最近、ニュースで取り上げられる機会の多い「上級国民」。ニュースでは、「上級国民など存在しない」と報道される一方で、都市伝説じみた不可解な噂が流れているのも事実です。
そのため、
「上級国民と呼ばれる人ってどんな職業に多いの?」
「そもそも上級国民って何?」
などの疑問を抱いている人も多くいますよね。
そこで、今回は上級国民と呼ばれる人たちの職業を一覧にまとめました。また、そもそも上級国民とはどういった人を指すのか、その定義や生まれた背景を上級国民が逮捕されなかった事件や噂も交えて紹介します。
この記事を読めば、上級国民にまつわる疑問を余すことなく解決できますよ。
この記事を書いた人
Webライター
Webライター、吉本大輝(よしもとだいき)。幕末の日本を描いた名作「風雲児たち」に夢中になり、日本史全般へ興味を持つ。日本史の研究歴は16年で、これまで80本以上の歴史にまつわる記事を執筆。現在は本業や育児の傍ら、週2冊のペースで歴史の本を読みつつ、歴史メディアのライターや歴史系YouTubeの構成者として活動中。
上級国民とは?
上級国民とは、「一般国民より上位に位置する国民」を意味する言葉概念です。富裕層や上流階級を指す場合もあれば、政治の意思決定を判断する政治家や官僚をさす場所もあります。大正時代から存在した造語ですが、国民に浸透したのは2015年の事でした。
2015年7月、2020年東京オリンピックのエンブレムに採用された佐野研二郎のデザイン案が、盗作ではないかと議論された事がありました。9月1日に、佐野の案は撤回されたものの、その時の記者会見で組織委員会は以下の発言をして物議を醸したのです。
『残念ながら、自分のこのような説明、それから佐野さんの説明は、専門家の間では十分分かり合えるんだけれども、一般国民にはわかりにくい、残念ながらわかりにくいですね』
ニコニコ大百科
この記者会見で出てきた「一般国民」とは、「デザイナーではない人たち」の事を指します。ただ「2ちゃんねる」ではその時の会見を「上から目線」と批判する声も多く、上級国民という言葉が広がったのでした。
「上流階級」という意味での、上級国民という言葉が広まったのは2019年に起きた「池袋高齢者ドライバー暴走事故」です。事故を起こした加害者が、元高級官僚だった事、事故後にすぐ逮捕されなかった事から、ネット上で上級国民という言葉が再び広まったのでした。
上級国民と呼ばれる人達の職業一覧
「上級国民は存在しない」と強調される一方で、上級国民だと噂される人達がいるのも事実です。そこで、上級国民と呼ばれる人達の職業や立場を下記にまとめてみました。
- マスコミ関係者
- 政治家
- 高級官僚
- 検察官
- 外交官
- 旧皇族
以降では、なぜ上級国民と呼ばれる人達が多いのか、それぞれの職業や立場を順に解説していきます。
マスコミ関係者
新聞社やテレビ局などの、マスメディアで働く関係者は上級国民と呼ばれる事があります。マスコミは、不特定多数の人達に情報を発信する立場上、政府と繋がりのある人達も多い事は明白です。
元アナウンサーの千野志麻は、2013年1月2日に静岡県沼津市のホテルの駐車場で、38歳の男性看護師をはねて死亡させる事故を起こしました。ただ彼女は逮捕されず、2月12日に自動車運転過失致死の疑いで書類送検。翌年に100万円の罰金刑で済んでいます。
死亡事故の加害者として逮捕される人がいる中、彼女は逮捕されていません。彼女の父親は沼津市の市議、夫は元総理大臣・福田康夫の甥でした。マスコミ関係者、そして社会的立場の高い人が血縁関係にいると、上級国民と見なされるのかもしれません。
政治家
政治家は、職業として政治にかかわる者を指し、国会議員や国務大臣、地方自治体の議員などが該当します。彼らは様々な特権を持っており、上級国民と称される事が多いです。犯罪を犯しながら逮捕されない者、不起訴になる者も多く、度々批判されています。
1990年から2021年まで衆議院議員を務め、大臣経験もある石原伸晃も上級国民と呼ばれた1人です。彼は2021年1月22日に、コロナウイルスに感染しました。自宅待機を余儀なくされる、数千人の都民がいる中、彼は無症状にもかかわらず即入院しています。
