フレデリック・ショパンは19世紀を代表する作曲家・ピアニストで、「ピアノの詩人」と称されたようにピアノのための作品を多数作曲した人物です。
現代でもピアノの演奏会や発表会などで演奏される楽曲も多く、私たちにとって馴染みのある作曲家と言えるでしょう。
今回は幼い頃からショパンの楽曲への憧れのある筆者が、代表曲をまとめてご紹介します。ピアノ曲以外の楽曲についても調べてみましたので、よろしければ最後までお読みください。
この記事を書いた人
一橋大卒 歴史学専攻
Rekisiru編集部、京藤 一葉(きょうとういちよう)。一橋大学にて大学院含め6年間歴史学を研究。専攻は世界史の近代〜現代。卒業後は出版業界に就職。世界史・日本史含め多岐に渡る編集業務に従事。その後、結婚を境に地方移住し、現在はWebメディアで編集者に従事。
ショパンのピアノ曲12選
ショパンは数多くのピアノ曲を生み出しました。
ショパンと言えば色白で華奢な肖像画や、ロマンティックで繊細な楽曲の数々、そして病弱だったと言う逸話から儚げなピアニストのイメージがあるかも知れません。しかしショパンの繊細さの中には意外なほどの激しさが秘められていることもあり、それもまた不思議な魅力となっています。
ショパンに秘められた情熱のうち、特に重要な要素となるのがショパンの愛国心・故郷を思う気持ちの強さです。彼はワルシャワ公国(現在のポーランド)出身で、19歳までワルシャワで過ごしました。その後はウィーン、パリで音楽家として活躍していきますが、祖国を愛する心を変わらずに持っていたため、ワルシャワを蹂躙する大国ロシアや革命に巻き込んだフランスなどの大国への怒りから激しく情熱的な作品を生み出すこともありました。
同時代に活躍したシューマンからも「美しい花畑の中に大砲が隠されている音楽」と称されたショパンの楽曲について解説していきます。
代表曲編
まずは特に演奏される機会も多く、人気の高い代表的な曲をご紹介します。曲名に見覚えがなくても、ピアノやクラシック音楽に詳しくないという方でも、曲を聴けばすぐに耳馴染みのある曲だとわかるでしょう。
幻想即興曲 嬰ハ短調 遺作 作品 66
ショパンの曲の中でも特に頻繁に演奏される曲です。ショパンは自作曲に意味のあるタイトルをつけることを嫌ったため、「幻想即興曲」というタイトルはショパンの死後に友人のユリアン・フォンタナがつけたものと言われています。
ショパンはこの曲を「自分の死後に燃やして処分してほしい」というようにフォンタナに伝えたようですが、その願いは叶いませんでした。
別れの曲(練習曲作品10第3番ホ長調)
幻想即興曲はショパンにとって「不本意な名曲」となりました。しかしこの「別れの曲」はショパンも自分自身で最高傑作と認めた名曲だと言われています。先述の通り、ショパン本人は自分の曲に意味のあるタイトルをつけることを嫌がっていたため、本当の曲名は「練習曲作品10第3番ホ長調」といいます。
「別れの曲」というタイトルは1934年公開の同名映画のタイトルに由来しており、(この曲がとても重要なファクターとして使用されました)日本ではこの呼び名が一般的となっています。日本でも現在、映画やドラマに限らずアニメやゲームにおいても劇中に使用されている楽曲です。
「革命のエチュード」練習曲10-12
右手のアルペッジョとスムーズなポジショニングのためのエチュード(練習曲)です。発表された時期が帝政ロシアのワルシャワ侵攻とほぼ同じ時期であったため、様々な臆測がなされている曲でもあります。「革命」というタイトルはフランツ・リストが付けたとも、国粋主義の伝記作家・モーリッツ・カラソフスキーが付けたともいわれていますが、ショパン本人がどのような思いで作曲していたのか知る術はありません。
ショパンの練習曲の中では難易度はそこまで高くないといわれていますが、鍵盤の端から端まで鍵盤を使用するため、短い曲ながらなかなかの練習量は必要です。ステージでも映えるので演奏会や発表会のレパートリーとしても適しています。
ノクターン編
ノクターンというのは日本語にすると「夜想曲」といい、元々は夜に瞑想するための宗教曲のことを指していました。しかし次第に貴族の夜会で演奏される曲へと変わっていき、この頃になると形式のない小曲のことを指すようになりました。
ショパンのノクターンは初期はジョン・フィールドという作曲家の影響を強く受けていましたが、時代が下るにしたがって独自の境地へと発展していき、また後世の作曲家へも大きな影響を与えました。
夜想曲第1番 変ロ短調 op.9-1
作品9の夜想曲の中で一番有名なのは次に紹介する第2番ですが、この第1番は独特の優美さを持っており、愛好家や演奏家に人気のある曲です。
憂いを含んだメロディや急展開の中間部も魅力的であり、またこの曲は「ピカルディ終止」という長調の和音で曲が終わる形式ですので、演奏の後は不思議とふんわりと優しい気持ちにさせてくれます。
夜想曲第2番 変ホ長調 op.9-2
ショパンの夜想曲、ノクターンの中でもっとも有名な曲と言えるのがこの曲です。テレビドラマなどに限らず最近はバラエティ番組などでも使われることが多いため、聴き覚えのある方も多いのではないでしょうか。
ショパンは新しい音楽を求めるとともに古い時代の音楽家を尊敬し、またインスピレーションを得ていたといわれています。この曲ではイタリア・オペラの装飾的歌唱の影響が見られます。
夜想曲第20番 嬰ハ短調 遺作
この曲はショパン後期の作品であり、この頃になるとノクターン(夜想曲)の様式もショパン独自のスタイルが確立されています。元々は協奏曲を演奏するための練習曲として作られたといわれています。
第二次世界大戦時におけるワルシャワを描いた映画「戦場のピアニスト」では重要なシーンでこの曲が使われました。