「我(アートマン)」とは
「我」は「アートマン」と呼ばれ、意識の最も深いところにある個の根源を指します。日本でいう「魂」に近いとされています。自分という1人の個人を、この「自分」として生かしている「霊魂」であり、「人格」です。
先ほど説明した「梵(ブラフマン)」とこの「我(アートマン)」が本当は同じものであることを実感することが「梵我一如」の思想です。実感することで人間は業から解き放たれ、生まれ変わることなくブラフマンと一体となった永遠の至福を生きられるとされました。
「解脱」に至るには
永遠の至福状態に至るにはどうしたらいいのでしょうか。ウパニシャッド哲学では、梵我一如は体験によって得られるとし、瞑想とヨガを修行としました。日本ではダイエットやエクササイズの一環のようなイメージのヨガですが、ウパニシャッド哲学では解脱に至るメソッドの1つなのです。
なぜヨガで解脱に至るとされているのでしょうか。それは、ヨガが感覚器官や心の動きを自分でコントロールすることが目的の修行だからです。感覚器官や心を制御できれば、精神や魂の動きもコントロールできるとされました。宇宙の原理と個人の魂が同じであるように、身体と精神も同じであるとウパニシャッド哲学では考えられたのです。
インドで生まれた他の宗教との関係
インドではたくさんの宗教が生まれたのですが、そのなかでもヒンドゥー教、ジャイナ教、仏教は大きな影響力をもつものです。ヒンドゥー教はバラモン教を発展させたもの、ジャイナ教や仏教はバラモン教のヴェーダに反対する立場をとっています。
どの宗教でも業によって輪廻転生が起こり、そこからの解脱が目指されています。ウパニシャッド哲学が核となっているのです。インド古来の哲学として、ウパニシャッド哲学はそれぞれの宗教で発展を遂げています。
ウパニシャッド哲学のおすすめ関連書籍
ウパニシャッド(講談社学術文庫)
辻直四郎の『ウパニシャッド』は、ウパニシャッド哲学について知りたいならぜひ読んでおきたい名著です。ウパニシャッド哲学の核の部分を抽出し、分かりやすくシンプルな文章で書き表しています。著者の辻直四郎は1899年生まれの古代インド学者で、日本におけるインド古典学のパイオニアです。
やさしく学ぶYOGA哲学 ウパニシャッド (YOGA BOOKS)
ヨガ哲学としてのウパニシャッドを知りたいなら、こちらの書籍がおすすめです。ウパニシャッド哲学をより理解するための導入である「タットヴァ・ボーダ」から入り、3種類のウパニシャッドを読み進めていきます。ポップなイラストや図表が載っているのも分かりやすくて嬉しいです。
ウパニシャッド哲学に関するまとめ
ウパニシャッド哲学の内容や他の宗教との関係について解説してきました。どのように感じられたでしょうか。
梵我一如の思想は、現代を生きる私たちからすると突飛に感じられる部分もあるかもしれません。理解できなかったところはそのままにして、「そういう考え方がある」ということを覚えておくだけでもいいと思います。自分と違う考え方があることを知識として知っておく、そのような姿勢は異なる文化と共に暮らしていくことにつながるはずです。
もっと理解してみたくなったら、ここでご紹介した書籍を手に取ってみてください。ウパニシャッド哲学は東洋哲学の1つなので、図書館でその分野の本を当たってみるのもいいでしょう。この記事が、新たな世界の見方への扉を開く助けになっていたら嬉しいです。