この待遇に世間は石原伸晃を「上流国民」と批判。彼は、10月31日の衆議院選挙で落選しましたが、12月3日に内閣官房参与に就任しています。すぐに雇用調整助成金受領問題で辞任したものの、落選してもなお、特権階級であれば政治の世界に携われるようです。
彼に限らず、スピード違反を見逃してもらった元法務大臣の河井克行。政治資金規正法で、家宅捜索されたにもかかわらず、不起訴になった小渕優子。政治家だからこそ、罪を免れた案件は非常に多いと言えるのです。
高級官僚
高級官僚とは、中央省庁の課長以上の国家公務員を指します。官僚の年収は340万程度とされますが、局長クラスは1000万円以上、事務次官だと2300万円以上と言われています。彼らは、大企業の部長以上の地位に相当するとされ、上級国民と呼ばれる事があります。
官僚といえど彼らは国家公務員。(今のところは)国が倒産する事はない安心感と、様々な福利厚生が保障されています。莫大な退職金を得た後は、様々な企業を渡り歩く「天下り」などを行い、更なる報酬を得ながら企業と政界のパイプ役を務めるのです。
通商産業省技官だった飯塚幸三は、2019年に東池袋自動車暴走死傷事故を起こし、11人の死傷者を出す大事故を起こしています。彼は事故で胸部を骨折し、逃亡の恐れがないと判断された事から、事故後すぐに逮捕はされていません。
報道機関は彼を、「飯塚(元)院長」という肩書きで報道していた事もあり、世間は飯塚を「上級国民」と批判。この事故が、上級国民という言葉を世間に浸透させたと言えます。なお、彼は2021年9月2日に禁錮5年の判決を受けており、無罪にはなりませんでした。
検察官
検察官とは、特定の刑事事件について裁判所に裁判を申し立てる人の事です。身分は国家公務員であり、検事総長・次長検事・検事長・検事及び副検事に区分されます。そのうち、検事総長、次長検事及び検事長は内閣が任命し、天皇が認証します。
民主主義の根幹にあるのは、「立法」「行政」「司法」が独立して、互いに監視し合う事で権力の集中を防止する三権分立です。しかし日本では、それぞれの癒着も問題視されており、司法の番人たる検察官も上級国民と呼ばれています。
2019年1月から検事長に就任した黒川弘務は、2020年5月に賭け麻雀をしていた事が発覚し、大きな批判を浴びました。法務大臣の森雅子は、黒川の処分を「訓告処分」とし、黒川は5月22日に検事長を辞任しました。
訓告処分は、公務員の処分として軽いものとされます。黒川は、懲戒免職ではなく辞任したため、退職金も5900万円程貰いました。後に黒川は不起訴処分となり、事件はこれで幕引きとなったのです。
外交官
外交官は、外務省や世界各地の大使館に勤務し、外国との交渉や文化交流、更には邦人の保護活動などを行う公務員です。日本人として海外に派遣される外交官もいれば、外国人が日本に派遣される外交官もいます。
近年物議を醸しているのは、「海外の外交官車両の駐車違反金の踏み倒し」です。駐車違反金を踏み倒す外交官車両は、東京都内で年間3000件に上り、これは一般車両の280倍になります。踏み倒しの割合はロシアが25%、中国が20%と半数を占めるのです。
国際問題を懸念し、これらの外交官に強く言えないのは間違いないと思います。とはいえ、私達が少しでも違反をすれば罰金や点数が加点される事を考えれば、これも上級国民の特権と言えるでしょう。
旧皇族
皇族とは「天皇およびその一族の総称」であり、旧皇族とは「皇族を離れた者や、その男系子孫」の事を指します。彼らが日本の象徴的存在である事は疑いの余地はありませんが、同時に様々な特権を持つ事も事実です。
日本オリンピック委員会の元会長を務めた竹田恆和は、旧皇族・竹田宮恒徳王の3男。明治天皇の曽孫にあたる人物です。彼は、1974年に交通死亡事故を起こしたものの、逮捕される事はなく示談が成立。2年後に馬術でオリンピックに出場しています。
皇族や旧皇族を、上級国民と呼ぶ声が多いのは事実です。ただ憲法上、天皇は「国の象徴」とされ、参政権の行使は認められていませんし、表現の自由も自制されています。
上級国民である前に、国の象徴として生き続ける事は、何よりも大変である事は忘れてはいけません。