ホモサピエンスとは、私たち人間のことを意味している言葉です。そこには、私たちが今のような社会を作って生活を始める前からの人間も含まれています。
しかし、すでに人や人間などの言葉があるため、わざわざホモサピエンスという言葉を使う必要はないとも思えます。この記事を読んでいるあなたも、
「ホモサピエンスって何?私たちのこと?」
「ホモサピエンスの特徴や人類の進化について知りたい!」
このように、ホモサピエンスは具体的にはどんな人間のことを表しているのか、疑問を感じてる人もいるのではないでしょうか。
ホモサピエンスを理解して、私たちがどこからやって来たのかがわかれば、これからどの方向に進めば良いのかも見えてくるかもしれません。今回は、ホモサピエンスの始まりや意味について詳しくお伝えします。
大人になってから歴史の面白さに目覚めた私だからこそ、歴史のおおもと、人間の始まりに関わるホモサピエンスについてなるべくわかりやすくお伝えしたいと思います。
この記事を書いた人
一橋大卒 歴史学専攻
Rekisiru編集部、京藤 一葉(きょうとういちよう)。一橋大学にて大学院含め6年間歴史学を研究。専攻は世界史の近代〜現代。卒業後は出版業界に就職。世界史・日本史含め多岐に渡る編集業務に従事。その後、結婚を境に地方移住し、現在はWebメディアで編集者に従事。
ホモサピエンスとは?
古くから存在した人間の中で、最も新しく登場したのがホモサピエンスです。
人間は生物として、いつ頃から存在しているのか、どのように変化して現在生きている私たちのようになったのかなどを考えると、その時代によってさまざまな人間が存在したことがわかります。そしてその人間たちはさまざまな進化を繰り返しながら、現在の私たちに近づいてきたのです。
そこで、まずは人類学上で「ホモサピエンス」とは何なのかや、ホモサピエンスの意味や特徴についてもっと詳しく説明していきます。
人類学上で「ホモサピエンス」とは
ホモサピエンスとは、人類が属する種の学名です。
現在地球上に生きている私たち人間のことを人類と言います。人類は生物としての人間を意味していて、性別や人種は関係ありません。
現在、学問の世界(生物学や人類学)では人類を含め、どんな生き物も分類されます。分類の一番大きなくくりは生物です。この生物がそれぞれの共通した特徴により、ネコ属の〇〇種、イヌ属の〇〇種、というように目・科・属・種に細かく分類されていきます。人間の場合にはホモ属のホモサピエンスという種に分類されるわけです。
厳密に言うと、ホモサピエンスは現在生きている人間以外の種も含んでいますが、私たち人類のことをホモサピエンスと分類するのだと考えても良いでしょう。
ホモサピエンスの意味とは?
ホモサピエンスは「賢い人間」という意味になります。
学名にはラテン語を使うというルールがあるため、ホモサピエンスもラテン語です。ホモとサピエンスの2つの単語からできていますが、ホモが属(種の上のくくりです)名で、サピエンスは種小名と言います。種小名はその種の特徴を表す形容詞で、サピエンスなら賢いという意味になります。
ホモ属の始まりは「ホモ=ハビリス」?
