「鳥葬って何?」
「鳥葬はどこで行われているの?」
「なぜ鳥葬をするの?」
このような疑問を懐いている人も多いでしょう。鳥葬という言葉を知っていても、グロテスク、またはショッキングというイメージが先行して、実際に鳥葬は何のために行うのか、何が行われているのかを知らないのではないでしょうか。
しかし、鳥葬について知ることは決して無駄ではありません。鳥葬とは、遺体を鳥に食べさせることで処理する葬儀方法ですが、鳥葬をする人々の精神を知れば、現代の日本で活かせることがたくさんあるはずです。
そこで今回は、鳥葬を行っている国と宗教を紹介し、それぞれの鳥葬の詳しいやり方や鳥葬を続けている理由などについて分かりやすく解説します。なお、鳥葬の画像についてはグロテスクな画像をなるべく避けて使用しています。
鳥葬とは何か
鳥葬とは、葬儀の方法の1つで、鳥が食べることで遺体が処理されます。日本では葬儀と言えばほとんどが火葬ですが、国や宗教により葬儀の方法は違います。鳥葬はある国のある宗教を信じる人たちにとっては、当然の歴史ある葬儀の方法なのです。
鳥葬はいつどこで始まったのか
鳥葬で有名なのはチベットです。かつてチベット領に存在したムスタン王国ができてから、数百年後にチベットで鳥葬が始まったそうです。ムスタン王国ができたのは1350年と言われているため、鳥葬も1350年以降に誕生したと考えられます。
また、古代ペルシア(現在のイラン)では遺体の肉を削いで、動物に与える風習がありました。この風習を持った人々がゾロアスター教徒のルーツだと言われています。
ゾロアスター教の葬儀は現在も鳥葬が主となっています。紀元前6世紀には、ゾロアスター教は古代ペルシアの人々が信じる宗教になっていました。このことからも、鳥葬には長い歴史があることがわかります。
鳥葬の詳しい埋葬方法とは
鳥葬での埋葬方法は、私たち日本人の感覚とはかなり違います。それは私たちには、鳥に食べさせた後の遺体を放置し、遺棄していると思えるかもしれません。
鳥葬では鳥に遺体を食べさせるため、遺体の置き場が必要になります。遺体の置き場は、国や宗教によって呼び方は違いますが、キチンと決められています。
1. 鳥葬台
郊外にある鳥葬台が遺体の置き場になっている場合があります。そこで遺体を鳥に食べさせるわけですが、解体して食べさせる場合と、解体をせずに食べさせる場合があります。
解体する場合は骨まで砕いて食べさせるために、後には何も残らず、それ以上埋葬する必要はありません。遺体を解体しない場合は骨が残りますが、それは決まった場所に放置されます。
2. 専用の建物(ダフマ・沈黙の塔)
鳥葬を専用の建物の中で行う場合があります。建物には屋根がないため、鳥が降りてきて遺体を食べられるようになっています。建物は神聖な場所とされているため、誰でも入れるわけではありません。
中には井戸が掘ってあり、白骨化した遺体は最終的に井戸に投げ込まれます。
鳥葬をしている国と宗教
鳥葬をしている宗教は、チベット仏教とゾロアスター教です。チベット仏教は中国のチベット文化圏、ブータン・ネパールの北部、インドのチベット文化圏、モンゴルの一部で信仰されています。
また、現在ゾロアスター教徒が世界で一番多いのは、インド・パキスタンです。そのため、鳥葬に使われる建物は現在もインドに多く残っています。ゾロアスター教発祥の地とも言われるイランは、イスラム化が進んだためにゾロアスター教は少数派になってしまいました。
しかし、チベット仏教を信仰している人なら、必ずしも鳥葬をしているわけではなく、鳥葬を続けるのには、れっきとした理由がありました。
鳥葬を続けている理由
チベットでは、鳥葬は人が最後にできる良い行いであると考えられています。同時に火葬や土葬が難しく、鳥葬を選ばざるを得ません。この2つがチベットで鳥葬が行われている理由です。
人間はたくさんの命を奪って生きるしかありませんが、死後その肉を鳥に食べてもらうことで、自然に対して恩返しができるとチベットの人たちは考えました。
また、チベットは高地で大きな木がほとんど生えなかったため、火葬のための薪が確保できませんでした。同じチベット人であっても、薪が容易に確保できる場所では、火葬が行われていました。
土が硬くて穴を掘るのも難しかったために、土葬も伝染病で亡くなったなど、限られた場合だけで行われていたのです。
近年における鳥葬
中国政府は鳥葬を不衛生だとして、火葬を奨励していましたが、2006年に鳥葬に対する撮影や報道を禁止する条例を公布、鳥葬を伝統文化として保護することになりました。チベットに1000箇所あると言われている鳥葬用石台も、撮影や見学、近辺での採石が禁止されました。
それでも鳥葬を見学したいという観光客は減らず、地元の人々との間に摩擦が生じることになりました。2015年頃からは、鳥葬の見学や撮影を禁止するために新たな法律を作る動きが出てきました。
確かに私たちが行う葬儀に見ず知らずの観光客が興味本位で訪れていたら、良い気分ではいられません。鳥葬の見学や撮影の禁止が望まれるのは当然の結果ではないでしょうか。