カデシュの戦いとは?原因や結末、その後の影響まで解説

オリエントの歴史を動かした2つの大国

ヒッタイトの都ハットゥシャシュ(現在のボアズキョイ)

“鉄の王国”ヒッタイト

ヒッタイトはインド=ヨーロッパ語族の一派です。紀元前1900年頃に東方からやってきて、現在のトルコにあたる小アジアに国を作りました。

都のハトゥシャッシュを拠点とし、ヒッタイト軍はメソポタミアにあったバビロン第一王朝を滅亡に追いやります。さらに、ミタンニ王国にも軍事的な圧力をかけ、メソポタミア北部に領土を拡大します。

では、なぜヒッタイトはこんなにも強かったのでしょうか。その理由はヒッタイトが周辺諸国にはない鉄の精錬技術を持っていたからです。鉄騎はこれまで使われてきた青銅器に比べ、利便性や強度に優れ、武器としても高い性能を発揮しました。

紀元前1200年頃、「海の民」とよばれる謎の人々がヒッタイトを襲撃し滅亡させます。しかし、その詳細についてはいまだにわかっていません。ヒッタイトの滅亡後、鉄の精錬技術は西アジアから東地中海全体に広がりました。

ナイルの恵みを受けたエジプト新王国

紀元前16世紀中ごろ、エジプトでは新王国とよばれる新しい王朝が生まれました。ヒクソスとよばれた異民族を追い出し、テーベを都として繁栄します。

エジプト新王国の領土を最大にしたのは紀元前15世紀にあらわれたトトメス3世でした。軍事的才能に恵まれたトトメス3世は西アジアやスーダン方面に領土を拡大しエジプト新王国の領土を最大にします。そのため、エジプトのナポレオンとよばれました。

新王国時代のエジプトでファラオの次に力を持っていたのがテーベにいたアメン神の神官たちでした。紀元前14世紀に在位したアメンホテプ4世はアメン神官団の力を削ぐため宗教改革を実施し、都をテル=エル=アマルナに移します。

アメンホテプ4世の実行した改革はアマルナ宗教改革とよばれました。しかし、アメンホテプ4世の死後、即位したツタンカーメンは宗教改革をとりやめ、アメン神信仰に戻します。

ツタンカーメンの死後、新王国は混乱しますが、ハトシェプスト女王やラムセス2世など著名な王が登場し、新王国の力を維持しました。

カデシュの戦いの時の両国の王は?

ヒッタイト人の戦車

ヒッタイト王ムワタリ

ヒッタイト王ムワタリ(ムワタリ2世)は、祖父シュッピルリウマ1世から始まったシリア拡大政策を引き継ぎました。

ヒッタイトはシリアにあったアムル王国やカデシュ王国を属国として従えます。その後、同じくシリア進出をはかるエジプト新王国とたびたび戦いました。

カデシュの戦い以前にも、ラムセス2世の前の王であるセティ1世と戦っています。ムワタリにとってアムル王国やカデシュ王国は絶対に手放せない場所でした。

エジプト王ラムセス2世

ラムセス2世(ラメス2世、ラメセス2世)はエジプト新王国第19王朝の王(ファラオ)です。エジプト新王国では領土を最大にしたトトメス3世と並ぶ名君とされました。

ラムセス2世は24歳で即位し、66年にわたってエジプトのファラオとして君臨しました。その間、多くの后との間に111人の息子と69人の娘をもうけたとされます。その一部、または大半が養子だったともいわれますが、定かではありません。

1881年、エジプトの王家の谷でラムセス2世をはじめ多くのファラオや貴族のミイラが発見されました。現在、ラムセス2世のミイラはエジプト考古学博物館に納められています。

ラムセス2世の死後、エジプトも海の民の襲撃を受けました。これにより、エジプト新王国は大ダメージを受けてしまいます。

終戦後に結ばれたカデシュの平和条約とは

戦いの後、ヒッタイトとエジプト新王国は平和条約を結びました。ヒッタイトとエジプトはシリア・パレスティナ地方を分割統治することを定めます。

ヒッタイトからすれば、エジプトの北上を防ぎ、交易ルートを守ったといえるでしょう。その後、アムル王国は再びヒッタイトに服属します。北上を阻止されたエジプト側からすれば、得るものが少ない戦いでした。

カデシュの戦いに関するまとめ

いかがだったでしょうか。カデシュの戦いはオリエントを支配する2大強国であるヒッタイトとエジプト新王国が真正面からぶつかった戦いでした。鉄のイメージから力押しをしてきそうなヒッタイトが、実は策略を用いてラムセス2世を危機に陥れたのは驚きでした。

一方、ラムセス2世は戦いに勝利できませんでしたが、戦闘の様子を神殿に描かせ、勇猛に戦ったファラオとしてのイメージを広める戦略とします。
両国の間で結ばれた世界最古の国際条約は、戦争と条約の締結がワンセットとなる西洋の歴史の始まりでもありました。

カデシュの戦いとはどんな戦いなのか、カデシュの戦いの勝者は誰なのか、カデシュの戦いの時の王(ファラオ)は誰だったのかについて「そうだったのか!」と思える時間を提供できたら幸いです。

それでは、長時間をこの記事にお付き合いいただき、誠にありがとうございました。

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