聖母
制作年 | 1483~1486年、1495年~1508年 |
展示場所 | パリのルーブル美術館 ロンドンのナショナルギャラリー |
技法 | スフマート技法 |
岩窟の聖母の創作背景・解説
「岩窟の聖母」は、レオナルドが制作したもので、同じタイトルの作品が2点存在しています。2点とも構図は同じですが、1点は復元されないままルーヴル美術館に所蔵され、もう1点は2008~2010年の間に復元され、ロンドンのナショナルギャラリーに所蔵されています。
ルーヴル版は、1483年にミラノのサン・フランチェスコ・グランデ教会から依頼されたものですが、後に書き直したロンドン版を教会に納品したと考えられています。
「岩窟の聖母」には岩場を背景に、聖母マリア、イエス、聖ヨハネ、の3人が受肉の神秘を讃えている様子が描かれています。
ルーヴル版ではイエスと聖ヨハネの区別が明確でないのに対し、ロンドン版では、聖ヨハネに十字の杖と衣を加えてイエスとの間に区別がされています。また、ロンドン版には、聖母マリア、イエス、聖ヨハネに神的人格の象徴である光輪が描かれていますが、ルーヴル版には描かれていません。
レオナルド・ダ・ヴィンチの発明作品
空を飛ぶ機械
「空を飛ぶ機械」について、レオナルドが残したノート「レオナルド・ダ・ヴィンチ手稿」の中に数多くのスケッチが残っています。一番有名なのが、ヘリコプターのスケッチで、「太い針金で縁取られた半径約5mの布製のらせん型のプロペラを薄い鉄板で作った軸に取り付ける。軸を強くねじ曲げると、元にもどろうとする力でプロペラが回る。」と説明書きがされています。
レオナルドは、螺旋のプロペラがゼンマイを動力として空気中を上がっていくと仮定したようですが、当時は材料がなく作れなかったようです。しかし、レオナルドの「回転するプロペラによって上 昇する」というアイディアは現在のヘリコプターの原型になったと言われいます。
他にも、レオナルドが鳥の羽ばたきを観察し、空を飛ぶための原理を考えてスケッチした「羽ばたき飛行機」など、レオナルドが残した手稿には、いくつかの「空を飛ぶ機械」の設計図が書かれています。
ダイビングスーツ
ダイビングスーツもレオナルドが考案したものの一つで、レオナルド手稿の一つ「アランデル手稿」にダイビングスーツのスケッチが残されています。革のスーツにゴーグルのついたフェイスマスクで、ワインの革袋を膨らますことで浮き沈みできるようになっています。
このスーツには、鐘型をした給排気装置や鋼製のリングで革と結合したサトウキビ・チューブのスプリング式ジョイントホース、さらに排尿用の袋も完備されていました。
レオナルドは、ダイビングスーツを軍隊で使うためのものとして構想を練ったのではないかと考えられています。レオナルドはこのダイビングスーツの技術が敵の手に渡り、悪用されるのを怖れて、研究をやめてしまい、詳細も書き記しませんでした。
レオナルド・ダ・ヴィンチと解剖学
レオナルドは、1489年から解剖した人体の詳細な素描を描き始めました。ミラノで解剖学者のマルカントニオ・デル・ㇳッレと解剖学書の共同執筆もおこない、約20年間で30体近い男女の死体を解剖し、750枚の素描が残っています。
レオナルドが残した人体の素描は正確性において世界初となるもので、解剖学のスケッチには、脊椎、肝硬変や動脈硬化の発見など科学的に価値の高いものが数多く残っています。240枚のイラストが描かれた「Anatomical Manuscript A」「Anatomical Manuscript B」という手稿はウィンザー城王室図書館が保管しています。
レオナルド・ダ・ヴィンチの関連作品
おすすめ本・書籍
レオナルド・ダ・ヴィンチ: 生涯と芸術のすべて
前半は、レオナルド・ダ・ヴィンチの半生について、後半はレオナルドの作品について、赤外線調査や化学分析など調査や分析などを徹底しておこなった上で、解説をしています。著者は、20年にも渡ってレオナルドの研究をしているので、レオナルドとはどのような人物なのか知りたい初心者の方にもおすすめです。
レオナルド・ダ・ヴィンチの手稿を解読する 手稿から読み解く芸術への科学的アプローチ
レオナルド・ダ・ヴィンチが残した「手稿」を読み解き、解説した一冊です。画家としてのレオナルドではなく、流体力学や理論植物学、空気力学、発生学などの分野を切り開いたレオナルドの思考プロセスや、どのように体系化していったのかなどを探っています。
レオナルド・ダ・ヴィンチ―全絵画作品・素描集
50cmという大きさの大型本なので絵に迫力があり、作品の筆致が詳細に解ります。一つの作品を作り上げるまでにおこなったスケッチなど、魅力的な画像が多く見ごたえがあります。世界中に散らばるレオナルドの作品を、ゆっくり一度に堪能できます。
レオナルド・ダ・ヴィンチの作品に関するまとめ
レオナルド・ダ・ヴィンチの作品について、絵画から発明、手稿などを順番にご紹介しました。レオナルドは、生前から巨匠として評価を得ているように、作品にはレオナルドがこだわった手法や技法を駆使したレオナルドならではの魅力がたっぷり含まれ、どの作品も所蔵している国の国宝となったり、世界遺産となっているものが多くみられます。
今回ご紹介したレオナルドの作品の解説が、あらためてレオナルド作品の素晴らしさに気付いてくれるきっかけとなったら嬉しくおもいます。