ホモという属名の始まりは「ホモ・ハビリス」ではないかと言われています。
ホモ・ハビリスは240万年前から140万年前まで存在していたとされています。ホモ属の1種であり、現在分かっている限りでは最も古い存在です。
ホモ・ハビリスの見た目は、最も現在の人類とかけ離れていると言われています。身長は135cm程度までしか伸びず、身体の割には長い腕をしていたそうです。しかも脳の容量はホモサピエンスの半分ほどと言いますから、賢いというほどではなかったのでしょう。ハビリスとは「器用な」という意味になります。
また、ホモ・ハビリスと同時期に共通の祖先を持つ、ホモ・エレクトスという種が存在していたことが分かっています。かつてはホモ・ハビリスが進化してホモ・エレクトスになったと考えられていましたが、現在では否定されています。
ホモ・エレクトスとは別に、ホモ・ハビリスは絶滅してしまったと考えられています。ホモ・ハビリスがホモ属の始まりではあっても、私たちの直接の祖先というわけではなさそうです。
ホモ=サピエンスとホモ=エレクトスの違い
ホモ・エレクトスは男性で身長140~160cm、体重50~60kgとかなりがっちりした体型だったようです。黒い体毛が濃く、背中まで毛で覆われていたといいます。見た目ではホモサピエンスとは大きな違いがあったわけです。
脳の容量は現代人の75%前後で、歯も小さくなり、その点ではかなり現代の私たちに近づいていると言えます。
しかし、この脳の容量の差が、生き残る上での決定打となったのでしょう。ホモサピエンスとホモ・エレクトスは数万年の間、同じ地域で暮らしていたとされていますが、圧倒的にホモサピエンスの方が狩猟の能力に優れていました。
生活地域内の食べ物はホモサピエンスが多く手に入れ、それに伴ってホモ・エレクトスは飢餓で数を減らすことになったのです。
ホモサピエンス(人類)どのようにして誕生したのか
ホモサピエンスは47万年前にアフリカで祖先から分化し、誕生したと考えられています。先程紹介したホモ・エレクトスの一亜種、または近縁種と言われているホモ・エルガステルの仲間が進化したそうです。
しかし、今から7万5千年前に起きた氷期でホモ・エルガステルを含むホモ・エレクトスは絶滅しました。そして氷期の後にアフリカを出たホモサピエンスが世界中に散らばり、現在の人類の祖先となったと考えられています。
もう1つ、ホモサピエンスよりも古い時代の人間(ジャワ原人、北京原人、ネアンデルタール人など)が150万年くらい前に各地域で同時にホモサピエンスに進化したという考え方があります。
しかし、この考え方でもホモ・ハビリスなどが含まれる人類の祖先がアフリカで誕生したということになっており、人類がアフリカから始まったのは間違いがなさそうです。
ホモサピエンスの特徴
ホモサピエンスと他の種の違いは何と言っても、額が垂直に近いことです。他の種は水平に近いのですが、これは脳の前頭葉が発達したことを示しています。ホモサピエンスは前頭葉の発達によって、自分たちの行動が将来にどう影響するかが考えられるようになりました。これにより社会的に活動ができるようになり、他の種のように絶滅することを免れたと考えられます。
また顎が小さくなり顔が平らになったことも見た目には大きな変化でしょう。顎が小さくなったことで、下あごとそのさきの尖った部分・オトガイが発達しました(これは人類と類人猿の顔の差を考えるとわかりやすいでしょう)。
ゴリラ・チンパンジー、オランウータンなどを総称して類人猿と言います。腕が長く尾がないのが特徴で、生物としては人間に最も近い関係です。特にチンパンジーと人間は、生物的に姉妹のような存在と言うことができます。お互いに似ていて、同じ種類であるから、類人猿とは的を得た名前のつけ方ですね。
ホモサピエンスはオトガイが発達したことで、口周りの筋肉が自由に動かせるようになり、言葉を発するための動きができるようになりました。会話によって意思の疎通ができるようになったホモサピエンスは、一層社会的に活動ができるようになったのです。
私たちはホモサピエンスなのか?
大きなくくりで考えると、今生きている人類はホモサピエンスに分類されますから、私たちはホモサピエンスです。
しかし、ホモサピエンスにはネアンデルタール人を始めとする旧人類も含まれています。彼らにはオトガイが発達していないなど、明らかに私たちとは違った特徴を持っています。
そこで今生きている私たち人類のことをホモ・サピエンス・サピエンスと呼んで区別をしています。私たちはホモサピエンスの中のホモ・サピエンス・サピエンスです。
しかし、現在生きている私たち人類以外のホモ属はすべて絶滅していますから、ホモサピエンスが私たちのことを指していると考えても間違いではないでしょう。